elonaを知らなければ理解に苦しむ描写があります。
elona omake overhaulのネタを使っています。
本編とはほぼ無関係であり、無理して見る必要はありません。
「カズマーっ! みなさいよコレ! 凄いもの手に入れたわよ!」
「なんだ、駄女神? ウキウキだな」
「だって本当に凄いものなのよコレ!」
紅魔の里からアクセルの屋敷へ帰還し、しばらく経った頃、アクアそんな事をほざきながら俺に抱き着いてきた。彼女の手には何やらゲームソフトの箱のようなものが握られている。また、どっかからガラクタを手に入れてきたのだろうか。
「それは本当に凄いものですよ、カズマさん」
「おうっ!? ゆんゆんじゃないか!」
俺の部屋に新たな侵入者が現れる。それは、先ほど街でクエストを終え、色々とヤって別れたばかりのゆんゆんであった。
「あ、カズマ! 手持ちが足りなかったから、ゆんゆんにお金借りたの。カズマさん払って!」
「お前……ほらゆんゆん、お釣りはいらん」
「はい、ここは素直に貰っておきます」
ゆんゆんは俺から金を受け取り、微笑んだ。それから、俺はアクアとゆんゆんから、この凄い物とやらの説明を受ける。なんでもウィズの店が仕入れたもので、バニルもその価値を認めて高値で店頭に並べていたらしい。それをアクアが購入したわけだ。
「この『elona』ってゲームは起動して寝室に置くだけで、寝てる間に夢を操ってVRモノみたいな仮想現実で遊べるゲームらしいわ! カズマ、あんたこういうの好きでしょ?」
「大好きだけど、VR系はデスゲームになるのがお約束があってだな……」
「カズマさん、その辺は安心してください。ウィズさんとバニルさんが呪いの類がない事を確認済みです。それに、今は亡き魔法大国ノイズが制作に関わっている由緒あるものらしいですよ」
「余計心配になってきたぞゆんゆん!」
その国の遺産のせいで、これまで大変な目に何度か遭遇してきたのだ。まぁ、あの国がなければ、めぐみんとゆんゆんが生まれなかったと考えると、感謝してもしたりない存在なのだが……
「カズマ、今夜は皆で一緒に寝て、このゲームで遊ぶわよ!」
「へいへい、ゆんゆんも参加するのか?」
「ええ、私も気になっていますしね」
という事で、めぐみんとダクネスにも夕食時に説明し、参加してもらう事となった。ちなみに、めぐみんとゆんゆんはお互いに怖いくらいの笑みを張り付かせて話していた。うっ、少し胃が痛くなってきた。
そして、その夜、屋敷のホールで俺達はゲーム盤を中心に布団を敷いて寝ていた。ゲーム盤と俺を中心に×印をかくような布団配置である。なんだか、謎の儀式を行うようで、なかなか寝付く事ができない。何よりムラムラしていた。何せ、男にとって最高の状況である。
「ふへへ、かじゅまさん~」
「おい駄女神! 寝相悪すぎだぞ!」
早くも布団に侵入してきた駄女神と取っ組み合いを始めていると、俺の両隣にまたも侵入者が現れる。
「カズマ、今日は冷えますね。くっついていいですか?」
「欲望をぶつけるなら私だけにしておけ。あとあと面倒になるぞ?」
「お、お前らなぁ……!」
ああ、両腕にダクネスとめぐみんの柔らかい感触が! はなせ! はな……ありがとうございますありがとうございます!
「カズマさん、私も寒いです! だから私も……いたいっ!? 誰!? 私を蹴らないでください! あうっ!? また蹴られた!」
俺の足元から、ゆんゆんの苦痛の声が聞こえてきた。そして、めぐみん達の下半身がやけに活発に動くのを感じ取る。こいつら……!
「さっさと寝やがれ!」
俺は抱き着いてくる奴らを振りほどき、隠し持っていたポーションの封を開けた。王都で保険として購入していた超強力な睡眠ポーションである。封を開けた瞬間、液体が気化して煙があたりに充満する。そして、尋常じゃない眠気に襲われる。ああ、早く寝よう。こいつら全員に欲望を叩きつける前に……
頭の中で、何やらプロローグのようなものが始まった。どうやら、アクアの買ったゲームが正常に起動したようだ。そして、プロローグを俺は流し聞く。ちょっと、固有名詞が多くて分かりづらい。要約すると、乗っていた船が沈没し、善意ある二人に助けられた所からゲームが始まるようだ。
ちなみに、ゆんゆん曰く、このゲームの主人公(?)は俺に設定したらしい。俺以外はその世界の住人や冒険者にランダムで割り当てられるそうだ。寝る前に、とりあえずの目標は『ゲーム世界で全員と合流する事』と決めた。ゲーム世界で、お互いどんな配役なのかを確認して楽しむためだ。
また、俺はレベル1スタートではなく今の俺のスキルなどが、ある程度反映されるらしい。まぁ、おもしろかったら、初期ステータスで始めるのもいいかもしれない。ただ、嫌な予感がするので、これでいいと俺の勘が告げている。
そして、俺はゲームの世界に降り立った。揺らめくたき火の炎の輝きに、肌寒い風と湿度の高さを感じる。どうやら、自分は薄暗い洞窟の中にいるようだ。身体を動かしながら、俺はこのゲームの凄さを体感する。現実とほとんど変わらない、サキュバスの夢とそっくりだ。
そうこうしているうちに、俺の前に二人の人間が現れる。沈没した船から俺を救助してくれた緑髪のロミアスというムカツク顔をした男と、綺麗な青髪と整った顔立ちのラーネイレという女性だ。彼らが、この世界のチュートリアルをしてくれるらしい。なるほど、ゲームのお約束だよな。そうそう、こうでなくてはな!
