首なし騎士モノ
クラリス・モノ
私が一番好きだったもの
それは私が昔無くした人形だった
父親が私に残した数少ない物の一つ
私がその人形に名前を付けたことは覚えているが名前は思い出せない
瞳の色こそ違ったが、その人形は昔の私によく似ていたらしい、昔の自分の顔なんて知らないが
確かにその人形は本物の子供と見間違えるほどの出来だった
細い四肢、柔らかな肌、綺麗な舌、今思い出すと性器も付いていた気がする
とにかくそれは恐いほどに人間だった、人間らしく無い所と言えば、
瞬きしない硝子の眼と変わらない表情、乾いた感覚器と各種器官だけだった
昔の私は"それ"でなんの疑問も、微塵の違和感も感じる事なく遊んでいた
子供の頃はいつも一緒だった気がする
本格的に闘いを学び始めたときも何時も部屋に置いていたし、綺麗に拭いていた
私が父親を切り捨て、墓を立て、旅に出た時も持っていた
旅から帰った時に持っていたかは記憶に無い、恐らく何処かで無くしてしまったのだろう
脈打つ眼球、飛び交う目玉達、空から睨む巨大な眼
あの悪夢の後、あの硝子の瞳が私の唯一見つめる事が出来た瞳だった...
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ブロハネス・モノ
いつのまにか私は暗闇を好くようになっていた、誰かの眼を見なくて済んだから
私は父親が着けていた裏切り者の兜を削り、目元を覆う仮面を作った
何故作ったかは覚えていない、親の事を思い出したかったのかも知れないし、
視線を、私が目を反らしているのを相手に知られたくなかったのかも知れない
何にしてもその黒い仮面を被ると不思議と落ち着いた、何故か不安が薄らいだ
その後は死ぬまで、死んでからも暫く、忌まわしい城での出来事と旅を絵と書に残した
自分が親から学んだ術も全て書き写したし、旅で得た術も書き残した
私の死因は何かの病気だった、なんという名前の病気で何処で拾ったかも分からない
死んだ後の私は頭、首から上がしっかりと繋がっていなかった
断面には白い炎が揺れていた
私は初め、何故かと思った。父親の首を落としたからだろうか、
死体の首になにかあったのかなどの理由を考えたが、結局解らなかった
それからもう暫く、いつの間にか私は何処か違う場所にいた
土に埋もれた、鉛の塊を積み重ねた建物
何故か私が描いた絵や書、所持品もそこにあった、鉛の暗室は私を安心させてくれた
どうして鉛かなんて考えなかった、私の術が鉛と関係深いことは暫くしてから気が付いた
私自身、モノ家の無駄に広い屋敷に執着はなかったし、狭くて暗いそこが好きになった
自分の身に起きた事もあってか、不思議と驚きもしなかった
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あの人達
ヘロドトスとヒカリ
そう呼びあっていた二人は突然やって来た
先に来たのはヘロドトスだった
彼は大きな拳銃、(確かss-501という名前だったと思う)を持ち
腰には刀(名前は"ウシミツ"というらしい)を提げていた
それはあっと言う間の出来事だった
扉を破り、飛びこんできた彼に驚き、私は咄嗟にモノ家の術を使っていた
鉛製の短剣、両刃斧、ナイフ、大剣が狭くて暗い部屋に飛び交った
彼にそれが刺さることはなく、抜いた剣は銃声と共に手から弾き飛ばされた
その次は彼の拳で仮面が飛ばされた、
その次は頭や首を狙った、高い位置の蹴りが頭に当たった
私のちゃんと繋がっていない首はそれに耐えられなかった
平たく言えば、とれた。
あの時のやり取りは少し面白かったのを私は覚えている
二人とも驚いていた
でもそれだけだった二人は直ぐに私の状態を承知し受け入れた
それに私も驚いたのも覚えている
その後はなんだかんだあった、二人は私の術に興味を持った
半ば連れ去るように
頭に拳銃をお腹に刃を押しつけられて、
私は無理矢理連れて行かれた、あの時の私は困惑していた
不思議とあまり恐怖は感じていなかった
彼らと共に何かをするのは直ぐに嫌じゃなくなった
私が孤独から脱するのを心の何処かで望んでいたから?
私が誰かに必要とされるのを望み、彼らが私を必要としたから?
彼らと共にいると楽しいから?
誰かといると過去を忘れる事が出来たから?
たまに考えるが、いつも何故かは解らない、
いつか解る日は来るのだろうか...
この不思議な日々はどの様に終わるのだろう...