登録手続きが完了してから数分後、私は掲示板に張り出されている指令を眺めていた。
「やっぱり広大な海が近くにあるだけあって海関連のお宝が多いわね」
お宝のせいで藻が大量発生したからそれを回収してくれだの、お宝のせいで海が大荒れで漁に出られないから早く回収してくれだの、海関連が多い。
そしてほとんどの指令の難度がC。まだCくらいなら私でも一人で出来るけど流石にBになってくると二人か三人は助っ人が欲しいわね。
「ん? タコ大量発生?」
ふと、目に留まった指令。それはお宝のせいで何故かタコが大量発生してしまい、海がタコの墨で真っ黒になったり、船に絡まったりしているらしい。
人にも被害が出始めているから早く回収してくれとのこと。
新鮮なタコってなかなかおいしいのよね。コリコリしてて……でも特定の物をいくつも生み出すお宝なら私も持ってるし……それに依頼の報酬も刺身盛り合わせって……。
「う~ん……お宝が被るのはちょっとね……まぁ、被れば協会に売ればいいんだし……これで行こうかな」
――――☆――――
レイズに来て初めてのお宝回収の指令を受注した私はすぐにその場所へと向かう。場所は協会からほど近い場所にあるタコ漁が盛んな地区らしい。
一応、海の中でも活動が出来るお宝は用意してきたけどレア度も低いし……まぁ、指令書に活動可能にするお宝貸し出しますってあったし、別にいいか。
「どうもどうも。貴方が受注してくださったハンターさんですね?」
「ええ。よろしくお願いします」
「こちらこそ。ではタコが大量発生している場所までお送りいたしますので船にどうぞ」
そう言われ、船に乗り込み、そのタコが大量発生しているという場所へと向かう。
地味に船に乗るのは初めてね……私の地元も拠点の街も内陸部っていうこともあるけどそもそも漁で生計を立てている人なんていなかったから仕方ないっちゃ仕方ないわね。
「かなり困ってるんですよ。お宝のせいでタコが大量発生してしまって」
「どれくらい発生しているんですか?」
「異常なほどですよ。こちらとしても多く取れるのは良いんですが取れ過ぎてしまいますと単価が下がってしまいますし、何よりそのタコたちが中々凶暴で」
ということは複製するお宝じゃなくて凶暴化させる効力を持つお宝かしら……まぁ、お宝の能力なんて人間が想像し尽せないくらいに多種多様にあるからそういうのもあってもおかしくはないけど。
「あ、あそこです」
「……うわぁ」
指さされた場所を見るとその部分だけまるでタコたちが自分たちの縄張りであることを示しているかのように海面が真っ黒に染まっている。
墨だから汚くはないんだけど……それでもこんなに広大な海でも流しきれないなんてどんなに吐いてるのよ……もしくは何か特殊な墨とか。
「どうも凶暴化したタコが他の魚も食べているらしくてね。こちらとしても早く回収して欲しい所です」
「他のハンターは来なかったんですか?」
「レイズは腕利きのハンターへのし上がろうとする方々の腕試しのような街ですので中々、こういった指令は受注されないのですよ」
「なるほど」
確かにあの街とレイズの街の平均ハンターランクはこっちの方が上だし、何より難度Bの指令書も出回っているからそう言った輩が集まるのも無理はないわね。
ここを除くとあとは全部Cの指令しかないところか、全部Aとか最高難度の指令しか張り出さないっていう協会しかないしね。
「これをお使いください」
「あ、これが書いてあった」
「はい。このお宝を使えば海中でも時間無制限で地上と同じように活動が出来ます」
私が持っている膜を張るお宝よりも遥かにレアなお宝じゃない……感覚的にBってとこかしら……でも水着を着なくても良いのは中々ね。
「では、よろしくお願いします。船の方はここに置いておきますので」
「分かりました」
お宝を作動させ、服のまま海に潜る。そして目をゆっくりと開けると海水でしみることも無い。
「凄いわね……さてと、タコさん狩りと行きますか」
タコが集まっているであろう黒い部分へ泳いでいく。恐らくあの黒い墨は海底に集まっているタコが噴き出した墨が上に上がってきていただけだろうから今回も海底散策でしょうね。
「ん~。あの時は気にならなかったけどやっぱり海底は暗いわね」
ポケットの中を見ると普段から灯り代わりに使っているお宝を見つけたのでそれを使って照らすけど流石に改定となると足元と少し先しか照らすことが出来ない。
「よっと……ここが海底ね……水圧も感じないなんてかなり良いお宝ね」
周囲を照らしながら見渡してみるけどタコの縄張りになっているからか他の魚の姿は見えず、大量のタコの姿しか見えない。
タコは好きだけど……ここまでいっぱいいると逆に怖くなってくるわ。
するとユラユラと揺れていた一匹のタコが私に気付いたらしく、こちらにやってくる。
「大きさからして子供? でも子供の頃から吸盤って強いのね」
プニプニと足の感触を確かめているけれど特に襲ってくる気配も見せない。子供の故に怖さを知らないのか、それとも他の理由か。
近づいてきたタコは放置して海底を歩いていくけれどどうやらそのタコ、私になついたらしくずっと私の後ろをユラユラと漂いながら追いかけてくる。
「まぁ、いっか……それにしてもタコ大量発生ね。タコしか見えないわ」
ここまで発生したとなるとどうやら複製系の効力を持っているお宝ではなさそう。もしそういう系だったら海を覆いつくす勢いで増えているだろうしね。
となると別のお宝になるんだろうけどおじさんの話しから推測するに生物を凶暴にする系かしら……でも他のタコは襲ってくる様子もないし……一匹にしか効かないのかしら。
「ん?」
その時、ふと足元に足跡が見えたからそこを良く照らしてみると確かに私の物じゃない足跡がいくつかあってそれはまっすぐ続いている。
「先に来た冒険者かしら……でもなかなか受注されないって言ってたし……味方ならそれでいいけどザクロが暴れてるって話も聞いてるし、一応気を付けないと」
ザクロはお宝の為ならばどんなことでもする最悪の組織。この前、逮捕されたおじさんも言っていたようなことを平気でやる奴ら。
他の人達もだろうけど私もそいつらは許せない。お宝を回収するのに邪魔な障害は攻略してこそ冒険者だろうにそれを壊したりするのは論外よ。
「あれって」
前方から何かが光っている光景が見え、慌ててお宝の光を消して岩陰に隠れながらその光源に近づいていくと灰色の短パンに黒いブーツ、そして黒い半そでを着ている男が三人いた。