時系列は紅魔の里編にいったんもどります。
紅魔の里にて、私は決意しました。
カズマをあの女から取り戻すと。
その作戦の一環として、カズマの尾行を継続して行っていました。そして、今日は名誉紅魔族になるための最後の署名相手であるぶっころりーの依頼をカズマ達はこなしていました。詳細は分かりませんが、彼らは森の中へ行くようです。私は尾行を諦めざるをえませんでした。紅魔の里の森は高難度のモンスターが多くいます。私一人では危険です。
私は仕方なく紅魔の里に戻ってきていました。そして、里と森を行き来する街道に待機してじっと身を潜めます。再びカズマ達が里に姿を現した時、彼らは喜びの喝采を上げていました。
「む、署名集めは完了ですか……」
どうやら、署名集めが終わったので、祝杯をあげるようです。カズマとあるえが、何やら妙な雰囲気を漂わせながら、里の中を歩いて行きます。この方向は……おそらくレストランに向かうのでしょうね。そういえば、私もお腹がすいてきました。
くーくー鳴るお腹を手で抑えながら、尾行を続けました。私は無策でカズマに迫り、誘惑するなんて事はしません。妙な所で誠実なカズマは、私の誘惑を耐える可能性があるからです。ですから、私はあの男の弱みを握り、それによる脅迫……“お願い”をしようと思っています。
カズマとあるえは、予想撮りレストランへと入っていきました。私も、そのレストランへ入り、カズマ達がよく見える席に座ります。そして、観察を開始すると、店員さんがこちらに寄ってきました。
「ご注文はお決まりですか?」
「水で」
「え? あのそれだけですか……?」
「水で」
「あ、はい……」
私は、水を配膳する店員を尻目にポーチから菓子パンを取り出し、それを食べ始めました。
「あの、店内で食事をするのなら、ご注文を……」
「は?」
「あの、その……!」
「は?」
「ひぃ! もういいです!」
店員の撃退に成功した私は、菓子パンを食しながらカズマ達の会話に聞き耳を立てます。
『カズマ君、今から、私のウチ来ない? そこでちょっと頼みたい事があるの……』
『喜んで!』
私は、驚いてあるえの姿を確認しました。あのあるえが、顔を真っ赤にし、熱い視線をカズマに送っています。完全に発情した雌の顔じゃないですか。森で見失った時、何をしていたのでしょうか。しかし、あの時はぶっころりーもいましたし……
まさか野外乱交?
いや、あのあるえが、そんな事をするはずがありません。でも、現にあるえは雌の顔です。とりあえず、尾行を続行しましょう。私はこの2週間、カズマを尾行し続けましたが、今のところボロは出していません。性行為もゆんゆんとのみ行っています。いや、それが普通なんですが、カズマは浮気性ですからね。上手くいけば、ここでカズマの弱みを握れるかもしれません。
しかし、カズマ達があるえの家に入った事で、尾行不可能となってしまいました。あるえの部屋は2階にあり、外から会話を盗み聞くこともできません。私はなすすべもなく、あるえの家の裏手をうろうろしていました。あの二人は、部屋の中で何をやっているのでしょうか……
「やぁめぐみん! こんなとこで奇遇だねぇー!」
「クリスですか……」
私の前に、最近何かと縁がある女盗賊、クリスが現れました。彼女は、私の方を見てニヤニヤした笑顔を浮かべています。
「何かお困りかな?」
「分かってて言っているのでしょう? 滅茶苦茶困ってます。家の中に入られて観察が出来ません」
「なるほど、確かにそれは大変だね。でも、あたしの超凄いマジックアイテムでそれも解決だよ! じゃーん!」
そういうと、クリスは懐から綺麗な水晶玉を取り出しました。見ててぶっ壊したくなるような見事な輝きです。
「これは、任意の場所を覗き見れる凄いマジックアイテムだよ! 悪用しほうだいの危険なしろものだけど……使う?」
「ばっちこいです! 貸してください!」
「じゃあ、一緒に見ようか!」
私達二人は水晶玉を地面に置き、しゃがみこんでそれを観察しました。クリスが、水晶玉を撫でると部屋の中のカズマとあるえの姿が鮮明に映し出されました。
「うわ、本当に凄いですねこれ」
「そりゃあ神器……ゲフンゲフン……! とにかく、悪用したら逮捕されるほど凄いアイテムだよ」
「今、絶賛悪用中ですけどね」
そして、水晶玉からは二人の会話する声も聞こえてきました。二人の会話を聞いて、私達は呆れました。あるえって、とんでもない痴女だったのですね。というか、あるえの表情は、まさに恋する乙女です。この短期間で惚れさせるなんて、カズマも相当なスケコマシですね。
「紅魔族はスケベな事しか考えないのかな……」
「クリス! これはあるえが特殊なだけ……だと思います。紅魔族に対して、そんな風評被害は勘弁してください」
「分かってるって! それより、あるえって子の顔見なよ! もうこの子完全に落ちてるよ!」
「そうみたいですね……」
あるえが、カズマに背後から抱き着かれて、恍惚とした表情を浮かべています。そしてカズマが、あるえに手淫を始めました。彼女はそれをだらしなく口を開けながら受け入れています。カズマの指……羨ましい羨ましいっ!
