※この作品はR-18です。

刻の愛人   作:ぶらぶら・カーン

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プロローグ~無名の仙女もしくは小西娘~

中国神話に西王母(さいおうぼ)なる仙女がいるのはご存知であろうか?

神話において彼女には七仙女(しちせんじょ)と呼ばれる7人の娘がいたとされて

いるが、神仙の闊歩する神話の時代も終わりを告げ、仙人達のそのほとんどが崑崙に引きこもった後、生まれてきた8人目の娘がいた。

 

それゆえ彼女の存在は人界ではあまり知られることはなかった。

 

姉たちが色にちなんだ名をつけられたように彼女にも色にまつわる「虹色仙女」の名を与えられた。

 

 虹色仙女は母に負けぬ仙力を持ち、生後わずか20年で高度な仙術の数々を体得し、たちまち老練な仙人たちすら苦戦するほどの力を持ってしまった。

またその美しい容姿に巨乳。その悩ましいボディに虹色の戦鎧を纏う姿は神々しく若い仙人や道士たちの取り巻きがつくのに時間はかからなかった。

 

 生まれながらの仙人である彼女は自分が崑崙においても特別な存在だと認識しており、他の姉達は武に疎い者達だったこともあり、率先して戦う術を磨いていった。そしていつしかその武力は齢50を数えるころには崑崙の5指に収まるほどの実力を身につけていた。

 そして驕りに驕った彼女はある日勝手に崑崙を抜け出し、人の世界に残っていた強力な邪神の一人を倒してしまう。

基本的に仙人の世界において訳無く生き物を殺めるのはタブーであったが、相手は災いをなす邪神だったこともあり、崑崙内の戦をしらぬ若い仙人や彼女の取り巻きの道士は大いに沸きたち、彼女の真似事をするものが増えていった・・・

 

便乗する者達に狩られるのが邪神だけならばよかったが犠牲になったものたちには知性の低い土地神や下級の龍神たちも含まれ、崑崙の外の神々や龍神達から抗議が殺到し、

これ以上の被害は新たな神仙の争いの火種を生み出さんとしていた・・・

 

 事態を重く見た崑崙の重鎮たちは西王母との協議の結果、虹色仙女を仙人目録より、その真名を除名し崑崙から追放、彼女に便乗した者達は崑崙最下層にて再教育という当然といえば当然の処置が施された。

 

仙人にとって真名を失うというのは大きな痛手でそれだけで仙力は半減してしまう。

 

 これで彼女も反省し大人しくなるだろうし、その名を除名することにより崑崙と無関係の存在だと主張することもできる。崑崙の重鎮たちはそう目論んでいた。

 

 が、彼女は元々西王母に匹敵する仙力の持ち主、半減したところで国滅ぼしを行える邪神や大妖怪すらものとしない力を持っていた。

 追放されたことで荒れた彼女は憂さ晴らしに中国全土にのこる大妖や邪神を片っ端から捻り潰していき現代における中国の怪異の数を圧倒的に減らす要因となってしまった。

 まったく妖怪たちにとってとんだとばっちりである。

 

しかし、基本的に人の易となること行っていたこともあり、いつしか人間たちは敬意をもって彼女の母の名「西王母」にちなんで「小西娘(シャオシーニャン)」と呼び始めていた。(本章では彼女を以後"小西娘"と呼称する)

 

 そんな生活を数百年ほど続けある日、あることがきっかけで、パタリと小西娘は大人しくなる。今までの彼女は人間にたとえれば"反抗期"なだけだったのである。棘が落ちて丸くなってから冷静に自分のやったことが如何にまずい事か、また親から勘当されたことが身にしみてイタくなり更に崑崙も恋しくなり~つまりホームシックが半端なくなってきたのである。

 

 反抗期だったとはいえ盗んだバイクで走り出す程度ならともかくいきなり暴力団事務所に乗り込み若頭のタマを取ってくるような事をしたのである。下手すれば大陸規模の仁義無き戦いが起こるような火種をばらまいたのだ。そんな大事を崑崙の重鎮や母がなんとか丸く治めたのである。

