ガチバトル。まさにガチバトル。女の子をほとんど書いてないからもう疲れましたでござるよ。
ちょっと雑になってますけど、まあ、少しでもカンピオーネらしいバトルを楽しんでもらえればと思って頑張ってみました。そんなの求めてねえよクソ野郎と思われるかもしれませんが、次は本編突入でばしばしエロでもなんでも書いていくんで、読んでやって下さい。
もう男とのバトルなんか絶対に書かん!(フラグ)
「──まつろわぬゼウスです」
──そもそも、エリカ・ブランデッリがギリシャに訪れるきっかけになった任務とは、この地で確認されたまつろわぬ神の顕現を調査するというものである。彼女の所属する赤銅黒十字の代表として調査チームに参加し、最悪の場合どこかのカンピオーネに討伐を依頼する手筈だった。しかしその道すがら護堂に捕まり、完全にその心を屈服させられたおかげで会議に向かえなかったため、今の彼女にまつろわぬ神に関する情報は極めて少ない。その中でも不明瞭なものは多く、唯一知っていると言えるのは、何も手を打つことができなければ近いうちにかなりの確率で『まつろわぬゼウス』が顕現するということのみ。事前に渡されていた資料によれば、管理の手から外れていた聖遺物とギリシャの地の龍脈が偶発的に絡み合ったことが原因と考えられるらしい。エリカ含む調査チームの仕事は、全員でその聖遺物を移動させ顕現を未然に防ぐことだったのだが──優秀な魔術師であるエリカが抜けた穴は大きく、残りのメンバーだけでは聖遺物による妨害を抑えきれなかったのだ。応援を呼ぼうにも、顕現までは到底間に合わず、そもそも優秀な魔術師はほとんどが多忙であった。
まあ要するに、大体草薙護堂のせいである。
「あー、そっか。それは悪いことしたな、すまん」
事の経緯をエリカの口から説明された護堂は、シャワーも浴びず半日以上夏の汗を放置していたため何やらむず痒い頭皮を掻きながら、やや申し訳なさそうな顔でそう答える。
基本的に、彼の謝罪の価値は非常に安い。付き合いの長い女性からすれば無価値にも等しいものだ。
何故なら、彼は普段割と律儀な性格であるにもかかわらず、自分の都合で当たり前のように人に迷惑をかけるからだ。本人は自覚しているのかしていないのか誰にもわからないが、彼の場合は迷惑をかけた事を申し訳なく思っておきながらも次はしないようにしよう、などとは考えない。表面上は謝っている体裁を整えているが、その実なんの意味も持たない。それが、草薙護堂という魔王である。
形だけの謝罪を早々に切り上げたあと、護堂は少しだけ悩む格好を取ってから、最初の落雷があった地点に目を向ける。
「まあ、俺の責任でもあるみたいだし、旅行をふいにされるのもしゃくだから行ってくるな」
「なっ!?」
家の近くのコンビニに行ってくる程度の感覚で歩き出す護堂に、エリカは慌ててそれを止める。
「お、お待ちください。相手はまつろわぬ神ですわ。護堂様に何かあっては………」
エリカは調教の都合上護堂のことを様付けで呼んでいるが、彼の事はただの高位の魔術師くらいにしか思っていない。護堂自身が目立って権能を使っていないということもあるが、その原因はイシュタルの権能の一側面にある。
イシュタルとは性愛だけではなく、夜や冥府も司り、それゆえ性的にも負の側面を行使できるのだ。夜や冥府とは、闇──つまり一寸先も見えないという盲目性を持つ。護堂は、その女神をセックスのみで、『夜中』に、打ち勝った。そのため彼の権能にも僅かながら夜の側面があり、その闇の効力が働いて彼のカンピオーネとしての正体を無意識のうちに隠していたのだ。
彼は今までに、そう大っぴらに権能を使ったことがなく、膨大な魔力を必要としたことも無いわけで、そのこともあって彼の正体には誰一人近付くことができなかった。
