皆が冷静さを欠いていない事が幸いだった、いやこの光景に思考が追い付いていないかもしれない
人々が歩き、活気に満ちている筈の街には肉の削げ落ちた死体が徘徊している
まるで地獄の入り口から逃げてきた亡者のように唸りを上げ、フラフラと脚を引き摺っている
ここに来た訳は何者かの襲撃を受けたSystems Corpの研究所で作られていた新技術を探ることだ
街はバリケードで囲われ、その向こうには死体
バリケードを乗り越えて見たものは歩く死体と戦いで汚れた町並みだったのだ
ウイルスだろうかなにかの映画のようだ
密閉されたパワードスーツを着ているため穴を開けられなければ感染はしないだろうが...
最初に行動を起こしたのはコードネーム"バブル・βスター"だった、あだ名はベー
いつの間にか巨大なスコープやパーツのついた狙撃銃を構えていたのだ
「さっさと撃ちましょう、邪魔です」
「落ち着け」
「おい、待て」
部下のバブル・デフロスターと自分が制止するとやっと銃を下げた
「私はクールですよ、撃たないと通れません」
「撃つなとはいってない、オレは落ち着けと言った」
「落ち着いてます」
「落ち着いたやつは狙撃銃をこの場面で使わねぇよ」
「狙撃だけじゃありません、軽装甲も貫けます」
「相手は死体だぞ、拳銃にしとけ」
短い沈黙の後にベーの口が開く
「ッチ...初めからそう言ってください」
ベーがロングバレルを畳み、狙撃銃を担ぐ
相変わらずめんどくさいやつだ、解ってるようで解ってない
それでもって解ってないようで解ってるのがベーだ、考えが読めない
「ほら、いきますしょう」
ベーが機関拳銃を腰から抜くと急かして来た
小銃を構えて、ベーに続く
「今日はやけに落ち着きないな」
嫌に汚れた道路を三人で通り、寄る亡者達を撃つ
街の中心に近付くにつれて倒れる死体は減り、歩く死体が多くなっていく
「音で寄ってきてないか!?」
「そうはいっても剣じゃサバききれないだろ!」
「なんていった!?聞こえないぞ!」
銃声のせいで声が届いていない
「剣でサバき切れないだろッっていったんだ!!」
「このままじゃ銃の弾が無くなるぞ!」
「二人ともうるさいです...少しは落ち着いては?」
ベーは既に拳銃をしまい、いつのかにか拾った金属の棒で戦っていた
自分も銃を担ぎ、スーツの手に搭載された光剣を展開させる
高層建造物から飛び込んでくるゾンビや妙にセカセカしたゾンビを切り伏せていく、
何故か倒壊した建物に道が塞がれており、回り混む為に近くの建物に入る
入り込んだ建物の中で奇妙な物をみた
大量の死体、ゾンビでは無い傭兵のような格好の死体だった
ほとんどが銃弾による傷だったが信じられないほど切り口の綺麗な刃物の傷の着いている死体だ
装甲や防弾チョッキごと身体の一部が切断されている物もある
「見てください、ペルセウスシリーズです」
ベーが死体の中に半ば機械に置き換わり奇妙な肌色の死体が混じっていることに気が付く
フィルターの入ったマスクに機械の詰まった重装甲のバックパック、肌に浮かび上がるコード
間違いなくSystems Corpの生体兵器、ペルセウスシリーズだった
「結構な数だな...」
「気を付けろ、コイツらを殺った連中がまだ居るかもしれない」
「この切り傷...タイガーライトでしょうか...?」
「奴はこんな銃使わねぇぞ」
デフロスターが死体から潰れた銃弾を抜き取る
「よし、登ろう」
「わかりました、」
「冗談じゃない、何が居るかも解らないのに」
デフロスターが反論する
「危ないのかどのも同じさ、行くぞベー」
「あーもう!待てって!」
階段を登っていると自分達の出している訳ではない駆ける足音が聴こえてきた
「構えろ!」
目の前に現れたのは4つの複眼を光らせる銀の人型
ファントムシュガーと呼ばれるSystems Corpの兵士だった
そいつは両手に光の刃を展開し目の前に現れた
「うげ、ファントム...」
「この死体の山、誰かと思えば貴方達でしたか」
ファントムがそういうとベーが狙撃銃を向け
デフロスターが拳銃のホルスターに手をかける
「ここの死体は知らないね」
「お前が居るってことはタイガーライトが居るってことか?」
「いいえ?」
ファントムが床を蹴って飛び込んでくる
「クッ!」
拳銃を構えたデフロスターを弾き飛ばし
ベーの銃撃を躱わして銃口を蹴り上げると天井に向けて二発目の銃弾が撃ち出される
