※この作品はR-18です。

刻の愛人   作:ぶらぶら・カーン

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平安時代編(1)~拾紅(シュウコウ)~前編

   小西娘と商角の死闘より3日後、所同じく広州の港町にて市中は異常な人だかりに溢れていた。

 そんな町中で「紅目堂」の看板を掲げた薬屋から勢いよく蹴り出される男がいた。

蹴りだしたであろう赤子を背負ったふとましい女に

 

「このクサレ×××!!」

 

と罵り扉を閉められる。

 尻餅をついた男は半泣きで、

 

「そりゃないぜぇ~わざわざ日本から迎えに来たのによぉ~!」

 

 扉がまた開き桶を持った女が再び姿を現す

 

「"2年で迎えに戻って来る!戻ってきたら君を娶りたい。だから待っててくれ"とか言っといて今年で10年目だろ

うが!5年待っても来なかったから死んだと思って婿養子を捕まえたわッ!」

男は素敵スマイルで

 

「俺は人妻でもいい!君を約束どおり娶りに着たんだ!!側室だけど(ボソッ)」

女は腹が立ちまぎれに桶の水を男にぶっ掛けると、

 

「ただでさえ3日前のアレで商売上がったりなんだよッ!そのムカつく顔を見せんじゃないよ!!」

 

大声で怒鳴った後トドメに空になった桶を男に顔面に叩きつけ扉を乱暴に閉めた。

 路上の反対側から少年二人が男に駆け寄る。片一方の女と見間違えそうな白髪の少年が男に向かって口を開く、

「黒則(くろのり)様。出国前、当主様と奥方様には日本にお連れする薬師は男と言っておりましたよね?」

若干殺気を感じさせる口調である。するともう一方の赤毛の少年も口を開く

 

「あの、旅の前に奥様から他所でもうこれ以上妾を作るなと・・・」

 

二人の抗議に黒則と呼ばれた男は答える。

 

「ユキヤ、リコ、俺のように水の滴る"うい男"は女も放っておかんのだよ!あと"くろのり"は嫌だからの"クロノ"と呼べと言っておろうに!」

 

 逆ギレするこの男の名は横八黒則(おうはくろのり)齢26、ボサボサの髪を乱雑に結い顎鬚を蓄え一見凄みがある面構えに見えるがその眼光は果てしなくゆるい。紺の直垂をまとい腰には太刀を挿しているが先ほどの一件で水びたしの上に鼻血を垂れ流すわで色々台無しである。

 

ユキヤと呼ばれた方の白髪の少年は呆れ返る。

 横手雪矢(おうてゆきや)齢15 白髪に少女のような顔立ちの少年。

旅装束に棍を携えた格好だ。横八一族の分家の子息である。

 

「平家の仕切る交易路を避けてわざわざ宋まで来た言うのに貴方はという人は・・・ご当主様に顔向けできません!」

 

クロノはウンザりしながら答えた

 

「その親父(当主)の星占いでここに来たら"旅にて吉兆の紅を拾える也"と出たから来たんジャン!そしたら10年前ここで懇ろになった薬屋の娘思い出したわけよ!」

 

 先ほどリコと呼ばれた赤毛の少年が申し訳なさそうに(覚書)と書かれた木管を開き復唱し始める

 

「えっと記録によれば "~父上!占いの紅に心当たりがございます!京で最近、平家のお抱えの"種島"なるものが、帝に良薬を謙譲し薬師の称号を賜ったそうです。

 我らの地元は薬草が豊富に確保できる土地柄ゆえ、薬による収入が太いのですが、このままでは質にて種島なるものに押され横八印の品は都より消え申す。

そこでですな、昔宋で世話になった「紅目堂」なる薬屋の弟子を説得し当家に迎え入れてはどうでしょう!最新の漢方薬と銘打てば都での覚えもよろしいかと~"

 

ユキヤ様、弟子の性別についてはクロノ様は答えておりませんでしたが・・・」

 

「リコ!このアホ・・いやクロノ様に助け舟を出すな!」

 

ユキヤは鋭い目つきで睨めながら吼える

 

 リコ、こと利巧(りこう)齢14 赤毛の小柄な少年だ。元々は孤児であったが横手家に拾われ以後、ユキヤの付き人として仕えている。生来の聡明さと温厚な性格ゆえ雪乃とは付き人と言うより友として付き合ってる節がある。

 

「よし!別の"紅"を探しにいくぞ!なんか3日前の騒動からこの辺なんかすごい事になってるらしいぞ?」

 

渡りに船とばかりに話を逸らす"くろの"キッレッキレのユキヤはクロノの胸倉つかんで片手で短刀を構え凄みながら

 

