エッチ系の依頼をこなした翌日の朝、私は協会の地下にある転移スペースに来ていた。
「お待たせいたしました。転移登録が完了しました。これでこの協会の転移スペースからレイズの協会へと転移することが出来ます。それとこれが新しいハンターライセンスです」
そう言われ、渡されたライセンスは今までの物とほとんど変わらないけど唯一の異なる点と言えばハンターランクがDからCに変わったことくらい。
でもこれで私もCか……お姉ちゃんとは比べ物にはならないけどまさか私のランクがこんなにも早く上がるとは……その分、エッチなことが多かったような気がするけど。
「今後もこの協会で指令を受けることはできますので。向こうでも頑張ってください」
「は~い。んじゃ、行きますか」
転移能力を持っているお宝が作動し、私の目の前に光り輝く扉が現れる。その扉を開くとレイズという町の協会の地下に繋がっている。
果たしてどんなお宝が待っているのかしらね~。
そんな気持ちを胸に私は扉をくぐった。
「到着」
扉をくぐり終え、一階へと上がり、受付へと向かう。初めて来た街の協会に登録しておかないと指令を受けることが出来ないし、この街での特典をうけることが出来ない。
「あの、登録に来たんですけど」
「はい、ライセンスを……あぁ、アイリ様ですね。二時間ほどかかりますのでお待ちください」
「は~い」
そうそう。そう言えば向こうでも初登録の時は時間がかかったわね……二時間もここで暇つぶしが出来る気もしないし、とりあえず外に出てレイズの街並みでも見ようっと。
協会から外へと出るとレイズの街並みが広がる。
「……特に変わらないわね」
同じ国の中にある街だから町並みは似ているけど違う点を強いてあげるならば水着を取り扱っている店が多いということくらい。
ここはすぐ傍に広大な海があるし、観光にも力を入れているらしいからそういう店が多くなるのも必然。
「とりあえず施設くらいは把握しようかな」
どの道、この街の施設を利用するのはこの協会で指令を受注してお宝を回収するときだけだから最低限の部屋を提供してくれる宿と食事処とかだけで十分。
ここに移住するっていうのもアリだけど扉一枚を潜るだけで行けるからね~……まぁ、ここにしかない魅力があれば移住もアリだけど。
「マッサージは向こうで良いわね……ここが食事処ね……それでここが宿……料金はさほど変わらないわね」
住み心地とかは実際に住んでみないと分からないし……でもまあ、外観だけを見れば中々良さげ。確かここは海産物が豊富だっていうし……エビとかホタテとか食べられるかしら。
「ねえ、そこの君」
「はい?」
声をかけられ、振り返るとどこかの店員らしい一人の男性が立っていた。
「今暇?」
「はぁ……まぁ」
「あ、ナンパじゃないんだ。そこのお店で衣類を販売しているんだ。で、今日うちの店の従業員が一人急に休んじゃって人手が足りていないんだ。だから手伝ってもらえないかな? お給料も出すし」
ん~臨時のアルバイトって感じね……まぁ、悪くはないけど……とはいってもあと二時間くらいは暇なんだし、暇つぶしにはちょうどいいかな。お金も手に入るし。
「良いですよ。二時間くらいなら」
「ありがとう! こっちも二時間ほどで済むんだ。じゃ、早速お店に」
そう言われ、私は男性の後を追いかけてお店へと向かった。
――――☆――――
「いらっしゃいませ~」
という訳で人生で二度目の労働をすることになった私だけど中々忙しい店だったらしく、中々店内から人が出て行くことが無い。
店の中も広いし、品ぞろえも良い。さっきから可愛い服とかが結構見つかるわね……貰った給料で服を買っても……まぁ、お宝回収がメインだからすぐに破れるんだけど。
「じゃあアイリちゃん。この箱に入ってる服を奥の方にかけてきてくれる?」
「分かりました」