ベーに迫る刃をベーの剣と自分の剣が止める
ファントムが蹴りを放って離れるとデフロスターが背後から剣を振る
剣がファントムの剣に弾かれる
部屋に銃弾が響き、ファントムの左脚から火花と欠片が飛び散り、ファントムが転倒する
「クソッ」
転倒したファントムにベーが狙撃銃を向ける
ファントムが向けられた銃に手をかざすと銃が宙に浮かび、ベーの手を放れる
ファントムが手を振ると投げ飛ばされるように銃が床を滑る
飛び起きたファントムがベーを斬り、剣を広げ此方に飛んできた
両手に剣を展開し、挟むような斬撃受けを止める
「くっ...!」
デフロスターが側面から斬りかかるとファントムが片手を向け受け止める
自分に向いた剣を押し払い、蹴りでファントムを押し返す
態勢を崩すファントムにデフロスターとベーが斬りかかるとファントムに浅い傷を付ける
そこに剣を構えて駆け寄るとファントムが床に手を翳す
小さな瓦礫が床から飛び上がる
「っ!」
思わず後ずさるとファントムが飛び退き先端が赤熱したナイフを投げる
それが自分に突き刺さるとファントムが耳の辺りに手を当てる
「時間切れのようですね、」
ファントムが口笛の様な高い音を出し窓に足をかける
「また何処かで会いましょう」
そういうと窓から飛び降りる
ベーが床に落ちた狙撃銃を広い上げ、窓から下に狙撃銃を向けてファントムを探す
「逃げられました。」
「追うな、勝てる相手じゃないぜ」
「...ベー、デフロ、気を付けろ何かいるぞ」
巨大な爆音が響き渡ると天井が崩れて瓦礫が降り注ぎ部屋を覆い尽くす
砂煙が巻き起こり、小石がいくつも転がる
部屋の端で瓦礫が持ち上がり一部が光で構成された盾に隠れた三人がのし出てきた
デフロスターが展開されていた盾の光を消すと盾が畳まれる
三人の前に2つの影が着地した
背が高く、機械で形作られたドクロのような頭部と複数の眼を持った人型
その2つはそれぞれの黄色と橙色で、その色のコートを羽織っている
両者の手には斧刃のついた巨大な銃が握られている
「今度はゼウスシリーズか」
「金閣銀閣ですね」
「いや、どっちも金閣だな」
「黄色がロイガーでオレンジがツァールだ馬鹿共」
デフロスターがそう言うと盾を開く
盾が開かれると同時にロイガーとツァールの銃から散弾が撃ち出され反動で後方に滑る
「散弾かッ」
ロイガーとツァールが銃を斜めに持ち上げて薬莢を大量に排出するとマガジンを交換する
「装填は随分とゆっくりですね」
「あの銃...薬莢をどれだけだした?」
「12個ですね」
ベーが答えた
確かに訊いたがまさか数えているとは思わなかった
「一発でマガジンを使い切るのか、恐ろしいな...」
「12 個 で す 。」
「さっき聴いたよ」
ロイガーが再び引き金を引くとコンクリートの欠片が飛び散り
ツァールが周り込むように瓦礫の山を走る
ロイガーの散弾を受け止めツァールの方に盾を向ける
ツァールが散弾を放ち、その勢いで体を回して斧刃を盾に叩きつける
デフロスターとツァールが盾と斧刃でかち合う
盾が退いた正面からロイガーが跳び、斧刃を降りおろす
「黄色ッ!」
剣で斧刃を受け止め、脚にロイガーを当てて後ろに投げる
回転で受身を取り尻餅をついて滑るロイガーの背中を仰向けのベーが狙撃銃で撃つ
「冷却装着、もらいです。」
ロイガーの背中で小さな爆発が起き、掻き回された回路や人工筋肉が剥き出しになる
引っ掛かるような音と軋むような音と共に火花が走ると幾つも爆発が起き、沈黙する
デフロスターが畳んだ盾でツァールの頭部を殴りつける
そこにライフルを撃ち込む、その一瞬
自分とデフロスターの頭の間を何かが風を切りながら通り過ぎツァールの頭部が削れる
削れた頭部から血色の飛沫が飛び、赤黒い液体を流しながらツァールが後へ倒れ込む
「頭脳、もらいました」
「今の危なかったぞ」
「せーふです、せーふですよ、せ ~ ふ !」
うざい
「もういいよ...いッつつつ...」
「痛んできやがった」
刺さったナイフを引き抜き、穴を塞ぐ
「ベーとデフロも手当てしとけ...くッ」
「そうですね」
ベーが傷に手当てを始める
あまりの手際にデフロスターが口を開く
「顔色一つかわってない...痛くないのか?」
「このくらい平気です」
「ふぅ~、そろそろ出ようぜ、また崩されたら堪らない」
「そうだな」
「いいか?ファントムが居たんだ、Systems Corpの奴等に気をつけろよ」