初夏を思わせる陽気の平塚野球場
そこに続々と姿を見せる可憐な美女達…
今からここで行われるのはアイドルのコンサートではない
パチスロメーカー合同トライアウト…
戦力外通告を受けた萌えスロキャラ達が、再就職を目指す面接会場だ
「カワイイ僕がここに居るのは何かの間違いなんだにゃ…」
番組が密着したのは業界屈指の人気メーカー、平和オリンピアをこの春解雇されたアーニャたそ、19歳
同社の人気シリーズ、『麻雀物語』の最新作に於いて初のレギュラーを獲得した彼女だったが、平和オリンピアは同作の不振を理由に彼女を解雇した
(カワイイ僕はまだまだやれるんだにゃ… 僕を解雇した事を後悔させてやるにゃ…)
不完全燃焼の思いがアーニャたその足を、このトライアウトへと向けさせたのだ
トライアウトは投手と野手に分かれた実戦形式で行われる
投手は1イニング、野手は2打席とその間の守備…
与えられるチャンスは少ない
投手登録のアーニャたそは4回にマウンドに上がる
最初のバッターは元NETのユウ
現役時代から全く衰えを見せぬストレートで簡単にツーストライクを取ると、最後は得意のチェンジアップを外角に沈めて空振り三振を奪う
立ち上がりの感触はまずまずの様だ
だが、次に迎えるバッターは元SNKで三作品もの主演を勤めるなど、4番で活躍した実績を持つ神野みこし…
強打者の登場に力んだのか、アーニャたそはノーストライクツーボールとカウントを悪くする
どうしても欲しいストライク…
そんな思いで甘く入った3球目を神野は見逃さない
快音を響かせ打球は三塁線を抜けて行く
神野は一気に二塁へ…
いきなりのピンチ、マウンド上のアーニャたそは大きく肩で息をする
続くバッターは元KPEのラビィ 初球が狙われた
ピッチャー返しの打球は二遊間を抜けて行く
神野が三塁を蹴る
更にここでセンターの元同僚ナツがボールを後逸
バッターのラビィまでもがホームに帰る
更にナツが追い付いたボールを雨水用排水管に誤挿入
今度は討ち取った筈のユウまでもがホームベースを駆け抜ける
信じられない不運も重なり、いきなりの3失点…
更にこのナツの後逸が順押し特リプの薄い所を引き、まさかの超倍チャンス突入
変換保留の連打に5倍、7倍、8倍、10倍、更には忍保留に撫子保留まで加わって、まさかまさかの158倍! 3×158で474失点!
自身のスロキャラ人生でも記憶に無いという3桁大量失点にマウンド上で呆然と天を仰ぐアーニャたそ…
ここで交代を告げられ、彼女のトライアウトは事実上終了した
試合終了後、スポーツタオルに顔を埋め球場を後にするアーニャたそに、我々は声を掛ける事が出来なかった
トライアウト… ここで萌えスロキャラ生活に復帰できる者は極僅か…
かつて自身も萌えスロキャラとして一時代を築き、現在はセガサミーHDのスカウト部長を勤める神無月葵は現在の萌えスロキャラ事情をこう語る
「今現在、パチンコ・パチスロを取り巻く環境は悪化の一途を辿っています そんな中で手っ取り早く集金の見込める萌えキャラの需要は加熱気味と言っても良いでしょう それだけに競争とサイクルも激しく、市場需要のど真ん中を突かなければ、この世界で生き残るのは至難と言えるでしょう」
翌日、我々取材陣の前に姿を現したらアーニャたそは、もう初めて出会った時のふてぶてしい面構えの彼女だった
「今回はほんの肩慣らしなんだにゃ… 秋にはきっと本気の僕をお見せできるにゃ…」
これから一夏、みっちり身体を絞って秋のトライアウトに望むという彼女
その時には一回り成長した彼女と、更なる強力なライバル達に出会う事が出来るだろう
我々はアーニャたそと再会を誓って平塚野球場を後にした
東山「華やかなりしパチスロ業界 しかしその影では波瀾万丈の人間ドラマが繰り広げられているのです 彼女達の頑張りが、私達に大きな夢と勇気を与えてくれている事を忘れないでおきましょう」
来週のこの時間は…
「あの天然美少女が常夏ハワイで珍道中! 『ナツのちょっぴり南国育ち!』をお送りします!」