 菓子折り持って崑崙に謝りにいったところで許しては貰えまい。

 

 そこで彼女が見出したのお詫びの方法。そう、人の世界に残る邪仙の持つ宝貝(パオペイ)や神器の回収そして邪仙の駆除。

 

 かつて自分よりも大事を起こした仙人もこれで許してもらった前例がある・・・小西娘は「これならいける!」と希望を見出すのであった。

 

 ・・・このへんの発想は中学生時代の反抗期で非行に走っていた小娘が、進学して大学受験を控えいきなり襟を正す高校生の精神状態に近いと言える。

 

 最初の1年ほどは邪仙や邪神を見つけては⇒「殺してでも奪い取る」スタイルで宝貝集めを行っていたが、当たり前な話し噂はすぐ広まり即効でターゲットたちは中国全土の秘境に隠れ潜んでしまう。

 

 次の10年は「だいーじょーぶ!大人しく宝貝わたしたら殺さないから~」と叫びながらターゲットがいるであろう土地をケチャップの丘にする作業を行いそこそこの回収に成功するが地元の神様や龍神から苦情が来たので自粛する。その噂はまたまた広まりターゲットたちは完全に人間社会に潜ってしまった。

 

 この辺でさすがに学習した小西娘は派手なことを自粛し人間社会に紛れ込み地味に邪仙を追い詰めるよう努力しはじめた。

 

 小西娘は「見つけたら100%SATSUGAI鬼ごっこ」を馬鹿でかい中国大陸でおッ始めたのである。当然邪仙たちは命がけで隠れたためなかなか成果は出なかった。

 

そんなこんだでさらに時が流れた。

 

 人々から小西娘の名おろか神仙の類の記憶がほぼ風化した時代~宋代~

 

  広州の港町にある小さな屋敷前に袖の長いチャイナ服を纏った上に箪笥のような薬箱を背負った美しい女が一人、小西娘である。

 

「ここがきな臭い風水師の屋敷アルねぇ~」

 

 彼女はここ最近知り合った宋の武官から調査協力要請を受けていた。

 

「実はこの所、宦官の中に急に頭角を現し始めたものがいる。そいつの名は"紫章"というんだが、どういう手段を使ったかは知らないが彼の所有していた二束三文の荒地が急に豊かになり税収があがったり、それまで対立していた他の宦官たちもある日を境にみな幽鬼のような瞳で紫章につき従うようになった。

それもこれもヤツの下に奇妙な風水師がついてからのようだ、こやつはひょっとして君の探している邪仙ではないのか?」

 

おおよそそんなような話である。情報を得た小西娘は豊かになった土地を訪れ調べた結果、龍脈が弄られた形跡を発見した。おそらく気脈を操作する類の宝貝を使用したものと確信を得てその風水師のいる屋敷を訪れたのであった。

 

「さて逃がさないようぅにぃ!ア~るアル!アルアルアル!」

 

 小西娘の両袖からどこからとも無く湧き出た札が天を舞い屋敷全体を半球状に瞬くまに覆ってしまう

「さて、これでだーれも逃げれない~アル!」そう叫びながら片手に銭剣を携え

屋敷に堂々と入って行った。

 

  時を同じくして館に一人住まう貧相な小男、邪仙"商角"は震え上がっていた。館を覆う強力な護符、そう「ヤツ」がここに来てしまったのである。天敵「小西娘」が・・・

遠くでがつがつと壁を引っかくような音が聞こえてきた・・・

 

---小西娘がわざとらしく銭剣で壁を引っかきながら移動しているのである

時折「この部屋にもいないアル~」と言う声が聞こえ徐々に商角の隠れる部屋に近づいている。

 

 逃げ場がないので咄嗟に布で覆われたテーブルの下に隠れた商角は心臓が止まりそうだった。

彼女の行動はまるでスプラッタホラーの殺人鬼が部屋を物色するようなノリである。

 そんな状況の中、商角は小西娘の恐ろしさを思いだしていた・・・

 