俺はウキウキとしながら、チュートリアルを進めたのだが、俺は早くもこのゲームをやめたいと思い始めた。まず始めに、腹が減ったら食事をしろという当たり前すぎるチュートリアルで、妙なものを食わされた。
「おえええええええっ!? なんじゃこりゃ!? 目が回るっ!? 気持ち悪い! でもうめえええええええええええええええっ!」
この世界では、俺が見たアイテムは名前がホップアップで表示される便利な世界だ。今食べたのは、『乞食の死体』という謎肉だ。乞食……さすがに人肉ではないはずだ。だってチュートリアルのキャラが、そんなものを俺に渡すはずがない。それになんだか美味しいし。そして、渡された食べ物を食べたと、そのキャラに報告すると、素晴らしい言葉が貰えた。
「本当に食べてしまったのか?」
なんだか、不安になる一言である。まさか、本当に人肉じゃないよな……
恐怖に震えながら、俺は悪辣なチュートリアルを進める。何度も緑髪のエレアとやらを、ぶっ飛ばそうかと思ったが、必死に耐える。チュートリアルをきちんと聞いておかないと、後で詰むかもしれないからな。そして、ロミアスは俺に呪われた弓と、解呪の巻物をくれた。なるほど、初期装備と解呪の説明か、なかなか親切じゃないか。
俺は呪われた弓を装備してから、解呪の巻物を読んだ。だが、システムメセージによると、装備品の解呪に失敗したらしい。
「あの、ロミアスさん。さっき貰った弓の呪いの解呪が失敗したんですが……」
「じゃあ、次は戦闘の練習だ。このプチをミンチにしてくれ」
「解呪失敗のフォローなしかよ!」
いい加減、腹が立ってきた俺は、緑髪が戦闘のチュートリアルで召喚したスライムっぽい3匹を呪われた弓で始末し、さっさとこの二人に別れを告げた。なんだか、この世界が分かったようで、よく分からない、受ける意味が本当にあったか疑問に思うチュートリアルだった。
そして、俺は洞窟から出て、割と近い位置に見える街を目指す事にした。道中、ヘボイモンスターに遭遇するが、そいつらは全員始末していく。モンスターは雑魚なのだが、弓の呪いのせいか、頻繁にランダムテレポートが繰り返されるのだ。そのたびに、イライラとあの緑髪に対する恨みが募る。今度会ったら絶対殺す! そう心の中で決心し、俺は街へとたどり着いた。
街へ着いた時、システムメッセージが表示される。なんでも、冒頭の船の沈没の際に離れ離れとなったペットと再開するというイベントが発生したようだ。ペット……犬とか猫か?
「あ、カズマー! 遅かったじゃない!」
「お前かよ!」
街中からこちらに笑顔を浮かべながら駆け寄って来たのは、駄女神アクアである。こいつ、ゲーム盤に俺のペットとして配役されたのに気付いているのだろうか?
「どうやら、私がカズマに一番始めに合流できたようね! ねぇ、カズマ、私ってどんなポジション? ここで待っとけっていう指示しか出されてないんですけど! 冒険の初期仲間、それとも生き別れた恋人とか!?」
「俺のペット」
「なんでよーっ!?」
泣きながら胸に飛びついてくるアクアを俺は軽く抱き留める。今まで、一人であったこともあり、こいつの存在は非常にありがたい。
「おいアクア、色々とムカツク事があるけど、このゲームマジで凄いな」
「ふふーん、そうでしょ? これで寝ている時も遊べるわ! このアクア様に感謝しなさい!」
一転して、ドヤ顔でふんぞり返るアクアを見て苦笑する。まぁ、こいつと一緒なら楽しくやれそうだ。
「へいへい。それでアクア、お前は俺のペットらしいが、くくりとしては冒険仲間っていうポジションだ。戦闘はできそうか?」
「うーん多分できそうよ。この世界の私の種族は文字通り“神”よ。例えば、あんたの装備してる弓の呪いなんかも一発で解呪できるわ! はい、“ブレイクスペル”! まったく、神を仲間にするなんて、カズマさんは最低のチート野郎ね! 」
「おお、マジで呪いが解けてる。まぁ、お前がチートなのは、今となっては否定できないな……」
「当然よ! それより、あんたのステータスはどうなのよ?」
アクアの言葉で、俺はハッとする。そういえば、自分のステータスを確認していない。俺の職業などはゲーム盤が適正に応じて勝手に設定するそうだ。さてさて、俺はどんな職業に設定されたのだろうか。初期増備が刀とダガーであったことから、侍とか、ニンジャであろうか。若干ドキドキしながら、俺はステータス画面を開いた。
「…………」
「どうしたのカズマ? もしかして職業が音楽家とかだった? なんなら、私が音楽について教えてあげよっか?」