それゆえ、エリカも彼のことを勘違いしていたのだが、それはもう間もなく解ける。
生来の宿敵となったまつろわぬ神を目の前にして、身体の底から魔力が溢れ出る護堂を目にすることによって。
「────まさか、まさか護堂様。貴方は、いえ、御身は────」
彼の纏っていた闇が、もやのように霧散していく。露見する神殺しとしての姿。その存在は、まるで異様な自然現象の如く。一柱の女神を背負い、彼は魔王として在る。
そしてその中、闇を切ってエリカの前に立った護堂は、膝をつく彼女の顔を指先で持ち上げた。
「なあエリカ、俺がどんな奴であろうと、俺は俺だろ。永遠にお前の所有者だ。違うか?」
「──いえ、いえ。その通りです、護堂様。例え貴方が恐ろしい羅刹の君でも、そうでなくただの一般人であっても、私は、永遠に貴方の所有物ですわ」
エリカの蕩けた視線が、ただ護堂のみを見つめる。もはや、エリカの忠誠と求愛は権能による催淫を必要とはしていなかった。
自分を一度辱め、蹂躙し、壊し、その隙間にこの上ない愛を注いでくれた人物。甘えたいという未だ嘗て親族以外に見せてこなかった側面を、さらけ出させた人物。それになにより、間違いなく自分が地球上で最も快楽を与えられた人物。
二人の瞳と瞳の距離は、いつの間にか無くなっていた。
「………ほら、静花も来い」
護堂は、一人おいてけぼりをくらって相変わらず不機嫌そうな自分の妹も抱き寄せ、その尖らせた唇を愛欲の熱でとろかす。
「────それじゃあ、行ってくる」
己の愛すべき美姫二人を後ろに、魔王は赴く。丘の上にそびえ立つ、その戦いの地へ。
※ ※ ※
草薙護堂は、まるで天空から全てを見下ろしているような感覚を覚えた。
彼が泊まる宿やエリカとまぐわったホテルがすぐ近くに見えるアクロポリスに立ち、妙に醒めた頭で前髪をかき上げる。
エリカに聖遺物がどこにあるかを聞き、騒動の中心であろうこの場所まで全速力で駆けてきた護堂だったが、今のところまつろわぬゼウスらしき存在は確認できない。彼の目に映るのは、木々と砂利と地面に転がる十数人の男女のみ。護堂が思うに、彼等が今回の聖遺物運びを請け負った者達なのだろうが、もれなく全員気絶してしまっている。中には腕があらぬ方向に曲がっている者や、口から血を吐いている者もいるが、護堂にはそれよりも服が破れている女性に目がいっていた。
転がる女性は大体全体の三割ほどで、その中の一部が破けた布の隙間から肌を露出している。護堂は数人いるうちの一人に歩み寄り、胸近くの破れた箇所から手を入れて小さい乳首を弾いた。するとその女性は体を軽く跳ねさせ、甘い声を漏らす。
「おっと………こんなことしてる場合じゃないな」
護堂はそう呟いて、何事も無かったかのように女性の服装を正した。
そして、己の心も出来るだけフラットに、どんなことにでも対応できるよう整える。彼がホテルの前にいたときから感じていた『気』のようなものが、徐々に大きく感じられてきたのだ。
──神が、近づいてきている。カンピオーネとしての彼の本能は、それに他ならないと告げていた。
それに伴って彼の身体と魔力は自動的に臨戦態勢を整え、彼は待つ。
しばらく護堂が手をポケットに入れてじっと林の奥を見詰めていたところ、影から人影が現れる。数は一つ。しかし、その大きさは異常だった。身長は三メートルほどあり、腕などは成人男性の胴体と同じくらいの太さだった。
そして、ろくに戦ったこともない護堂でも感じる圧倒的なオーラ。
本能の警鐘など必要もない。影を振り払って現れたその男性は、まつろわぬ神だ。
「あんたが、ゼウスってのか」
護堂の呼びかけに、男──まつろわぬゼウスは答えた。
「うむ、いかにも。そういうそちらは………なるほど、同胞を殺しているのだな。それで、この神王ゼウスの前に立ったというわけだ」
