※この作品はR-18です。

てぃーちんぐゆんゆん   作:ルイ提督

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切り時が分からなくて、文字数が多くなる……


爛れた2ヶ月間:ダラダラ旅行(王城侵入! アイリスとの決着編)

「カズマさん、本当にこんな所にダンジョンがあるんですか?」

 

「あるある、情報を得るために、ギルドと昔からあるアイテム屋かけずり回ったんだからな」

 

「お、そうなの助手君! 頼もしいねぇ、あたしはダンジョンの場所以外の情報は持ってなかったんだよ」

 

 現在、俺達は王都から少し離れた森林地帯を歩いていた。目指すは神器が眠るという放棄されたダンジョンだ。

 

「お頭、参考程度に聞きますけど、目的のアイテムってどんな効果だったんですか?」

 

「んーとね、“勇者の服”って奴だよ。能力は、剣、盾、弓、ブーメラン、爆弾、馬の扱いが達人級になる装備だよ」

 

「ええ!? クリスさん、そんなものがあるんですか!? 無茶苦茶な装備じゃないですか!」

 

 クリスの言葉を聞いて、ゆんゆんが興奮しだした。まぁ、確かに無茶苦茶だ。神々が作ったチート装備だし。

 

「落ち着けゆんゆん、確かに無茶苦茶だが、これは“固有装備”って奴だ。マツルギの魔剣みたいなもんだ。お頭、もし俺がその服着たら、どんな効果が得られるんだ?」

 

「とても通気性が良い服で、夜にぐっすり眠られる程度の効果かな」

 

「ですよねー」

 

 他のチート転生者の装備は、転生者自身に紐づけされているため、他の人が使っても、本来の効果は使えないそうだ。それでもアイリスの時みたいに、厄介な効果を持つ神器は複数存在するらしい。

 

「じゃあなんで、クリスさんはそんなアイテムを回収しにいくんですか?」

 

「それはね、こういう滅茶苦茶なアイテム、神器って呼ばれる物達を地上に残しておくと、いらない諍いが起こる可能性があるの。だから、私はそういう物の回収を行っているんだよ」

 

「はえーそうなんですか、女神も色々と大変ですね」

 

 ゆんゆんが、ふむふむと頷いている。どうやら納得してもらえたようだ。そうこうしているうちに、目的地へとたどり着く。森林の一画が切り開かれ、そこに、石で造られた囲いと地下へと続く階段があった。ここで、間違いないようだ。

 

「じゃあ、お頭、いやクリス先輩。索敵と罠感知頼みましたよ!」

 

「頼りにしてますよ」

 

「まっかせろー!」

 

テンションが高いクリスを先頭に俺達はダンジョンへと侵入した。

 

 

―地下1階―

 

「うーん、踏破済みダンジョンだからか、罠もほとんど解除済みだね」

 

「なんか、思ったよりも暇ですね、お頭」

 

「そうですか? 私、なんだかとても楽しいですよ」

 

 俺は、クリス達のそんな言葉を聞きながら、手帳に簡易マップを書いていく。このダンジョンのマップは現存していなかったのだ。ただ、地下10階まであるという情報は入手している。

 また、潜伏を発動しているせいか、モンスターと接敵もない。ゆんゆんは楽しいらしいが、やっている事といえば、魔法で小さな光源を作っているだけだ。多分、潜伏の効果範囲に入るため、俺に抱き着いている事で上機嫌になっているのだろう。こいつ、密着するの大好きだしな。

 

「助手君、モンスターに気付かれたよ。反応10」

 

「結構大量ッスね」

 

「助手君、来るよ!」

 

 クリスの言葉と同時に、コウモリ型のモンスターが現れた。おおう、やっとダンジョンっぽくなってきた。俺は、弓を手に取り、矢を番えて……

 

「“ライトニング!”」

 

コウモリ共が、ゆんゆんの魔法で消し炭になった。そりゃ、適正レベル大幅に超えてるしな、俺ら。

 

「カズマさん、やりました! 褒めてください!」

 

「あーえらい、えらい」

 

「イチャつかないでよ!」

 

 こうして、ゆるーいダンジョン探索が始まった。大半はマッピングに時間を取られ、時間がどんどん経過していく。そして、モンスターが出ても、ゆんゆんが消し炭にしていく。自分が思い描いていたダンジョン探索となんか違う。

 

 

 

―地下5階―

 

「つっまんねー ほれ、コーヒー」

 

「カズマさん、ありがとうございます」

 

「油断してると、強敵にいきなり殺されちゃうよ」

 

 俺達は小部屋に結界石を置き、休憩を取っていた。何やら物騒な事を言うクリスを無視して、俺はディンダーで沸かした水でコーヒーを作る。そして、俺特製ポーションをコーヒーに数滴垂らし、味わうように飲んだ。

 

「うん、おいしい」

 

「カズマさん、そのポーションなんですか? 私にもください」

 

「だめーこれ俺専用だから」

 

「なんだか、そのポーション瓶から、邪悪な気配を感じます。貸してください」

 

「はぁ!? これ、世界で一番、神聖なポーションだから……こらっ! 手を放せっ!」

 

