※この作品はR-18です。

てぃーちんぐゆんゆん   作:ルイ提督

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最終話:約束

 

 

 

 

 アクセルの街にあるアクシズ教会、そこに敷かれたヴァージンロードを俺とゆんゆんは腕を組んでゆっくり歩く。純白のウエディングドレスに身を包んだ彼女の顔は、ヴェールに遮られて見る事はできない。でも、満面の笑みを浮かべているに違いない。

 そんな俺達の結婚式の参列者は少ない。ウィズに俺の知り合いの冒険者、ゆんゆんの親族に賑やかしのアクシズ教徒と、かなり小規模だ。そこに、めぐみんとダクネスの姿はなかった。ちなみにバニルは教会に入った瞬間蒸発した。悪魔的に無理なのか、アクアが罠を張ったのかは分からない。まぁ、どうでもいいか。

 そして、祭壇の前についた時、俺はゆんゆんと共に誓いの祝福をする聖職者であるアクアと向き合う。彼女はコホンと一つ咳払いしてから誓いの言葉を述べ始めた。

 

「汝、ゆんゆんはこの最低で鬼畜でヒキニートなカズマさんと結婚し、神である私の定めじゃないものに従って夫婦になろうとしています。本当にいいの……?」

 

「おいアクア! お前がやりたいって言ったから任せたのに、何を言って……!?」

 

 ぶすっとした表情のアクアに抗議の声を入れようとした時、俺の口にゆんゆんがそっと手を添えて塞ぐ。ヴェール越しの彼女は微苦笑を浮かべていた。

 

「カズマさん、私はあなたを愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、あなたに対して、堅く節操を守ることを誓います。あなたも誓ってくれますか?」

 

「おう、誓ってやる。いや、誓います」

 

「なんだか嘘くさいですね」

 

「おま……!? 勘弁してくれよ……!」

 

 クスクスと笑うゆんゆんを見て、俺は内心焦る。そして、そんな俺達を見てアクアが溜息をはいた。お前が発端なのに、そのヤレヤレと肩をすくめる姿は非常に腹が立った。この場じゃなければ、張り倒していた所だ。

 

「まったく、もういいわよ。結婚でも何でもしちゃいなさい! それじゃ、指輪交換を始めるわよ? じゃりめちゃん、かもーん!」

 

 アクアの声を受けて、祭壇の影から毛玉が姿を現す。猫……ではなく、もはや立派な初心者殺しになった毛玉の登場に会場は少しざわつく。しかし、毛玉はそんな事は気にもとめずに、口に咥えた小さな小箱を俺達の方へ差し出した。そして、ゆんゆんはドヤっとした表情を浮かべていた。リングベアラーを毛玉に任せたのは彼女だ。

 俺は毛玉から結婚指輪を受け取ると、満面の笑みを浮かべて左手を差し出すゆんゆんの薬指にゆっくりとはめた。彼女は微笑みながら指にはめたシンプルなプラチナリングを一撫でしてから、今度は俺の手を取った。そして、ゆんゆんによって俺の指にも指輪がつけられる。指輪をつけた事で少し感じる手の違和感が、今はとても心地良い。

 

「カズマさん、そちらもお願いします」

 

「はいはい、もっかい手を出せ」

 

「はい!」

 

そして、プラチナリングが輝く彼女の左薬指に重ねるように、俺はあの指輪をつける。長い間つけていた銀色の指輪は、少しだけくすんでいる。思えば、本格的にゆんゆんと付き合うようになったのは、この指輪を渡してからだ。彼女は二つの指輪がはめられた手を嬉しそうに眺めてから、参列者にその指輪を見せつける。そんなゆんゆんのヴェールを俺はそっと外す。彼女の微笑みが、更に深くなった。

 

「次に誓いのキスをするわよ! はい、ぶちゅっとやっちゃいなさい!」

 

 なんだかヤケクソなアクアの言葉に俺達は小さく笑う。そして、ゆんゆんを軽く抱き寄せると、彼女は目をゆっくりと閉じた。俺はそんな彼女の口に顔を近づけ――

 

