臨時収入による休暇が終わった私は早速次のお宝がある場所へと向かっていた。
情報によると何でも町から少し離れた場所に湖があってそこに太古の昔に湖に沈んだ町があるらしくてそこのどこかにお宝があるらしい。
「ここか~」
到着したのは良いけど地面にいくつか足跡があるから私よりも先に挑戦している人が数人いるみたい。
まぁ、足跡から察するに明らかに男の物なんだけど今回はスタートから遭遇していないし、前回のようなことにはならずに済みそう。
「んじゃ、準備に取り掛かりますか」
息を大きく吸い込んでから水の中へと潜り、目を開けると予想通り、底が見えない沼に入り込んでしまったかのようにずーっと道が下に向かっている。
どれくらいの距離があるかは知らないけど確実に素潜りじゃ無理。
「となると別のお宝が必須ってことかしら……あ、そうだ」
ふと鉱山迷宮で出会った男たちから貰ったお宝の事を思い出し、低位の転移能力を持つお宝で幾つかめぼしい物を手元に持って来る。
「確かセーフティとは別に保護膜を張る奴が……あった」
一回試しに使ったことがあってその時は太陽の暑い日差しをカットするために使ったけど太陽の日差しをカットできるんだったら水もある程度はカットできるはず。
そんな風に考え、お宝を使用すると体にぴったりと不可視の薄い膜が張られる。
「おっ、使える使える」
薄い膜が張られているおかげで水も入って来なくなり、呼吸をしたまま道をまっすぐに降りていく。
深く、下へ潜っていくごとに外の光はだんだん弱くなっていき、次第に暗くなってくるけどそれと同時に徐々に道幅が広くなっていく。
「どれくらい潜るんだろ」
元々、この周辺にあった街という物自体が湖の上に浮いていたらしくて私達とは少し違う独自の生活様式を築き上げていたみたい。
まぁ、そういう話も太古の昔から伝わる話だけであって実際にあったかも分からないし、最近の研究じゃ確かにここら辺は湖だったらしいんだけど町は無かったとか言われている。
結構な深さまで潜ったと思うけど太古の昔に沈んだとされている街らしきものは一向に見えてこない。
本当に街なんかあるのか、と疑問を感じ始めたその時、耳元から嫌な音が聞こえてきた。
―――――パリッ
「あっ、ヤバイ!」
やっぱり低位のお宝ということもあって持続時間は短かった。慌てて他のお宝で代用しようと探すけど中々良い物は見つからない。
そして次の瞬間―――――。
「んぐっ!? んんんんんんん……?」
ベリベリベリッと薄い川が捲れるように保護膜が消え、慌てて呼吸を辞めるけどどこかからか何かの匂いらしきものを感じ、恐る恐る呼吸をしてみると水の中だと言うのに普通に呼吸が出来た。
どうやらすでにお宝の効力が発揮されている範囲内に入ったらしい。
「水の中でも呼吸が出来るなんて……やっぱりお宝って凄い」
改めてお宝の凄さを実感しながらもゆっくりと下へ落ちていくと遠くの方に建造物のような物が見え、目を凝らしてみると建物の屋上らしきものがいくつも見えた。
薄暗くてその全容はハッキリとは見えないけどかなり広い。
「よっと……まさか水の中で普通に活動が出来るなんてね」
地面に降り立ち、周囲を見渡してみる。
今まで水の中にあったせいか住居なんかはほぼ全てがお魚さんの溜まり場というか遊び場になっていて割れている窓から魚が飛び出てくる。
「こんなに果てしなく広い街からお宝を見つけ出すの? 難しくない?」
上から降りてくる時でさえ、その全容が全くつかめないくらいに広かったっていうのに地上に降り立ってからお宝を探すとか無理にも程がある。
何かしらの手がかりでもあればいいんだけど。
「この感覚だと長いことかかりそうね」
広大な土地からお宝一つを見つけ出すのは中々難しい。
でも恐らくだけど今回のお宝は水に関する力を持っているから今後、水不足に関しては解消されるだろうけど普段から持ち歩くには向いていないわね。
だからあまり気にはしないんだけどちょっとお金が心配。
「まぁ、何日かかろうが食べ物は目の前にいっぱいいるから大丈夫なんだけど……ん?」
その時、向こうの方でお腹に響く様な鈍い音が聞こえてきたから慌てて近くの住居の中に入るとその鈍い音が大きくなってくる。
割れた窓ガラスから少し顔を出して外を覗きこむと何やら人の形をして石で作られた大きな靴のような物を履いたものがのっそのっそと歩いていく。
うわぁ、素っ裸じゃない。というかなんでガチガチに勃起状態なの?
恐らく、お宝の力で湖の奥底に沈んでいたであろう住人達を動かしているんだろうけどわざわざ素っ裸で動かさなくても良いような気がする。
あれが今回のお宝を守護している人形さんという訳ね。
そのガチガチに勃起した状態のお人形さんがその場で立ち止まったので慌てて窓から顔を出すのを辞めて住居の中で小さく縮こまる。
すると私の方に気付くことは無く、そのままのっそのっそと鈍い足音を立てて去っていく。
「ふぅ。もしあのまま見つかっていたら確実に犯されていたわね。なんで毎度毎度、潜入する迷宮の中に犯されるような危険があるのよ」
人形がどこかへ行ったのを確認し、家の外へ出てまっすぐ歩きはじめるけど結構な頻度で人形に遭遇するから中々前に進むことが出来ない。
武器らしきものは持っていないけどお宝の力で動かされている以上、人間よりも強い腕力はあるはずだからまともにやりあうのは少し憚られる。
「ん~。この広さだし、全部回っていたらそれこそ何日あっても足りないし……やっぱり地面?」
ここへ来るまでにも地面にはいくつも穴を埋めたような跡があった……でも関係ないでしょうね。わざわざお宝を探しているのに丁寧に穴を埋めることなんてしないだろうし。
―――――ゴトッ
「っっ!?」
その時、足音が聞こえ、振り返ろうとした瞬間、凄い力で肩を掴まれた。
「もうっ! 離してっ!」
「ごふっ!」
「び、びっくりした」
反射的に肘を後ろに勢いよく突きだした瞬間、苦痛に満ちた声が聞こえ、慌てて手を振り払って後ろを振り返るとそこにいたのは海パン一丁に剣を持った小太りの男がいた。
「もしかしてあんたもここのお宝を?」
「そうだよっ、イテェ。いきなり肘打ちするなよ」
「だ、だっていきなりあんたが肩掴んできたんじゃない。変態」
「言わせておけば……とりあえずここに居ちゃまずいぞ」
「どういうことよ」
「とりあえずついて来い。理由は後で教えてやる。イテテテ」
「…………分かったわよ」
男の指示に従い少し歩いたところにある大き目の住居へと入るとそこには男の仲間らしい男性二人がいた。