---邪仙商角は、「角一派」と呼ばれる邪仙集団の一員であった彼らを束ねるのは彼らの師 「僥角」 彼は神仙戦争を生き抜いた歴戦の猛者でもあり、他の邪仙からも恐れられるほどの仙人であった。

 

 つまり、邪仙業界の有名人だったのだが、それが災いし小西娘の宝貝狩の最初の犠牲者となった。

 

 通常仙人は肉体を滅ぼされても魂を封印されぬ限り時を重ねれば転生し蘇生できる。並の仙人ならば転生までに200~300年ほどかかるのだが、腐っても歴戦の仙人だった僥角は僅か5年で転生をなしとげた。

 師の転生を星占で察知した角一派は中国全土を走り回りついに僥角を発見した。

 

が、------なぜか、人でなくシャコ貝に転生していた。

 

余りに意味不明なその転生先に戸惑う弟子たちは盛んに僥角に語りかけるも返ってくる言葉は

「ワタシハカイニナリタイ・・・」だけだった。

 

 会話のキャッチボールがまともに出来ないのでやむなく弟子の一人が記憶を覗き込む宝貝を使い僥角の心を覗き込んだ・・・・・

「うぎゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 奇声を上げ卒倒する弟子、他の兄弟弟子たちはその意図が読めずその宝貝を借りて次々記憶覗き込んでいく。そして僥角がどのような責め苦を受けて殺されたかを知ってしまったのである。

 記憶の内容を要約すれば--殺めても器用に魂を封印でもしない限り復活してくる仙人からの復讐や情報漏洩防止のため小西娘は徹底的に心を折るわ人の尊厳を踏みにじるわの地獄の拷問メニューをかまし、人格崩壊を起こすまで弄んでいたのだ。

 しかも、僥角はその拷問のさなか角一派の構成メンバーの名前も洗いざらい吐いていた場面まであった。そして薄れ行く意識の中、僥角の最後に見た光景は、素敵な笑顔の小西娘が巻物にしたためた角一派の名簿を見せ付けつつ

「次はお前のお弟子さんと遊ぶ番アルww」

そんなメッセージを聞かせた後、面白おかしくトドメをさすと言う、邪仙でも邪神でもしないような鬼の所業で殺められていたのである。

 

 記憶を覗き震え上がった角一派の弟子たちはみなばらばらに隠れはじめたが、時を経るにつれ一人、またひとりとその数を減らしていった・・・・

 

  商角の知る限り小西娘に殺められた邪仙の転生先はウミウシやらヒトデやらなにやらよくわかんない海の生き物に転生してしまっていた。

 

 そんな小西娘から逃れるために人の世界にまぎれ隠れ生きていたのだがここ200年小西娘の噂はぱったり消え、崑崙に帰ったとの噂が流れてきたのである(もっともこれは小西娘が流した嘘の噂なのだが。)そろそろ、長年の隠遁生活から開放されたくなった彼はあるツテで紫章の下についたのだが・・・・

 

 ガガガガ!!

 

 近くでまた壁を引っかく音が聞こえてきた!

 ビクつく商角

そしてついに小西娘は商角のいる部屋を覗き込む

 

「この部屋にもいないアル~かぁ」

 

不服そうな声が聞こえ隣の部屋に移動して行ったそして暫くしてから

「あー不在あるかぁ仕方ない今日は出直すアルかぁ~」と言う声が聞こえ

壁を引っかく音が遠のいて行った

暫くして商角はちらりとテーブルの下から外を覗いた外の景色が見える・・・

先ほどまで屋敷の周りを囲っていた護符は消えていた。

助かった!助かったのだ!商角は一息ついた。それと同時に"早くこの場所から離れなければ!"と強い強迫観念に駆られテーブルの下から這い出し四つんばいのまま

部屋の出口に向かっていった・・・・

 