「いや、俺って『ジューアの観光客』らしい。職業、観光客……」
「プークスクス! カズマってあの最弱職の観光客なの!? ちょううけるんですけど! しかも、ジューアってならず者集団の種族よ! あんたにぴったりじゃない!」
「うっせーっ!」
腹を抑えて爆笑するアクアを俺は睨み付ける。それにしてもゲームの世界でも、俺の扱いはこれかよ。なんだか悲しくなってきた。しかも、ステータスに表示されていた、先天的特性(フィート)も割とヒドかった。
『あなたの先天特性』
あなたはとんでもない色魔だ。(魅力+8)
あなたは気持ちいい事(sex)の達人だ。
あなたは類稀な幸運の持ち主だ(幸運の女神の寵愛)
どうやら、俺の先天的特性はエロイ事らしい。否定できないのが実に悲しい。というか、このゲーム世界でもサキュバスの夢のようにエロイ事はできるのだろうか。
ふむ……
「おいアクア」
「クスクス……! なあにカズマ?」
「ほい」
俺はアクアの胸を鷲掴みにした。ふむ、現実世界とほぼ変わらない弾力だ。いや、でも違和感が少しあるな。でも、このゲーム、もしかしてとんでもないエロゲーかもしれない。
「なっ……なにを……ひゃあああああああああっ!?」
「おい、逃げるなよアクア!」
アクアは、俺の腕を振りほどき、真っ赤になって街の中へ逃走した。いまさらこれくらいで動揺するなよと頭の中で悪態をつきつつ、アクアを追いかける。彼女は近くにあった井戸に体を隠し、俺を警戒するように見つめてきた。
「まったく、いきなりあんな事するなんて、女神への接し方がなってないわ!」
「悪かったって……それより、井戸から離れろ。落ちたら危ないぞ」
「バカねカズマ! 私がそんな子供みたいあああああああああああっ!?」
「アクア!?」
駄女神が足を滑らせて井戸の中に落っこちた。はぁ、やっぱりコイツは世話が焼けるな。俺はすぐさま井戸に駆け寄り、アクアに声をかけて手を伸ばす。
「アクアー! 大丈夫か!?」
「カズマ! 助けて……たすけ……!」
返事が消えた。そしてシステムメッセージには無慈悲な文章が表示されていた。
“女神アクアは死んだ。あなたは悲しくなった。”
「マジかよ……」
俺はとんでもない喪失感に襲われた。いくらゲームの中とはいえ、アイツが死ぬとこを見るなんて……
押し寄せる何かの感情を、頭を振って消し飛ばす。大丈夫、所詮ゲームだ。蘇生方法もきっとあるはずだ。ここはひとまず酒場で情報収集と行こう。そして、酒場のNPCに片っ端から話しかけると、ペットの蘇生をしてくれるという人物がいた。いきなり解決である。
「すいません。ペットの蘇生をお願いしたいんですが……」
「はいはい、『女神アクア』の蘇生には、899900ゴールドかかりますが、よろしいですか?」
「金取るのか!? しかもたけぇ!」
俺は早速詰んだ。しかし、蘇生はやっぱり可能なようだ。多少気楽になった事で、落ち込んだ気分もひとまず治る。さっさと金稼いでアクアを復活させるとするか。
そうはいっても、金の稼ぎ方が分からない。そして、街を歩いているうちに、どんどんとお腹が減ってくるのを感じる。空腹度をゲームに実装するとは中々リアルだ。俺は食料品店に行くが、無一文のため食料が買えない。持っていた初期装備を売ってお金を得ようとしたら、3ゴールドというはした金にしかならず、買い物ができない。
ヤバイ、腹減って死ぬ……
極度の飢餓状態で俺は頭がおかしくなりそうであった。ああ、あの街を歩く幼女のニク、ウマソウダナ……っていかんいかん! 何を考えてるんだ俺は! いくらゲームとはいえ、人肉喰いはやっちゃダメだ!
俺はパン屋へと駆け込み、店主に土下座して頼み込んだ。食糧をわけてくださいと。
「兄ちゃん、乞食か?」
「はい、乞食です! だから食料をめぐんでください!」
「はぁ……そこに置いてあるスティックパンなら無料で食べていいぞ」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
どうやら、このゲーム世界の住人は緑髪の糞野郎みたいな奴ばかりではないらしい。俺は店主に感謝しながら、スティックパンを遠慮なく食べた。
「おえええええええええええええっ!?」
「あ、それ呪われてたわ」
ゲロを吐きながら、呪われたスティックパンを体外へ出す。野郎、ハメやがったな! しかし、もうダメだ。まさか、初の死因が餓死とは……なんだこのクソゲー!