渡された箱を抱えて奥へと行こうとするけど結構、店の中の死角になっていることに気付き、一瞬躊躇したけどすぐに足を進めていく。
周囲には服がたくさん並べられているし、お宝の効力で服とかをいくつか浮かばせたりしているから結構、見えない位置が出来ている。
「ふぅ……なんか別の意味で働くって大変ね」
箱から服を取り出し、教えられたとおりに引っ掛けていると私の後ろに帽子を深くかぶった男の人が来て服を物色し始めた。
「そう言えばザクロとかいう組織が暴れてるって聞いたわね……とりあえず情報収集だけでもっっ!?」
服をかけようとしたその時、お尻の辺りを触られ、思わず服を落としかけたけどなんとか服を掴み、商品を落とすことだけは何とか避けた。
死角になってるからって好きに痴漢なんかしちゃって……どんな男よ。
相手の手を弾きながらもチラッと後ろを見ると灰色の帽子を深くかぶり、帽子と同じ色の短いズボン、そして半そでを着ている。
「お嬢ちゃん、ザクロのことについて知りたいのかい?」
一瞬、人を呼ぼうかとも思ったけどこのおじさん、どうやら私が知りたい情報を知っているようす。
「実は俺さ、元ザクロのメンバーなんだよ」
鼻息を荒くしながら勝手にペラペラと喋り出したおじさん。でもザクロの話しなら協会に行けば教えてくれる……でもディープな話は聞け無さそうね……。
おじさんは私のお尻を撫でまわすように手を動かしながらペラペラと喋りはじめる。
「ザクロってさ、超気持ちいいんだ。お宝を手に入れろっていう命令は絶対。でもその命令を遂行するためにどんな罪を犯そうが組織が守ってくれんだよ。たとえ女を犯し尽そうが人を殺そうがな」
「…………」
「俺もかれこれ十年近く、メンバーをやっているがお宝を手に入れるためにこれまでに何人もの女を犯したさ。そういや何人かは奴隷にしたっけな」
ダメね……なんか話を聞いていたら冷静じゃなくなってきたわ。悪いけどここでおじさんにはお縄についてもらおうじゃないの!
「ところでおじさん、実は……映像を記録するお宝を作動させてるの」
「っっ! こ、このアマ!」
「といっ」
「うぉぁっ!」
普段から持っている体力を回復させるお宝を見せると肝っ玉が小さいおじさんは慌てに慌て、店から出て行こうとする。その瞬間、足を引っかけてあげると盛大に転び、重ねられている段ボールに突撃した。
突然の騒動に周囲の目がおじさんに注がれる。
「この人痴漢です!」
思いっきり叫んだ瞬間、待っていましたと言わんばかりの勢いで物陰から複数の男性が倒れているおじさんに飛びかかり、手早く両手両足を拘束する。
「ようやく捕まえたぞ! 連続痴漢の犯人兼元ザクロのメンバー!」
「お前の犯行は全て記録してある! ザクロの話しと犯行の話、すべて洗いざらい聞かせてもらおうか!」
男たちによって連れていかれるおじさんは最後の最後、私を強く睨み付けてくる。最後のあがきという事か、と思っていると一人の若い男の人がこっちにやってくる。
「ご協力感謝します!」
「……はい?」
お礼を言うと同時に何故か床にお凸がつくくらいの勢いで頭を下げられてしまった。
「あれ? 貴方は」
よく顔を見ると私をアルバイトに誘った男の人だった。
――――☆――――
男を捕まえたのはザクロ撲滅のために結成された組織のメンバーで私をアルバイトに誘った人もメンバー。そしてあの店で頻繁にあの元メンバーのおじさんが痴漢をしているという情報を聞いて作戦を開始した。
その作戦っていうのが私を囮にして捕まえるという物。
「なんだか分かんないけど報酬も貰っちゃったし……ま、いいかな。あの~」
「はい、アイリ様ですね。登録が完了いたしました。次回よりあちらの掲示板から指令、もしくは依頼をお選びください」
「ありがとうございました」
ようやく登録も完了したわね……さ~てと。お宝回収と行きますか。