彼はそう言って豪快に笑い、護堂を見据える。
「しかし、だからといって、我と相対するとは笑止。そちらがどれだけの同胞を相手にしてきたのかは知らんが、我は神の中でも王の位に位置する存在。我が負けることはありえんよ」
堂々とそう言い放つゼウス。しかし、それは驕りでも虚勢でもなく、紛れもない事実。彼に対しては、最上級魔術師が百人集まったところで勝ち目などない。それは気が揺さぶられれば木の葉が落ちるように、当たり前の現象なのだ。
しかし、カンピオーネは違う。彼らは権能など持たない生身の状態で、それでも神を殺した。そういう常識をかなぐり捨てた存在を相手にすれば、いくら全能の天空神といえど絶対はない。
そして護堂も、特殊な状況下だったとはいえ、紛れもなく神を殺した男。ゼウスを前にして、一歩も気後れしていなかった。
「勝つとか負けるとかどうでもいいけど、とにかくあんたにはここからいなくなって貰わなくちゃならないんだ」
目を細めるゼウスに対し、護堂は背にした町並みを親指で示し、言い放つ。
「あんたがいちゃ、おちおちセックスも出来ないからな」
言い放って、彼は笑う。それは挑発でもなんでもなく、純然たる事実。彼は一回のセックスのために、まともに相手をしたこともない神を殺そうとする。
それがカンピオーネ。
それが神殺しの魔王。
それが、草薙護堂。
そんな、己と
賽は投げられた。後はただ、前に進むのみである。
──最初に動いたのは、護堂の方であった。
彼は一直線にゼウスに向かわず、少し逸れて倒れている魔術師のところへ走る。
護堂の目的は、その傍に落ちる剣。彼はそれを拾い、一瞬で籠められるだけの魔力を籠めてゼウスへ投げつけた。
その間たったの二秒。それだけの時間で、彼は名のある魔術師の必殺の一撃クラスの攻撃を作り出す。その剣は瞬く間に一筋の閃光に変わり、神を襲う──が、それはゼウスの腕の一振りだけで弾かれた。突然の雷に打たれた剣は、一瞬で炭となって朽ち果てる。
護堂は舌打ちをし、急いでゼウスから距離を取る。無論、彼自身この程度の攻撃で神を討ち取れるとは思っていなかったが、最低でもかすり傷くらいはつけられる予定だった。想定外の隙の無さに、彼は頭を巡らせる。
しかしそうしている間にも、ゼウスの放つ稲妻や暴風は護堂を襲う。ある程度ならば彼の対魔力で防げないこともないが、ゼウスの象徴足る雷だけは到底どうにもならない。宇宙の外の混沌さえも灼き尽くすと云われるそれは、ただの一筋落ちるだけで、その衝撃波が地を抉り木々を裂き、本体は護堂より二回りほど大きい岩を完全に炭化する。傍目に見れば、勝ち目など一切無かった。
だが、圧倒的に不利な護堂は、それでも諦めることなく、雷の襲来を回避し続ける。時に本能で、時に推測で、時に自然の盾を使って、ただ避ける。ともすれば、人間らしいゼウスが苛つきを露わにするほどに。
「ええい、まだ鼠のように逃げ続けるか神殺し!」
いつまでも自慢の雷がかすりもしないこの状況にとうとう業を煮やしたのか、ゼウスは叫ぶ。
すると、先ほどまで雨のように降り注いでいた稲妻が全てなくなり、代わりに、曇天には巨大な雷球が浮かんでいた。
人ひとりなど容易に飲み込んでしまえるほどの大きさに加え、内包する魔力の密度もそれまでのものとは一線を画している。
まともに喰らってしまえば、カンピオーネや同じまつろわぬ神でさえ消し飛んでしまうほどの絶対なる一撃。
しかし、護堂が逃げ回っていたのは、これを待っていたからだ。
──溜めを終えたゼウスが、神罰を下す。
究極の猛威を振るいながら、愚かな人間に裁きを与えんと雷球は余波で木々を薙ぎ倒しつつ護堂へと向かう。
そしてついに、雷光は地面で閃き──丘の三分の一ほどを消滅させてしまった。