そして、目の前が真っ暗に……
「カズマさん、起きてください」
「ゆんゆん……?」
「違います。私ですよ」
重たい目蓋を開けると、長い白銀の髪と白い肌が目に入る。そして、頭には、ふにふにとした柔らか弾力があった。どうやら、俺は彼女に膝枕をされているようだ。
「エリス様?」
「はい、私ですよ」
そういって、エリス様は俺の頬を撫でる。周囲を改めて見てみると、どうやらここは質素な宿屋の一室のようだ。
「なぜエリス様がここに?」
「いいじゃないですか。別に、ゲームで仲間外れにされて怒ってなんかいませんし」
「それ怒ってるって、暗に伝えてますよエリス様」
「そんな事ないです!」
彼女は、頬を膨らませながら、おれのほっぺたを指でつついてくる。あかん、やっぱりエリス様はくっそ可愛いな……
「私も、このゲームに参加させてもらう事にしました。いいですよね?」
「もちろんです。というか、エリス様が復活させてくれたんですか?」
「そうですよ。餓死するなんて、カズマさん、カッコ悪いです」
「うぐっ……!」
エリス様にカッコ悪いと言われて、俺のハートはボロボロだ。彼女はこちらをクスクスと笑いながら見た後、クーラーボックスを虚空から取り出し、俺に渡してきた。携行に適したちょうどいい大きさである。
「カズマさん、ここに食料を入れておきました。お腹が減ったら、食べてくださいね?」
「エリス様はやっぱり慈悲深い女神ですね……さっそく、一つ食べていいですか」
「どうぞ、よーく味わって食べてくださいね?」
俺は微笑むエリス様の前で、クーラーボックスを開ける。そこには3つの料理がラップに包まれて保存されていた。料理に目を向けると、そのアイテム名がホップアップで表示される。
『クリスステーキ』 『クリスコロッケ』 『エヘカトルのピリ辛炒め』
「エリス様、これって……?」
「なんですか? たまたま、クリスってモンスターがいたので食材として使っただけですよ」
「そ、そうですよね! ちょっと変な物食わされて過敏になってましてね。それじゃ遠慮なく、頂きます…………って、うまああああああっ!?」
俺は恐る恐るクリスステーキを食べたのだが、涙が出そうな程の美味さで発狂しそうになった。満腹度と、ついでに色んなステータスが跳ねあがるのを感じる。クリスか……どんなモンスターなんだろうか。
「ご馳走様! 美味しかったですよエリス様!」
「ふふっ、そうですか。私も嬉しいですよ……」
「残りも後で美味しく頂きます! ところでエリス様、あなたは俺の旅仲間って事でいいんですか?」
「ああ、その事に関してですが……」
エリス様が俺の前に立ち、両手を合わせるようなポーズを取る。そして、彼女の背中から純白の羽がバサッと現れる。周囲に白い羽毛が舞った。その姿はまさに女神そのものだ。
「私の配役は、この世界でも『幸運の女神エリス』です。カズマさん、私を信仰しませんか?」
「喜んで!」
こうして、俺はエリス教徒となった。どうやら、彼女には降臨制限があるらしく、ゲーム中でも気軽には降臨できないらしい。だから、旅には参加できないそうだ。その代り、彼女に貢物を捧げれば、様々な特典を貰えるらしい。
「エリス様、俺は何を捧げればいいんですか?」
「ふふっ、私の信徒はあなただけです。だから、あなたの“愛”を私に捧げてください」
「愛ですか……ククク! それじゃあエリス様、俺の愛を受け取ってください!」
「あ……カズマさん……んぅ……やぁ……!」
という事で、エリス様に“愛”を注ぎまくった。いや、捧げまくった。このゲームはエロゲーとしてはなかなかだと思うが、やはり、現実に比べると具合が大味だ。所詮夢か。
「あひ……あへ……ひゃうっ……!」
「エリス様、大丈夫ですか?」
「ひゃい! だいじょびです! かじゅまさん、あなたに、わらひの寵愛をざずけまひゅ!」
エリス様が、ベッドの上で体をビクビク痙攣させながら、祈りのポーズを取った。すると、俺の前にいつくかの武器や宝玉が現れた。
「はぁ……ふぅ……カズマさん、あなたの信仰度はMAXです。神器をいくつかあなたに授けます。ちなみに、神の下僕は“使って”しまったのでありません」
「まぁ、貰えるなら貰っときますね」
「ええ、冒険に役立ててください。私は……もう限界……ふきゅ……!」
エリス様は光に包まれて消え去った。ご苦労様である。そして、俺はエリス様から貰ったものを物色する。まずは、エリス様から剥ぎ取ったパンツ、これはポケットにしまっておこう。次に、神器『ラッキーダガーver:eris』、どうやらチート性能の武器のようだ。迷わず装備する。そして、『エリスの宝玉』、これは……120時間ごとに仲間を蘇生可能!? ちょうどいい! 俺はその宝玉に、アクア復活を願ってみた。その瞬間、目の前に光の柱が現れる。すると、アクアが満面の笑みを浮かべながら現れた。
「私、ふっかーつ! カズマ、寂しくなかった?」
