魂を代償に力を得る悪魔との契約
今は亡き魔術師バルバロ部屋にある本棚で見つけた本に書かれていた
悪魔の名は魔宮門ドゥー
契約した物に強大な力を与え、契約者がその力で目的を果たすとその者の魂を喰らう
黒い星の神に導かれた私の先祖達が封じたとも書かれていた、その場所も...
私はこの悪魔に可能性を垣間見ていた
父から受け継いだ永遠の命を断つ可能性
先祖が封じた悪魔、さぞかし恐ろしいに違いがない
封じられた場所は星の降る山と呼ばれる山だった
はるか先祖が黒い星から永遠の命を授かったとも伝わる場所
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星々は誘うように輝き
岩肌の隙間で枯れた草達は風に揺れていた
星々の輝きは黒い空がうっすら紫に見えるほどだった
遠い先祖達はこの地で捕らえられた星を助け、この星から勇気と金貨を貰ったそうだ
山道を歩いていくと崩れかけの石塔や壁の一部が見えてきた
かつて先祖達が戦ったと言われる砦の一部らしい、よくは知らない
悪魔ドゥーが封じ込められた場所はここからそう遠くはない
歩く程に戦の残骸が増えていく、ほぼ完全な形を残した建造物もあった
その中に異様に噛み合った岩があった
岩には石灰で奇妙な模様が描かれている
似たような岩で入り口の塞がれた洞窟があった
年月により岩は崩れ、私なら通れる程度の隙間が出来ていた
隙間に体を通し、岩に擦られながら洞窟に入る
松明に火を付け目を慣らしながら進む、装飾の施された燭台が壁の窪みに並んでいる
どれ程歩いたか突如として窪みの燭台に次々火が灯る
驚きの内に洞窟の奥から声が聞こえた
”何者だ?”
”力を求める者か?”
歩みを進める
燭台の灯が途切れ、漆黒の闇が広がっていた
松明を体の前に出し、闇を頼りなく照らす
闇に踏み込むと不気味な冷気と多重の視線を感じた
暗い空間に声が響く
"答えよ、貴様は何者だ?"
"何をしにきた?"
ここに来た理由を話す
本当の理由は伏せ、力が欲しいと
"力か、私に力を欲する者がまだ居ようとはな"
"良かろう、どのような力を望むのだ?"
"火か?冷気か?雷か?それとも...あとは..."
結構色々選べるらしい
最後まで聴くのも面倒で早々と雷と答えた
"雷の力か?そうだな...貴様で5人目だ"
"名を名乗れ"
"クラリスか..."
"ではクラリスよこれを受け取るがいい"
私の前に骨ばった黒い三ツ又銛が突き刺さる
その表面には蛍色の光を微かに発する模様が刻まれている
"さぁ、それを手に取れ"
"貴様に力を与える物だ"
銛を掴む
すると銛が落雷のような轟音と共に消え失せた
轟音の後、恐ろしい声が部屋に響き渡る
"では代償を払ってもらおうか"
"よもや嫌とは言うまいな?"
黒みがかった茨が闇から現れ、私を囲う
”どうした...もっと近くに来い”
”私に魂を預けろ...”
声のほうに歩いていくとヌラヌラと光沢をもった鱗に覆われる大きな門が見えた
門がゆっくりと開く、門の向こうには黄緑色の夕陽が差す紫色の空と、
異様で両端が鋭く磨かれた杭が積み上がったような刺々しい木造の建造物がいくつも聳え立つ
荒野の景色が広がり、門からは冷気と共に雪が吐き出される
茨が私に迫る
茨が私に触れる寸前、反射するように茨が引っ込み、怒りの籠った声が発せられる
"その香り..."
”その花の香りだ!星葉の花だ!”
星葉の花、私の家の紋章になっている花の名だった
葉よりも緑色の花をつける花
闇から飛び出した茨に弾き飛ばされ、壁に激突する
”黒い星め!この私を騙し通せると思ったか!”
部屋の全てがが薄紫の光に照らされる
眼前には茨の蠢く肉の玉座に座する鱗と眼球に覆われたおぞましい門
門の上には水晶で作られた眼球が辺りを見渡すように揺らいでいる
水晶の眼球が此方に向くまで、何処から来たのかも解らない恐怖で息をすることすら出来ずにいた
”黒星の神に伝えろ!貴様の負けだとな!”
何か身体を動かそうとした途端に何本もの茨が腹に突き刺さっていた
抉り出され、貫かれる感覚と悲鳴を上げれない程の痛みが身体を支配した
茨が引き抜かれると何かがこぼれて落ちる音と感覚が痛みの中で浮き出した
身体が痛みで痺れ、雪の散らかる床に倒れ込む
"視ているか!黒い星よ!"
茨が私の左腕に絡まり、私を持ち上げた
痛みが消え、身体に空いた穴が何かで埋まっていくような感覚が走る
自分に掛かる呪いを再び自覚した
私の身体は確実に人間を失っていっている
そしてここでは死ぬことは叶わない
ならばここにいる理由も無かった
巻き付く茨を切り落とし、術を使って短剣と斧刃を撒き散らした
刃が鱗を剥ぎ、目玉を潰す
水晶の眼球に剣を投げるとそれを茨が叩き落とした
"貴様ッ何故生きているッ!"