「いい加減な事言ってんじゃあナイデスヨ?"大枚はたいて宋まできて、人妻口説くのに失敗しました!"と当主様にご報告するんですか?貴方の奥方様も事を知ったらイチモツぶった切れとブチキレますよ?イインデスカ?イインデスネ?」

 

 ユキヤの半端ない殺意の篭った暖かい視線に怯え半泣きになるクロノ

 

「あの、なんでも三日前、船の上で見た爆発のあと降ってきた灰を吸った病人が急に健康になったとか、爆発した屋敷の付近に住んでいた老人が若返ったりとか、とにかく奇跡が起こったらしいです!」

 

 リコは背後でとっさに語りかけ。ユキヤが反応を示す。

 

「何?それってまるで・・・・」

 

リコは更に続ける

 

「この市中の人だかりはその奇跡にあやかって人が方々から集まっているらしいですよ!なんでもその屋敷の主は最近現れた風水師だとか?また、あの爆発は桃の木があった場所と噂が流れております。」

「まったく。親父殿の占いはよう当たるのぉ~仙人の可能性のあるものに仙桃の類か・・・よし!その風水師殿を探すぞ!」

 

胸ぐらつかまれたクロノが急にまともな事を言い始める。が、

 

「言わなくてもワカリマスカラネ・・・まずはオシオキを終わらせないと・・・」

 

ユキヤは一向に流れを変える気は無いようである。

「す、すいませんでした!」

 

涙目で侘びを入れるクロノ。そこに主従関係や年長者としての威厳は一切なかった。

 

 

----------所変わり港町近くの森の中で小西娘は大問題に直面していた。

 

 

①肉体が過剰に若返り10~12歳ほどの少女になってしまった。

 先日の爆発は、桃の木に一気に仙力を流し込んだため仙桃が一気に急成長し破裂したのが原因だった。その際破裂した果汁を浴びたせいで若返ったようだ。その証拠に体の傷も完治していた。おかげで自慢のナイスボディがチンチクリンになってしまった。腕力も何もかもが落ちている。あの爆発だ。付近にも影響が出ているだろう・・・・

 

②失った仙力がほとんど回復しない。

 通常、力を使い切ったとしても手持ちの仙桃などで咄嗟に回復は出来るものだが、体が縮まったとはいえ回復するはずの力が回復しない。これは最後に商角の"陰"の仙力を流し込まれたせいアル。

 ~通常の仙人と邪仙の違いはこの属性の違いにある。通常の仙人は修行により極限まで"陽"の仙力を高めた存在である。逆に邪仙はわりとお手軽な外法を用い"陰"の仙力を"蓄えた"存在。

 

 もともと生まれながらの仙人であった小西娘の陽の仙力比は100パーセントだったが、今の小西娘の肉体には3:1の割合で陽と陰の仙力が流れている。

通常の人間は陰陽の仙力比率は2:2であり、人に近い比率に落ちてしまっている。正直今の力は3日前の一万分の1にまで下がっている(本人談)。これでは人間界にいるそこそこできる道士並みの力である。今、邪仙と出会えば負ける可能性が高い。~

 

③仙力が減ったせいで宝貝が使えない。

 手持ちの薬箱に収めている宝貝は仙力を消費し使うものであるため、今の状態では使用する事が出来ない。一応ついでで集めていた仙力を使わない神器もいくつかは持っているが武器として使えるのはせいぜい愛用の銭剣「六幸銭」のみであろう、今の状態ではそれすらもまともに扱えまい。此れならば神剣の一つや二つ手元において置けばよかったアル・・・

 

④腹が減った!!!(超重要)

 よく「仙人は霞を食って生きる」と言うアルが、まさにその通りで龍穴で座禅を組んでいれば仙力が回復しそれをカロリーに当てて活動しているアル。いま体内のバランスがおかしくなっている今ではそれすら行えない状態でアル。

なら、何か食べればいいだろう?と思うかもしれないアルが、

 その・・・つまり

 

"仙女はおトイレに行かない!"

 

 のである。いや正確には酒も飲むしたまに仙桃も食べるしそりゃたまには行くアルよ?小西娘にはあるトラウマがあった。昔、崑崙を追放されてすぐのころ、人間にもてなされ、ご馳走を食べたことがあった。正直今まで食事らしい食事をしたことのなかった彼女は、出された物があんまりにも美味しかったため馬鹿みたいに食べ、翌日お腹を下しトイレと友達になったアル。その際味わった地獄は軽くトラウマになったのでアル。

・・・・・・・・そういえば

 

 「その時出会った薬売りの少年から腹薬をもらい、その少年を弟子にしたことがあったっけ・・・人の世の薬の作り方を学びつつその少年、"徐福"に仙人の修行を付けてやったアル・・・あいつ元気にしてるかなぁ・・・あいつのおかげで人の世を忍ぶ薬の行商人が出来るようになったもんなぁ・・・って

それどころではないアル!」

 

ギュルルルル!

