扉を蹴破る、この中にアイツがいるのだ、Systems CorpのCEOがいるのだ
目の前には血にまみれたオフィスとひび割れた窓、観葉植物
部屋には欠けた警備員の死体が幾らかと血痕、臓物
血生臭いデスクには頭が削られ、中身を机に溢した死体が椅子に座っている
部屋の中に生きた人間は一人
黒いパーカーと不気味な緑の瞳、顔に貼り付いた奇妙な血のような跡
身体はアタシと同じで血塗れだ
名前はヘロドドス、本名かどうかは解らないがアタシはそう聞いた
その男がこちらに視線を向ける
「よお、タイガーライト」
「ヒカリでいい」
「もうヤッちまったぞ、ヒカリ」
「見たら判るよ、そんぐらい」
「...」
「...」
「どうするんだ?おしまいだぜ」
「どうしようかねぇ」
「何か来るぞ」
「わあってるよ」
ヘロドドスが大きな拳銃に弾をこめる
アタシも微かな音と確かな気配を感じていた
部屋に鉄色のパワードスーツを着た女が入ってきた
女と言ったのは会うのが初めてじゃないからだ
昆虫の様な外骨格と短い触角、つり上がったような四つの複眼
底が高い靴を履き両手には籠手のような一際厚い装甲が付けられている
奴の名前はファントムシュガー、本名は知らない
「遅かったみたいですね...」
「残念だったな、ファントムお前の飼い主はもう居ないぜ」
「ええ、わかってます」
「家にお帰り、お前はもう自由なんだ」
「帰る家はありませんが、お言葉に甘えて自由にさせて貰いましょう」
ファントムシュガーが両手を小さく動かす
すると光のブレードが籠手から現れる
「なんのつもりだ?」
「貴方を殺します、良いでしょう?」
「もうその必要は無いだろ、飼い主が死んだんだ」
アリスを腰から引き抜く
「これは私の意志ですよ、もう邪魔な指図も足手纏いもいません」
ヘロドドスがひび割れた防弾ガラスを叩き割る
「手伝おうか?それとも――」
「先に帰ってな、ここからはアタシだけの問題だぜ、共闘は終わりだ」
「そうか、もう逢わないことを祈ってるぜ」
「コッチも御免だぜ、相棒」
ヘロドドスが窓から飛び降りる
「一人でいいのですか?私は構いませんでしたが」
「ヒーローの最後は孤独なものさ...」
「そう...まぁいいでしょう」
ファントムシュガーが腰を落とす
「
ファントムシュガーがタイル張りの床を蹴り
ブレードを目の前で交差させる
光の十字が近付く
それは激突するのではないかという距離で十字がほどける、
残光の十字架がヘルムの虎の下顎を掠り、白い火花を散らす
手を拡げたファントムシュガーにアリスを振るう
ファントムシュガーが脚を上げる爪のような形の刃が足に現れ
アリスを引っ掻ける、その脚を振りほどき、一歩下がる
ファントムシュガーが一歩踏み込み、横凪ぎに右手のブレードを振る
アリスを下向きに構え、ブレードを受け止める
ファントムシュガーが左手のブレードの剣先をこちらに向ける
右手のブレードを弾き左手を掴み、そのまま勢いを使って投げ飛ばす
ブレードが仕舞われ、ファントムシュガーがタイルに叩きつけられる
ファントムシュガーの頭にアリスを降り下ろす
それを二本のブレードが受け止める
ファントムシュガーが後ろ回りに飛び起き、両足で蹴りを放つ
その蹴りで後ずさる
ファントムシュガーが身体に回転を掛け、二本のブレードを一度に振る
それを半ば無理矢理アリスで受け流す
白い火花と共に二人がバランスを崩した
ファントムシュガーがブレードを畳み、殴りかかる
拳を手で弾く、ファントムシュガーがブレードを展開
二本のブレードとアリスが重なり、白い火花を撒き散らしながら競り合う
押されて一歩、また一歩と下がっていく
ヘロドドスが割ったガラスの破片足が当たる、いまにも落ちそうだ
重力操作を動かし
唐突かつ迅速に後方へ、一瞬片手を離し、引っ張りながらスライドする