"それにその術は失われたはず..."
腹の傷が蔦のような帯と黒い霧でみるみると塞がっていくのを自分の目で確かに見た
”貴様...命の泉に...”
茨が何本も迫り、肉の玉座に無数の赤い瞳が浮かび上がる
茨を切り落としては短剣で牽制する
”貴様が何者でも関係ない方法を思いついた!永久の苦しみに沈めてやる!”
赤い眼球が肉の玉座から飛び出し、空中で発火し体当たりをしかけてきた
それらを切り払い、躱わすと水晶の瞳から光線が放たれた
床を光線が這うとそこが凍りついた、大剣を呼び出して光線を大剣に這わせる
大剣の影から飛び出すと矢が飛んで来た、矢が肩に突き刺さる
黄緑色の陽で染まりきった門の向こうから二足で歩き一つ目をギョロつかせた蠍達が出てきた
巨大な鋏を鳴らし、剣や弓を空いた脚で挟んでいた
”我が兵団よ、黒い星の使者を逃がすな!"
大小の盾を持った蠍が並んで戦列を組みその後ろから矢と槍が飛んでくる
火の玉と共に降ってくる槍と矢を落としながら盾の並ぶ戦列に駆けていく
なん本かの矢を受けながら盾に近付くと盾の間から剣が突き出される
剣に足を掛けて飛び上がり、戦列の上に刃物を降らせる
蠍達が軋むような呻き声を上げながら倒れ込む
向けられた矛先を伝いながら群の中心に剣を下を向け、剣を突き立て呪文を唱える
青い光の魔方陣が床に広がりそれぞれから槍が突き出し、蠍達を刻んでいく
父のやっていた事を真似ただけだったが以外と上手くいくものだ
槍が引っ込むと鋏は剣を掲げた蠍達が群がり、その隙間を埋めるように火の玉が飛ぶ
"いくら強かろうと所詮一人よ!我が宮殿の奥で苦しみ続けるがいい!"
蠍達を切り捨てながらおぞましい門に近付いていく
水晶の目が輝き、光線が発射される
床に氷の白線が描かれ、それが此方に近付いてくる
それを躱わすと火の玉と共に再び光線が地を白く染める
一際大きな蠍が鎚をもって立ち塞がる
降り下ろされた鎚を避け、単眼を切りつけるながら頭に昇る
潰れた目を押さえながら私に向かって鋏を振り回す
鋏を剣つ盾で受け止め、身の丈ほどの大剣を上に落とす
呻いた大蠍が串刺しになり、腕と鋏をだらりと力なく垂らす
細身の蠍が私の前まで飛び上がってくる
その蠍は鋏に挟んだ蔦が絡まるような形をした槍を突き出すと微かに笑う
私の横腹に槍を突き刺した蠍が槍で傷を抉り叫んだ
それはまるで勝利を確信した叫びだった
刺さった槍を掴み、細身の蠍に手を翳す
蠍が驚いたように目を見開く
ナイフを手からばら蒔く、蠍が無念な叫びを上げながら落ちて行く
槍を引き抜くと門に向ける
槍を投げつけ、大蠍の骸から飛び降りて走り出す
光線と火球を避け、蠍を切り倒し、再び放たれた光線を立てた大剣に走らせて避ける
刺さった剣の柄に飛び乗り、剣を構える
"黒い星めッ!"
水晶の瞳が光る一瞬
剣を全力で振り切り、水晶の瞳にぶつける
"グアアッ!"
"助けてくれッ!ドラル・ドレイグ....!"
水晶にひび割れが拡がり、ボロボロと崩れる
崩れた門が溶け始め、どんどんと小さくなってゆく
溶けかけの塊から眼球のような光の塊が飛んでくる
"呪ってやる!黒い星の使者よ!"
光の塊が私の体に染み込むように消える
身体中に違和感と不快感が走り、思わず膝をつく
”恐怖する度に我が冷気を思い出せ!貴様に宿った悪魔に怯え続けろ!”
”永久に黒い星を恨め!星を見るたび自らの定めを呪え!”
"貴様と共に永遠に生き続けてやる!"
不愉快だった
"ぐぅッ、貴様..."
下腹部に鉛色の短剣が刺さっている
それを掴み更に上へ押し込む
身体の中で何かが逃げ惑っている、それも不愉快だった
"私を除こうと呪いは消えぬぞ...がああ!ぬぅ!"
"グワァァァ!"
引き抜いた短剣を再び身体に突き刺していた
短剣を伝って何かが不快な何かが流れ出ていた
五月蝿い声も聞こえてこなくなっていた
傷口に腕を突き刺す
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立ち上がり、当たりを見渡す
体の違和感はすっかり無くなったが痛みで動けないでいた
この空間に動く蠍は一匹たりともいなかった
力尽きた蠍達は倒れ、血で汚れた雪は溶け始め異様な臭いを撒き散らしていた
濃色の血溜まりの中から蔦の絡まるような形をした槍を掴み、杖にして立つ
もうここに用はなかった