「くっ……!」
「おっと、ものに当たらないでね。これ、替えがきかないんだから」
「わかってますよ、そんな事……」
そして、私達は無言でその光景を眺めました。怒りと憎しみ、羨望が入り混じり、私は頭がおかしくなりそうです。そして、誠に遺憾ながら、下腹部がじんじんと熱くなるのを感じました。
「あ、助手君がおちんちん出したよ」
「これは、決定的ですね……」
私は準備していた魔導カメラで、その光景を撮影しました。アップで写す事により、水晶玉に浮かび上がる映像とは断定できないように小細工を施します。
「ふふっ……これでカズマを……!」
「それは無理じゃないかな」
「何故です!? これは浮気です! これを見せればカズマとゆんゆんを……!」
「落ち着いてめぐみん、これ一つだけじゃ動じないよ彼らは。実は私も、ゆんゆんに助手君の風俗通いの証拠を見せた事があるんだけど、あまり動揺しなかったもん。決定的な証拠を何個も集め、それを一気に見せつけた方が効果あると思うよ」
私は、真剣な表情のクリスに気圧されました。確かにそうかもしれません。これだけだと、しらばっくれたり、開き直るかもしれません。むしろ、この写真をどう撮ったかを問い詰められ、逆に破滅する可能性もあります。だからこそ、大量の浮気の証拠で一気に責め立て、反論する余地を与えなくする。ふむ、名案かもしれません。
「めぐみん、今は我慢の時だよ。最終的に勝てばいいんだから」
「そうですね。勝つのは私……私なんです……!」
私は強くカメラを握りしめました。
そして、その日の夜もカズマとゆんゆんの情交を、隣の部屋から覗き見ました。私は、必死に自分を“慰め”ながら、怒りを抑え込みます。むしろ、ゆんゆんに哀れみすら感じるようになりました。あなたに向けられる愛は真実の愛ではない。単なるカズマの性処理肉便器です……!
二人が行為を終え、宿から出て行きました。私は外に出てしばらく夜風に当たります。そうしていると、ゆんゆんを家に送り届けたカズマが再び宿の近くに帰ってきました。
「こんばんは、カズマ」
「お、おう……最近この時間によく会うな」
「ふふっ、たまたま、たまたまですよ」
「たまたま?」
「カズマ、それはもしかしてセクハラのつもりですか?」
呆れる私にカズマがはニヤケた笑顔を浮かべました。なんでしょう、ぶっ飛ばしたくなりました。
「紅魔の里の帰省も明日で終わりです。また、アクセルでの生活に戻りますね」
「そうだな。まぁ、いつも通りの日常に戻るんだ。いいじゃないか」
そんな事を言うカズマに私は寄りかかりました。私は、カズマの熱い体温をと、ゾクリとした快感を感じ、一方で不快な女の匂いを漂わせる事への嫌悪を抱きました。
「カズマ、本当にいつも通りの日常に戻れるんですか?」
「い、いきなりなんだよ……でも、いつも通りがずっと続くって事はないだろうな」
カズマが憂いの表情を浮かべました。ダメです、そんな顔はカズマには似合いません。あなたにはいつも笑っていて欲しいんです。
「大丈夫ですよカズマ」
「何がだ?」
「私は変わりませんから」
「そうかい……」
こちらをぼんやり見つめるカズマに私は背を向けました。明日からは、また屋敷での生活だ。私達の日常を変える気は……あまりない。
「ではカズマ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみめぐみん」
私は冷たい夜風を受けながら、その場を離れました。例え、他の女と情交を交わした後と知っていても、やはり、カズマとの会話は自分にとって幸せをもたらしてくれるようです。そんな自分が、少し情けない。そして、私が家の近くへ来たとき、見慣れた人物と遭遇しました。
「アクア、どうしたんですか? こんなところで……」
「あ、めぐみん、あんたも何してんのよ、こんな時間に」
アクアはチラッとこちらを見た後、再び膝を抱えて夜空を見つめはじめました。なんだか、彼女らしくない事をしていますね。
「アクア、何かあったのですか? 私が聞きますよ」
「めぐみん……ちょっとカズマの事で気になった事があってね」
「カズマですか?」
「うん……」
言いづらそうにしているアクアの横に、私は座りました。そして、彼女を安心させるように背中を優しく撫でます。アクアは私の方をチラリと見た後、ぽつりと呟きました。
「今日ね、カズマからいつもと違う匂いがしたの」
「匂いですか?」
「うん……」
私は意味が分からず、しばらく沈黙してしまいました。しかし、私も分かってしまいました。何故なら私もさっき、“不快な匂い”を嗅いだのですから。そして、アクアの言ういつもと違う匂いとは……!