 そんな風に、俺がゆんゆんと取っ組み合いをしていると、クリスが膝を丸めて座り込んだ。俺は、ゆんゆんの顎を撫でて黙らせ、クリスの隣に座る。

 

「ううっ、助手君との楽しいダンジョン探索のはずだったのに……」

 

「そうですね、めっちゃ暇ですね」

 

「言わないでよ……」

 

 いじけるクリスを見て、俺は同情する。俺もこんな暇だとは思いはしなかった。例のダンジョンでやりたい放題していたウィズと、ゆんゆんの姿が、かぶって見える。

 

 

 

 

 

 

―地下10階―

 

「どうしましょうお頭! ダンジョン攻略終わっちゃいましたよ!」

 

「こっちが怒りたいよ! 助手君とのダンジョン攻略をちっとも楽しめなかったよ!」

 

「カズマさん、褒めて褒めてー!」

 

 ダンジョン最深部手前の9階で、俺は何かいるだろうと予測を立てていた。チート転生者が何故、攻略済みダンジョンを潜ったのかは不明だが、そいつを倒すだけの何かがいるはずなのだ。

 という事で、俺はゆんゆんに大魔法の詠唱をさせてから、10階に突入した。案の定、そこには巨大なドラゴンがいたが、ゆんゆんの大魔法での奇襲で、かなりのダメージを与える事ができた。そして、俺は即座にバインドをドラゴンの口にかけ、ブレスを封じた後、いつものクリエイトアース&ウインドブレスコンボで目潰しをする。そして、行動不能に陥っているうちに、ゆんゆんの二発目の大魔法を喰らわせた。その結果、残ったのはズタズタになったドラゴンの死体だけであった。

 

「お頭、神器探しましょうよ」

 

「納得いかない! 納得いかないよう!」

 

「うるさい」

 

「あいたっ!?」

 

 俺はクリスにチョップを浴びせて黙らせる。もうさっさと神器を探して帰ろう。そしてエッチな事をしよう……

 

 

 

『グルアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 

 

 その時、喧しい咆哮がダンジョンに響き渡った。咆哮の場所は……さっきドラゴンの死体があった場所だ。

 

「カズマさん、ゾンビ化しました」

 

「うわ、マジかよ……」

 

 ゆんゆんの言葉を聞いて、俺はげんなりする。ドラゴンゾンビは、かなりのタフネスと、尋常じゃない破壊力を持ったモンスターである。相手をするのは、非常に面倒臭い。そんな事を思っていた時、クリスがニコニコしながら、俺の傍に寄ってきた。

 

「助手君! 強敵の出現だよ! さあ戦おう!」

 

「お頭、いやエリス様、浄化魔法は使えないんですか?」

 

「この体ではね!」

 

 そういって、クリスは短剣を抜き放ち、構える。やる気まんまんのようだ。しかし、浄化魔法が使えないとなると厳しい戦いになる。アクアがいない今、無理はしたくない。下手したら、体を原型がとどめない程、壊される可能性もある。しょうがない、アレを使うか。せっかく、チビチビ使って楽しんでたのに……

 

「ゆんゆん、お頭、俺一人でやります」

 

「じょ、助手君……!?」

 

「カズマさん……」

 

 俺は驚きの表情を浮かべる二人を下がらせる。そして、引きずるようにして体をこちらに動かすドラゴンゾンビに、俺は特製ポーションを投げつけた。俺が投擲したポーションは、ドラゴンゾンビのウロコに当たって、砕け散る。そして、中から溢れた液体を浴びて、ドラゴンゾンビは苦悶の声を上げた。

 

 

『グガアアアア……グッ……』

 

 

ドラゴンゾンビは、光となって、あっけなく消えた。浄化完了である。

 

「ふん、造作ない」

 

「カズマさん、スゴイです! あのポーションはなんですか!?」

 

「待って助手君! おかしい、おかしいよ! 普通の聖水じゃ、ドラゴンゾンビなんて浄化できないよ!」

 

 詰め寄ってくる二人の疑問も、もっともだろう。アレは、俺の偶然で開発した聖水&体力全回復が可能なポーションだ。

 

「あのポーションの名は“100倍濃縮アクア汁”だ。どう作るかは想像に任せる」

 

「アクア先輩……?」

 

「アクア汁……どこかで聞いたような……」

 

 頭を唸らせる二人に俺は内心ビクつく。そういえば、ゆんゆんには、ちょろっと口を滑らせた事があったような気がする。

 

「おい、お前ら! さっさと神器探すぞ!」

 

 俺は考え込む二人の背中を押した。変に告げ口でもされたらマズイからだ。クリスはしぶしぶ、ゆんゆんは素直に従った。10階層は、大きな1フロアしかない、目的のものは数分で見つかった。

 

「カズマさん、これじゃないですか?」

 

「ビンゴだな、お頭、確認を」

 

「りょーかい!」

 

 目的の物、緑色の服が無造作に落ちていた。周りには、風化した土のようなものが散らばっている。

 

「うん、これで間違いないね」

 

「カズマさん、この土ってなんでしょうか?」

 