「俺はガキか! それよりアクア、大丈夫か? 傷とか残ってないか?」
「わっ、ちょっと!? 素直に心配されると、それはそれで恥ずかしいんですけど!」
恥ずかしがるアクアに構わず確認したが、どうやらきちんと蘇生できているようだ。エリス様に感謝の祈りをしつつ、俺は安堵した。はぁ、よかったよかった……
「というよりカズマ! あんたから私以外の神の加護を感じるんですけど!」
「ああ、俺、エリス様を信仰する事にしたから」
「私も立派な神様よ! 私も信仰して、ね? ね?」
「無理」
「なんでよーっ!」
俺は、縋り付いてくるアクアを引きずりながら街へ出た。さっさとアクア以外の仲間も見つけたいのだ。それにお金を稼ぐ必要もある。さっきみたいな餓死は勘弁願いたい。
「ところでアクア、お前はこのゲームの事をどれくらい知ってるんだ? 金の効率良い稼ぎ方を知りたいんだが」
「むぅ……私は説明書の最初しか見てないわ。せいぜい、職業や種族について軽く知っているだけよ」
「使えない女神だな」
「ちょっと、失礼ね! でも、私はこういう自由度が高いゲームのお約束を知ってるわ!」
ふんぞり返るアクアに、俺は素直に顔を寄せる。この女神は案外、漫画やゲームについて詳しい。この手のゲームの知識もわりかし持っているのだ。
「NPCからお金と装備を奪うのよ!」
「やっぱ、アクシズ教ってクソだな」
「待って! これはゲーム、ゲームの中だから! アクシズ教の子達は、現実ではそんな事しません!」
アクアがさめざめと泣き始めるのを見ながら、俺は内心それでいこうと決心した。まぁ、洋ゲーなんかじゃ俺もよくやってた手段だ。幸い、窃盗スキルは持っているため、これでNPCの装備を盗んで、売り飛ばす事にする。
「アクア、悔しいがその案で行くぞ」
「ふふん、私に感謝しなさいよね!」
そして、上機嫌のアクアを連れて、俺はNPCからスティールで装備を剥いでいく。どうやら、俺の窃盗スキルと隠密スキルはかなりレベルが高いらしく、NPCに気付かれる事なく、順調に盗む事ができたのだ。
「よし、次はアイツを……!」
「カズマ、アレはやめときなさい」
「なん……!?」
思わず上げそうになった抗議の声を引っ込める。俺が次に狙いを定めた人物は、浮浪者のようなボロ布を羽織っていた。だが、その人物を見ると、とてつもない無力感に襲われた。あれはラスボス級の強さだ。俺の勝てる相手ではない。そんな気がした。
「カズマ、盗った装備を売りにいきましょ?」
「そうだな、もう十分……」
『ぎゃあああああああああああっ!?』
『通り魔に誰かやられたぞ!』
不意に、街に断末魔の悲鳴が響きわたる。実はこのゲームの治安は結構悪い。俺も何度もスリにあってるが、そのたびに運よく下手人に気付き、叩きのめしているのだ。おかげで、まだ被害はない。しかし、殺人も起こるのか……
「カズマ、さっきの強そうな人、通り魔にやられちゃったみたいよ?」
「はぁ!?」
俺は急いでさっきの人物の元へ急いだ。そこには、確かにラスボス並に強そうな人の死体と装備が転がっている。このゲームの通り魔怖すぎだろ!
「カズマ、装備貰っていきましょ?」
「お前も結構ドライな奴だな!」
とはいうものの、お金は欲しい。俺は彼の死体を物色した。結構よさげな装備品に、なんだか凄そうな剣が目に入った。
「おいアクア、この剣……」
「嫌な予感がするから、ポイしなさい!」
「うーい」
俺は近くにあった釣り具屋の池に剣を投げ入れた。案外、こいつの勘は馬鹿にできないのだ。ちょっと、もったいないけどな。
「さぁカズマ! さっさと盗品を売って、一杯やるわよ!」
「お前は夢の中でも酒かよ……」
ちなみに盗品だとバレて、装備はほとんど売れませんでした。
「んへへ、カズマ、クリムエールもう一杯ちょうだい?」
「あぁ? だったら、俺を楽しませろや!」
「カズマのえっち! ほら、女神のパンチラ!」
「いらねー! でも、お酒あげちゃう!」
「んへへへ!」
俺とアクアは、無料同然で入れた宿屋で、酒を買い込んで酔っ払っていた。なんだか、仲間を探すのも面倒になり、有り金全部を使って酒と食料を買って好き放題していた。このゲームは、一晩で、体感時間で数えて2週間ほど過ごせるらしい。酔いも、気持ちいい事も、大味なので、あまり楽しくないが……
「カズマさん、ぎゅーっ!」
「おほっ!」
まぁ、アクアと一緒なら退屈はしない。それからは、アクアにセクハラしたり、酒をガブ飲みして無為の時間を過ごした。
「んふふっ……」
「おいアクア、夢の中で寝るなー! チッ、外出して暇をつぶすか」
俺は、ベッドに眠るアクアを寝かしつけ、フラフラとした足取りで街へ出る。しかし、何もする事がない。こうなったら……
「へい姉ちゃん、可愛いな! 一発やらないか?」
「なかなかの体つきね! よし買うわ! いく……!」
「マジか!?」
NPCの女性をナンパしたら、いきなり服を脱ぎ始めた。ほう、これは男として答えてやらねばな!
