退院してから三日後、完全に復調した私はレイズの協会でお宝探しの仕事を探していた。
運よく入院の日数は少なかったけどキチンと入院した分の料金は払ったからその分の補てんをするために探しているんだけど中々良い仕事がない。
前回のこともあって慎重に吟味しているということもあるんだけどね。
「……何これ」
ふと目に入った依頼書。
それを手に取ってよく読んでみるとそこには『皿になってください』と書かれていて、お宝探しではない依頼にしては中々良い報酬が提示されている。
ただ全く内容が分からない。しかも女性限定。
「お皿? お皿になるって何よ」
全く思いつかないけど報酬も中々良いので受けてみることにした。
――――☆――――
依頼主に指定された場所へ行くとそこは大きな宿泊施設。
お金持ちたちがよく宴会に使ったりするときに使われることが多いその宿泊施設にやってきた私だったけれどこの依頼を受けたのは私だけじゃなかった。
「皆さま、本日はよくお越しくださいました。では今回の依頼のお話しをさせていただきます。この後一時間後からある催しが行われます」
ここでなんとなくピンとくるとともにため息をついてしまう。
また、外れを引いてしまったと。
「その催し物は女体盛りでございます」
その一言と共に私たちが集められている室内に台に横になった女性が運ばれてきたけれどその姿に思わず他の女性たちが引いてしまう。
運ばれてきた女性は素っ裸。
そしてその体にはお刺身の盛り合わせが色々な個所に乗せられている。
「どうぞ、近くでご覧ください」
女の人は鉄の心でも持っているのか私たちが近くによっても一切動じることはなく、真顔を貫いている。
しかもよく見ると男の変態心が現れており、お皿に醤油が溜まっていると思ったらそれは乳輪でどうやら小皿に穴があけられているらしい。
ちなみに大事な部位には高価なお刺身が乗せられていて恐らく一番効果なのはあそこを隠すように置かれているお刺身だろう。
(どうせこんなことを開くんだから集まっているのは変態親父。しかも権力者ってところかしら)
「お支払いいたします報酬は依頼書に提示してあった金額。さらにはお客様が気に入られた場合、一晩を共にしたいということで提示した金額でございます」
その瞬間、女性たちの間にどよめきが走る。
その日だけの買取娼婦になることが出来れば依頼としては破格の金額を手に入れることが出来る上にもしかしたら専属契約、みたいなことになればもっと跳ね上がる。
娼婦の館はあるけれどそこにやってくるのは庶民の男たちが大半。
高級娼婦になるには権力者に気に入られなければならないし、まず権力者に会う機会が少ない。
「もし無理だとおっしゃられる方に関しましてはあちらの扉よりお帰りになってください」
通りでこの人数を集めたわけよ。
基本的に娼婦を集めてやればいいだけの話しなんだけど普段からそういう女性と混じり合っている権力者の親父たちは庶民に目を向けた。
人数が残ればそれも良し。残らなくてもまた集めればいいだけ。
協会に依頼書を提示するだけなら少ない金額を払えばいいだけだしね。
「依頼を受けても構わないという方だけ、残りください」
男性がそう言うと一人、また一人と女性たちがホールから出ていく。
普通の女性があんなことをやってくれって言われても普通は無理。
そりゃ、夫や彼氏とかなら考えるでしょうけど名前も顔も知らない男にそんな変態チックなことを指せるなんてまっぴらごめん、っていうのが普通。
(まぁ、変態チックな依頼であることに変わりはないけど確実にこの依頼はあいつらは関与していないわ……もしも普通の依頼をやったとしてまたあいつらに遭遇したら面倒だし)
確実にあいつらに遭遇しない、かつ高いお金がもらえるとなればやらないわけがない。
周囲を見渡してみると二十人ほど集まっていた女性たちはほとんど姿を消し、残ったのは五人。
と、その時、見知った顔の女性と目があい、思わず逸らす。
(なんであいつがいるのよ!)
