「ん~」
今、私は協会に張り出されているお宝の情報を見ているけどどれもこれまでに攻略したことがある迷宮と似たような物しかなかった。
まぁ、協会から協会には転移能力を持ってるお宝で移動できるんだけど……。
「流石にここじゃもう厳しいかしら」
私のやり方に一番、あったお宝の情報が掲載されているのがこの町の協会で位置づけとしては初心者が経験を積む場所だったり、休憩がてら、といった人たちが多く来る。
別に似たようなお宝を回収して売り捌くのも良いっちゃいいんだけどそれだと面白みがないというか……そろそろ今のやり方を改めようかな。
「ここじゃ最高でも難度Cくらいしか出てこないし」
「緊急ー! 緊急だよ~!」
そんな声が響き渡り、掲示板に情報が張り出される。人が集まる前にその情報を一目見ようと一番、前に陣取り、確認する。
「……獣を生成するお宝回収……難度は……A……」
時々、緊急を要するお宝回収が張り出されることがあるけどこの町では結構珍しい。なんせここは初心者が多く集まる協会。
こんな緊急指令は滅多に送られてこないのに……という事はこの町にも危険が迫ってるってことよね。
獣を生成するお宝は確かに危険。さっさと回収しないと生み出され続けた多くの獣がこの町に押し寄せて甚大な被害が発生するかもしれない。
本来ならハンターランクDの私は難度Bまでしか受けられないんだけど緊急に関してはそう言った制限は取っ払われる。
「初めてだけど難度Aのお宝挑戦しちゃいますか」
「この回収指令に参加されるハンターの方はこちらへどうぞー!」
恐らくこの指令にはここの協会からだけじゃなくて隣町からもハンターがやってくるはず……危険としては最大の物だろうけど卒業試験と思えば十分。
「行きますか」
――――☆――――
獣を生成するお宝回収指令に参加を表明したハンターは私を入れて五人。珍しく男二人に女三人という女性が多い割合になった。
隣町から派遣されてきたハンターと合流した時には総勢、三十人。その中でも最高ランクと言われているAランクのハンターが二人もいた。もちろん、その二人がリーダー。
「改めて状況を確認しよう。迷宮が構築されたのが確認されたのは今から一週間前。その時は規模も小さかったらしいがこの一週間であっという間に街一つを飲みこむ規模にまで成長した」
「獣はこれまでに確認されているだけでも十種類はいる。しかもそれぞれ特殊な能力を持っていると推測されている。よって討伐班と回収班に分けたいと思う」
というわけでAランクの二人の指示の下、テキパキとチームが二つに分けられた。無論、私は回収班。意外と回収班に女の子が多かった。
そしてAランクのハンターはそれぞれのチームに一人ずつ配置された。
確かにお宝を守護する獣が凄まじく強いことが多いんだからそう考えるわよね……久しぶりにピリピリ感を感じるわね……緊張してきたわ。
「討伐班は迷宮から出てくる獣を討伐しつつ、街へ近づけさせない。回収班は迅速に行動し、お宝を回収して欲しい。危険な指令だが必ず、成功させよう」
そんなわけで二つのチームは迷宮が構築されている場所へ転移能力を持ったお宝で移動を開始した。
まずは討伐班が現場に向かい、獣を駆除し終わった後、私達が行く。
駆除班から連絡を待っていたその時――――。
「相変わらず良い体してんな」
「っっ!」
突然、後ろから胸を鷲掴みにされたかと思えば聞き覚えのある声が聞こえ、慌てて手を振り払って振り返ってみるとそこにいたのはあの憎きジンだった。
「あ、あんたなんでここに……というかいきなり鷲掴みにしないでよ」
「触りたかったから触ったんだよ。言ったろ? 俺は欲望に忠実なんだよ」
「質問に答えなさいよ。また何か企んでるんでしょ」
「ご名答~。前回はお前の策略で偽物掴まされてよ~。リーダーに大目玉だ。で、名誉挽回っつうことで今回のお宝を盗りに来たわけだ」
正直、この男のことは何一つ知らないけど確実に言えることは今回のお宝をこいつに盗まれるわけにはいかないっていう事。
獣を生み出すことが出来る危険なお宝をこいつに渡したら何をするか分かったもんじゃないわ。
「あの玩具、まだ持っていてくれたんだな。やっぱ気持ちよかったか」
「な、なんでそれを」
「さあな。教える義理はねえよ」
やっぱりあの女、こいつとグルだったのね……でもなんでこいつ、名乗っていなかった私の名前を知っていたんだろう……リーダーってことは何かの組織に属しているのよね。
「いや~。やっぱ人はなめちゃダメだな。まさか俺に犯されながらもあんな機転を利かすなんてよ」
「お生憎様、こっちは常日頃から危険と隣り合わせだから準備が良いのよ」
「けけっ! そうかいそうかい。あんたのことは聞いていたんだが予想以上だったってことか」
聞いていた……やっぱり私のことを詳しく知っている奴がこいつらに情報を流していた訳ね……今まで恨みを買うことも少なくなかったから誰が流しているかなんてわからないけど。
「ま、気楽に行こうぜ」
こいつと気楽に行ってたら何されるか分かったもんじゃないわ……とにかく、気を付けながら迷宮を進まなきゃ……ハァ。まさか卒業試験がこいつと一緒だなんて。
「回収班の皆! 駆除班からの連絡が入った! 行こう!」
そう言われた瞬間、回収班のメンバーの足元に光り輝く円が現れるや否や一瞬にして迷宮すぐ傍のところへ転移が完了した。
前兆が一切ないから結構ビックリするのよね。
「……こんなにいたんだ」
周囲を見渡してみると駆除されたであろう獣たちの死体がそこら辺に転がっている。この数でも街になだれ込めば甚大な被害が出てしまう。
「へぇ~。こりゃすげえ。確かに緊急指令になるわな」
「……ねぇ。どさくさに紛れて腰に手、回さないでくれる?」
腰に回すどころかそのまま前に行こうとしていた手を思いっきり叩くがヒョイっと腕を戻されたことで私の手が空を切った。
ハァ……こいつがいるならスカートじゃなくてズボン、穿いてくればよかった。まぁ、こんな緊急事態に誰も気にしないだろうけど……こいつだけは別問題。
そんなことを考えながら入り口を通り、迷宮の内部へと侵入すると長い一本道が続いていてそれ以外の物は確認できなかった。
「なんか部屋に向かってるみたいだな」
「なんでそう思うのよ」
「女を部屋に連れ込む時と道が似てるからな」
何を言ってんだか知らないけれど部屋に向かっているみたい、というのは間違っていない。迷宮の中は罠が張り巡らされていることが多いのに今のところ、そういった罠は見えない。
「これは」
最前列からそんな声が聞こえると同時に止まった。そこには大きな扉。
これってどう見ても……バトルあるわよね。
「皆。ここから戦闘があると思う。気を付けてくれ」
各々、武器を手に持ち、臨戦態勢をとるとリーダーがゆっくりと扉を開ける。そして予想通りというか最悪というか。扉を開けたその先にいたのは獣だった。