「アクア」
「なによ?」
私は、アクアの耳元でそっと囁きました。
「ゆんゆん以外の女の匂いですか?」
「っ……! 知らない知らない知らない知らない知らないっ!」
「アクア!」
彼女は、私から逃げるように走り出し、夜闇に消えました。私は、その様子を見て自然と笑いだしてしまいました。そうですね、アクアって随分と“鼻”のいい人でしたからね。もしかしたら……ふふっ……ふふふっ!
「安心してくださいアクア。私がいつも通りの日常に戻してあげますから」
そう、私達の日常を変えるわけにはいかない……!
そして、私達はアクセルの街へと帰還しました。屋敷ではダクネスが待っており、再会を祝して少し豪華な夕食となりました。夕食を終えた後は、ゆるやかな時間をみんなで過ごしていました。そんな時、ダクネスが何やらそわそわした様子で話しかけてきました。
「なぁみんな、久しぶりにクエストに行かないか?」
「ん? 俺は構わないぞ。でも、今は冬だから強敵か、カエルくらいしか……」
「カズマ、今はもう雪解けの季節です。そろそろ手頃なモンスターが出始めますよ」
「そうなのか、じゃあ久しぶりに行くか」
「そうしましょう!」
「んふふ、久しぶりのモンスター……!」
カズマの声にダクネスと私は勢いよく答えました。私も爆裂魔法をモンスター相手にぶっぱなしたいですしね。
「おいアクア、お前はどうする?」
「カズマさんが死んじゃうから私もいくわ……ふみゅ……」
「いや死なないから! というか、どうしたアクア!? お前、なんだか様子がおかしいぞ!?」
「うるさいわね……んぅ……」
「おひょっ!?」
いつもは暖炉の前の席を取り合っている二人が、今日は仲良く並んで座っていた。そして、アクアはカズマに体を擦り付けるように抱き着いている。どうやら、アレがきっかけで、アクアも一皮剥けたようですね。
「とにかく、明日は早朝からクエストだ! 俺は寝る!」
「ん、カズマさん一緒に寝る?」
「アホか! こ、こら! 放せアクア!」
ギャーギャーと騒ぐカズマを見ながら、私も就寝の準備を始めました。このパーティでのクエスト……なんだか随分と久しぶりです。そして、自然と心がポカポカしてくるのを感じました。
翌日、私達はアクセルの街に近い草原に来ていました。あたりにも、他の冒険者の方々の姿がチラホラあります。彼らも、同様のクエストを受けているようですね。
「さあ、いくわよカズマ! 大量に倒して飲み放題チケットをゲットするわよ!」
「酒なんか金で買えばいいじゃないか」
「バカねカズマ、一週間飲み放題なのよ! 支払いなんて気にせず、タダで毎日どんちゃん騒ぎができるの! これはお金じゃ買えないものなのよ! 最高じゃない!」
「そうかい……」
意気込むアクアを先頭に私たちは草原を進みます。今日受けたのは「巨大イナゴの大討伐クエスト」である。一匹一匹の討伐報酬は少ないですが、既定の討伐数に到達すると、様々な追加報酬がもらえるというものです。アクアが目指す飲み放題チケットは、1000匹討伐達成の報酬、はっきり言って無理でしょう。単に、冒険者のやる気を促進させるためにあるような報酬です。実際その報酬を得られる冒険者は極わずか、いやいないと言っていいでしょう。
「みんな、私に任せろ! 虫にたかられるのは私の役目だ!」
「分かったから、俺の指示ちゃんと聞けよ?」
「無論だ! そして、めぐみん、とどめはたのんだぞ!」
「当然です! 私がこのパーティのメイン火力なんですから!」
私はババーンと決めポーズを作ります。こうするのもなんだか久しぶりですね。そして、私達は会話を楽しみながら、草原と森の境目にたどり着きました。この森の向こうは、イナゴの成体が蠢いています。農作物の被害を減らすためには、この森と草原でイナゴを漸減させる事が必要不可欠なのです。
「うっし、じゃあダクネスにモンスター寄せのポーションをかけてやるからな。じっとしてろよ?」
「さあこいカズマ!」
「ほうら……!」
「あ、こら、お前どこにかけて……ん……」
カズマがダクネスの首筋と胸の付近にゆっくりと垂らし始めました。まったく、こんな時にまでセクハラですか。
「カズマじれったいです。えいっ!」
「わぶっ!? めぐみん、か、顔にはかけないでくれ!」
そんな事をしているうちに森がざわつき始めました。どうやら来たようですね。不快なハネ音やギチギチという鳴き声のようなものが聞こえて来ました。
「それじゃあダクネスはそのまま囮! 俺達は下がるぞ!」