これで終わったと確信するゼウス。『神罰』は彼の権能をほぼ総動員させて作り出した何者にも止めることのできない最強の力。だがその分、発動前と発動後の隙も大きいのだ。唯一、最強ゆえに慢心の多いゼウスが討たれる可能性がある一瞬。
しかし自分の技ゆえ、その弱点も分かりきっているゼウスは、万が一の不意打ちを警戒しての防護魔力を全身に張り巡らせておく。これで、もし護堂が生き残っていたとしても、その身体に反撃の刃が届くことはまずない。
だが結局、己の完全な勝利を頭に描いたゼウスの前に、護堂は現れなかった。
それもそのはず、『神罰』の巨大な影と眩い光に紛れて辛くも回避した護堂は、そのまま深い林の奥に身を隠して、『闇』で自身の権能と魔力を覆っていたのだ。
他と比べて大した権能攻撃も持たず、技も智慧も武器もない彼は、カンピオーネとしてのリソースを全て冷静さに注ぎ込んでいた。
だから戦いに身を投じたこともない彼がゼウスの雷を避けられたし、ゼウスの『神罰』を引き出した上でこうして状況を立て直すきっかけを作れているのだ。
とはいえ、ここからどうすればまつろわぬゼウスを退けられるかは、未だ考えついていない。とにかく今は逃げ回って不意打ちのチャンスを伺うくらいしかできないが、ずっと受け身に回るというのも彼の性格的にあまり好ましい方法では無かった。護堂は、ない知識を絞り出すように悩む。
「あら、まだ逃げ続けるというの?」
「ああ、今のところ特に打開策も思い浮かばないしな………」
「あんなむさいじじいから逃げ回るなんて、そんなのご主人様らしくないわ」
「それはそうだけど………ところで、お前は追い詰められた俺の幻覚か何かでいいのか?」
「あら、そう思う?」
護堂が自分の斜め後ろに視線をやると、そこには、紫色の髪に紫色の瞳、そして蠱惑的な肢体をもった女性が自身の背中に寄りかかっていた。
その女性の見た目は、彼にとって懐かしいもの。彼の筆下ろしの相手であり、彼がかつて殺したまつろわぬ神──女神イシュタルそのものだった。
「ちゃんとした実体よ。いつでもご主人様のおちんぽを咥えられるわ」
そう言って彼女は、艶めかしく動く舌を出して護堂の首筋に浮かぶ汗を舐め取る。
「………まあ、それは信じても良いけどさ、なんだってこんなとこにいるんだ?お前は、あれだろ。よくわかんないけど、俺が殺したってことになるんだろ?」
そんな彼女に、護堂はそう問いかける。魔術界隈とは全くと言って良いほど関係を持たず、カンピオーネという存在すら知らない彼だが、アストラル界でのパンドラのセックスと同時進行の説明によって、ぼんやり程度は自身のことについて理解していた。
そのため、ここにイシュタルが居るとは考えにくかったが、その理由は彼女によって明かされる。
「ご主人様のおちんぽが恋しくて、現界してきたのよっ♪」
「………なるほど」
要するに、あの夜護堂がイシュタルとのセックスに勝って権能を手に入れた時点では、まだ彼女の抜け殻のようなものは残っており、それによって、ただの女としてのイシュタルがまるで『鋼』に対する『蛇』のように隷属するという形で、彼の中に組み込まれたということらしい。
「で、なんでこのタイミングで出てきたんだ?まさかここでセックスするってわけでもないだろ」
「ふふ、それはね、ご主人様に勝って貰うためなの」
「………なんだって?」
護堂は耳を疑う。今の話を聞く限りでは、イシュタルに戦う力などない。とすれば、策でも授けるのか。
「さあ、ご主人様。耳を貸してちょうだい────」
※ ※ ※
イシュタルから話を聞いた護堂は、『闇』を解き、再び堂々とゼウスの前に立った。
「どこへ逃げていたのかと思えば、よもや我が妻と似た様な力を持っているとはな」
「ちょいと、作戦を立ててたんだよ」
護堂がイシュタルから言われたことは、思い切り怒れ、というものだけだった。