「多分、神器だけ消化されずに排出されたんだろ」

 

「うわぁ……」

 

 非常に嫌な最後である。俺も溶かされた経験があるので、深く同情する。この最後だけは勘弁願いたい。俺が、嫌な記憶に身震いしていると、クリスが神器である、勇者の服のポケットをあさり、そこから、青白く揺らめく炎のようなものを取り出した。

 

「やっぱりいた……」

 

「お頭、それは?」

 

「ソウル……魂だよ、これに未練があったみたい」

 

 そういって、クリスが俺の手に、鈍い輝きを放つ四角い物体を渡してきた。手に収まる程の大きさのそれは、俺自身、いろんな意味でお世話になったものであった。

 

「カズマさん、これって、もしかして……」

 

「ああ、ジッポっていうライターさ」

 

 俺は渡されたジッポを見る。クロムメッキが所々剥がれ、くすんだ金色がのぞいていた。そして、恐らく誰かからのプレゼントとして、貰ったのだろう。英語でメッセージが刻印されている。ヒンジとフリントの動作はしっかりしているため、オイルとウィックを入れ替えれば、再び使用可能だろう。あの転生者の魂は、これの劣化を防いでいたのだろうか。

 

「助手君、この子が君にそれをあげるってさ!」

 

「いいんですか、これに未練あったらしいですけど?」

 

「この子はそれを、誰かに見つけて欲しかったそうだよ」

 

「そうですか……」

 

 まぁ、くれるというなら貰っておこう。色んな意味で重たい物だが、俺はジッポをポケットに放り込んだ。その途端、クリスが手に持っていた魂が静かに消えた。

 

「成仏したみたいだね」

 

「そうですか、なら安心、依頼達成ですよお頭」

 

「うん! ありがとうね、助手君、ゆんゆん!」

 

微笑みながら答えるクリスの姿はまさに女神であった。

 

 

 

 

 

 

翌日、特にやる事もなくなった俺はベッドで転がっていた。

 

「助手君、どっか行こうよ。さすがに堕落しすぎだよ?」

 

「行ってもいいけど、ガイドブックに載っている所はほとんど行ってるんですよ。つまりは、行く所が思い浮かばない」

 

そして俺は再びベッドでゴロゴロ転がる。もう、アクセルに帰ってもいいかもしれない。ダクネスも、自分であの痴態の言い訳はしただろうし、アクアの事もちょっと心配だ。

 

「カズマさん、それならこれを見に行きませんか?」

 

そんな時、ゆんゆんが俺に情報誌の広告欄を見せつけてきた。

 

「なになに、この世界最新の英雄譚、『魔王討伐物語』、絶賛公演中……おお? これってアレか。俺達が主役の劇か?」

 

「そうです、気になりますよね!?」

 

「滅茶苦茶!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはもう、行くしかない! 俺達は、急いで準備をして、王立劇場へと駈け出した。そして、金を積んで、劇が良く見える貴賓席へと転がりこんだ。

 

「カズマさん、次の公演、『魔王討伐物語』の最終回ですよ。いきなり最後から見ちゃうんですか?」

 

「なんせ俺が大活躍する所だからな! これを見て、出来が良かったら最初から見るさ!」

 

「ふふっ、そうですね。劇の中の私も、どう活躍してるのでしょうか。私だって、結構見せ場あると思うんですよ!」

 

「そういえばそうだな!」

 

 俺は、ゆんゆんと笑い合う。コイツも、最終決戦では大活躍していたしな。こうして、しばらくゆんゆんと会話していたが、視界の隅でクリスが申し訳なさそうな顔をしていた。そういえば、さっきから随分と大人しい。

 

「お頭、どうかしたんですか?」

 

「いや、助手君はこれ見ない方がいいと思うよ……」

 

「なんでですか? あ、女優が皆ブスだったりするんですか?」

 

「そうじゃないんだけど……」

 

「あ、お二人とも、始まりましたよ!」

 

 何やら、クリスが気になる事を言っているが、劇はもう始まってしまった。見ようじゃないか、俺の活躍のシーンを!

 

そして、劇場全体が暗くなり、モノローグが始まった。

 

 

『魔王に捕らわれた女神アクアを救うため、勇者一行は魔王城へ突き進んでいた!』

 

 

ん? 捕らわれただと? あいつはゆんゆん達と特攻したようなもんだが……

まぁ、ちょっとした改変か、よくあるよくある

 

 そして、舞台に勇者一行が現れる。おお、皆俺らそっくりじゃないか。というか、服や装備の再現度がかなり高い。めぐみんのちっぱいぶりや、ゆんゆんのロリ巨乳なドスケベボディも再現されている。うむ、非常によろしい。

 

で、肝心の俺は……俺は?