「みぃ~つけたぁ~~WWWWアル!」

 

背後から女の声・・・・氷つく商角、恐る恐る背後を振り返った

 

 先ほどまで自分の隠れていたテーブルの上にあぐらをかいて座る女・・・

 

「ゲェーーーーッ!!小西娘!」誰得おっさん失禁をかまし腰を抜かす商角

 

 それを一瞥しゆったりとテーブルから降りた小西娘は背中に背負っていた薬箱を机におく。そして鼻歌交じりに中から何か取り出し始めていた。

ド○えもんの四次元ポケットよろしく明らかに不釣合いなサイズの荷物を箱から丁寧に引っ張り出し机に並べていく。その様だけ見れば美しい新妻が食卓に料理の乗った皿を並べてそうな雰囲気だが、残念ながら机に並べられているのはなんかスンゴイ拷問器具の数々だった・・・

 

もはや恐怖のあまり動くこともままならない商角に小西娘は背中を向けながら語りかける。

「宝貝渡すから見逃してください、改心するので許してくださいそれらはまず受け付けないアル。」

 

なんか棘のつきまわったハサミのような器具をカチカチさせながら彼女は続けた

 

「この仕事は邪仙を完全駆除するのも功徳の一つアルつまりお前には死ぬ以外選択肢は無いアルwww」

 

 ひとしきり拷問器具を丁寧にテーブルに並べた後、巻物を薬箱から取り出し振り向き商角の目の前で開いてみせる。

「う~ん!角一派はお前を含め後2人で全滅アルwww残り一人の居場所を吐いてから死んでもらうアル!」

 

 それは角一派の名簿だった・・いや、他の派閥のメンバーの名前もある!そしてここ数百年会っていない兄弟弟子達の名前に×印と日付があった・・・印角、牟角・・・皆その名前に角の字が入っているのが特徴だ。そして共に苦しい修行を行い仙人となった仲間たちの名前だ・・・・まぁ後で邪仙に堕ちたんだけど。

 

「探すのに手間取らせてくれた分たっぷりもてあそんでから駆除してやるアルそう言えば2年前駆除した葉角とかって邪仙は遊んでいる最中、他の仲間の名前を叫んでいたアルなぁ~」

 

葉角・・・ああ、あの泣き虫の弟弟子か・・・惨いことを・・・(残念ながらそいつのビジュアルは微笑みデブそっくりなのだが)

・・・・・それまで恐怖で氷りついたたはずの商角に何かがたぎってきた・・・・

 

 それまで怯えるモブ顔だった彼の表情が突然キリリと引き締まった。

 

「ふざけるな・・・」

 泣きながらつぶやき始める商角・・・そしてついに心の中の何かが爆発した彼は泣き叫びながらながら小西娘に拳を振り上げた

 

「おまえそれでも人間かっ!てめえの血の色はナニっ・・・ヘブッ!!!」

 

 拳が届くよりも早く小西娘は商角の眉間にデコピンをかましていた。

たったそれだけの攻撃なのに商角は部屋をつき抜け屋敷の中庭までぶっ飛ばされ、塀に激突した。

 

 朦朧とする意識の中、商角は心の中で反芻していた

"駄目だ。こいつには勝てない。弟子総がかりでも歯が立たなかった師、僥角をこいつは猫が鼠をいたぶる様に嬲り殺すほどの存在"自分の力ではこいつに勝てない”

ん?"自分の力では勝てない?"だと?

 その単語に引っかかったとき彼の瞳に光と勇気が宿った。

 

 一方商角を弾き飛ばした小西娘は彼の元にゆっくり近づきながら語りかけた

「人間?残念アル私は生まれながらの仙女アル。貴様ら下等仙人とはモノが根本的に違うアル!ニャ~ハハハハ!」

 

 彼女の一連の鬼畜トークは敵の怒りと反撃をわざと誘うものであった。そうやって反撃してきた相手の戦意をさっきのように少しずつ削り取っていく・・・彼女のいつものやり方であった。だが、今回は少し様相が違っているようだ・・・

 

 ゆらりと立ち上がった商角は小西娘を睨み付けた。

 

 先ほどの挑発以降 商角の目つきが変わっていたのだ。どこかで見たことのある~

そう!昔倒した邪神のような凄みのある瞳。

 

小西娘は歩みを止めてしまった。

 

「人をなめるな!生まれながらの仙人だったお前に我らの気持ちがわかるまい!」

 

 そう叫んだと同時に商角は懐から千枚通しのようなもを取り出し自らの左腕に突き刺した!

