※この作品はR-18です。

骸の島『ヘロドトスの骸』   作:トウトウ@脳缶

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幻鋭 儷蓬(上)

"ねぇねぇ、ここら辺で近々戦が有るって話ちゃんと聞いてた?"

「ふぇ?」

買ったばかりの干し魚をかじっていると突然の問い掛け、思わず声が出た

"買い物に夢中で聞いてなかったね"

(なによ急に、店の前で変な声出ちゃったわ)

"戦に際して武闘大会をやるんだって"

(知らないわ)

"さっき店の中で話してたじゃん"

(盗み聞きするなんて良くないわよ)

"盗み聞きする必要なんて無いくらい大声だったよ"

(知らないわ)

"...."

(続けないさい)

"あ、うん....勝ち進むと賞品と賞金がでるんだって"

"景品は二振りの刀だよ"

(ふーん)

噛んでいた魚を飲み込み

二尾目を口に含む

 

"興味薄いね"

(気分じゃないの)

"その二振りの刀の名は儷蓬――"

(黒本村正の刀でしょ?)

"...そうだよ"

(女でも出れるかしら)

"やる気になってくれて嬉しいよ"

(やらなきゃアンタが五月蝿いでしょ)

 

―

 

干し魚を咥えながら受付に並んでいると

珍しがるような視線の中から声を掛けられた

それは大男で馬鹿みたいにデカい図体をした野武士だった

「珍しい髪の嬢ちゃん、並ぶ所間違えてるぜ」

「あら?ここで良い筈よ、貴方みたいにデカいのが居るんだもの」

「デカいってより”馬鹿”デカイね」

"ちょっと、始まる前から喧嘩する気?"

(鉄脚鬼灯出せる様にしといて)

"死んじゃうよ..."

(人間そう簡単に死なないわ)

 

「なんだとぉ?」

「馬鹿って言ったのよ、判らなかった?」

「もっと相手を考えて喧嘩を売りな、嬢ちゃん」

「俺は気が短いんだ、次はないぞ」

「そんなにカリカリしないでよ、頭に栄養回ってるの?」

私が頭を指差すと周囲がざわつく

「なんだとぉ!」

大男が拳を振りかざす

(鬼灯!)

蹴りを放つと脚が炎に包まれ

炎の中から彫刻の施された鋼鉄の足が顔を出す

足が拳を振りかざした大男に突き刺さる

「う゛あぁ!」

大男が傷を押さえて軽く吹っ飛ぶ

「あら大丈夫?以外と軽いのねぇ...頭に空洞があるからかしら?」

大男の頭を軽く叩く

「こいつ...ッ」

大男が腰の刀に手を伸ばす

禍鑪を抜いて男に突き付ける

「私の方が早かったわね」

「くっ...」

「短気は損気 よ」

禍鑪を鞘に戻し列の最後尾に戻る

男に手を振る

「お互い並び直しだわ」

"君もなかなかの損気だよね"

(余計なお世話)

 

後ろから気配を感じると

足音と叫びが聞こえる

禍鑪の鞘を持ち、後ろで刀を振る大男の鳩尾を突く

「お゛お゛お゛ぁ」

声を聞いて振り向く

「そんな不意打ちじゃ駄目よ、もっと鮮やかじゃなきゃ」

大男の首を鞘で突く

「か゛ッぁ...」

 

大男が人形の様に倒れて、直ぐに意識を失った

私が列の最後尾に着くと列から人が抜けていく

"なんか減ってない?人"

(本当に並ぶ所間違えたかしら?)

"間違ってないよ"

 

順番は直ぐに回って来た

受付を済ませ、説明を受ける

どうやら本物の武器を使って行うらしかった

「本当に飛び道具以外ならなに使っても良いの?」

「ええ」

"太っ腹だね"

(どっちかと言えば大胆じゃないかしら)

"そうかな?"

(そうよ、後ろも控えてるし話はあっちでしましょ)

"ん~、別にいいや"

 

ー

ー

 

久橋を腰に提げて丑三を手に取り

鉄脚鬼灯を足に装着する

"刀は決まった?"