 

「ゆんゆん、俺いなくね?」

 

「これから出るんじゃないですか?」

 

「助手君……」

 

いや、主役は遅れて出るものだ。平常心、平常心……

 

『ミツルギ様ー! 俺を置いていくなんて、ひどいッスよー!』

 

 そんな時、スカジャンとサングラスをつけた貧相な男が現れた。なんというか、典型的なチンピラだ。オリキャラだろうか。

 

『来たのかサトウカズマ! お前は街で待っていろといったろ!』

 

『しゃっしゃっしゃ! そう無体な事言わないでくださいよミツルギ様!』

 

あれか、あれが俺なのか。なるほど、なるほど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だらっしゃあああああああああああ!」

 

「いたいっ! いたたたたたたっ!? やめてよ助手君! なんであたしにコブラツイストを……ああああっ!?」

 

「カズマさん落ち着いて! 実はああ見えて、強いのかもしれませんよ!」

 

 俺は、ゆんゆんの言葉で我を取り返す。ふむ、そういうパターンもあるかもな。俺はクリスを膝の上に乗せて、続きを鑑賞する。だが、俺の活躍シーンは、皆無だ。ミツルギが襲ってくる魔王軍の下っ端相手に無双しているシーンがほとんどである。

 

俺のセリフをまとめてみると……

 

『ミツルギのだんなぁ! 頼みます!』

 

『さすが、ミツルギさんだ! 余裕を感じられるな!』

 

『ゆんゆんさんは、とても華麗に戦うなぁ……俺、惚れちまいそうだ……』

 

『ヒャッハッハ! これぐらいの敵なら俺でも……ぐわーっ!?』

 

 

俺知ってる。これ太鼓持ちって奴だろ。なるほど、なるほど……

 

 

 

 

 

「だらっしゃあああああああああああ!」

 

「いたいっ! いたたたたたたっ!? なんであたしなの! うがっ! キャメルクラッチはやめ……あがあああっ!?」

 

「カズマさん……」

 

 俺は白目を向いて気絶したクリスを打ち捨てて、ゆんゆんを膝に座らせ、抱きしめる。怒りがちょっとだけ収まった。

 

「ゆんゆん、改変しすぎじゃないかこれ……」

 

「まぁ、娯楽向けにモツルギさんを主役にしたのは、分かりやすいと思いますよ」

 

「そりゃ、わかっちゃいるんだがな……」

 

 俺よりミツルギの方が勇者っぽいのは否定できない。だが、風評被害を受けたのは、俺だけではないようだ。

 

『我が名はゆんゆん! この身に雷竜を宿す“蒼き稲妻を背負う者”! 死にたくないなら、私に近づかないことね……!』

 

 

 

「あの、ゆんゆん役の人、ことあるごとに“蒼き稲妻を背負う者”って自称してるな」

 

「ええ……多分、これで、あの異名が広まったんでしょうねぇ」

 

 ゆんゆんは複雑そうな表情をしているが、口元が笑っている。内心喜んでるなコイツ。そうこうしているうちに、ミツルギ一行が魔王城に突入した。ちなみに、魔王城の結界はミツルギと仲間(俺以外)の総攻撃、女神エリスの助力を受けて破壊した。

 そして、魔王城でのミツルギ無双を見せられた後、まさかの俺単独パートに突入した。ついに俺の活躍シーンか……!

 

『へっ! ミツルギさんが頑張っている間に、俺もアクア様救出に向かおう!』

 

 

 

 

「カズマさんの見せ場みたいですね……」

 

「ふん、アクアを救ったのは俺だぞ!」

 

 ここを改変されたら、ちょっと怒る。というか、めぐみん達がミツルギの仲間っていうのも好かない設定だ。俺のパーティメンバーだぞ。

 

『アクア様、助けに来ましたぜ!』

 

『待ってましたよ、ミツ……あんた誰?』

 

『そりゃないですよアクア様!』

 

 

 

 

 

「チッ……」

 

「ひぃ!? カズマさん、あの私の太ももに足をかけて、何をするんですか……?」

 

 なんだか、無茶苦茶イライラしてきた。舞台の上でのカズマとアクアは、仲はそれほどよろしくないようだ。そして、舞台にいかにも悪役っぽい奴らが現れた。魔王軍の下っ端かな。

 

『えっと、カズマさん、あの人達、倒してくれる?』

 

『まかせろ! 俺はカラテを習っているんだ! こんな奴ら、俺の拳で……ぐわーっ!?』

 

『カ、カズマさーん!』

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「カズマさん!? この体勢はダメです! やめ、やめてぇ! 他の貴賓席から、私の恥ずかしい所見られちゃいます!」

 

「おおう、綺麗なロメロスペシャルだねぇ……」

 

「ク、クリスさん! 復活したなら、見てないで助けてください!」

 

 この劇は、俺に何をやらせたいのだろうか。こんな扱いなら、いなくていいじゃねぇか。後で、脚本家をぶっ飛ばしてやる。

 

『アクア様、大丈夫でしたか!?』

 

『ミツルギさん、やっぱり来てくれたんですね……』

 

『ええ、アクア様のために僕はここまで来ました』

 

『そう、じゃあお礼を差し上げます……んぅ……』

 

『ア、 アクア様……!?』

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああああああああああああっ!!」

 

「カ、カズマさん、落ち着いて! あ、ポップコーンぶちまけないでくださいよ!」

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「助手君、椅子蹴るのはやめよ? ものに当たるのは、あたし良くないと思うの」

 

 ふざけやがって! ありもしねぇ濡れ場なんか作ってんじゃねぇ! アクアを救出したのは俺だっての!