「きくぅ」
「はぁはぁ!」
「ニャア」
「くやしい……でも……!」
「よかった……! これが自分の財布の中身の全てよ……!」
「金までくれんの!?」
ヤリ終わった後、彼女は結構な金額を俺に渡してきた。ありがたく受け取ると、彼女はその場で奇声を上げながら、ぐるぐると回り始めた。うわ、キ○チガイになってしまった。もう関わらないようにしよう。
そうして、彼女から離れた後、俺は別の女性に声をかけた。なんと、ここでも売りが成功した。なるほど、金はこうやって稼ぐのか。
「おっ、姉ちゃん! 俺の嫁ソックリだな! ヤラせろ!」
「カズマさん、やっと見つけました! ってなんですか!? カズマさん、こんなところで……ひゃあぅ!?」
俺が再び意識を取り戻した時、俺の前には、アクアとゆんゆんの姿があった。あら、いつのまにゆんゆんと合流したんだ?
「カズマ、起きた?」
「大丈夫ですか?」
「んぁ……」
二人に支えられて、俺は立ち上がる。場所はアクアを寝かした宿屋の一室だ。街を出た俺は、ヤリまくって……どうしたんだっけ?
「カズマさん、酔っぱらってるあなたを私が回収したんです。感謝してくださいね?」
「おう、すまんなゆんゆん。にしても、俺達の居場所が良く分かったな」
「私は説明書を読んでいましたからね。カズマさんが、この始まりの炭鉱街『ヴェルニース』にいるって分かっていました」
それから、俺達はゆんゆんの事について聞いた。彼女は、この世界の冒険者という配役らしい。種族はエウダーナ、職業は魔法使い。彼女はスタート地点であったヨウィンという村からここまで歩いてきたそうだ。
「私は高レベル冒険者です! 旅の護衛は任してください!」
「頼りにしてる。まぁ、サクっとダクネスとめぐみんを見つけて終わりたいがな、正直なところ」
「なんでよカズマ? 夢の中でもお酒飲めるなんて、最高じゃない!」
アクアは大喜びみたいだが、俺は結構不満がある。おもしろい事は確かなのだが、何かしらの狂気をいたるところから感じるゲームである。やり続けると、頭がおかしくなりそうだ。何より……
「あまり気持ちよくない」
「あ、それは私も思いました」
「ゆんゆんもそう思うか」
「ちょっと、あんた達! 何の話よ!」
突っかかってくるアクアをいなし、俺達は作戦会議を始める。ゆんゆんが持っていたこのゲームの世界地図を開き、全ての街の位置を確認する。このヴェルニースは、やや西側に位置するみたいだ。しかし、あの二人がいる所なんて見当がつかない。
「アクア、女神パワーとやらで、めぐみん達の場所が分かったりしないか?」
「バカねカズマ! 女神をなんだと思ってるの!? いちいち、下々事なんて分かるわけないじゃない!」
「使えねー」
「まぁまぁカズマさん、アクアさんの言う通りですよ。女神だからといって、いちいちそんな事を知っているわけありませんよ」
ゆんゆんの言葉に俺は押し黙る。まぁ、確かにそうかもな。でも、一応、本物の女神にも聞いておこう。俺は、祈りのポーズをとった。
「エリス様、めぐみん達の場所は分かりますか?」
『カズマさん、それはシステム的に答えられません。でも、ヒントはあげちゃいます。あの子たちの性質に合う街にいるようですよ』
その言葉に、アクア達も驚いている。どうやら、全員にエリス様の声が届いているようだ。さすがエリス様、頼りになる女神である。
「という事らしいぞ」
「なるほど……」
「ねぇカズマ、今からでもアクシズ教に乗り換えない?」
「お断りします」
「だからなんでよーっ!」
アクアに泣きつかれながら、俺は考え込む。こいつらの性質に合う場所か。ペットのアクアは除外するとして、ゆんゆんは確か初期位置はヨウィンだったか……
「あ、分かった。ゆんゆんは田舎少女だから、農村のヨウィンが初期位置だったんだな」
「カズマ、あんたなかなか鋭いじゃない! 多分その通りよ!」
「失礼な! 私は都会派です!」
プンスカ怒るゆんゆんを尻目に、俺はワールドマップと、街の説明文を読んでいく。ダクネスは属性過多で推測しにくいため、先にめぐみんの居場所を考察する。めぐみんの性質に当てはまる場所か。
「なぁ、ルミエストって街はどうだ? ここは魔術師ギルドがあるし、めぐみんがいるかもしれんぞ?」
「カズマ、それはないわ」
「私も同意します」
俺の推測に、二人はダメ出しする。結構いい線だと思ったのになぁ。しかし、ここ以外はめぐみんの性質とは合いそうにない気がする。
「お前らは、めぐみんがどこにいると思う?」
「ここだわ!」
「ここですね」
二人は、ワールドマップのとある場所を同時に指さした。俺は、その街を見て若干呆れる。こいつら、仲間や親友に対して、結構ヒドイ奴らだな。そう思いながらも、俺はどこか納得してしまった。めぐみんにピッタリ……とはいえないが、いてもおかしくない。
「無法者の町『ダルフィ』ねぇ……」