彼はあまりにも単純な助言を怪訝に思うが、現状それに縋るしかない。
決心し、冷静さを全て捨て去った護堂は、腹の底に怒りを溜め始める。
──このままご主人様があのじじいを倒せなければ、私も、街にいるご主人様の愛人も犯されてしまうかもしれないわ──。
それは、イシュタルの口から発せられたもう一つの助言。神話内でのゼウスを表した、的確な予想だった。
その言葉を頭の中で思い浮かべるだけで、彼の内は怒りで溢れる。
その怒りはエネルギーとして臍下丹田で魔力と交わり合い、全身に行き渡る。
そして、それが自分でもわかるほど、最高潮に達した時だった。彼の口が、暴れ狂う怒りが漏れ出すように、
「──天に座す創造の父よ、面前の下郎に裁きを。我が怒りを、妬みを、恨みを糧に、我は天より遣わす。我を害するもの全てを粉砕せよ──
その言霊が全て彼の口から吐き出された、その時──ゼウスの権能によって雨雲に覆い尽くされていた空に、亀裂が入る。
そしてその隙間から、一筋の光明と共に、巨大な雄牛が顕れた。
その巨大さは、ゼウスの『神罰』が霞んで見えるほどで、纏う威光も彼の神の眼を見開かせるほどのものだった。
雄牛の正体は、メソポタミア文明の『ギルガメシュ叙事詩』において、英雄ギルガメシュに誘いを断られその上侮辱されたイシュタルが、父である天空神エアに頼んでギルガメシュを殺すために彼に差し向けた神獣だ。叙事詩内ではギルガメシュとその友エルキドゥに殺されはしたが、創造神のペットだけあってその力は絶大。さらに、使役者である護堂の怒りが増せば増すほど力も大きくなっていく。
──これが、草薙護堂とイシュタルの切り札である。
「eaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
天の雄牛は叫ぶ。
「なるほど、天空の神獣か………これは面白い」
ゼウスはそう言い放ち、手に数本の雷の槍を生み出す。そして、それをまとめて天の雄牛へと投げた。
その全てが雄牛にぶつかるが、その巨体には傷一つ付かない。
今度は、頭部を一度二度振った雄牛が一直線にゼウスへと駆ける。
「──フンッ!」
「gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
それをゼウスは真正面から受け止め、百倍以上ある体格差の雄牛を両腕で止めきった。
ゼウスの体からは筋肉が隆起し、ただでさえ大きい人影がさらに膨れ上がる。
そして驚くべきことに、徐々に、僅かずつだけだが、ゼウスが雄牛を押し返し始めたのだ。
「ふ………見たところ、此奴は天空神に連なる存在。なれば、我が御せないはずもない」
戦いの爆心地から少し離れたところで雄牛に魔力を送る護堂にも、その言葉は届く。
しかし、不利だという理由だけで今更下がるわけにはいかない。護堂はそのゼウスの発言すら怒りに変え、雄牛に注ぎ込んだ。それに、雄牛もそう単純な存在ではない。
「gaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
「ぐっ!?」
一息溜めた雄牛がさらなる怪力を発揮し、ゼウスを押し込んだ。
──確かに雄牛は、アッカド、シュメールの天空神エアに飼われる神獣であるが、その主エアは、天空神であると同時に創造神でもある。バビロニアの天地創造神話『エヌマ・エリシュ』によれば、司るものは天空や星。つまりエアは、天空を牛耳るだけでなく、その上の星々や世界さえも創造した存在なのだ。しかしゼウスは、その父クロノスから世界を奪って最高神になったものの、天地創造の逸話はない。
それが意味することはすなわち、同じ天空神であっても、ゼウスとエアでは権能の幅に大きな差があるということだ。