(ええ)

"途中で変えれないよ"

(解ってる、さぁ一回戦よ)

 

 

「どちらかが気絶、死亡、または場外に出した者が勝者となる!」

「時間無制限、始め!」

試合の為に縄で囲まれた闘技場に入る

次に短刀を持った男が入ってきた、何故か短刀を回したりお出玉している

「ケケケ...棄権するなら今の内だぜぇ」

(なんか変なのが出てきたわよ)

"油断大敵 だよ"

「俺は強いぜぇ、無茶苦茶強いぜぇ」

「ああそう」

「この短刀には毒が塗ってあるんだぁ~」

(ネタばらしが早いわね)

"余程自信があると見た、油断大敵だよ"

(私はただの馬鹿だと思うわ)

「この毒は一滴で獅子すら殺す、死にたくなかったら棄権しなぁ」

「しないわよ、速く始めましょ」

「後悔しても遅いぜ...あっ」

男が手の中で回していた短刀を落とす

丑三を構える

「隙あり!」

「あああっ!待って!待って!」

「ああ!?」

丑三を降り下ろす

"待ってあげて!"

額に刃が刺さる寸で刃を止める

(なんで待つのよ)

"可哀想じゃん"

 

 

男がゆっくりと短刀を拾って元の位置に戻る

「ケケケ...棄権するのが賢明だぜ...お嬢さん...」

(仕切り直したわ!なんで笑えるのかしら!)

男が短刀を回しながら舞い始める

当たりもしない回し蹴りを放って跳び上がる

"すごいぞーかっこいいぞー"

(もう斬っていいかしら?)

"もうちょっと見ようよ"

「手も足も出ないだろう...早く棄権しないと死んじまうぜぇ...」

「せいっ!」

舞いの止まった一瞬、丑三の持ち方を変える

短刀を丑三の峰で叩き落とし、男に斬りかかる

「アーッ!待って待ってっ」

"待って上げて!"

(あ!?)

"だって!可哀想でしょ!"

(もういいじゃない)

丑三を下げて後に下がる

男が短刀を拾って元の位置に戻る

 

「ケケケ...始まってから待ったは無いぜ...後悔する前に棄権しなぁ」

(ハッ!無かった事になった...!?)

"なかなか滑稽だね"

「怖くて声も出なくなったのかぁ...?ケケケ...」

(呆れて物も言えない...)

男が短刀の刃を舐める

「あっ、待ってッ」

"あー"

「やっと棄権するきになったようだなぁ」

「そうじゃなくて...毒...」

「毒...あっ...」

男が前のめりに倒れる

"倒れる時は前のめりだね"

「やっぱりただの馬鹿だったわ...」

 

「勝者!桜箒 梅雨!」

"勝ったじゃん"

(うれしくないわ...)

 

-

 

(次は二回戦よ)

"今度は大丈夫かな"

(仮に馬鹿が居ても勝ち上がるわけないから大丈夫よ)

刀を確かめて縄を潜る

 

闘技場の中に入ってもなかなか相手が来ない

少し待っても相手は現ず、審判に声を掛ける

「全然っっ来ないじゃない、棄権?」

「少々お待ちを...」

「少々はもう待ったわよ」

「いましばらくお待ちを...」

「いましばらくもとっくに過ぎてるわ」

「長らくお待ちを...」

 

「はあぁ...」

"巌流島みたいだね"

(何よそれ)

"知らないならいいよ"

(ちょっと気になるじゃない)

 

対戦相手らしき何者かがノソノソ歩いてきた

まるで銅像の様に分厚く重厚な鎧に身を包んでいた

頭や肩には鋭い刺まで付いていた、その歩みは牛の如く鈍かった

「あっ、やっと来た」

ノロノロと歩み、縄を潜ろうと悪戦苦闘していた

何度も刺を縄に引っ掛けては戻るを繰り返していた

「速くしないよノロマ!」

冑の奥からくぐもった声がする

「...て...くれ」

「え?聞こえないわよ」

「......む...く...」

"頼む手伝ってくれだって"

「ああ...しょうがないわね...ったく」

鎧の刺に引っ掛かった縄を退け

闘技場の中まで引っ張る

 

「時間無制限、開始!」

 

鎧の頭部が動く

「ま......な...こ...め」

「なに?」

"また会ったな小娘だって"

「あ~、何処かで会ったかしら?」

「...き...の...ゎ......」

「何?」

"先の屈辱忘れぬぞだって"

「えぇ?誰よ、名乗りなさいよ」

"あの人受付で喧嘩?した人だよ"

「あぁ~あの時の大男ね」

「...い......な..でも......ぞ」

「もしかして...私が喉潰しちゃった...?」

"どんな剣でもこの鎧には通じぬぞだって"

「通じぬって、そんな重い鎧で動けないじゃない」

「斬られなくても疲れて死にそうよ?」

 

相手が片足そ下げ、爪の着いた腕を身体の前に構える

「...っ..!」

「なんて言った訳?」

"さあ来いぃっ!って張り切ってるよ"

(来いっ!て動けないだけじゃない)

"二戦目もお馬鹿さんだったね"

丑三を握り直す

「まったくよ...」

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