窓の枠に残ったガラスを弾き飛ばし、宙に浮く
「くっ!」
ファントムシュガーがバランスを崩して落下する
重力を強め、落下するファントムシュガーの方向に重力を向け蹴りを放つ
「うぐっ!」
背中に蹴りを受け、身体が反り返る
そのままコンクリートの床に叩きつけ
灰色の地面にめり込んでもがくファントムシュガーに削岩機の様に何度も蹴りを放つ
もがきが止まるのを見て重力操作で跳ね返り、少し遠くに着地する
背中に蜘蛛の巣のような亀裂を付けたファントムシュガーが立ち上がる
亀裂から全身に紫電が流れる
「まだやるか?」
「ハァ...ハァ...私を縛る者は...もう...居ません...くっ...」
ファントムシュガーが二本のブレードを此方に向けた
身体を精神力だけで動かし、走り出す
走り寄ったファントムシュガーが右手で切り上げる
その右手を肘先で切断する、光の剣は掻き消え赤っぽい冷却液が噴き出す
「くぅ...」
よろめいたファントムシュガーの機械的な断面から垂れる液体は血のようだった
ブレードを突き刺そうと左手を後ろに下げる
一歩踏み込み、左手肩を切り落とす
赤い液体が噴き出し、ファントムシュガーが叫びを上げる
「あ゛あ゛!」
ファントムシュガーが地面を蹴り、短く切断された腕で殴りかかろうとする
その腹にアリスが突き刺さり、貫通する、傷口から赤い液体が溢れている
「ウ゛!ガハッ!」
ファントムシュガーの口から液体がこぼれ落ちる
アリスが引き抜かれると膝を突き、肩でもたれ掛かる
数歩下がると地面に倒れる
「まだやるか?」
「ゴホッ!ゴホッ!...まだ...ぅ...ぁあ...」
足で身体を持ち上げ、仰向けにする
「ハァ...ハァ...」
アリスの剣先を右目の上に運ぶ
「どうしたい?」
「ハァ...ハァ...私は...わたしは...私...は...」
「死にたいか?」
「ぁ...殺せば...いい...じゃ...ない..で...すか...」
「ヒーローは無闇に殺さないものさ」
「ハァ...ハァ...どうせ..助かり....ませ..ん..よ」
「いい医者と技術者を知ってる、お前が助けを求めるなら助けるぞ」
「ハァ...ハァ...」
「...」
「ハァ...ハァ...」
「どうした?」
「ぅ..ぅ...私は...あなたの...敵です...よ...」
「おいおい、アタシはヒーローだぜ」
「ぅう...もう...眠...て...しまい..た...ぃ...で...す...」
「本当に死にたいのか?」
ファントムシュガーのヘルメットを外す
艶のある黒髪が赤い水溜まりに浸る
その眼は何処か、馴染み深かった
剣先を再びその女に向ける
「...」
「死にたいなら殺してやる」
「...ぁ」
「おい、泣くなよ...」
「く、うぅ...えぐっ...」
「はぁ...素直じゃないヤツ」
首の装甲を掴み、彼女を引き摺る
"変身"を解き、携帯端末を手に取る
『博士、急患だ直ぐに行く』
『そうか、状態を教えてくれ』
『ああ、わかった――
「SOS出したからには勝手に死ぬんじゃないぞ、ファントム」
「橘...橘です...」
「へ?」
「橘...蜜柑..です...なまえ...」
「そっか...アタシはヨシコシ・ヒカリさ」
ポーラースター計画
被験体346-2
346-1の義体から摘出された卵子により誕生
名前は橘·蜜柑だったが親がテロで死亡
ワイアット家に引き取られアリスに名前を変えられた
その後、実験の為に連れてこられた
能力 念動力
能力使用に自身の左手を使用
範囲は狭く、視界に捉えたものにしか作用しない
静止していればかなりの重さの物も持ち上げる
動体も軽いものなら止めることが出来る
≫ ファントムシュガー
試製パワーアーマーANGETSUの適性大
視界が狭く能力使用に支障がでるが許容範囲内
≫ 346-1の処理の任務に従事中