カズマの指示で私達は行動を開始しました。ダクネスは大剣を構えて待機し、私達3人は後方へと移動しました。
そして、定位置についた時、森から黒い巨大イナゴの大群が吹き出し、一斉にダクネスへと殺到しました。うぷっ、ちょっと気持ち悪い光景です。
「よし、めぐみんは爆裂、アクアは適当にダクネスにヒールを飛ばせ」
「わかりました」
「りょーかい!」
私は意識を集中させて詠唱を開始しました。紅魔の里では一日一爆裂ができず、鬱憤が溜まってるんです。今までのイライラを込めて、最大級の爆裂魔法を放ってやりましょう。
「チッ、こっちにも何匹かくるな。めぐみんは俺の後ろな」
カズマが刀を抜いて前に出ました。そして、ダクネスにたかる群れからはぐれてこちらに来る巨大イナゴを、次々と切り飛ばしていきます。な、なんだか二か月前より更に強くなってますね……
「カ、カズマさーん! 私も守って!」
「分かったから抱き着いてくるな! 後ろに下がれ駄女神!」
アクアが適当な理由をつけてカズマに抱き着きました。非常にムカツキますが、今は詠唱優先です。
「カズマ、詠唱終わりました。いつでも打てます」
「よし! おーいダクネス! さっさと中和ポーションかけて撤退しろー!」
カズマが遠くで虫にたかられて剣をブンブン振り回すダクネスに声をかけました。しかし、彼女は撤退しようとはせず、剣を振り回し続けています。
『うひゃひゃひゃ! わたひはまだがんばれるひょきゃずまー!』
「あのバカ……!」
「カズマ、撃っていいですか撃っていいですか!」
「アホ! 今のお前は昔と比べて超強化されてるんだ! いくらダクネスでも、木っ端みじんになるかもしれんだろうが!」
しかし、困りましたね。私も日頃の鬱憤を込めて最大限の魔力を込めたため……!
「カズマ! はやく撃たないと、ここでボンッってなりますよ!」
「マジかよ! おいダクネスさっさと撤退しろ! 指示通り動けバカ!」
『き、騎士に撤退の二文字はない! うりゃああああんっ……んぁっ!?』
「あいつ! めぐみん、バカを回収してくるから、もうちょっと我慢しろよ!」
「早くしてください。あと1分です……」
「ひょえっ!? くそがああああああっ!」
カズマが刀を構えて巨大イナゴの大群に突撃しました。今のカズマなら、死にはしませんよね多分……っと! ヤバイヤバイ、今、ちょろっと爆裂しそうになりました。集中集中!
『ぬおおおおおっ! ライトニング! ライトニング! ライトニング……スラッシュ!』
中級魔法の乱打により、巨大イナゴの大群に切れ目ができました。というか、刀に魔法の付与をしています。カズマって、いつのまにか随分と器用な事をするようになったんですね。
『中和ポーションを喰らえ!』
『わぶっ!? カズマ、まだ撤退は……これから気持ちよく……!』
『うるせぇ!』
『あっ……』
ダクネスがカズマにお姫様抱っこをされながら、離脱しました。まったく、アクアといい、ダクネスといい……羨ましいじゃないですか!
『めぐみんやれ!』
カズマの爆裂許可の声が聞こえてきました。では遠慮なくいきましょう。私は今だ密集して黒い団子になっている巨大イナゴに杖を向けました。そして、込めに込めた魔力を一気に解放、放出しました。
「我が最強の魔法を受けるがいい! “エクスプロージョンッ!”」
その瞬間、あたりが強烈な光と爆熱に包まれました。私は爆風に吹き飛ばされないよう踏ん張って耐えます。そして、巨大イナゴのいた場所が更なる爆炎に包まれました。巨大イナゴの大群はその場で燃え上がり、塵一つ残さずこの世から消えました。ふふっ、決まりましたね。私はドヤ顔を浮かべながら地面へと崩れ落ちました。
「ういーすお疲れ。あれだけ派手にやってクレーター残さないなんて、お前も成長したな」
「私は日々進歩するのです……! 少し空中で爆裂させるのがコツですよ。穴ぼこにすると、また街の人に怒られますからね」
「そうかい……んでもって、ダクネス! お前は立て!」
「な、なんだカズマ?」
ダクネスがカズマに降ろされました。そしてカズマはダクネスのお尻をバシーンと叩きます。
「お前が指示を無視したせいで、大変な目にあったじゃないか馬鹿!」
「ああっ!? カズマ、お尻を叩くのはやめ……もっとしてくれ!」
「オラァ!」
「ひゃうううっ!?」
ぐっ……あの二人、私が倒れてる横でイチャつかないでください! というか、ダクネスはさっきからご褒美ばっかじゃないですか。功労者である私を差し置いて、何を……!