次の目的地が決まった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ここがダルフィかぁ……」
「カズマ、道中色々あったのにカットするの!?」
「アクアさん、カズマさんが行商人を襲撃して商品を略奪しようとしたら、逆に返り討ちにあった、なんて話はなかったんです。いいですね?」
「あ、うん……」
という事で、俺達は無法者の町『ダルフィ』にやってきた。町は一目でスラム街だなと思えるようなボロ屋が立ち並び、育ちの悪そうな奴らと、扇情的な恰好をした娼婦が道を歩いている。まともな人間が住めるような場所ではないのは確かだ。
「うわ……本当にここにめぐみんがいるのか?」
「カズマさん、めぐみんですよ? 多分この町に逃げ込んだ犯罪者、もしくは娼婦でもやってるんじゃないですか?」
「カ、カズマ! この子ちょっと発想が怖いわよ!」
「俺も全面的に同意するが、お前もめぐみんがここにいるって言ってたじゃねぇか!」
「うっ……!」
目を逸らしたアクアに俺は嘆息する。いったい彼女たちのめぐみんのイメージは一体どのようなものになっているのだろう。流石に娼婦になっためぐみんはゲームとはいえ見たくないなぁ……と思案していた時、町に爆発音が鳴り響いた。
「お前ら、めぐみんはやっぱりここにいそうだな」
「間違いないわね……」
「娼婦って爆発しましたっけ?」
「ゆんゆんはめぐみんが娼婦って考えから離れろよ! ほら行くぞ!」
そして、俺達は爆発音が聞こえた方角へと足を運ぶ。道中、こっちに寄って来る娼婦を容赦なく蹴り飛ばす。ゲームの中でまで娼婦なんか抱きたくないしな。
そんな風にNPCをあしらいながら進んでいると、見慣れたトンガリ帽子が俺達の目についた。
「あ、カズマさん。いましたよ……」
「やっぱめぐみんだったんだなこの爆発音」
「よかったわねカズマ、ちゃんと人間みたいよ」
「アクア、お前もめぐみんをなんだと思ってるんだ……?」
俺達の会話する声に気が付いたのか、めぐみんもこちらを見てにっこりと微笑んだ。ん? めぐみんが右手に持つ武器って……
「カズマ、随分と早く合流できましたね」
「まぁ、色々あってな。それよりめぐみん、お前の右手に持ってる武器ってアレか?」
「アレがなんなのか知りませんが、“手榴弾”っていう面白い武器ですよ。カズマが以前作ったダイナマイトみたいなものです」
「やっぱりか……」
どうやらこのゲーム、『elona』とやらを作ったのは転生してきた日本人で間違いないようだ。元の世界では実物など見た事ないが、その現代兵器らしい無機質さに、少し懐かしさを感じる。
「カズマ、これって凄く楽しいんです! 見ててくださいね!」
「ちょっ、お前!?」
止める暇なく、満面の笑みを浮かべためぐみんが周囲に手榴弾をバラまいた。そして数秒後、爆音と爆風が強い光を伴って周囲を包み込んだ。俺はゆんゆんとアクアと庇うようにして地に伏せる。
そして、爆風が収まったあと、目をあけると……
「うわぁ……」
「カズマさん、めぐみんはやっぱり犯罪者でしたね」
「めぐみん!? あなたゲームと現実の区別はつく子よね!? ねぇ、そうよね!?」
「いたたたたたっ!? 放してくださいアクア!」
俺とゆんゆんは、アクアに体を揺さぶられるめぐみんを半目で見る。
何故なら……
周囲は血の海と化していたからだ。手榴弾による攻撃で周囲を歩いていた娼婦や乞食が爆殺され、体の残骸が飛び散っている。心臓や眼球などの体の一部が周囲に転がる光景は、ゲームとはいえ気分が悪い。
「めぐみん、お前のこのゲーム世界での配役はなんだ?」
「私ですか? 私は爆弾魔のめぐみんっていうNPCらしいですよ」
「やっぱり犯罪者でしたねカズマさん」
「めぐみん……」
「おいこら、そこのぼっち紅魔族! やっぱりとはどういう意味か教えてもらおうか!」
怒るめぐみんを抑え込み、なんとか話に持ち込む。どうやら、彼女はここでとあるアイテムを売るNPCとして配役されたそうだ。しかし、NPCなため、基本は町から出られないらしい。彼女は暇を持て余して初期装備の手榴弾で、他のNPCを殺害して遊んでいたようだ。
「めぐみん……」
「カズマ、どうせこのゲームの住人は3日後に勝手に復活します。それに、これは正当防衛です。いいですか、ここの住民はゴミしかいません」
「だからってお前なぁ……」
「本当ですよ。カズマはアレを見てなんとも思わないのですか?」
「アレ……? ってあいつ!」
気が付いたら、俺は走り出していた。そして、ゆんゆんに群がり始めた男性娼婦……男連中を全員切り殺した。
「ゆんゆん、大丈夫か!?」
「カズマさん、助けてくれたんですね! 今来てくれなければ私が殺害する所でした!」
「おう、遠慮なくやれ! 所詮ゲームだしな!」
めぐみんの言う通りだ! そう、所詮ゲームだ! だからこれは殺人じゃない!