 

「うるせぇ! こんな駄作見てられるか!」

 

「どうどう、落ち着こう助手君……」

 

 クリスに頭をポンポンされて、なんとか心を落ち着かせる。ミツルギに非はないのに、あいつを憎らしく思ってしまう自分がいる。俺はしぶしぶ劇を見続けた。結局、魔王は、降臨したエリス様の加護の力と、ミツルギの土壇場の覚醒で倒された。

 そして、エピローグが始まる。どうやら、ミツルギ一行は弱者救済の旅に出たようだ。まぁ、『俺達の戦いはこれからだ!』っていうエンディングだ。

 

「駄作だったな。俺はもう帰って寝る」

 

「カズマさん、大丈夫ですか」」

 

「助手君の好きにさせてあげよう。ね、ゆんゆん?」

 

「はい……」

 

 俺は、これから王都を散策するという二人を残して、ホテルに戻った。なんだか、非常にむしゃくしゃする。俺は布団を引っ被り、不貞寝を敢行した

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……夜か……」

 

 俺は目をゴシゴシ擦りながら、起き上がる。寝た時は、夕闇に包まれていた部屋が、完全なる暗闇に包まれていた。そして、俺の近くから、二つの寝息が聞こえてきた。

 

「こいつらも寝たか」

 

 ためしに、ゆんゆんのおっぱいを触ったが、微かに声を上げるだけで、完全に寝入っているようだ。そして、俺はそのままジーッとしながら、今日の事を振り返る。あの劇は、いくらなんでもヒドすぎる。意図的に俺の評判を下げようとしていると、俺は感じた。

 

「そういえば、テーブルの上に……あったあった」

 

 俺はテーブルの上に置かれた情報誌を手に取る。俺は、スタンドライトの明かりをつけ、じっくりと今日の劇の広告を見る。そして、俺は見つけた。この勇者カズマさんの名を貶めた奴の名を。

 

「ダスティネス家監修ね……あいつも裏工作みたいな事するようになったのか」

 

 恐らく、この劇には、ダクネスが関わっている。お嬢様の変化にちょっと感心する。あいつも、随分とあくどい事をするもんだ。思い返して見れば、王宮に魔王討伐の報告をしに行ったのは、ダクネスだけだ。俺やアクア達は、祝勝会と称して毎日、堕落した生活を、討伐後からしばらく続けていたしな。しかし、こんな事して、アイツはなんのメリットがあるんだ……

 

「そうか、アイリスだな。くそっ、ダクネスの奴め! 帰ったらお仕置きだ!」

 

 ダクネスは、アイリスを俺から遠ざけるために、虚偽の報告をしたのだろう。あの妹は純粋だ。あんな糞みたいな話を鵜呑みにしたら、俺の素晴らしいお兄様像が崩れてしまう。こんな事は許されない。

 

「アイリスに直談判してやる!」

 

 そう決めて、俺は部屋を飛び出した。それにアイリスと会うのも久しぶりだ。たっぷり冒険話を聞かせてやろうじゃないか!

 そして、俺は深夜の王都を駆け抜け、王城の城壁に以前と同じように、矢でフックをかけ、侵入する。相変わらずのザルっぷりだ。そのまま、城内に侵入する。そして、潜伏を発動させ、見回りを行う衛兵から隠れながら、俺は先に進む。

 たいしたピンチもなくアイリスのいる階へたどり着いた。ちょっとザルすぎて、心配になってきた。さて、潜伏で……

 

「っ……!」

 

 俺は思わず声を漏らしそうになる。スキルを発動して気付いた。この階層の見回りを行う衛兵は、気配察知や潜伏系スキルを持っているようだ。先ほど、俺の潜伏スキルが、誰かの気配察知系スキルの知覚範囲に重なったのを感じた。なるほど、対策は一応しているようだ。

 

「たく、またネズミか何かか……?」

 

 先程の潜伏スキルの余波に気がついた衛兵が、こちらへとやってくる。もうスキルではなく、普通にスニーキングするしかない。俺は物陰に潜み、奴が来るのを待つ。そして、こちらに接近してきた所で、俺は奴に飛びついた。

 

「“クリエイト・ウォーター”」

 

「な、誰だおま……ごぼぼぼぼぼぼ!?」

 

 俺は衛兵の口へ水を流し込んでいく。さすがに殺すわけにはいかない。俺はドレインタッチをもがく衛兵に発動し、無力化した。ついでに、この衛兵の持ち物も拝借しておく、ちょっとした駄賃だ。帰りに酒でも買って帰ろう。

 

「さーて、この階の衛兵を無力化するか」

 

 俺は気絶した衛兵を運び、廊下の中央に置く。そして、物陰に潜み、壁をバンバンと叩いた。

 

「なんの音だ?」

 

「こっちからしたぞ……」

 

どうやら、二人の衛兵が気付いたようだ。コツコツと廊下を歩く靴音が近づいている。

 

「おい、リチャードの奴が倒れているぞ!」

 

「どうせ、酔っぱらってるんだろ……」

 