 

 やまぬ腹の音に耐えかねた小西娘は決意する。"背に腹変えられない!何か食わなきゃ"ここ3日は薬箱の薬や薬草で食いつないでいたが、そもそも食べると言う習慣の薄い彼女ではまともな食べ物が選別できない。落ち着いて休める場所も欲しい!そこで商角の情報を提供してくれた武官の家に向かうことを決意するのだった。

小西娘は自分の体型では不釣合いなサイズの薬箱を入念に森の中に隠した後、

武官の住む町に向かって歩いていった。

 

 夕方~小西娘は港町より離れた位置にある武官の屋敷に辿り着いた。ボロボロの姿の少女が現れた事に家中の者に驚かれたものの、無事部屋に通され武官と面会した

 

「--と言うわけで、お主の見立てどおり奴は邪仙だったため成敗した。」

 

 小西娘は椅子で寛ぎ"香りの強い"茶を啜りながら状況を説明する。

 

「しかしとんだ災難でございましたなぁ・・・すぐに食事をお持ちするゆえ、しばしお待ちを。小西娘殿は恩人ゆえどうぞ安心してご滞在ください。」

 

 武官は感じ良く微笑み席を立つ。

 

「かたじけないアル。」

 

----しかし、商角の奴恐らく転生出来るはずアル。まったく邪神にも屈しなかった私をここまで揉みくちゃにしてくれるとは・・・小物ながら天晴れアル。

次ぎ生まれ変わったのを見つけたときは×××を切り取って口にぶち込んで縫い付けて×××して・・・そんでもって更に・・・・

小西娘がそんな復讐プランを練っていると武官が饅頭を載せた皿を持って戻ってくる、

 

「ささ、こちらたいしたものでは御座いませんがどうぞ」

 

「おお!早速いただくアル!」

 

 皿の上の饅頭を手に取り早速口に運ぶ・・・3口ほど齧った後であろうか?急に小西娘はばたりと倒れこむ。

 

 それを見た武官は静かに無言で立ち上がり、部屋の窓を開く。すると大量の札が部屋に舞い入り、大きな塊を形成したかと思うと塊が弾けた。するとその場に2人の男が立っていた。

 

 一人は派手な衣装を纏ったカマッぽい中年の男そして、もう一人は道士衣装を纏った長身の整った顔立ちの男である。カマっぽい中年の男が口を開く。

 

 「フォフォフォ!生まれながらの仙女と言うにわざわざ出向いてみれば小汚い小娘ではないか!"高角"殿の蠱毒入り饅頭で絶命するようなマヌケとは・・・」

 

 「"紫章"様、こやつがこのような姿になっているのは我が弟弟子の命がけの功労ゆえ、敵と言えど侮辱は謹んで頂きたいものですな。」

 

 高角と呼ばれた長身の男は紫章と呼んだ中年男をにらむ。その鋭い目に睨まれ怯んだ紫章は咄嗟に侘びを入れる

 

「も、申し訳ない。しかし3日前商角殿の屋敷での一件から近隣の役人全てに網を張っておったとは・・・さすがですな!」

 

 高角は先ほどから無表情で佇んでいる武官を見つめ

 

「全ての役人と言うわけではありませんよ。内通の恐れのあるものだけに我が宝貝"舞蠍壺(ブケツコ)"を用いただけです。同時に操る事の出来る人間の数には限りがあります故。」

 

 高角が懐から手のひら大の壺を出すと武官の首筋から小指の先ほどのサイズの蠍が這い出てくる。宝貝"舞蠍壺(ブケツコ)"は30匹ほどの鉄製の蠍を内蔵した壺である。この蠍に刺されたものは壺を持った術者によって意のままに操ることが出来る。だが残念なことに仙人や道士には効かない低級の宝貝だ。だが高角はこれを利用し紫章に取り入り宮中の宦官を意のままに操っていたのである。

 

「ほう、お前が宦官を操っていたほうの邪仙アルか・・・」

 

 その言葉が聞こえたと同時にビクつく高角。目の先には平然と立ち上がる小西娘。机には先ほど齧った饅頭のかけらが転がっている。

 

「ゲェーーーーッ!!小西娘!饅頭食べてなかったの!!」

 

