※この作品はR-18です。

骸の島『ヘロドトスの骸』   作:トウトウ@脳缶

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甘い亡霊

私はあの時、何故剣を抜いたのだろうか

あの男が死んだ以上、私がタイガーライトと戦う必要は無かったはずだ

私がファントムになった真の目的はタイガーライトを殺す為ではなかったはずだ

私から親を奪ったアイツを消し去る為だったはずだ

赤と黒の男

 

私はあの時ニューヨークに居た

母親と手を繋いで、雪の中を歩いていた

少し気が早いクリスマスツリーを見ていた

 

それは突然に起きた

銃声が先か爆発が先か、積もった雪は赤く染まった

突然現れた黄色いパワードスーツを着た集団

それを率いる謎の人物

その集団は何人かの赤い男達と戦っていた

私の親はその戦いに巻き込まれて命を落とした

 

どっちが悪でどっちが正義かなんて私には関係無い

赤い男達の一人、母を赤と黒の男が殺した

もうその記憶も薄いが

私の中にはそれだけが残っていた

それだけの為に生きていた

橘 蜜柑はここで消えた

 

アリス ワイアットとなり

実験の日々を送っていた時、

ファントムシュガーの話を受けたときチャンスだと思った

この力を手に入れたら逃げ出して赤と黒の男を探そうと考えた

そんな上手くはいかなかったが

 

あの時、自由を手に入れた時だ

システムコーポのCEOが死んで自由になった

 

私が剣を抜きタイガーライトに向けた時、何を考えたいただろうか

心の何処でタイガーライトを赤と黒の男と重ねたのだろうか

まったく思い出せない、何も考えていなかったのかも知れない

あの時、私の心は少しだけ満たされていた気がする...

 

 

 

私は今何処か冷気が漂う部屋の布団に横たわっていた

誰かが歩いてきた、ヒカリに博士と呼ばれていた男だ

色素の薄い金の髪に丸いレンズの眼鏡をしている

「大丈夫かい?」

「はい...」

「君の体はなかなか興味深かったよ」

「...は?」

「おっと、変な意味じゃないよ、君みたいな機械に欲情する趣味は無いんだ」

「機械...」

「体の内側がほとんど機械だなんて、興味深いよ、まったく」

「君を造った技術者に是非会ってみたいね」

「...」

「博士~?起きたのか~?」

「ああ、彼女なら起きているよ」

 

「おはよータチバナ、体は動くかな?」

「問題有りません」

「当然だよ、この天才が引き受けたんだ失敗なんてありえない」

「あー、はいはい」

「わかったから博士は少し席を外してくれ」

「ああ解った、用があったら呼んでくれ」

”博士”が部屋をでる

 

「タチバナ...あ、ミカンちゃんの方がよかった?」

「タチバナでいいですよ、お構い無く」

「そう?じゃあタチバナ」

「はい」

「この後どうするんだ?」

「...」

「帰る場所がないんだろ?」

「はい...」

「どうする?どうしたい?言ってみな...」

軽い口調が優しい口調に変わった

「わかりません...」

私には目的がある、それをここで話すことは考えもしなかった

「どうしたらいいのでしょうか...」

「それじゃあさ、アタシ達と来ないか?」

「お前が居ればアタシ達も仕事が楽になるぜ」

「あなた達...?」

「ああ、システムコーポの下位組織とドンパチしてんだ」

「結構人数も要るんだぜ」

人を集め、システムコーポの下位組織を潰して回っている

それはとても馬鹿らしい話だった

でも私はその話に引かれていた、何故か...

「そうか、来てくれるか...へへっ...」

口調が戻る

「そうそう、お前って姉妹とか居た?」

「居ませんよ」

「...やっぱり」

「それがどうしたんですか?」

 

「落ち着いて聞いてくれよ?」

「...はい」

「アタシとお前は...」

「はい...」

「親子だった」

「はい?」

「ゲノムを調べたらアタシがお前のママだったんだよ。」

「...え?え?は?」

話を聞けば過去にヒカリの義体

リザードマン計画で作られたボディの素体から摘出された卵子が

私の両親に渡り、私が産まれたらしい

比べてみれば髪と目がヒカリのそれとよく似ている

 

「あ、あの待ってください」

「そうだよな、取り乱すよな。でも安心してくれ」

「お前のことはアタシが責任を持ってだな――

 

「なんでそうなるんですか!」

「へ?」

「貴女は違うでしょう」

「ん?」

「貴女は脳をその体に移植されてるんですよね?」

「ああ、”フロッグマン”だからな」

「そうなら貴女ではなくその体の持ち主が、ですよね?」

「でも今はアタシが体の持ち主だ、さぁお母さんと呼んでおくれ」

「嫌ですよ...」

「なんでさぁ!お母さん哀しい!」

 

彼女は軽い口調で言っているが笑っていいものなのか

"お母さん..."

「!!、今!お母さんっていった!?」

しまった!

面倒な事になったかもしれない

「もっかい!もっかい言って!」

「嫌です!二度と言うものですか!」

 

”お母さん”なんてどれだけ振りに口に出しただろう...お母さん...

 




わたしはたちばなみかん。
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