そして、衛兵達は、気絶した衛兵の前にしゃがみこみ、意識の確認を行った。

 

「死んではいないようだああああああああああああっ!?」

 

「なんだよ、やっぱり、酔ってええええええええええええっ!?」

 

「“ダブルドレインタッチ”」

 

 俺は、しゃがみ込む二人の首筋に手を当て、ドレインタッチを発動させる。気絶者が3人に増えた。

 

「おい、叫び声が聞こえなかったか?」

 

「どうせ酔っぱらってぶっ倒れたんだろ。ほら、3人で仲良く倒れてる」

 

「……死んでないだろうな?」

 

「怖い事いうなよ。確認するぞ」

 

俺は物陰に潜みながら思った。こいつら、平和ボケしすぎだろ……

 

 そして、死体釣り戦法を始めてから10分後、俺の前に、多数の気絶した衛兵が転がっていた。俺は呆れながら、彼らを物置部屋に放りこんでいく。このまま朝までぐっすりだろう。

 始末を終えた俺は堂々と廊下を歩き、アイリスの部屋の前にたどり着いた。そして、扉をノックする。

 

「王女様、クレア様が至急お伝えしたい件があるとの事です。4階中央ロビーまでお越しください」

 

『んぁ……こんな深夜にですか? まったく、クレアは後でお仕置きです』

 

 そんな声とともに、扉がガチャリと開いた。そして、扉を開けたアイリスは、俺の顔を見て、ポカンとした表情を浮かべる。

 

「よぉ、久しぶりだなアイリス!」

 

「お、お兄様!」

 

アイリスが満面の笑みを浮かべながら、俺の胸へ飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

「で、アイリス、元気にしてたか?」

 

「もちろんです。お兄様こそ、どうですか」

 

「俺は毎日、ビンビンに健康だ」

 

「ビンビンですか」

 

「そう、ビンビンだ」

 

 そうやって、俺達はベッドのに座って会話をする。本当に久しぶりだ。以前会った時より、少し背が伸びた気がする。アイリスも成長期だ。これからどんどん育つだろう。うん、非常に楽しみだ。ぐへへ……

 

「私、お兄様にはいっぱい聞きたい事があります。でも、まずはこれを聞きます。お兄様、今日は何しに来られたのですか?」

 

「おう、その事についてなんだが……」

 

 それから、俺は、対魔王戦での真実を語った。そして、演劇での俺の扱いに遺憾の意を表明した。アイリスは、俺の冒険話を、目を輝かせながら聞き、演劇に関しては何やら、神妙な顔をしながらうんうんと頷いていた。

 

「やっぱりそうだったんですね……」

 

「やっぱり?」

 

「ええ、ダスティネス家と、私の派閥に与する貴族の方達は、揃って協力し、私をお兄様に近づけないようにしていたんですよ」

 

 俺はその言葉を聞いて、確信する。やはりダクネスが関わっていたようだ。そこまでして、アイリスから俺を遠ざけたいのだろうか。まったく失礼な奴だ。

 

「お兄様、私、あなたが死んだとか、故郷に帰って結婚したとか、ララティーナの婚約者になったとか、色々言われましたの。最終的に、皆がお兄様の事は諦めろ、やめておけって……!」

 

「おう、泣くな泣くな」

 

 涙を流して始めたアイリスを俺は慰める。そんなに俺に会いたかったのか。実に嬉しい事だ。そして、ダクネスへのお仕置きは、さらに強化しよう。恥辱の海に沈めてやる!

 

「お兄様、本当に魔王を倒したって証明できますか?」

 

「ああ、チンチン鳴る嘘発見器を使ってもいいし、なんなら女神二人に確認取らせてもいいぞ」

 

「いえ、お兄様が、こんな大切な事で嘘をつく事はありません。信じます」

 

アイリスは、泣き顔から一転して笑顔となった。うん、やはりアイリスには笑顔が似合う。

 

 

 

 

 

「で、結婚式はいつにします?」

 

「ひょ?」

 

 ちょっと、急展開すぎて、お兄さんついていけない。というか、結婚? 俺とアイリスが結婚……!?

 

「ちょっと待て、アイリス。俺には何のことか、さっぱり分からないのだが」

 

「え? お兄様は、そのつもりでここに来たのではないのですか?」

 

「いや、そんな事、思いもしなかったぞ!」

 

 動揺している俺をアイリスがじっと見つめてくる。そして、何かに納得が行ったのか、手のひらをポンと叩いた。

 

「もしかして、お兄様は魔王討伐の報酬をご存じないのですか?」

 

「は……? お金じゃないの?」

 

「それもあります。もう一つの報酬は王女と結婚する権利です!」

 

「ええええええっ!?」

 

 そんな報酬があったのか!? ダクネスめ、そんな事は、一言も俺に伝えてないぞ! なるほど、アイツは結婚阻止のために、俺の評判をガタ落ちさせたんだな。しかし、アイリスと結婚か。もしかして、結婚すれば、あの贅沢三昧の暮らしを一生できるのか……!?