 先ほどまでのノリはどこ吹く風で商角と同じようにビビる高角。

 咄嗟にこれは自分をおびき寄せるための罠なのか?罠なのか?と頭をフル回転させていた。先ほどまでのクールな雰囲気はない。

 

その空気を呼んだ小西娘は続ける。

 

「蟲毒には独特の臭気があるアル。それをごまかすため最初に香りの強い茶を飲ませ次に茶菓子に毒を盛る。基本中の基本アル。出してきた茶の種類でみえみえアル!」

 

 自信満々に語ってみせる小西娘だが心中は穏やかではない。今の状態で戦えば負ける可能性が高い。脱出せねばと思索するが、「自分が格下相手に尻尾を巻いて逃げるとは情けない」と余計なプライドが邪魔して「脅して相手を撤退させたい」と駄目な方向に思考を巡らしていた。

 

「さて、オシオキの時間アル!」

 

 破れかぶれで懐から銭剣を取り出し構えてみせる小西娘。

 ビビッて高角の後ろに隠れる紫章

 ぶっちゃけ小西娘の思惑通り高角は怯えていた。高角は人間や道士など物ともしない戦闘力は持つが、仙人同士のガチンコバトル向きの邪仙ではないのだ。

 

 たとえ商角の情報のように力を削がれていたとしても真っ向勝負では勝ち目はないやも知れない(ビビリ過ぎ)。そう、弟弟子が命がけでやった仕事・・・

勝ち目がないのに小西娘に向かっていった商角・・・・

 

「FUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」

 

 ヤケクソを発症した高角は札を懐から何枚か取り出し唱える

 

「紙兵来々!!」

 

 すると札が5人の棍棒を携えた白色の兵士に姿を変える。紙兵と言う意のままに動かせる人形を生み出す術である!

 

"これでまずは時間稼ぎだ・・・一旦紫章を連れて脱出してから体勢を建て直ししてから挑まねば!"

 

 高角は素早く思考を張り巡らし作戦を練る。

 対する小西娘は

 

"ヤバイアル!今の体力ではこいつ等まで相手する余力は無いアル!挑発するんじゃなかったアル"

 

 小西娘も次の一手を考える。

 

二人そろって程度の低い心理戦の結果は・・・・

 

 小西娘は高角に向かって飛び掛っていた。銭剣で高角の頭をカチ割ろうとしたのである。対する高角は脱出するつもりで紙兵を自らの周りに寄せた。

次の刹那、小西娘の銭剣は高角の脳天に直撃した!・・・・したと同時に紙兵の一人の棍棒のフルスイングをモロに腹部にたたき付けられ部屋の襖を突き破り外に跳ねだされた!

 

  外にはじき出された小西娘は激痛に耐えながら部屋の中に目を向ける。

 高角は悶絶してはいるものの致命打ではないようだ。その証拠に紙兵がまだ存在している。高角はじきに回復するだろう。全体重のせて振るった銭剣でアイツの頭をカチ割れなかったとは残念だ・・・そういや・・・体重思ったより減っていたんだな~などと思っていたが、

 

 「ゴフッ!」

吐血する小西娘。

 

"腹部への打撃のみならずさっき地面に激突した時にアバラもやられたようアル・・・戦える状態ではないアル。先ほどの攻撃で手の内もばれただろう・・・今の隙に逃げなくては・・・・"

満身創痍の小西娘はそれでも早足に屋敷を出て薬箱を隠した森に向かっていった。

 

  半刻後、高角は紫章の必死の手当の元、彼のひざの上で平静を取り戻していた。 

 

「大丈夫!? 高角ちゃん!」

 

 半泣きで頬を朱に染めナイチンゲール症候群を発祥した紫章が尋ねる。

 

「だ、大丈夫です。それより小西娘は・・・逃げたか・・・」

 

 高角はホッとした。自分にトドメをささなかった事、術を使って来なかった事。

自分が思う以上に奴は弱体化していた・・・

 

「フハァ!フハハハハハハ!商角でかしたぞ!」

 

 突然笑い出した高角は舞蠍壺を先ほどから立ちっぱなしの武官の前に掲げた。

 すると武官は先ほどの毒入り饅頭を拾いおもむろに食べ始めた、そして・・・

力なく倒れた。

 

「ひっ!高角殿、なにを!?」

 

「おおっと!宋が誇る優秀な士官が"毒殺"されましたなぁ~下手人は蟲毒を操る呪術師と思しき娘!紫章様、早く下手人を国中に手配せねばなりませんなぁ!」 

 