「お久しぶり。アイリ」
「え、ええ。お久しぶり、リサ」
そう。あのサキュバスの女、リサが私と同じホールにいた。
サキュバスは食欲がない代わりに性欲が非常に強く、男との交わりが食事と言っても過言じゃない。
「貴方、ランク昇格したのね。おめでとう」
「そりゃどうも……というかなんであんたがここに居んのよ」
「たまたまよ。今はお休みを貰っているから自由に動いているのよ。レイズで男どもとね」
「あっそ」
レイズに来てからまだ全然経っていないけどもう男関係の面倒なことに巻き込まれ過ぎて正直、リサの事なんて頭から抜けていた。
もちろんあいつのことも。
「ちなみにあいつも来てるわよ」
「ゲッ。最悪」
「まあまあ、そう言わないの」
「というかあんた、ジンと知り合いなわけ?」
「ええ。同じ組織にいるわ」
通りで当時、まだ未発売だった性玩具の使い方を知っているわけよ。
「それにしても五人も残るなんて思わなかったわね」
「そうね」
私たちを含めて残っているのは五人の女性。
一人は私と同い年位の女の子、もう一人は一般庶民の三十代くらいの女性。
そしてもう一人は服がボロボロの女性。
向こうじゃあんまり見なかったけどレイズは貧富の格差が大きいって聞いているし、何よりレイズでは漁師という職業の倍率が凄まじく高い。
男に生まれれば漁師、女に生まれれば魚の調理師、と言われるくらい。
漁師になることが出来、大漁ならば大きな額を稼ぐことが出来るけれど中にはあまり魚が取れず、獲った魚でお金を少ししか稼げない人もいる。
そうなると色々な出費で消えていき、わずかしか残らない。
まさに弱肉強食。
「それにしても一体、どんな男に出会えるのかしら」
「あんた、エッチなことしたいがためにこの依頼、受けたでしょ」
「当たり前じゃない。サキュバスはエッチが食事。男の精子を飲み、子宮で受け止めてエネルギーとする。あ、もちろん女性の愛液でも良いわよ?」
ペロッと舌なめずりをするけれどもう結構と示すように彼女を手で押し返す。
「それでは皆さん! これより準備に取り掛かりますのでこちらへお越しください!」
男性の案内に従い、私たちはホールを出て館内を歩いていく。
権力者が良く宴会で使っている場所なこともあってか経営は順調らしく、内装は凄まじく綺麗で高級な絵や壺などが置かれている。
それに館内を歩き回っている人達も相当、厳しい教育を受けてきたのか雰囲気からして違う。
「あら、いい男もいっぱいいるわね」
「あんた、男なら何でも……良かったわね。あんた、サキュバスだし」
「もちろん。でも私みたいなサキュバスは例外よ? ただ単に食欲がないってだけでそれ以外は人間と同じ。格好いい男に惚れもするし、キモイ男には近寄りすらしない」
「精神面は同じなのは有名じゃない。人間とサキュバスが結婚だってするんだし」
そう。基本的にこの世界には姿だけを見れば人間だけど実は中身は人間とは少し違うと言う生き物がいる。
例えばドラキュラだったり、プランツマンっていう光合成と水だけで人間と同じくらいに長い人生を生きる種族もいる。
もしも姿形が違っていたら差別とかが出てくるんだろうけど姿が同じだからかそう言った問題は無い。
「ま、私は性欲が強いからエッチさえ出来れば良いんだけどね。あ、でもおちんちんの大きさは大きい方が良いわ。あと絶倫な男も好きよ」
「はいはい。皆引いてるから」
普段と同じトーンと大きさで喋るせいで周囲には彼女が喋っていることが駄々漏れで職員さんたちは一歩引いた眼をしていたり、苦笑いを浮かべている。
と、前の三人が止まったので私も止まると前に調理室と札が吊るされているドアがあった。
「ではここから先は女性スタッフが準備をいたします。中でスタッフの指示に従ってください」
と、言う訳で私たちがお皿になるための準備が始まった。