※この作品はR-18です。

骸の島『ヘロドトスの骸』   作:トウトウ@脳缶

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影銘 三途翔(下)

禍鑪を引き抜いて音の聞こえた方に切っ先を向けると何かがぶつかる

それは跳ね返り、暗く影の落ちた梁に"戻って"いく

「なんか来たわよ...ッ」

”ありゃ、気配を感じなかったよ”

「ほんとぉ?」

”酷いなぁ...”

 

微かな音を再び感じ、そちらに禍鑪を構えて振るう

火花が上がり、僅かな風を感じ、微かな風音が遠退く

(姿が見えない?)

見渡す一瞬、差し込む弱い月光が何かに反射した

何かが動き出す

(ソコッ!)

禍鑪を振るうと火花が上がり、何かが暗い梁に戻っていく

(いや...気配も殺気もないけど何かがいるわ...)

(姿も見えている筈なのに...見えない)

 

飛来する何かが無意識に動いた禍鑪に当たって梁に戻っていく

火花の灯りに禍鑪が照される

「苦無ッ!全部よ!さっさとして!」

 

また何かを跳ね返して禍鑪を素早く鞘に戻す

自分の影から不気味な殼の様な物で束ねられた苦無が現れる

それを受けとり、身を屈める

頭上で何かが作り出した風が髪を撫でる

 

苦無を三本抜いて指の間に握り、何かが戻って行った方向に投げる

苦無は空を切る、もう一度苦無を三本握る

(来たッ!)

此方に向かう何かに久橋を当て、身を躱わして受け流す

受け流した方向に身を向け、切られる風の音を聴きその方向に苦無を投げる

何度か目の投擲で違う音が耳に届く

苦無を束ねをほどき、音の近くに全ての苦無をバラ蒔く

梁の上で苦無が弾かれる、妙な火花に藍色の装束照が照される

「見付けたわよ...いえ、見えたわ」

 

 

 

藍色の装束を来た男が梁から降りる

その手には華やかな装飾が施された巨大な手裏剣を盾の様に持っている

手裏剣は白と金の刃が食い違いに重なり、箔の貼られた彫刻が掘られている

「あれじゃ人を斬る道具じゃないわよ...」

"あれは三途翔だね"

「今忙しいのだけれど」

「どうせ黒本村正が作ったんでしょ?」

”惜しいね”

"黒本村正が刀を打つ見本にした手裏剣だよ"

「なんで刀鍛冶が手裏剣見ながら刀打ってんのよ」

 

藍色の装束を着た男が跳ぶ、久橋で打ち合い、禍鑪を抜く

"気を付けてよ、禍鑪と同じ類いだからね"

「何いってんのよ、手裏剣と太刀よ」

”三途翔も人喰い刀って事”

「手裏剣よ」

"細かい娘だなぁ..."

 

男が三途翔を振りかぶって跳び上がる

それを避けて蹴りを入れる

「話の途中でしょうがァッ!」

「まだ言ってないこと事あるんでしょ!?」

"う、うん..."

"もう大丈夫みたいだけど三途翔は意識されなくなる力が有るんだ"

「一々もう大丈夫なことを言わないで頂戴ッ!」

"うん...ごめん"

手裏剣のうねる刃に禍鑪がぶつかり、音を立てる

 

「もう無い!?」

"え、えっと...急ぎの用事は ないです、ハイ..."

 

男を押し返し、突きを放つ

それを避けた男の切り上げを飛び退いて避け

刃を頭の横に構え斜めに傾ける

薙がれた刃に刺し込むように刃を出し、

それを支点に体を弾き、回転と体重を掛けた禍鑪の刃を落とす

防御の為に掲げられた三途翔を弾き落とし、刃が肩から食い込む

血飛沫が飛び散り、禍鑪が血を啜り、魂を削り取る

 

禍鑪を振り、男を何度も切り付ける

男の胸に禍鑪が突き刺さり、刃が止まる

男の隠された口から血が溢れだす

「その格好...雇われかしら」

「うぐ...っ...死神は三度欺けぬ...っ...幸運が続くと思うな...」

「まだ一回だけよ」

禍鑪を引き抜き、止めを差す

血溜まりから不自然なほど血の付かない三途翔を拾う

そこには亡者の苦しみもがく姿が彫られている

「地獄道、餓鬼道、修羅道に...畜生道かしら...?」

「四悪趣ね、全然三途じゃないじゃない...」

"修羅道は書かれて無かった筈だけど..."

「まぁ ハイ」

三途翔から手を離すと影から伸びた手がそれを掴んで影に引き込む

廃墟の端に転がる何かの残骸に腰掛ける

「アンタさっき急ぎじゃない話が有るって言ってなかった?」

"あ~そうそう"

"さっき言ったみたいに三途翔は黒本村正が禍鑪の見本にした手裏剣なんだけど"

(長くなりそうね...)

"そこは大丈夫だよ、直ぐ済むから"

"三途翔に感銘を受けた黒本村正が初めて作った妖刀こそが禍鑪なんだ"

「あんまり私には興味ない話ね」

"連れないなぁ...君だってその禍鑪にお世話になったでしょ"

"自分で使う物の事だよ?"

「はぁ...それなら聞いておくわ」

”何から聴きたい?”

「なんでもいいわよ...」

「そぉねぇ...じゃあ名前のこと教えて頂戴...」

"まず禍鑪っていうのは僕の名前のマガタタラに禍と鑪場の鑪を当てて"

"禍鑪って名前になったんだよ"

「アンタの名前だったのね...初耳よ」

"そういえば名乗って無かったね..."

「あとなんか縁起悪いわ」

"他にいい漢字が見付からなくて"

"後はひとりでに鍛えたり直したりするから鑪って字が―ー"

「そのくらい解るわよ」

 

影が再び喋ろうとするのを静止する

「もう寝るわ、十分話したでしょ」

"えー"

 

寝ると言っても血溜まりがある場所で横になる気はしなかった

しょうがないから深く残骸に座り込んで、腕を組むと欠伸が出た

月は私の顔に白い光を投げかけている

後2、3日で満月だろう、目を瞑るとまた欠伸が出た

嫌に目が冴えて全然寝付けなかった

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