 

「お兄様が望むなら、側室でも、ハーレムでも作ってもいいですよ!」

 

「ハーレム……!」

 

「ララティーナや、めぐみんさんを側室にしたらどうですか? あの人達、お兄様にベタ惚れですよ」

 

「おふっ! 男の夢じゃないか!」

 

 正妻アイリスに、めぐみんや、ゆんゆんを側室に迎える。最高すぎる。しかも、俺も王族の仲間入りだ。城のメイドを好き放題に犯しても、お咎めなしだ。

 

「だが、アイリス。お前、結婚できる年齢なのか?」

 

「数か月後にそうなります。安心してください!」

 

「マジか……」

 

 茫然としている俺に、アイリスが抱き着いてきた。後ちょっとで、合法か。今まで、性の対象として見てなかったというのに、とたんに情欲が湧きだすのを感じる。

 

「結婚しましょう、お兄様!」

 

 なんて事だ。完璧じゃないか。将来は美人が約束される超絶美少女のアイリスに俺は不満なんてない。そして、俺に好意を抱く、めぐみん、ダクネス、ゆんゆん、エリス様、全員を側室にしてしまおう。

 それこそ、男の夢であるハーレムを作るのもアリだ。アクセルの街で、やたら俺にくっついてくる女冒険者や、王城のメイドをハーレム入りさせて毎晩、酒池肉林を開く事もできる

 

 

 

よし決めた! 俺、アイリスと結婚します!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはできない」

 

「え……?」

 

 俺自身驚いた。いつもの俺だったら、喜んでアイリスの申し出を受け入れていただろう。だが、何故だろうか、口から出たのは、否定の言葉だった。言ってしまったからには仕方がない。アイリスとの結婚は断ろう。俺はそう決心した。

 

「アイリス、お前はまだ子供だ。親しくなった男を好きなんだと、錯覚しているだけかもしれない」

 

「……そんな事ないです」

 

「本当にそうか? 俺はお前と過ごした時間はそんなに長くはない。こんな短期間で、惚れるほど、王女様はちょろいのか?」

 

「恋に時間なんて関係ありません! それに、私がちょろく見えるほど、私はお兄様が好きなんです……!」

 

「そうか」

 

 俺は再び泣き出したアイリスを、ただ眺める事しかできない。今の俺に、アイリスを慰める資格はない。

 

「お兄様、本当にダメなんですか? お兄様が王になる事だってできるんですよ!」

 

「すまん、今の俺は、お前の結婚を受け入れる事はできない」

 

「そんな……そんなっ……!」

 

 小一時間ほど、アイリスは泣き続けた。俺はその光景から目を逸らす。今まで、俺は、女性に好意を寄せられる事を楽しみ、喜んでいた。しかし、こんなにも辛い思いもする事があると、初めて気が付いた。

 そして、泣き声がやんだ。ふと、アイリスに目線を戻すと、睨み付けるような目線を送ってきた。

 

「頭の整理はついたか?」

 

「はい、私も納得いきました。私はお兄様が好きです。でも、錯覚かもしれない」

 

「そうだな」

 

「だから、私は見極めます。この気持ちが本当なのか」

 

 なんだか、完全に諦めていないようだ。いやーモテるのって、つれー、つれーわー

いや、本当に辛いです……

 

「アイリス、お前はもっと交友関係を広げろ。そして、そこで出会ったイケメン紳士と俺を比べて、どっちが結婚するに相応しいか見極めろ」

 

「ええ、そうします」

 

 ふぅ、やっと決着がついたか。ただ、アイリスに対する罪悪感が今になって、押し寄せてくる。なんで、俺みたいな外道が、アイリスみたいな美少女の求婚を断っているのだろうか。本来は、俺が求婚して、断られるのがあるべき姿だ。

 

「お兄様、一つ約束してください」

 

「なんだ?」

 

「私が、見極めを終えても、お兄様の事を好きでいたら、もしくは行き遅れたら、私をお嫁さんに貰ってください」

 

「分かったよ。そんな時が来たら、貰ってやるよ」

 

 俺の言葉に満足したのか、アイリスは満面の笑みを浮かべながら、俺に抱き着いてきた。

 

「お兄様、私の指輪をまだ持っていますか?」

 

「やっぱ仮面盗賊の正体に、気が付いていたか……持ってるぞ」

 

「そうですか、なら安心です。私の見極めが終わるまで持っててくださいよ」

 

「分かったよ……」

 

 それから、俺達は抱き合いながら、改めて話し合った。魔王討伐後の世情の変化、俺の最近の生活についてなど、話題が尽きる事なく話し込んだ。

 

「おっと、つい話し込んでしまったな。もう、俺は帰らせてもうらうよ」

 

「そうですか」

 

アイリスはそう言うと、俺に突然、キスをしてきた。

 

「ん……」

 

 ほんの数秒の軽いキスだ。しかし、唇を放したアイリスは真っ赤になっていた。やっぱ、子供だな。俺はアイリスの頭を一撫でしてから、扉へと歩を進めた。

 

「お兄様、最後に質問です。正直に答えてくださいよ?」

 

「いいぞ」

 

「私との結婚を断った、本当の理由はなんですか?」

 

 

 

 