 

「宝貝、気整針(チーヂォンヂェン)!!暴気体!」

 

 突然商角の肉体が膨張する!

 彼の所有する宝貝、気整針の正体はありとあらゆる気脈を思いのままに編集する能力を有する宝貝である。紫章の土地を豊かにしたのもこの宝貝の能力によるもの、当たり前な話これは元来武器ではないのだが・・・

 

「上位宝貝 気整針の使い手であったか・・・まさか自らの肉体に使い仙力を限界まで膨張させるとは恐れ入る。よかろう。ここからは武人として相手つかまする!」

 先ほどまでのふざけた態度が何かの間違いだったように小西娘の態度はガラリと変わり口調もかわった。彼女は気がついたのだ。彼の行った行動の意味・・・

 

 無理に膨張させた仙力は彼の肉体を崩壊させその際に発生する仙力爆発は彼の魂すら崩壊させかねない。つまり完全なる死を前提とした捨て身の反撃なのだ・・・

 

もっとも商角が仙力を増幅したところでなお、戦力は小西娘の10分の1がいいところなのだが、これに応えないのは失礼に値すると彼女は思ったのだ。

 

「礼節など不要!我ら角一派の怒りおもいしれい!」

 

商角は腕に刺さった気整針を引き抜き足元にたたきつけた後、恐ろしい形相でにらみつけた・・・

 小西娘はその気迫ある目に一瞬ひるんでしまった。

 

 次の瞬間拳をふり上げながら恐るべきスピードで飛びかかる商角!しかしそれを凌駕するスピードで彼の懐にもぐりこんだ小西娘は手にしていた銭剣を突き出していた

 

-----"一閃"---------

 

 銭剣は商角の胸を貫いていた・・・・勝負はあったか?ぐったりした商角を目の前に安心した小西娘は太ももに痛みを感じた。視線を這わした先には気整針が刺さっていた!

「なんだと・・・??」

小西娘は商角の目に気を奪われすぎていた・・・商角は足元に落としたはずの気整針を足の指で引き抜きそのまま掴んで飛び掛っていた そして、銭剣で貫かれ動きを止めた一瞬を利用して小西娘の太ももに気整針を突き刺したのだ。

読んで字のごとく「窮鼠猫を噛む」であった。

 

 "まずい!"すぐに商角を放り投げ気整針を抜き捨てたが時遅く、彼女は体が燃えるような感覚を覚えた。

 

 先ほど商角が自らに使った仙力の過剰増幅はあくまで囮、真の目的は小西娘に気整針を使い同じく仙力の過剰増幅を引き起こさせるのが目的だったのだ!

このままでは自身の仙力暴走で消し飛んでしまう!咄嗟に印を結び始める小西娘

助かる方法はあるのだ!この膨張した仙力を一度空になるまで外に放出すれば暴走を防げる!

 印を結び終えた彼女は両手を天に向かって広げた「仙霊雷々!」次の瞬間、雷光のような閃光が天に向かって放たれる!