「アクア、そんなに震えてどうしたのですか?」
「めぐみん、私、やっぱりこのゲーム買ったの失敗だった気がする……」
「はい、という事で会議始めまーす! 議題はダクネスの居場所についてだが……」
「カズマ、ダクネスならさっき見ましたよ?」
「はい会議終わりまーす!」
会議はあっけなく終わった。どうやら、ダクネスもこの町にいるようだ。俺はめぐみんの案内で目的地……奴隷商人の所へやってきた。案の定、そこには鎖で繋がれているダクネスの姿があった。
「よう、ダクネス! 元気か!」
「あ、カズマ……」
何やら雰囲気の重いダクネスに俺は気圧される。もしかして、辛い目にあったのだろうか。ゲームとはいえ、奴隷だしな。辛い思いをしたのかもしれない。俺は、奴隷商人と交渉して、“お嬢様”という種族のダクネスを買い取った。ちなみに340ゴールドだった。食料品店で売っていたクロワッサンと同じくらいの値段だ。
ダクネスはというと、手枷を外された途端、俺に抱き着いてしばらく動こうとはしなかった。
「ん……カズマ……」
「おいダクネス、もしかしてNPCに凌辱でもされたか?」
「いや、そんな羨ましい展開はなかったさ。しかし、少し思う所があってな……」
結局、俺は何故か消沈して動かないダクネスをおんぶして運ぶ事になった。めぐみんと、ゆんゆんからの視線が痛い……
「カズマカズマ、これからどうします?」
「そうだな、もう皆と合流しちゃったしな。ゆんゆんはどうしたい?」
「私はカズマさんに従います。アクアさんはどうですか?」
「私はもう終わりにしたいわよ……カズマ達があんな事する姿もう見たくないもの……」
当初はウキウキで始めたゲームだが、アクアとダクネスの消沈した姿を見てるとそんな気もなくす。
「そうだな、もう終わりにするか。正直、寝てる時に金にもならないモンスター討伐をするなんて無意味だしな。現実の方がゲーム以上の驚きと冒険に気持ちのいいセッ……」
「お兄ちゃん?」
「ん?」
ふと気が付くと、俺の目の前に緑色の髪をツインテールにしている少女がいた。
「カズマさん、この子は……!」
何やらゆんゆんの焦るような声が聞こえてきたが、俺はつい反射的に答えてしまった。
「お兄ちゃん?」
「そうです! 俺がお兄ちゃんです!」
その瞬間、目の前の少女が100人以上に分裂した。そして、不協和音のように『お兄ちゃん?』と問いかける声が周囲に響く。バル○ン星人もびっくりの分裂っぷりに思わず俺は後ずさりした。
「カズマさん、やってしまいましたね……」
「いや、俺にはまるで意味が分からないんだが」
「カズマカズマ、これは“妹団”という奴です。お兄ちゃんと聞かれて、『はい』と答えた男を集団レイプする恐ろしい敵です」
「一体なんだよこのゲーム……」
なんだか全てがアホくさくなり、俺は座り込む。そして、静かなダクネスを膝の上に乗せ、ついでに近くで震えていたアクアを抱き寄せた。
「カズマカズマ、大丈夫です。あんなクソガキ共にあなたを渡すわけには行きません」
「そうですよカズマさん。私がなんとかしてあげます」
『私も助太刀いたします』
妹と呼ばれるイキモノが俺達を囲むように近づいて来るなか、めぐみんは大きな鉄の塊のようなものを出し、ゆんゆんは魔法の詠唱を始める。
また、突如降臨したエリス様も歌うように何かの詠唱を始める。
「めぐみん、その鉄の塊って何?」
「核兵器っていう凄い爆発物らしいです。こんな淫乱で教育に悪いゲーム世界、全部ぶっ壊して無に帰してやりましょう!」
「ア、ハイ……」
そして、ゆんゆんとエリス様の魔法が、妹と呼ばれるイキモノに炸裂した。
「“メテオ!”」
『“セレスティアルスター!”』
爆熱と光弾にイモウト達が焼かれる中、めぐみんが狂喜して叫んだ。
「くたばれ化け物!」
めぐみんの核兵器が炸裂し、俺の意識が溶けるように消えていく。
そして心から叫んだ。
爆発オチかよ……!
翌日、ゲーム盤はめぐみんとゆんゆんによって粉々に破壊され、ゴミ箱に突っ込まれていた。
<便乗短編 完>
という事で便乗ネタでした。elonaOOMでは娼婦プレイは実用的です。
読み返してみると、ギャグとしても微妙な出来ですね。
ぶっちゃけると後半でなんだか面倒臭くなって無理矢理終わらせました。
まぁ、腐らせるのもアレなんで投稿しときます。
次章の序盤はドロドロドロリッチです。