なんだそんな事か。それは、まあ……うん、あれだな。

 

 

 

 

「俺がアイリスと結婚すると、悲しむ奴がいるんだ」

 

「ふふっ、そうですか……」

 

 アイリスがクスクスと笑う。なんだか、気恥ずかしくなってきた。そして、アイリスはベッドの傍から、ボタンのついた小さな箱を、俺に差し出してきた。

 

「お兄様、お土産です。このボタンを押してください」

 

「なんだ? 俺こういうのに弱いんだよ。 ポチっとな……」

 

 

 

『緊急連絡! 緊急連絡! 王女様に緊急事態発生! 医療班と衛兵は直ちに、王女様の部屋へ急行してください! 繰り返す……!』

 

 

 

「お兄様、仕返しです!」

 

「このバカ! “フラッシュ!”」

 

「きゃっ!?」

 

 随分と面倒臭い事をしてくれた。俺はアイリスに魔法を浴びせ、急いで廊下の窓を割り、外へ飛び出した。

 

 

 

 

 

『クソ! どこにもいないぞ! もう城下に逃げたかもしれない。捜索隊を街に出せ!』

 

『アイリス様は絶対に殺すな、捕縛しろとの事だ!』

 

『捕まえたものには、報奨金1000万エリスが出るらしいぞ!』

 

 

 そんな声が俺の眼下から聞こえてくる。俺は現在、王城の屋根の上にいた。ここで、ほとぼりが冷めるまで、しばらく待つのだ。

 

「はぁ……」

 

 なんだか溜息が自然と出てしまう。俺は、いつからアイリスを振る程、偉くなったのだろう。自分自身に腹が立った。この贅沢ものめ! と……

 そして、俺自身、気が付いてしまった。俺の心のほとんどを、ゆんゆんに占有されている事を。

 

「あいつ、俺がアイリスと結婚したら、絶対泣くしな。それこそ、自殺しかねない」

 

 ゆんゆんは、何というか、重い女だ。いや、そう言ったら可愛そうだ。俺の事を束縛したがるのは、女の子特有の独占欲だ。それに、ダクネスと仲良く俺に奉仕していた事を考えるに、ある程度の寛容さも持っている。

 そして、純粋無垢な奴だ。ゆんゆんは、結婚というものを、非常に特別に思っている。俺はその、ゆんゆんの幻想を汚したくない。

 

「結婚か……」

 

 ネットでは、結婚のイメージは最悪だ。俺もそんなにしたいと思っていなかった。でも、俺も小さい頃は幸せだった。あの時の両親を見ていると、結婚も悪くないものだと思う。俺が、引きこもったせいで、少し殺伐とした家族関係になったが……

 

それに、ゆんゆんとの結婚生活、これは何というか、幸せなんだろなぁ。

 

「結婚ねぇ……」

 

 俺はポケットを漁り、ジッポと、衛兵から略奪した、たばこを取り出す。そして、俺はジッポに火を灯した。あたりを優しく照らす火を、俺は、ぼーっと見つめる。そして、ジッポのケースに英語で刻印されている文字を読んだ。

 

「“離れていてもずっと一緒”か。あの転生者の日本での嫁さんだか、彼女も、重そうな女だな」

 

 しばし、感傷にひたる。あの冒険者は、こんな気恥ずかしいジッポに、どのような未練を残していたのだろうか。俺は、たばこに火をつけ、思いっきり吸った。

 

「まっず!」

 

 やっぱり、たばこは人間の吸うもんじゃない。俺はついつい、たばこを、火をつけたまま投げ捨ててしまった。まぁ、そんな事どうでもいい。

 

「俺も覚悟を決めるか」

 

 そう言ったものの、俺はこの、ぬるま湯のような関係をまだ続けたい。そして、そんな事思う自分が情けない……

 

 

 

『おい、中庭が燃えてるぞ!』

 

『あそこは昼にメイドが落ち葉を集めてた所じゃ……』

 

『やべぇ!園芸用の堆肥や枯草を置いてある倉庫に引火してるぞ!』

 

『おおう!? 小屋が爆発して、あたりが火の海になりやがった! 消火班を今すぐ呼んで来い!』

 

 

 

 

 

何やら下が騒がしいが、俺にはどうでもいい。騒ぎに乗じて逃げさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺は逃走に成功した。若干どんよりとした気持ちを持ちながらも、俺はホテルへ帰還、そして、部屋に……

 

「お帰りなさい、カズマさん」

 

「エリス様……?」

 

ゆったりとした、白い羽衣に、白銀の長い髪持つ少女が部屋の前に立っていた。そう、クリスではない、エリス様だ。

 

 

 

 

「カズマさん、ダンジョン攻略の報酬です。私が凄い事、してあげます」

 

 




次回、女神エリスの誘惑! 月曜あたりに投稿します。

ちなみに、アイリスは前作において、ラストの引っ掻き回し役として、登場予定でしたが、なんだか、円満に終わりそうだったので、アイリスを出さないで、めぐみんの爆裂オチになりました。

そして、結婚はいいぞ(ステマ)
老後を一人で過ごすとか、マジ勘弁
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