※この作品はR-18です。

骸の島『ヘロドトスの骸』   作:トウトウ@脳缶

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影銘 三途翔 (上)

私はどこか寝る場所を探して消えかけた道の上を歩いていた

脚が痛い訳でも疲れている訳でもない、眠くもない

久橋の中に犠牲者の魂が残っている限り命は繋がれる

便利な分ちょっと寂しい

 

宿探しの理由は落ち着いて刀の整理をする場所を探しているからだ

何かある毎に刀を拾って影のアイツに呑ませていたせいで大変な事になっているそうだ

だが場所がない、道端で刀やら苦無を並べる訳にもいかない

「こんな場所に宿なんてないわよ~」

”宿じゃなくてもさ、無人の廃墟とか...”

「もっとないわよ」

 

 

"ねぇ"

「なによ」

”言うか迷ってたんだけど...”

「?さっさと言いなさいよ」

”尾行されてない?”

 

歩みを止め、錆鉄踊を差す

(...何時から?気付かなかったわ...)

"数刻前から"

(もっと早く言いなさい)

(で?どこ?)

"君から見て右後ろに何人か居るよ"

"木の上にも二人"

(面倒ね)

"でも、何かしてくる訳じゃなさそうだよ"

(機会を探してるのよ)

 

再び歩き始める

周りを見渡しながら歩いていると蔦の這う建物が見えてきた

"あったよ!廃墟!"

「その前にやることがあるでしょ」

「方角は変わってないわよね?」

”変わってないよ”

 

錆鉄踊を追跡者の居るらしい方向に向け、針を撒く

幾つか苦痛の声が聞こえた

「沢山撃つと当たり易い 本当ね」

"ヘタな鉄砲だね"

「的が隠れて見えないのよ、しょうがないじゃない」

 

木上から黒装束の二人組が刀を持って降りてくる

錆鉄踊を閉じて一人を射ち、錆鉄踊を下げる

針の刺さった一人が地に叩きつけられるともう一人が駆け寄ってきた

振られた刀を久橋で受け流し、首に久橋を押しあて引き切ると

血が吹き出し倒れる

 

藪から手裏剣や針が飛んでくる

錆鉄踊を広げてそれを防ぎ、久橋を鞘に戻す

回り込む足音が聞こえ、錆鉄踊を閉じながら禍鑪を抜き

針を射ち返しながら錆鉄踊を手から離すと袖口から赤黒の手が伸びて回収する

禍鑪を両手で持ち直し手裏剣を跳ね返す

左右から刀を逆手に持った黒装束達が跳んできた

それらを切り落とし、振られた刀を叩き折る

刀を折られた黒装束達は鎖鎌を取り出す

 

禍鑪を地面に刺し、手を横に伸ばす

「丑三、」

影から伸びる手が禍鑪を引き込みながら丑三の柄を差し出す

黒装束達が鎖を投げる、私は丑三の柄を使み、居合いのように丑三を使い鎖を斬る

鎖が切断されて宙を舞う、それの間を縫う様に黒装束の一団に踏み込み黒装束達斬る

驚く程綺麗な切り口から臓物と血を流しながら次々と絶命していく

「うっ、思った以上の切れ味ね...」

 

後ろから手裏剣が幾らか飛んでくる、丑三でそれを防ぐと透き通るように切断され、

二つに避けた手裏剣が此方に飛んできた

「ッ!」

左手で久橋を抜いてそれを弾き落とす

「防ぐなら峰ね...」

 

再び飛んできた手裏剣を久橋と丑三の峰で防ぎ

影に声を掛ける

「傘!」

影の中から錆鉄踊が飛び上がり、手裏剣を落とした久橋を鞘に戻しながらそれを取る

針を射ち、手裏剣を丑三で落としながら手裏剣を投げる集団に向かっていく

数を減らすと集団が分散する、その一人一人に針をばら蒔き、依然前進し集団に飛び込む

針をばら蒔きながら丑三を影に落として手を下に伸ばす

影から禍鑪を持った手が伸びる、黒装束の男達が小刀を抜いて飛び掛かる

 

禍鑪を受け取り、無意識の内に動く体に身を任せて禍鑪をふる

赤黒い閃光の内に黒装束達が身体中から血を噴きながら巻き上がっていた

黒装束達が地面に落ちる

禍鑪を構え、辺りを見渡す

 

 

藪から苦無を構えた血だらけの男が飛び出す、男を禍鑪で斬り払う

男の身体から球体がこぼれ落ちる

(火薬!)

爆発に禍鑪の刃を向け、熱と衝撃を禍鑪に無理矢理吸収させる

爆風で身体が後ろに押される

 

「流石痛みすら喰らう妖刀ね、炎も食べたわ」

"あんまり育ってない禍鑪に無理させないでくれよ"

「折れなきゃ直ぐ治るんでしょ?」

"育つ為の魂を使うんだよ?まったく"

「そのぶん炎食べたでしょ」

”魂以外は修復に使えないの!”

「初耳ね」

”一回言ったよ!?”

 

面倒な説教を聞き流しながら廃墟に向かって歩いていく

廃墟は見た感じ何かの寺の様だった

"――だからね?聞いてる?"

「はいはい、着いたわよ」

”早く入ろっ”

 

廃寺に入り中を見渡す、

「今すぐ崩れるって訳ではなさそうね」

”じゃあ出しちゃうね”

 

影の中から真紅の笑顔を浮かべた漆黒の人型が浮かび上がり

頭上で止まって手を広げる

”気をつけてね”

 

空間を穿つように黒く粘ばつく孔が空き、黒い虚空が床に垂れる

垂れた虚空が拡がり、私の近くまで広がり、脚を引く

「ちょっと!気を付けてよ!」

"別に汚くないよ"

 

床に滴った虚空が染み込むように消え

虚空から刀や苦無が飛び出して床に落ちる

「ホントにたくさんね...」

"君が戦う度に拾ってたらこんなに集まったんだよ"

「貧乏性ね、こんなにどうするのよ」

"使わないのは奥の方に仕舞っておくよ"

「奥とか手前があるのね...」

「まぁ取り敢えず刀は8、9割りは奥に入れて置きなさいよ」

"はーい、苦無と手裏剣は?"

「私は使わないわよ」

”ん~···、まぁ使える様にしとく”

 

空間から虚空が床に流れ落ち、刀や苦無を呑み込んでいく

自分の側を虚空が流れ、床に消えていく

「ちょちょちょ...もっと丁寧にやりなさいよ...」

”当たってないでしょ”

 

虚空が全て消えるまでにかなりの時間を要したが無事に整理は終わったようだった

すっかり夜も更け、眼を閉じた私の耳に風を切る小さな音が聞こえた

その瞬間、無意識に手が禍鑪の柄に伸びる

禍鑪を引き抜いて音の聞こえた方に切っ先を向けると何かがぶつかる

それは跳ね返り、暗く影の落ちた梁に"戻って"いく

「なんか来たわよ...ッ」

”ありゃ、気配を感じなかったよ”

「ほんとぉ?」

”酷いなぁ...”

 

 




つづく...
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