 

 

 

「その結婚、待った!」

 

 

 

 

 突然、教会正面の扉が蹴り破られた。そこから、凄まじい魔力を込めた杖を掲げためぐみんが、両眼を真紅に輝かせながら現れた。どうやら、彼女はダクネスの時と同じように、街中で爆裂魔法を完成させてしまったらしい。

 

「会場の皆さん、こんにちは。そしてさようなら。私と共に爆裂魔法の塵と消えましょう!」

 

 教会内が、シーンと静まり返る。そして、しばらくの静寂が続いた後、教会内は大騒ぎとなった。大慌てで逃げるもの、めぐみんを取り押さえようとする冒険者、それを張り倒すめぐみんの護衛……というかあれはダクネスか……

 

「カズマさん、やっぱりこうなっちゃいましたね」

 

「そうだな、式の日程が決まってから毎日爆破予告の手紙を本人から貰ってたしな。昨日、警察署の牢屋にぶちこんでやったのに……ダクネスも堕ちたもんだ……」

 

「あんた達、何を達観してるの!? めぐみんの表情を見なさいよ! アレは本気、本気の目よ!」

 

 焦った様子のアクアを見て、俺達は小さく笑う。それから、ゆんゆんが俺にキラキラとした視線を向けてきた。彼女特有の、“お願い”の合図だ。

 

「カズマさん、アレやってくださいアレ!結婚式って言ったらアレですよね! ほら、やってください!」

 

「いやいや、アレじゃわかんねーよ……」

 

「もう、カズマさんは察しが悪いですね。お姫様抱っこですよ! めぐみん達に見せつけてやりましょう!」

 

「あー……分かったよ……」

 

 俺はウェディングドレスで質量マシマシのゆんゆんをそっと抱き上げる。そして、喧騒の中のバージンロードを再び歩いた。

 そんな俺にゆんゆんは甘くて柔らかいキスをしてくる。こんな時だというのに、俺はその口づけを堪能した。10秒か1分かも分からない長くて短い時間の後、ゆんゆんが唇を放す。彼女の表情は俺から見ても屈託がないと言い切れる満面の笑顔を浮かべていた。

 

「誓いのキスです。カズマさんもちゃんと誓ってくださいね?」

 

「分かってるさ! 誓う…誓います!」

 

「適当ですね。まぁ、私を一番に愛してくれればいいんです。ちょっとくらいは見逃してあげますから! ちょっとくらいはね……?」

 

 ゆんゆんは変わらない微笑みだが、何故か俺は背筋にゾクリとした感覚が走った。まったく、俺を少しは信頼して欲しい。浮気なんて絶対に……うん……しないよ……多分……!

 何やら変な思考になりかけた時、ゆんゆんがクスリと笑った。一瞬ギクリとしたが、彼女は会場の方を見て笑ったようだ。

 ゆんゆんの視線の先には、喧騒の中でおろおろとするウィズの姿があった。そんなウィズに、ゆんゆんは持っていたブーケを突然投げつけた。ウィズはその投げつけられたブーケを受け取り、困惑した視線を俺達に送ってくる。

 

 

「ゆんゆんさん! いきなりなんですか! というか式が滅茶苦茶になってるけどいいんですか? 結婚式って女の子にとってとても大切な……!」

 

 

「ねぇ、ウィズさん?」

 

「……なんです?」

 

 

あ、何となくゆんゆんが何を言うか分かった。コイツはまた……!