 重ね重ね言うが、高角は元来戦闘向きの仙人ではない。さらに言えば通常状態の商角にすら遅れを取るレベルの戦闘力しかない。

だが、他の兄弟弟子には無い特殊能力を有していた。それは接触者の"体内の気脈を瞬時に判別する能力"対象者の気脈を読むことにより、その者の置かれている体調や感覚、果ては性格の嗜好をある程度判別することができる。

 先ほどの一撃を受けたとき高角は小西娘の気脈の流れを垣間見た・・・

陽の気脈と陰の気が混在して仙力が極端に落ちていること、先ほどの少女の姿は化けているわけでなく本当に肉体が退行してしまっている事、ある意味本人よりも置かれている状況を正確に把握してしまったのだ。

 

「まずは追手を放ち、アヤツをさらに追い詰めましょうぞ!」

 

 "邪仙を無慈悲に殺めれる奴でも唯の追手の人間は殺めれまい・・・まずは精神、肉体とも追い詰めてから嬲り殺してくれる!”

 

 

-----同日深夜、森の中で小西娘は自分の無謀な一撃が自分が思ってる以上に敵に情報を渡してしまったなどと露ほども知らず、隠していた薬箱を引っ張り出し自身の応急手当を行ってた。傷は仙薬を用い、すぐに完治したが、疲労と空腹はどうにもならなかった。

 いずれにせよ一旦休まねば・・・・そう思い横になろうとした時、先方から人の移動する音と松明の明かりが見えてきた・・・・・

 

----------翌朝まだ日も昇らぬ早朝、港町の商角の屋敷を伺う3人の影

 

クロノ一行である。

 

「駄目ですねえ・・・屋敷の前には見張りの役人が付きっぱなしで中に入れなさそうです」

 

 先ほどから屋敷を監視していたユキヤは他の二人に目をやる。

 目の前でクロノは方位盤を弄っていた。

 

「んーあの屋敷は鬼門だな~風水師が住むにしては変な立地条件だ。」

 

「と、言いますと?」リコが問い返す。

 

「あれは邪気が集まりやすい位置にある屋敷だ。まともな風水師ならあんなところに住もうと思わんはずだ。外法使いの住まう家ならば納得だが。実際起こった吉兆とどうも状況がかみ合わんな。」

 

などとぼやいている。

 

 「見張りも居なくなりそうに無いですし出直しますか?」

 

 ユキヤの問いかけにクロノもあごひげを弄りながら

 

「そうさな、宿に帰って飯でも食うか。一旦帰るぞ。」

 

 その言葉を聴いてリコはもと来た道を戻ろうとしたがクロノが呼び止める

 

「おっとリコそちらから帰るのはあんまり宜しくない方角みたいだぞ正しくはこっちの道から帰るのが縁起がいいぞ!」

 

 リコが戻ろうとした大通りとは別の脇道を指差す。ウンザリ気味でユキヤは答える。

 

「その方位占い当たってるんですか?」

 

クロノが手に持った拳大の方位盤をかざし答える。

 

「親父殿から借りてきた"サルでもわかる吉凶方位盤"を信じろ!」

 

そして脇道に方向転換して歩みだす一行。そしてしばらく歩みを進めていると目の前に人が立っているのが見えてきた。

 

「ちょっとあの人!」思わずリコが声を上げる

 

 血だらけの子供?背中には大きな薬箱を背負っている。今にも倒れそうだ・・・

 

----小西娘は眼前に見慣れない服装の人間が立っているのが見えた・・・

 

「さっきの言葉から察するに倭国の人間アルか・・・」

 

 小西娘は数時間前追手の兵士に見つかり、不本意ながら戦う羽目になった。

空腹と疲労に蝕まれていた彼女はギリギリの戦いを強いられ、なんとか追手を振り切り港町に逃げ込んだのだ。

 

「よかった・・追手じゃない・・ア・・ル・・」

 

 倒れこむ小西娘。だが、誰かの腕が彼女を支えた。

"暖かい手・・・”その腕の主に目をやる黒髪に顎鬚を蓄えた男。

目が合った・・・小西娘はなぜか”優しい眼差し・・・"と感じ、

意識は遠のいていった・・・

 小西娘を抱き上げたクロノはユキヤとリコに目を向け

 

「急いで宿に戻るぞ。」

 

とだけ言い帰路を急いだ。

 

これが、彼女とクロノ"達"との初めての出会いだった。

 




小西娘とクロノの出会いこれは何を意味するのか?
芽生えた紫章の思いは高角に届くのか?
次回 平安時代編(2)~拾紅(シュウコウ)~後編ひょっとしたら中編かも
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