それ故、ゼウスがエアの神獣である天の雄牛を御しきれるというのは、早計にも甚だしい。
ゼウスは想定外の拮抗にそのことをやや感づいてはいるが、だからといって状況が変わるわけではない。制御できないのであれば、初心に返って力で勝てば良いだけ。
しかし対する護堂と雄牛も、力比べならば負けるわけにはいかない。これが護堂唯一の攻撃方法なのだから。
この単純にして原点の勝負。それがまさに、この一人と一柱の勝敗を握るものだった。
「おおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」
「ぬうううううううううううううッッ!!!」
両者、どちらも相手を征するために全身の魔力を己のただ一つの武器に注ぎ込む。
神と神殺しの全力がぶつかり合うことにより、彼らのいる丘はもはや原型を留めないほどに朽ちてゆく。岩は蒸発し、木々は枯れ、まさに嵐の中心地の様相を成していた。
拮抗、とはいっても、やはり分はまつろわぬ神であるゼウスにある。根本的に神を一柱しか殺していない護堂では、魔力の総量に大きな差があったのだ。このままでは、近いうちに限界が来るだろう。
「これは、やりたくなかったんだけどな………」
そのことを自覚していた護堂は、そう呟いて、先ほど思いついた
残った魔力を全て丹田に送り込み、それを違う性質を持つものに練り上げる。
そして暫く練り続けると──彼の男性器が、急な勃起を見せる。しかしそれは一瞬の出来事で、いきり立った陰茎は瞬く間にしぼんでしまった。
だが同時に、それと反するように、彼の持つ魔力量が格段に跳ね上がる。
「進め、天の雄牛!」
それによって雄牛に更なる魔力が注ぎ込まれ、ゼウスとの拮抗を僅かばかりだが崩した。
──護堂は何をしたのか。それは、彼がイシュタルを殺したときと、全く真逆のことだった。
彼は魔力の質を自身の持つ最大の力──精力に近しいものに変え、精力を魔力に取り込み、変質。つまり、己の莫大な精力を魔力に変えたのだ。魔力を精力に変えられるのであれば、精力もまた、魔力に変えられるのは当然の事である。
これをしてしまえば、向こう二日ほどは勃起不全になってしまうため、できることなら取りたくなかった手段。しかし背に腹は代えられぬ、と護堂はしぶしぶこれを行ったのだ。
しかし、その分効果は絶大。彼の有り余る精力は今まで使用した魔力を全て補い、更に元々の総量を遥かに超えた。それは疲労しているとはいえ今のゼウスの魔力量とほぼ同じであった。
その上で、護堂は更に動く。魔力が増えたとはいえ、未だ拮抗の状態から抜けられていない。このままでは、ただ流れに身を任せるだけで先は見えないのだ。
ゼウスの力が届かない雄牛の真下から移動し、そばに転がる魔術師が持っていた幅広の大剣を手に取る。
そして雄牛の死角になるようにゼウス近づいていった護堂は、大剣の柄を思い切り握り、上段から振り下ろした。
だが──
「見えているぞ、神殺しよっ!」
「くっ!?」
人間であれば、完全に見えるはずのない位置から奇襲を仕掛けた護堂に、ゼウスの雷が襲う。
雄牛との力比べに全力を注いでいるとはいえ、天空神である彼は千里眼も持っている。後ろから向かってくる護堂の素人奇襲など、お見通しだったのだ。
背中から放たれた雷に吹き飛ばされて抉れ出した岩盤に叩きつけられた護堂はしかし、不敵に口を開く。
「──前、もっと注意しとけよ」
護堂の魔力を注がれた雄牛が、雷を放ったばかりのゼウスを押し潰さんと力を強めた。
一瞬の隙を突かれる形になったゼウスは、ややのけぞる──が、
「この程度、笑わせるなッ!」
すぐに彼は体勢を立て直す。護堂に少しでも気をやったとはいえ、それだけで崩される神王ではない。
だが、彼自身もこのままでは膠着が続くことは分かっていた。そこで、彼は雄牛を抑える腕に雷を纏わせる。どちらも全力の同時行使はさしもの彼であっても負担はかかったが、できないこともない。