「カズマさんカズマさん、私が傷を治療してあげるね?」
「おう、頼むぜアクア。ダクネスを回収する時、全身を奴らに噛まれて、結構血だらけで……おひょっ!?」
「んぁ……じゅるっ……ぺろっ……んはぁ……!」
アクアが、カズマの首筋についた傷に舌を這わせ始めました。アクアも大胆になりましたね。私も負けていられません。
「急に何を……って舐められたとこ治ってる!?」
「ん……ん……ちゅるっ……!」
「こ、こら吸うなアクア!」
私はズリズリと這いずって、カズマの足元にたどりつきました。そして、インナーが破れて血が滲み出ている場所に縋り付き、私も舌を這わせました。
「カズマ、私も治療してあげます……ん……んぁ……!」
ああ、カズマの血液! 美味しい、美味しいです! カズマの一部が私の血肉へとなる。それが実感できる素晴らしい味です! なんだか、毎日浴びるように飲みたくなるほどの中毒性ですね。
「そうだなカズマ、こ、これは民間療法って奴だ。私もやってやろう! うむ……むぐっ……」
「ダクネス、お前まで!? みんな、やめ……やめ……やめなくていいです!」
それから、私達は恍惚とした表情を浮かべ、体をヒクつかせるカズマを舌でたっぷりと舐りました。
「カズマさーん! 飲み放題飲み放題っ!」
「だーっ! 無理だったから諦めろ! それに報酬金全部お前にやったし、それで酒買えよ!」
「いやよーっ! 私は飲み放題が良いの! お金を気にせずタダで浴びる程飲みたいの!」
「金で買って浴びる程飲め! ああこらっ!? なんでお前はそういって抱き着いてくるんだ!?」
私はリビングで横になりながら、二人の様子を眺めました。結局、巨大イナゴの討伐数は216匹。追加報酬はお金と200匹達成報酬のお米券でした。やっぱり、一日で1000匹なんて無理ですね……
「たく……俺はこれから外出する。めぐみん、体をしっかり休めろよ?」
「言われなくても分かってますよカズマ」
「なんだカズマ、昼は食べないのか?」
「おう、ダクネス。俺は昼食を外で食う事に決めてるんだよ。それじゃあな!」
そう言って、カズマが屋敷から出て行きました。恐らく、またあの女の所でしょうね。尾行したいですが、体が動きません。今日は仕方なく、仕方なく諦めるとしましょう。
そんな時、何かをガジガジ齧る音が聞こえました。
「…………」
「おいアクア、爪を齧るなんて意地汚いぞ?」
「う、うるさいわねダクネス!」
どうやら、アクアのようです。彼女は、ダクネスにそう言った後、再び無表情で爪を齧りはじめました。なるほど、アクアも気づいているのでしょうね。私は、その不快な音を耳に入れないようにしながら意識を落としました。
そして、起きた時には窓から見える景色が夕暮れに変わっていました。むぅ、時間を無駄にしましたね。私はのそのそと起き上がって周囲を確認しました。ダクネスとアクアはダイニングテーブルでボードゲームに興じているようです。
「む、起きたかめぐみん。一応昼飯は残してあるぞ?」
「もうパッサパサだけどね。はい!」
アクアにサンドイッチを渡された私は、食事を開始しました。確かに、パンの部分が乾燥してパサパサです。でも、これも栄養、栄養……
『帰ったぞー』
そんな時、カズマの声が聞こえてきました。どうやら、あの女との逢瀬を終えてきたようですね。私が不機嫌オーラを出すのと同時に、アクアがそわそわし始めました。
「あ゛~疲れた……」
そして、リビングに入って来たカズマの胸にアクアが飛び込みました。どうやら、アクアは抱き着き魔になってしまったようですね。というか、カズマの姿がボロボロです。鎧には多数の傷があり、服は所々破れ、血や汚液が付着しています。何かのクエストでも受けてきたのでしょうか。
「カズマー! ん……臭い臭い臭い臭いーっ!」
「いきなりなんだよお前、失礼すぎだろ!?」
抱き着くアクアをカズマが引き剥がそうとしています。にしてはカズマもあまり抵抗していませんね。
あ、鼻の下伸びてる……
「カズマ、夕食はどうする? お前が作るか?」
「ダクネス、それなんだが……おいアクア」
「ん……ふみゅ……なに、カズマ?」
カズマが懐から紙ペラを一枚取り出すと、それをアクアへ手渡しました。
「あ……これ……」
「飲み放題券だ。ゆん……街の連中と同じクエストをやってな。これ持って外で飯食って来い」
「わあああああああっ! カズマさんカズマさんカズマさんっ! ありがとね、ありがとねーっ!」
「たまたま、たまたま同じクエストやっただけだからな!」
アクアは泣きながら更に強く抱き着き、カズマはそれを真っ赤な顔をしながら受け止めました。嫉妬の感情は……浮かんできません。見ていて微笑ましい光景です。
「まったく、カズマさんったら、どんだけ私の事が好きなのかしら! ツンデレ、このツンデレ!」
「う、うるせーっ!」
取っ組み合いを始めた二人が騒ぐ声がリビングに響きます。カズマは、なんだかんだでアクアに甘いですからね。この事に関してはアクアが羨ましいです。まぁ、カズマは私やダクネスに対しても、結構あまあまですけどね。
「ね、カズマ、飲みにいこ?」
「そうしたいとこだが、何時間も虫にたかられて精神的にグロッキーなんだ。明日付き合ってやるから、今日は休ませてくれ」
「でも……」
「アクア、カズマを休ませてやれ。今日は私が付き合ってやろう。カズマとは明日行けばいいさ」
ダクネスが少し落ち込むアクアの傍によりました。アクアはコクリと頷くと、カズマに回復魔法を唱えます。
「“ハイネスヒール!”カズマ、今日はしっかり休むのよ? 明日は、絶対一緒にきなさいよね!」
「へいへい……めぐみんも外で飲んでくるか?」
「いえ、私もまだ体がダルイですしね。お二人で楽しんでください」
私は二人に向けて手をふりふり振りました。まぁ、体がダルイというよりは、カズマと二人っきりになるチャンスです。無駄にはしません。
「それじゃあ、カズマ、めぐみん、行ってくるわね!」
「うーい、楽しんで来い。ダクネス、アクアを頼んだぞ?」
「分かってるさ」
そして、アクアとダクネスは勢いよく屋敷を飛び出していきました。残されたのは、私とカズマのみ。久しぶりの二人っきりで……!
