※この作品はR-18です。

骸の島『ヘロドトスの骸』   作:トウトウ@脳缶

36 / 45
魔宮の主

倒れた竜の指が動き、翼が小さく動く

剣を構え直すと竜の脚が奇妙なほど折れ曲がり形を変える

次の瞬間

竜の肥った腹に切り込みが走り、巨大な口が現れる

口角を吊り上げると翼を狂ったようにばたつかせ

身体を中から血を噴き出しながら歪んだ脚で身体を持ち上げた

もはや竜とも悪魔とも呼ぶことが出来ないそれが掠れた叫びを上げた

 

《オレ、ドレイク!》

「名前は先程聞きましたよ」

《バォル、シンダ!コロサレタ!》

 

「先程までがバォルで今がドレイクですか...意外です」

 

《オマエ、コロス!コロス!》

 

怪物がバォルの頭と腕を引き摺り、ながら突進する

絨毯と瓦礫を巻き上げ、繰り出された突進を大剣を落として止めようとしたが

大剣が吹き飛ばされ、剣で牙を防いだ私の身体も宙を舞った

 

剣を突き立て滑りを抑えながら着地すると怪物は玉座を吹き飛ばし、壁にぶつかっていた

壁に蜘蛛の巣状の亀裂を作った怪物が器用に翼を使って飛び、此方に向きを変え、大口を開ける

脚を曲げ、手で床を掴むような態勢をとると、怪物が跳躍し、

口の中には割れたタイルを吸い込みながら体当たりし、私が受け流す度に体当たりを繰り返す

何度か目の体当たりで柱が倒れ怪物に上に倒れる

 

《シネ!シネ!シネ!》

 

覆い被さった柱を噛み砕き、喉を鳴らす

此方に向きを直した

怪物が口を開けると赤い粘液で覆われた瓦礫が大量に吐き出される

何度も瓦礫を吐き出しながら頭を動かし、広範囲に瓦礫を降らせる

大剣を数本建てて大きな瓦礫を防ぎ、細かい物は剣で落とす

 

すると立てた大剣が蹴散らされ、怪物の巨体が私を突き飛ばす

大剣に裂かれた傷など意に介さないように飛び上がり私の上にのし掛かろうとする

それを跳んで間一髪で避け、剣を床に突き立てて呪文を唱える

部屋の床を無数の魔方陣が覆い隠し、無数の槍が突き出す

床にのし掛かった怪物の身体のそこらじゅうを槍が貫き、突き上げる

 

身体の至る所からドロドロとした血を流す怪物がヨロヨロと立ち上がると

その傷と脚からは想像出来ないすばさやで後退り、玉座の有った場所で止まる

脚と手の指で床を掴み、大口を開けると蒼白い光がその中心で燻っている

 

明らかな脅威を感じ、走り出した私の視界を蒼白い光が覆う

死ぬことは無くとも身体の全貌を失うのは避けたかった

その瞬間に私の身体が何かに持ち上げられる

 

蒼白い光は絨毯の欠片を焼き尽くし、床を引き剥がし柱を倒す

光が消えるとその通り道は白く凍り付いていた

怪物が傷という傷から血と粘液を吐き出して立ち上がる

 

私は身体を持ち上げた何かに放され床に着地する

周りを見渡しても私を持ち上げた者は見つからなかった

《コロス....》

怪物がゆっくりと口を開き始める

次の瞬間に怪物に骨ばった槍が突き刺さっていた

怪物が口から蒼い煙を咳き込むように吐き出すと槍に向かって細い雷が落ちる

《ガアアア!ジャマをスルナ!》

 

私の前方に何処かで見たことのある服を来た少女が降りる

青い線の走った黒い革のドレスに灰色の剣、私と同じ色の髪と背丈

そして私との違いが無いほど良く似た顔だった

 

その少女が手を横に伸ばすと黒く骨ばった槍が現れた

怪物が血を撒き散らしたながら突進を始めると少女が自分の少し前に槍を投げる

その槍が突進に巻き込まれた瞬間に細い落雷が起こり、怪物が叫びを上げて転倒し

転がるようにもがき、なんども掠れた声を吐く

《コロス...ッコロス...ッジャマダッ!ヤメロ!》

 

私はその転がる怪物に斧刃をいくつもぶつけると少女は槍をなん本か投げ付けていた

身体に槍が刺さった怪物が立ち上がろうと脚を震わせると落雷が降り注ぐ

怪物が落雷を浴び、空気を揺らすような咆哮を上げると白い光が部屋を包み

部屋全体を霜が包んで白く染め、それは私の身体も例外では無かった

怪物から力が抜けて倒れると冥府の景色は消え去り

元の行き止まりに戻っていた

ただその部屋は荒れ果て、冷気で白く曇った血痕で汚れていた

機械に繋がれていた竜の屍はズタズタで腹に口のような切り込みが入って臓物を垂らしている

 

隣から声がした、

「どうなったんだ?」

声を発したのはそこに居ない筈の黒いフードの男だった

手には白く大きい拳銃が握られ、服は血を吸って妙な黒になっていた

私が状況に思考を巡らせていると禍々しい声がした

 

"呪ってやるぞ!黒い星めッ!"

 

一瞬、ほんの一瞬、部屋が冥府の魔宮に戻る

怪物の大口が勢い良く開かれ、紫色で半気体の液体が放たれた

戻りゆく景色の中で私を私に良く似た少女が突き飛ばす

少女は景色と共に消えて黒いフードを後ろになびかせた緑目の男に置き換わった

「ぐゥ゛ッ」

 

半気体の液体が男の顔を焼き、血のような火傷を追わせる

男が顔を押さえながら拳銃で空を撃つと竜の右目から飛び出した赤い水晶に当たり、砕ける

砕けた水晶が空中で崩れ、消え失せていく

 

"いやだ...消えたくない..."

《タスケテ...バォル...》

"ああ...ドレイク..."

 

私は男の焼けた顔をみる

「何故...私を...」

 

水晶が全て消えると後方の扉が開け放たれたる

頭部分に虎の意匠が施された白い戦闘服を着た"ヒカリ"が飛び込んできた

「大丈夫か!?何があった!」

 

ヒカリが周りを見渡す

「本当に何があった!?」

男が半ば凍り付いた床に座る

「ちょっと竜が暴れただけだ、ぃつつ...」

「顔に血がついてる、なんか初めて会ったときみたいだな」

「目に入る前に拭いとけよ」

「火傷した、血じゃない」

「火傷?かなり残りそうだな...」

 

「はい...私を庇って...」

ヒカリが笑う

「男らしいねぇ...ヘヘッ、お前が気にやむ事じゃないさ」

俯いた私の頭に手を乗せる

「だよなぁ?」

「まぁ、うん...思ったより痛かったけど...」

「な?もう気にするなよ」

「そうだぞ」

彼の手が私の髪の毛をくしゃくしゃにする

彼の手を掴んでそれを止める

「目的はまだ達成していないでしょう...速く行きますよ」

冷気と異臭の立ち込める部屋を後にする

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。