※この作品はR-18です。

骸の島『ヘロドトスの骸』   作:トウトウ@脳缶

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南瓜と女王蜂

街の隅にある古ぼけた鉄製の扉

その前で二人の人間が話している

「ここはなんだ?お前の家か?」

「そんな訳ないでしょ...なんと言うか...まぁ共同体ッスね」

「共同体?」

「私が学生だった時に皆でお金を出し合ってここを買ったんスでよ」

「いやぁ懐かしい、誰かいるかなぁ」

 

眼鏡を掛けた女、姫野奈央が鉄製の扉をノックする

その後ろで黒いフードの男、ヘロドトスが落ち着きがなく靴を鳴らしていた

 

扉が開くと眼鏡をした白衣の女が出てきた

ボサボサの髪を後ろで纏めている

 

「姫野か久しいな...血生臭いのは落とした方がいい...ほら入れ」

「そっちの君も...」

女がヘロドトスに手招きをする

「本当に久しぶりッスね~、まさか此処がまだ使われてるなんて、探したッスよ~」

「話は後にしてくれ...死ぬほど疲れてる...」

 

白衣の女が二人に声を掛けると欠伸をしてソファーに横になる

部屋の中は片付いているとは言えず、図面や機械の一部が散らかっている

姫野が白衣の女から眼鏡を外し、近くのドレッサーに乗せる

「シャワーがあっちにあるッスから先に血生臭いのを落としてくるッス」

姫野がヘロドトスに道筋を教え、手で払い

ヘロドトスを見届けるとソファーの端に腰掛ける

「この部屋も変わんないッスね~」

姫野が植木鉢に生えた茎まで赤い花を撫でる

「この子は世代交代したんスか?」

「くぅ...」

「もう寝てるし...」

 

「ふン~ちょっとパソコン借りるッスよ」

 

姫野が液晶にいくつも図面が表示されるパソコンの前に座る

何かを入力し、側の箱から出したケーブルと乾いた血の着いた記憶版を繋ぎ、

コンピュータと接続すると画面に新しくウィンドが開かれる

「セキュリティは大したことなさそうッスね...」

姫野がキーボードを叩き、画面に文字と数字を列べる

「...ほぉ、これはこれで...こうッスね...」

「ん~、おっ出てきたッス」

ウィンドウに数字の名前がついたファイルが並ぶ

「名前くらいちゃんとつけて欲しいッスね~」

 

「終わったぞ」

紫のジャンバーを羽織ったヘロドトスが戻ってくる

「フフッ、似合ってるッスよ、ククッ」

「これ落ち着かないからやだ」

「洗濯が終わるまでの辛抱ッス、じゃあ私も浴びてくるッス」

「覗いちゃ駄目ッスよ♪」「ぁ?覗かないぞ?」

「...なんでもないッス、ハイ」

 

姫野がシャワールームに向かうとヘロドトスが白衣にシワを作りながら寝る女を覗き込む

「なぁ」

「...んん...」

ヘロドトスが話し掛けると器用に寝返りをうつ

「起きろ、起きろッ、起きろーッ」

「ああっ!うるさい!なんだロバート!って君か...なんだ?」

「お前技術者だろ」

ヘロドトスが銃の設計図をもって女に見せる

「私は発明家だ、技術者じゃない」

「どっちでもいい、この拳銃の弾を作れるか?」

「拳銃..だな...それにしては大きいな、経口はいくつだ?」

「解らん」

「...見本の弾は?」

「一発分」

「困ったな」

「そうだな、貸してくれ」

ヘロドトスが銃を渡す

白衣こ女が興味深そうに銃を眺める

「少々分解してもいいか?」

「ああ、いいぞ」「ちょっと待っててくれ」

 

白衣の女が工具箱を持って戻ってくる

床に散らばる物を端に寄せ、白いシートを引いて銃と弾の分解を始める

ヘロドトスが銃の分解を眺めているとオレンジのツナギを着た若い男が奥の部屋から出てきた

「博士、ちょっといいですか?」

「駄目だ、今忙がしい」

「また新しい事初めてる...まだ終わってないことが...」

「五月蝿いぞロバートッ!静かにしていろッ」

「すまないな、身内が」

「いや、気にしない」

 