「じゃあ、俺は風呂入って部屋で休むわ。すまんが、夕食作ってくれ、めぐみん」
「ちょっ……まっ……!」
「ふぅー、疲れた疲れた」
リビングを出て行ったカズマを私は見送る事しかできませんでした。しかし、ここで終わらせるわけにはいきません。私は急いで料理を作り始めました。そして、一時間ほどで料理を終えると、私はそれをお盆にのせて、カズマの部屋へ突撃しました。部屋に入ると、カズマはガウンを着て、呆けた顔をしながらベッドに寝転がっていました。
「ん、めぐみんか?」
「ええ、夕食、持ってきましたよ」
「おう、わりいな」
私は近くにあった椅子を引き寄せ、そこに座りました。そして、膝の上にお盆を乗せ、寝転がるカズマに向き合いました。
「結構美味しく作れたと思いますよ、このポトフ。ほらカズマ、あ~ん」
「いきなりなにやってんの、めぐみんさん!?」
驚愕の表情を浮かべるカズマの口元に、じゃがいもを乗せたスプーンを持っていきます。む、カズマもなかなか強情ですね。
「口を開けてください。あ~ん」
「いや、お前これは……」
「あ~ん」
「め、めぐみん?」
「あ~ん」
「…………」
カズマが観念したように、口を僅かに開けました。私は、そこにスプーンを突き入れます。
「美味しいですか?」
「ああ、美味いぞ……」
「そうですか。じゃあ次はソーセージです。あ~ん」
「あ、あ~ん」
真っ赤な表情でカズマが「あ~ん」を受け入れるようになりました。ふふっ、餌付け完了です。私は、あ~んをしばらく続けた後、スプーンとフォークをカズマに手渡しました。
「カズマ、私にも食べさせてください」
「めぐみん、自分で食えよ……」
「カズマ……」
「分かった! 分かったから泣きそうな顔すんな! たく……」
カズマがグチグチいいながらも、フォークでソーセージを刺し、こちらに差し出しました。
「ほれ、さっさと食え!」
「ん……ちゅるっ……あむっ……」
「卑猥な舐め方すんなよ! 食べ物で遊ぶのはいくない! おらっ!」
「むぐっ!?」
それから、私は口に次々と料理を放り込まれました。まったく、もうちょっと恥ずかしながらやって欲しいものです。そして、お盆の上の料理がなくなりました。完食です。
「めぐみん、美味かったよ。ご馳走様」
「お粗末様でした。それより、あ~んはどうでした?」
「に、二度とやらないからなコレ! 食事に集中できねぇよ!」
「カズマのくせに、変な所で恥ずかしがるんですね」
私はそういってから、ベッドに座るカズマの横に寄り添いました。お風呂上りなせいか、いつもの男臭い香りというよりは、シャンプーの匂いがしています。まぁ、私はどんな匂いでもカズマのものなら大好きですが。
「め、めぐみんさん? さっきから、どうしたんでせうか?」
「久しぶりの二人っきりじゃないですか。ゆっくりお話しでもしましょう」
「お、おう。そうだな……」
それから、私達は、この間の二ヶ月間について話し合いました。カズマはできるだけ、ゆんゆんの存在をボカして伝えているようですが、バレバレです。だってさっきから目が泳ぎっぱなしですから。ふむ、ここは一つ、意地悪してやりましょう。
「カズマ、一つ聞きたい事があるのですが」
「なんだ?」
「ゆんゆんは、何故カズマのマントを使っているんですか?」
「うぐっ!? あれは、たまたまデザインがかぶって……!」
「ゆんゆんが、カズマに貰ったと言っていましたよ」
私の言葉を聞いてカズマが溜息をはきました。そして、観念したように答えました。
「あれだ、アイツに欲しいって言われたからだよ。思わずあげちまった……」
「そうですか」
なるほど。カズマがマントを変えた時期、あの時、すでにカズマは“落ちて”いたのですね。実に不愉快です。ですが、表情には出しません。それより、私はとある欲求が心の中に浮かぶのを感じました。
「カズマカズマ……」
「なんだ?」
私は彼によりかかり、耳元でそっと囁きました。
「私も、カズマのなにかを欲しいです。カズマを身近に感じるものを、私にください」
「おおおおっお前!? いきなり何言うんだよ!」
「なんでもいいですよ? それこそ、私の子宮に……むぐっ!?」
「よーしわかった! 何かやるから、変な事を口ばしるんじゃないぞ!」
カズマが私の口を手で塞いできました。これは、ヘタレたのでしょうか。いや、ゆんゆんに操を立てているのでしょう。でも、あなたは浮気性である事を知っています。いずれは私も……!
