荒れ狂う川に流され、群がる半透明の生き物を払いながら何処に流れ付いた
私の傍らには私を襲った生物の透明さを失った死体と何かの白い骸があった
身体を起こすと大量の死骸が白くなって打ち上げられており、半透明な虫が集っている
半透明な死骸の向こうには金色の地面が透けていた
視線を前に向けると巨大な建造物の並ぶ黄金の都市が広がっている
鈍く曇った黄金の尖塔達を黄金の橋が繋ぎ、地上の人類の知り得ない様式の都市だった
道端に転がる石ころさえも黄金色で、どれも平等に埃を被っていた
生きる者の気b配も音もなく静かに佇んでいた
私が富と名声を求める冒険家や真実を探求する探索者なら喜び勇み走り出すだろう
黒の鳥が私の頭上で何度も周り、黄金都市の中に飛んでいく
それを見て初めて私は足を動かし、荘金な都市の中に歩き出した
道には埃の被った金貨が積まれ、散らばっている
粉雪の様に薄く積もった埃には足跡が残り、壁を撫でると見たこともない彫刻が現れる
文字か模様かも判別出来ない曲線や直角に何かの生き物が至るところに彫られているのだ
水の絶えた川に掛かる美しい橋を渡るとより高い建物が並び
その間にはより多くの橋々が蜘蛛の巣の様に張り巡らされ、この空間の広さを悟った
入り口のほとんどない建物の間に黄金で造られた獣の骨が端に寄せられている
とても精巧に造られたそれらはまるで黄金の骨を持った動物がそこで朽果てたようだった
辺りを見渡しながら埃の上を歩いていると埃の上に残された足跡を見つけた
自分の付けた物とは明らかに違ったが、自分の物と同じくらい新しい物であった
剣の柄を握り直し、足跡を辿って歩みを速くする
足跡を追い掛けると途中で消えてしまっていた
周りを見渡し、周囲を歩き回ってもそれらしい物はなく、気配も感じなかった
後から妙な風を感じて剣を振り抜く
後ろでは真空の目と口を浮かべる黒い影が斬られて歪んでいた
子供の描いた笑顔の様な目と口が形を戻し、そこから声が放たれる
"ちょっと、やめてよね"
影が形を戻すとその影が私の影から延びていることに気付き自分の影に剣を降り下ろす
笑う影が手を動かし訴える
"やめて、話を聞いてって"
一切変わらない顔から放たれる声を聞いて剣を下げる
"ちゃんと聴いててね"
「すみません...」
"いいよ別に...えっほん"
"えーと...あー...なんだっけ"
"なにか訊きたいことぉ..とか、ない?"
聴きたい事を急に訊いてきた
「えっ...そうですね」
「この足跡の事とか...」
"あっ、それ?のぉ..なに?"
「何処に行ってしまった...とか」
"もう帰っちゃったよ、うん"
「そう...ですか...」
”誰が?”や”どうやって”を訊くことも出来ず
その場から歩いて離れるとその影も付いてきてきた
"ねぇねぇ"
"僕って暇なんだよね、ちょっと遊んでよ"
建物の硝子や格子のない窓から黄金で造られた人形が落下する
振り向くと笑う影の姿は消え失せていた
埃まみれの道に激突した人形は紐すら繋がっていないのに関わらず立ち上がる
球体の関節を回して顔すらない金の顔がこちらに向く
剣を構えると人形が拳を握って殴り掛かる
防いだ剣が跳ね上がり、私の飛ばすナイフを跳ね返しながら蹴りを放つ
吹き飛ばされて壁に激突し、剣が手から離れる
人形が此方に向かって再び跳び、私を殴り付けて、逃れる私の右腕を掴む
人形が拳を振り上げる、自由に動く左腕で右腕を掴み、大剣を出して腕を切り落とす
大剣を避けた拳が黄金の壁を凹ませ、その拳に傷を付ける
腕の断面には白い炎が灯っていた
人形が此方に向き、切断された腕を垂らして首を傾ける
腕を捨てた人形が跳び、叩き付けるように拳を降り下ろす
それを避け、失った右腕を動かそうとすると白い炎が伸びて大きな腕の形を作る
自分でも驚いたが自分の意思通りに動くことが分かり、人形に向き直る
人形が走り出す、金貨を脚で巻き上げると人形が腕で金貨を払う
腕を振り抜いた人形の右肩を炎の手で掴んで抑える、押さえ付けられた人形の肩から薄い氷が広がり始める
右腕を封じられた人形が左腕をしならせる
ナイフを取り出して人形の肘に埋め込まれた球体関節に刺し込む
人形の関節が不快な摩擦音を立て、無理矢理に動かそうとする
球体関節に亀裂が走り、火花と共に砕けて破片を散らす
空かさず左腕を掴み、脚を掛ける
もがく人形の左腕と右肩を引いて左腕を引き千切る
左腕を無くした人形の右腕を白炎で掴んで壁に投げ付ける
立ち上がる人形に向かって大剣を出すと剣先が胴体に小さな凹みを付ける
宙で止まる大剣を右腕で掴み、一押しの内に剣を押し込む
凹みが深く大きな物になり、剣先が食い込む、そのまま剣を振り抜くと人形が投げ出される
大剣を離して人形に近付く倒れる人形が跳び起き、此方に手を伸ばす
人形が私を床に叩き付ける、それを脚で引き剥がして胸に左手を当てて呪文を呟く
私の全面に魔方陣が表れ、そこから突き出す槍が人形を突き飛ばす
大剣を展開して右手で掴み、床に倒れた人形に叩き付ける
人形が刃の形に凹む、もう一度剣を振り上げると人形が腕で頭を守る
全力で剣を降り下ろして腕ごと頭を叩き潰すと頭が砕けて群青色の液体が飛び散った
"あ、潰れた"
笑う影が私の後に現れる
「...満足しましたか?」
"とっても"
影から伸びた手が白く燃える右腕を撫でると黒い霧と共に腕が復元される
"さっすが僕、遜色ない出来映えでしょ"
「取ったり付けたり...なんのつもりですか?」
"暇潰し、僕は退屈してるのさ"
"あとこれ"
影の中から先が鳥の形をした赤い鍵と古い紙が渡される
紙を広げると何処かの地図が書かれていた
"出口の鍵と場所、要るでしょ?"
「ありがとうございます...?」
羽ばたきの音と共に青い尾羽が視界に飛び込んできた
黒い鳥が近くにあった金貨の山に停まる
-マガタタラ、また邪魔立てする気か?-
"そう怒らないでよ、テラスも楽しんでたでしょ?最後まで見ちゃってさぁ"
-さっさと消えろ-
"おーこわ、またね、えーと...リルルちゃん♪"
笑う影が路地の影に飛び込んで消える
何故か私は別れを惜しむようにその路地に手を伸ばしていた
-こっちだ、こっちに来い-
鳥の鳴く方角に向きを変える
埃と金貨の上を飛ぶ鳥を追って走る
次第に無気味な冷気が漂ってきた