仙霊雷々は仙人の初歩的な術の一つである単純に己の仙力を別のエネルギーに変換して放射するものだが、類似の術が数多く存在する中でも一番燃費が悪く仙力を激しく使ってしまうのがこの術だ。一分一秒でも仙力を使い切りたい彼女としては最適な答えであった。

 恐るべき雷光が空を白く染める中、雷を放ち始めて20秒ほど経ったであろうか、あと3秒もあれば暴発前にすべて仙力を使いきれる!そう思った次の瞬間・・・今度は左肩に激痛が走った

 

 目を這わすと息も絶え絶えの商角が気整針を突き刺していたのだ・・・

「うまくいったな・・これで貴様を倒せるとは思えんがもう一押しさせてもらう!宝貝、気整針!!渡気体!」

次の瞬間、商角の暴発寸前の仙力は気整針を通じて小西娘に流し込まれた!

 

「あがああああああ!」

 

 咄嗟に術を解除し、商角に蹴りを叩き込みはじき飛ばす。

 

 増幅された仙力の影響か彼女の力は異常なほどあがっていたため商角の胴体は弾け飛んでいしまいそのまま彼の上半身は屋敷の屋根の上まで打ち上げられた。

 

 もはや仙人とはいえ死ぬレベルまで体を破壊しつくされていた商角だったが頭はすっきりしていた。

 ①あの最強と謳われる傲慢な仙女に一泡吹かせたことへの満足感、

 ②当初増幅した仙力で自身の魂が破壊される恐れがあったがさっき小西娘に全仙力流し込んだためその心配は無くなった。つまり安心して転生できる。

 ③死の間際に飛ばされた位置がよかった

そう、偶然とはいえここに飛ばされたのは運がよかった!

 

 商角は最後の力を振り絞り屋根の上にある雀の絵が刻まれた瓦に触れた。すると瓦から雀が出てきたではないか!それを握り締めた商角はつぶやく

「ここであったことを兄弟子様に伝えるのだ!ゆけい!」

 手を開き飛び立つ雀を見ながら商角は呟く

「高角兄ぃ!後は頼みましたぞ!」

 そう叫んだあと彼は事を成し遂げたイイ男な表情を見せた後

(事情を知らないやつが見れば少年漫画でかっこよく死ぬ脇役みたいな面構えに見える顔だった。)

 そして安らかに目を閉じ塩の塊のようになり崩れ去った・・・・

 

 一方、小西娘はあせっていた。最後に商角から流された仙力の影響で体内の仙力の操作がまともに出来なくなっていたのだ。仙霊雷々すら上手く放てなくなっている!

このままでは爆散してしまう!その時肩に刺さったままの気整針に目がいく。

使い方は詳しくはわからぬが先ほどこれを介して自身に仙力を流し込まれた。つまりこれを使って別の何かに自身の仙力を移すことが出来るのでは??

 

 そう思いついたとき庭に視線を這わせる小西娘「あった!」それは桃の木であった。仙人の住む住まいには必ずといっていいほどある重要な必需品、仙術の材料に使われたり仙力を流し込み仙桃を生み出すのにも使える。

 要するに桃は仙力を効率よく吸収し溜めれるバッテリーのような物なのだ。

 

急がなくては!

 

 先ほど商角に気整針で仙力を流し込まれた時は一瞬で流しこまれた。同じく気整針を用いれば一瞬で仙力を桃の木に流し込めるはず!

 

「ええっと確か~宝貝、気整針!!渡気体!」

 

肩の気整針を引き抜き桃の木に躊躇なく突き刺す!次の瞬間、小西娘は体の仙力が抜けきった感覚を感じた

「ま、間に合ったアル・・・」

 助かった!そう安堵した瞬間

目の前の桃の木が一瞬で膨張し破裂した!

 付近に響き渡る轟音と閃光!