「つっても、お前にやるものねぇ……」
「カズマの濃い精……むがっ!?」
「ちょっと黙ろうかめぐみん」
カズマは私の口を塞ぎながら、ベッドの下から革製のアタッシュケースを取り出しました。私も初めて見るものです。今度、カズマがいない時に、部屋の物色をする事にしましょう。まぁ、それは後で考えるとして、今はこのアタッシュケースについてです。
「カズマ、これはなんですか?」
「あれだよ、俺の大事な物入れだ。言い方を変えれば、俺の宝箱って奴だ」
「宝箱……カズマは一体何を保管しているんですか?」
「あまり人には見せたくないんだがな。各所でぬす……んだりは、勿論してないし、りゃくだ……つしたもんじゃないぞ。正規の手段で手に入れたものだ。まぁ、特別に見せてやる」
そして、カズマがそのアタッシュケースを開けました。中には――
「間違えた!」
「待って、待ってくださいカズマ! 閉じないでください! 今変な物が見えましたよ!」
「ちょっ!? コラ放せめぐみん! これは別の宝物で……! おいっ……ああああっ!?」
揉み合いの中で、アタッシュケースの口が開き、中身がぶちまけられました。ベッドの上には色とりどりの布……女性用下着と、卑猥なタイトルのえっちぃ本が散らばります。
「カズマ……あなたって人は……!」
「いや、これは健全な男子にとって必要不可欠なもので、決して疚しいものじゃ……!」
キョドりながら、そんな事を言うカズマに、私は見覚えのある黒い下着を突きつけました。勿論、私……のではありません。
「カズマ、これは誰の下着ですか?」
「ああ、これは最近手に入れた、あるえ……ある偉い人の下着だ!」
「ごまかしきれてないですよカズマ! 誰です! 誰のなんですか!?」
「や、やめてぇ! 男の恥ずかしい秘密を探らないでぇ!」
カズマが気色悪い声をあげながら、周囲の下着をかき集め始めました。私は、すかさず新しいターゲット、えっちぃ本を手に取りました。
「なになに、『女神とエッチしよ?アクア&エリス編』、なんですかこれ?」
「やめてください! タイトル読み上げるのは勘弁してください! ていうか、その本はエリス教に異端認定されて、見つけしだい焚書される貴重な本で……!」
「ああああああああああああああっ!」
「のああああああああっ!? 俺の宝物があああああああっ!?」
私は、えっちぃ本を破り捨て、近くのごみ箱にシュートしました。いりません、あんな本はカズマには必要ありません! まったく、魔女っ子ものだったら許したのに、よりによって実在する女神のえっちぃ本なんて、最低です!
「あれですか、カズマは私に他人の下着や、えっちぃ本を渡すつもりなんですか?」
「だから間違えたって言ったろ! くそっ……俺の女神本が……!」
カズマが涙を流しながら、もう一つのアタッシュケースをベッドの下から取り出しました。少し悪い事をした気分ですが、仕方のない事です。むしろ、禁書を破壊した私を褒めて欲しいくらいです。
「ほら、この中から適当に持ってけよ!」
「む、金ぴかですね……」
新たなアタッシュケースの中には、様々な装飾品や、宝石、古代の金貨らしきものが詰まっていました。でも、これはカズマが口を滑らせたとこによると、盗品と略奪品。そんなの、貰ってもあまり嬉しくありません。
「カズマ、私、こんなの貰っても嬉しくないです。もっと、カズマを感じられる奴がいいです」
「注文多いな! とは言っても、俺を感じるものって……なんか卑猥だな」
「やはり、ここは私の子宮にカズマの濃い精……むぐっ!?」
「ちょっと黙れ痴女みん!」
どうやら、カズマは私とヤるのに乗り気ではないようですね。やはり、私がゆんゆんと親友である事が、影響しているのでしょうか。
「それじゃあ、もう新しく何かを買ってやるよ」
「新しくですか?」
「そうそう。ただ、アクアとダクネスが文句言うだろうから、アイツらにも……」
「カズマ、私、アレでいいです」
「ん……? あんなのが欲しいのか?」
私が指さした先はには、一振りの剣が置いてありました。それは、カズマがちゅんちゅん丸を愛用する前に使っていたショートソードです。カズマは立て掛けられていた剣を、こちらに手渡しました。
「俺のお古なんだが、いいのか?」
「はい、今考えたら、これほどカズマを感じられるものは他にありません」
「そ、そうか……」
私は手渡された剣を、鞘から少し出して確認しました。錆一つありません。手入れはしていたようですね。私はこの剣を見て、思わず顔がニヤけてしまいました。そう、これはカズマが力強く握り、モンスターと戦い抜いた剣です。あの女が持っているマントと、同じくらいカズマを感じられるものです。