分解した部品を列べた白衣の女がそれを手を組みながら眺め、独り言を言う

女が後ろに手を伸ばすとロバートが紙と鉛筆を渡すと頭を掻きながら紙に図面を書き殴る

「お、今度はなにしてるんスか~」

髪を拭きながら姫野が戻ってきた

「こいつの弾丸だ、なかなか興味深い」

「弾頭の形は独特でケースには妙な空洞、パウダーも数種類の物を使ってる」

「アルテミス弾でスね、9mmの奴なら見たことあるッス」

「アルテミス弾?なんだ?それは」

「弾道をカーブさせる為の弾ッスよ、まず狙った所には当てれないらしいッスけど」

「そんなものがあるのか」

 

ヘロドトスが銃を組み立て直し手に持つ

「カーブ?俺が使っててそんなこと無かったぞ」

「変な撃ち方しなかったら真っ直ぐ飛ばせるようになってるッス」

「作るならそれなりの設備がいるッス」

「なら他のでいい」

「”他の”とは簡単に言ってくれるじゃないか」

「無理か?」

 

白衣の女が顎に手を当てる

「なに?...ふぅ...何時もなら作ってやる所だが...今は忙しくてな」

「アシュリーちゃんならやってくれるんじゃないッスか?」

「アシュリーはいま籠ってる...機嫌を損ねるぞ」

「そいつは何処にいるんだ?」

 

白衣の女がため息を吐くとヘロドトスに道を教える

「話を聴かないヤツだな」

姫野もため息を吐いた

 

_

__

____

______

 

ヘロドトスが可愛い飾られたネームプレートの着いた扉を叩こうとすると

姫野が後ろからそれを引き留める

「おぅ、なんだよ」

「図面も持たずに何しに来たんスか...」

姫野が図面と銃を渡す

「ありがとな」

「お礼は秋葉さんに言ってくださいな」

「秋葉?」

「”博士”のことッス、私の同期なんでスよ」

「あっ私はまだやることがあるッスからもう戻るッス」

 

姫野を見送るとヘロドトスが扉をノックする

「誰かいるか?」

「なに···?だれ···?」

「誰って俺だよ」

「おれって...だれ····?」

「俺はヘロドトスだ、入っていいか?」

「ダメ」

「なんで?」

「ダメ」

「入るぞ」

「ダメ」

 

ヘロドトスがドアノブに手を掛けると向こうから引っ張られる

「ダメっ」

ヘロドトスがノブを引っ張ると扉が開き、

反対側のノブに三つの赤い石を首飾りにした女が垂れ下がっていた

「...」

「...痛かった」

「そうか、悪かったな」

女が立ち上がり、機嫌悪そうに腕を組んで睨み付けると扉を閉じ

少しだけ隙間を開ける

「頼みがあるんだけど」

「イヤ」

「せめて聴いてくれ」

「......なに?」

「こいつを作ってくれ、7つ」

ヘロドトスが図面を扉の隙間に入れる

「きたない線...秋葉の字...秋葉の彼氏...?」

「今日会ったばかりだ」

「そうなの...うふふ...」

 

扉が閉まり暫くの沈黙と籠った笑いのあと扉が開いた

「ねぇ...」

「なんだ?」

扉を少し開け、手だけが外にでる

手には文字の書き加えられた図面

「ここ...変えていい?」

「どうなるんだ?」

「強くなる...うふ...この銃身なら出来る...」

「ちゃんと撃てて威力が落ちなきゃなんでもいいぜ」

「やった...うふふふ...」

扉が完全に閉まる

「しばらくしたら来るからな」

ヘロドトスが踵を返す

ヘロドトスが戻ると姫野がパソコンの前の椅子から降りる

「アシュリーちゃんはどうだったッスか?」

「やってくれるってさ」

「それは良かったッスね」

姫野が紙の束をヘロドトスに渡す

それは記憶版から抜き取ったヘロドトスの情報だった

「これ、アンタの分ッス」

「...そうか」

「もしかして怖くなったんスか?それとも何か思い出したとか?」

「そういう訳じゃないさ」

「ただ...」

「ただ?」

「ちょっと呆気ないと思っただけさ...」

 

 

 

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