 

 

 

 

「ウィズさんは私のブーケを受け取ったんです。結婚、出来るといいですね?」

 

 

 

 

「あ……ああ……ああああああああっ! わっかりました! ゆんゆんさんは最低……最低です……! あなたの式なんか私が爆裂してやります!」

 

 

 涙目になりながら爆裂魔法を唱え始めたウィズを、ゆんゆんがクスクスと笑いながら見つめていた。本当に嫌な女になったもんだ。可愛いけど。

 

「よっしゃ! それじゃあ行くかゆんゆん! 実は事前に馬車を手配してあるんだ。こうなる事は予想済みだったんだよ!」

 

「流石ですカズマさん! どこに逃げるんですか?」

 

「逃げるんじゃねーよ! 新婚旅行……ハネムーンって奴だ!」

 

「わぁ……楽しみですねぇ……! ふふっ、旅行……新婚旅行……!」

 

 ウキウキのゆんゆんをお姫様抱っこをしたまま、俺はめぐみんに蹴破られたドアを蹴破る。そして、気持ちの良い太陽の日差しを感じていると、俺達の隣に憔悴した表情のアクアが駆け寄ってきた。

 

「カ、カズマ! いっちゃうの!? めぐみんをあのままにする気!? それに私も頑張ったのよ! カズマに喜んでもらえるように披露宴の準備もしたし、盛り上げるためにアクシズ教徒の中でも選りすぐりの面白い人を……!」

 

 俺はひとまずゆんゆんを待機していた馬車に乗せる。そして、お姫様抱っこが解除されて悲しそうな顔をする彼女の頭を撫でてから馬車の扉を閉めた。

 それから、アクアに向き直る。本当に彼女には悪いと思っている。でも、仕方がなかったんだ。そんな罪悪感を押し込めて、俺はアクアを抱き寄せる。アクアは一瞬体をビクリと震わせたが、素直に俺の腕の中に納まってくれた。

 

「アクア」

 

「な、なによ……! もしかして私の方が好きとかじゃ……! だめよ! 馬車の窓からゆんゆんが見てる……!」

 

「めぐみん達を任せた」

 

「え?」

 

「お前なら安心して任せられる。後、ごめんな? こうなる事が分かってたからアクシズ教会で式をあげたんだ」

 

「え……あ……ん……? カズマさん……意味が分かんないですけど……」

 

 俺は茫然とした表情を浮かべるアクアの頭も撫でた後、馬車に乗り込んだ。すぐさま、抱き着いてきたゆんゆんを受け止めながら。馬車を発進させる。

 そして、馬車を走らせる事数十秒、凄まじい爆発音が街中に響いた。馬車の窓は衝撃波で砕け散る。俺はガラスの破片からゆんゆんを守った後、彼女とともに風通しの良くなった窓から外を眺めた。

 

「カズマさん! 燃えてます! 燃えてますよー! ふふっ、炎って綺麗なんですね!」

 

「はっはっは! 知らねー! もう知-らね! 知らないけど……すまないアクア……! 達者でなー!」

 

 

 

窓から入る風に混じって、聞きなれた泣き声が聞こえたような気がする。

 

 

 

 

 

すまない……すまないアクア……! お土産買ってきてやるからな……!

 

 

 

 

 そして馬車でのゆったりとした旅が……始まらまなかった。アクセルの街か出てから1時間後、俺達は変な奴に絡まれていた。

 

「ひゃっはー! 死にたくなけりゃ金目のもの出しな! ついでにそこの女もだ」

 

「…………」

 

「なんだその目は!? 抵抗するなら容赦はしないよ!」

 

「何やってんすかお頭……」

 

「……!? お、お頭じゃないよ! あたしは下っ端盗賊だから! 決してお頭じゃないから!」

 

「あ、はい」

 

 俺達はしどろもどろになっている盗賊娘を白い目で見つめた。口元をマフラーで隠し、薄汚れた格好をすれば誤魔化せるとでも思ったのであろうか。

 本気なら、その眩しい程に白く美しい肌を汚すべきだったであろう。何というか少し抜けている。まぁ、どっちにしても声でバレバレだが。

 

「でも、一瞬男には見えました。流石ですお頭」

 

「な、なにおう!? 男じゃないから! あたしは泣く子も黙る銀髪盗賊団の紅一点……!」

 

「“バインド”」

 

「ああっ!?」

 

 俺は簀巻きになった盗賊娘……というかクリスを地に転がす。エリス様まで一種の悪ノリに加担してしまうとは、何だか非常に残念である。はぁ……まったく……

 