雄牛を消せば、残るは傷を負わせた護堂一人。ゼウスは、ここで終わらせる、と言わんばかりに纏う雷の量を徐々に増やしてゆく。
それは時間を重ねるごとに膨れ上がっていき、ついには『神罰』と同程度の規模の雷光が腕を覆う。
その姿はまさに、自分以外の全てを等しく貫く『裁きの雷槍』。
ゼウスの半身が弓のようにしなり、己に仇なす雄牛を撃滅せんとしていた、まさにその時──雄牛の姿が、忽然と消え去った。
「なにぃっ………!?」
驚愕するゼウス。そして、気付く。自分が『裁きの雷槍』制作に
実は、護堂はゼウスに奇襲を見抜かれたとき、攻撃する気など全くなかった。
では、ゼウスの気を逸らして雄牛の怪力で押し切るつもりだったのか。それも違う。
彼は元より雄牛でゼウスを打ち破るつもりはなく、自分の手で止めをさすつもりだったのだ。
雄牛に隠れた奇襲に見せかけ、雄牛の手助けをする。しかしその実、雷を喰らった瞬間魔力を全て防御に回し、ダメージを著しく軽減。そして雄牛を倒すために必殺の一撃を造り上げるゼウスの背後で動かず待ち、大技を放ったその隙に、雄牛を消してその分の魔力を己の一撃に注ぎ込む。そういう計画だったのだ。
ゼウスは戦慄する。己の防護魔力を突き破る一撃に、己を結果的に上回った謀略に、己を今まさに討ち取らんとする、草薙護堂という一人の神殺しに。
──一直線に振り下ろされた大剣は、ついに、天空の王に『死』を与えた。
※ ※ ※
【賢人議会によるレポートの一部】
この度ギリシャの地で、新たな神殺しの存在が確認された。名は草薙護堂。東洋人の少年で、かつてイラクで起こった『まつろわぬ神消失事件』の当事者も彼だと思われる。彼に接触した赤銅黒十字のエリカ・ブランデッリによると、彼の権能はメソポタミアの女神イシュタルのものと、今回討ち取ったギリシャの天空神ゼウスのものの二つだと推測されるという。更に彼女はすでに草薙護堂の愛人の一人であると明言しており、その関係は深いものと思われる。そして今回、草薙護堂の初戦であるイシュタルとの戦いとは打って変わって、建物や土地を激しく損壊する戦闘をしており、これが自分の愛人を護るための戦いでもあったというところから、彼の機嫌を損ねなければ、過度の女性好きというところを含めても他の神殺しよりも幾分かまともな人物であると思われる。すでに親密な関係を築いているであろう赤銅黒十字に遅れを取らぬよう、我々も彼の審美眼に適う女性を即急に彼の元に送らねばならない。
けんのーしょーかい〜
『剛雷の一撃(意味深)』
ギリシャ神話の最高神にして天空神であるゼウスから奪った権能。神話最大のレイプ魔。以下略。
能力の詳細は下記。
なんかちょっと魔力が増える。(おまけ)
なんかちょっと力が強くなる。(おまけ)
なんかちょっと雷が出せるようになる。(おまけ)
女性相手のレイプが確実に成功するようになる。(重要)
レイプした女性の力の一部に枷をつけることができるようになる。(重要)
女性の避妊を任意で行えるようになる。(重要)
※人間相手であればどんな魔術師や武の達人であっても100%性交(誤字にあらず)。
※女神や女性カンピオーネ相手でも理屈なしに性交率(誤字にあらず)が上がる。
※ギリシャ神群の女神であれば、性交率(誤字にあらず)がかなり上がり、隷属率も上がる。
はい、もう疲れました(白目)
相手の力の一部に枷をつけるというのは、レイプ時に相手を孕ませる=不自由な体にする、というところから出来たものです。もちろんそれで妊娠ということにはなりません。
ちなみに、まどマギの二次創作も書きたくなってしまった今日のこの頃。書いても大丈夫かな………かなりきつくなるけど。
それでは、また〜。