「お前、アークウィザードなのに剣なんか使うのか?」
「ええ、護身用にピッタリです。というか、私のステータスならばこの街の前衛職より、はるかに戦えると思いますよ」
「うーむ、確かにそうかもな」
「はっきりいって、ダクネスより強い自信があります」
「それを本人の前で言うなよ!?」
私はカズマの剣を、腰にくくりつけました。ふむ、なんだかしっくりきます。それに、剣を持つとなんだか強くなったような錯覚と、カズマと共にあるという感覚を得る事ができました。
「ではカズマ、これは私が貰い受けますね」
「へいへい、やるよ。という事で、これ片付けていい?」
「……許可します」
私の言葉を聞いて、カズマがアッタシュケースに散らばっている下着や、えっちぃ本を詰め始めました。さすがに、カズマの大切(?)な物を全て破壊するわけにはいきませんしね。
「カズマ、私達の下着がないのは何故ですか?」
「そりゃお前……なんでもないです!」
「正直に言ってください。何故ですか?」
「現地調達が簡単だからです!」
なるほど、確かにそうですね。まぁ、カズマが私の下着でナニしようが、別に構わないのですが。むしろ、ぶっかけて私に渡して欲しいくらいです。
そんな時、私はあるものに気付きました。女性用下着にうもれるようにして、小さな鉄製の箱のようなものがあったのです。私は何気なく、それを手に取りました。
「カズマ、これはなんですか?」
「それは……か、かえせっ!」
「おっと」
私はカズマの飛びつきから箱を守るように抱え込みました。カズマは、必死の表情で取り返そうとしています。どうやら、かなり大事にしているもの、もしくは人に見せられないレベルの卑猥なものでしょうか。
「カズマ、中身を確認させてください。もしそれ以上暴れたら、さっき貰った剣で箱を叩き潰します」
「ひでぇ! なんなの!? めぐみんは俺の宝物破壊して楽しいの!?」
カズマが私から引き下がりました。それでは、中身を見るとしましょう。私はその箱のふたをパカリと開けました。さて、どんな卑猥なものが……
「なんですか、これ?」
「…………」
箱の中には、たくさんのガラクタや美術品のようなものが入っていました。何故これを見られたくなかったのでしょうか。
「この変な形の石はなんですか?」
「アクアに貰った奴だ」
「この小さな蛙のあみぐるみは?」
「……アクアに貰った奴だ」
「このナプキンで作られた、高速機動しそうな冬将軍は?」
「…………」
押し黙るカズマを尻目に、私はそれらのガラクタを改めて見ました。よく見れば、見覚えのあるものがいくつもあります。どれも、アクアが手慰みに作っていたものです。
「カズマ! あなたアクアの事、大好きすぎるでしょう!」
「ち、違うから! たまたまアクアに貰ったものを保管してるだけだから!」
「はあ!? こんな小さな物まで保管しておいて! あれですか、あなたは乙女ですか!?」
「ばっ……お前なぁ! アクアが俺に笑顔で渡して来たものを、気軽に捨てられるか!? ほんとうに、どうしようもなくいらない物は捨ててるが、それでも心が無茶苦茶痛むんだぞ!」
「この男、逆ギレしましたよ!」
逆ギレしたカズマを見ながら、私は嘆息しました。カズマのアクアへのツンデレ度は相当なものです。まぁ、私もアクアに貰った小物は部屋に置いてますし、強くは責められませんね。
「めぐみん、俺は別にアクアのものだけを残しているわけじゃない! ほらっ!」
カズマが箱の底から紙束を取り出し、私に手渡して来ました。それは、今までたまに撮っていた私達との写真でした。なるほど、ちゃんと私との思い出も保管しているという事ですか。
「ふむ、やはりカズマは結構乙女な……ん!?」
「どうした、めぐみん?」
私の手は最後の写真で止まりました。そこには、腰に手を当てて偉そうなポーズを取るカズマと笑顔でその腕に抱き着くゆんゆんとのツーショット写真がありました。いつのまに、こんな写真を……!
「ああああああああああああっ!」
「おいこら! さすがに写真は破かせねぇぞ! ってこれは!? 返せ!」
私は、カズマに写真をぶん盗られながらも、決意を新たにしました。
私達の思い出にさらっと侵入してきたあの女が許せない。
あの女に勝ち逃げされるのはごめんだ。私達は絶対負けない!
カズマは私の、私達の男なんです!
次回、めぐみんの属性が明らかに!?
あーんは、私のシーン、カットされちゃってすごーく悲しいという電波をめぐみんが受信したので書きました。