その様は港町付近の海上からも目視できた・・・・

 

------------------とある商船の上より-------------------

腰には日本刀をぶら下げ、髭を生やし乱雑に髪を縛った男が口をひらく。

「オイオイオイ!なんだ?ありゃ?広州じゃなにがおこってるんだ?さっきから雷やら爆音やら?-----戦か?祭りか?」

隣には女のように整った顔立ちの白髪の少年が同じ方向を見ながら答える

「黒則(くろのり)様、僕に聞かないでくださいよ!広州は初めてじゃないんでしょ!」

むすっと髭面の男は答える。

「雪矢!そのみっともない呼び方やめい!"くろの"と呼べといっとるだろ!」

男の名は"横八 黒則"この時まさか事の張本人と長い付き合いになるとは思いもしなかっただろう・・・・・・・・そう彼以外の"クロノ"を含めて・・・

------------------------------------------------------------

 

 そして当の爆発の爆心地にて・・・

・・・・・・・・・・まだ爆発による粉塵が漂う中

小西娘は目を覚した。そして朦朧とした意識の中状況把握を始めた

・・・手は動く

・・・・・・・足も動く

・・・・・・・・・四方を見回す・・・

意外だが屋敷のほうにはほとんどダメージが行ってない

爆発したと感じた桃の木は真上にぶっ飛んでいったのであろうか?

まぁいずれにしろ思ったほどひどい被害ではない。

立ち上がってみた。衣服が剥げ落ちる感覚・・・さっきの爆風で衣服が破れたのか?

そう思い胸に手を当ててみた??あれ?ない??乳房がない???

まさかさっきの爆風で捥げでもしたのか??あせって胸に目をやる

・・・ああよかったちゃんと乳首がある。・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・ん?

 

 おかしい?おかしい!胸が薄い。後なんか視界が低い?

 

 思い立った彼女は商角の屋敷の中に飛び込んで鏡を探し出し己の姿を覗いてみた

そこには煤だらけの小柄な少女が映っていた。

 

 思わず手にした鏡を落とした彼女は叫んだ!

 

「何じゃこりゃあああああああああああああ!!!!!!!----アルッ!」

 

プロローグ~無名の仙女もしくは小西娘~-完-

 




-----------次回予告-----------------------------------------------
「力を失い追う側から追われる側となった小西娘!そして逃げ込んだ先で出会う
日本から渡ってきた武士達。彼女は無事広州から脱出出来るのか?
■GLF・偏向世界のクロノハーツ外伝「刻の愛人」■
平安時代編①~拾紅(シュウコウ)~乞うご期待!
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登場人物
ムーンリー・シュウコウ(小西娘)
外見は10歳ほどの少女。長めのおかっぱ頭にパーカー&ショートパンツの姿の今風少女。
いつも背中にランドセル状の木箱を背負っている。語尾に「アル」とテンプレ中国人みたいな喋りをする。
ある日ふらりとクロノの前に現れ部屋にお札を貼りまわっていったり、新月にはなぜか一日中クロノをストーキング
したりしている。その件を問いただしても、「まぁちょっとしたたのまれ事アル!」と答える。
その正体は大昔、時の権力者の謀略により中国から追い出され最近まで台湾に隠れ住んでいた大仙女。
大昔、彼女を保護したことで知り合ったクロノ先祖とある盟約を結び、この度クロノ一族の異変をかぎとり来日した。
実は少女の姿は仮の姿で能力解放時は本来の巨乳ムチムチお姉さんに変身するものの衣服は替わらないので
大変目のやり所に困るパツンパツンコスチュームになるのが玉に傷だがトンでもなく高い戦闘力を持つ。
なぜかクロノには恋愛感情などはなくドライである。がハーレムの方々とは仲がよいご様子。
▼エロ可、リョナ可、キャラ崩壊可、自由分岐
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商角(オリジナルキャラ)
邪仙と呼ばれる外法を用いる悪しき仙人団角一派と呼ばれる一派の一員。齢は1500年ほど
見た目は痩せ型の小男で普段は臆病な小心者なのだが、小西娘(ムーンリー・シュウコウ)の手により兄弟弟子たちが悲惨な末路を遂げたことを知り、
漢として覚醒。一矢報いることに成功する。死亡後、無事転生できたものの後の世でも涙目で小西娘と衝突する羽目になるのだがそれはまた後に語られるだろう。所詮は小悪党なのだが根は仲間思いなやつである。
▼エロ可、リョナ可(作中リョナられた)、キャラ崩壊可(すでに漢になった)、自由分岐
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