「へっへっへ! 盗賊の癖に良い肌してるじゃねーか! まぁ、盗賊だし滅茶苦茶に犯しても文句言えないわな……ほれほれ……!」

 

「ひゃあんっ!? ダメだよ助手君……ゆんゆんが見てる前でセクハラなんて……ん……やぁ……」

 

「セクハラで済むと思っているのか!? 二度とこんな盗賊家業ができないよう俺が教育してやる!」

 

「いたいっ!? お尻叩かないで! あんっ……助手君鬼畜だよう……!」

 

「はっはっは! 良い声で……もひゅっ!?」

 

 

 頭部に受けた強い衝撃で俺は地面に倒れ込む。振り返ると笑顔を固まらせているゆんゆんの姿があった。

 

 

 

「カズマさん、結婚初日から調子に乗らないでくださいね?」

 

「す、すいませんでしたぁ!」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ん……お風呂気持ちいですね……」

 

「そうだなー温泉もいいけど、こういうホテルの風呂も悪くない」

 

「泡風呂が気兼ねなくできるのもいいですよね。お家のお風呂じゃあまりやる気が起きませんから……ほら……カズマさんに泡パックしてあげます」

 

「もひょ……やめんふぁ……」

 

 俺は嬉々として顔に泡をひっかけてくるゆんゆんをそのままに、広めの浴槽で体を伸ばした。現在、俺達は王都の高級ホテルに来ていた。意気揚々と新婚旅行に出た俺達だが、結婚初日は何だかんだで疲れる。クリスの襲撃を避けた後、他の襲撃者の出現が予想されたためテレポートでさっさと王都に向かう事にしたのだ。そして、何より……

 

「あっ……んっ……相変わらずですねカズマさんは……」

 

「相変わらずで悪いな。でも、お前のおっぱいが最高すぎるからいけないんだ」

 

「意味が分かりません……んぁっ……ひゃっ……! カズマさん、そこはダメ……ダメです……おっぱいだけにしてください……! 本番は……ベッドでお願いします……!」

 

「わかったよ。でもおっぱいは揉む」

 

「もう……本当にカスマさんは……んぅ……」

 

 そのままゆっくりと風呂とゆんゆんを楽しんだ俺は、お湯と興奮で火照った体を冷ましつつ、備え付けのワインを引っ張り出していた。気分的にはビールなのだが、酔えるなら最早なんでもいい。

 ゆんゆんはというと、ベッドに腰かけて窓から見える王都の夜景をじっと見ていた。そんな彼女の横に腰かけ、ワインの栓を抜く。うーん、やっぱりビールってより、芋焼酎な気分だな……

 

「夜景、綺麗ですね」

 

「ん? そうだなー」

 

「何だか適当ですね」

 

「そう言われてもな。ああ、アレか。この夜景より、ゆんゆんの方が綺麗だぞ!」

 

「ふふっ、臭いセリフですね。でも、嫌いじゃない。むしろ大好きです」

 

 

ゆんゆんはクスクスと笑った後、俺の肩に寄りかかってきた。あざとい。でも可愛い。

 

 

「私達、結婚したんですね……」

 

「そうだな。実感はこれと言ってないが、書類上はきちんと夫婦だ」

 

「書類上とか言わないでください! きちんと夫婦なんです……やっとカズマさんのお嫁さんに……奥さんになれたんです……!」

 

「お、おう……」

 

 俺の腰を抱きしめる腕の力が強くなる。彼女の熱い抱擁を受けながら、俺はため息をはいた。何というか、ほっこりとした幸せな気分で満たされる。実感はない……でも幸せだと思えるのは確かだ。

 

「カズマさん、私は嫌な女です。あなたを誰にも渡したくないし、あなたの自由や欲望を今後束縛するような事をするかもしれません。それでもいいんですか? 私と結婚して後悔はありませんか?」

 

「アホ、後悔なんかしちゃいない。それに束縛したいなんて思うのは普通の事だし、それだけ愛してくれるなら嬉しいもんだ。そもそも、お前は割と寛容な奴だよ。普通だったら、俺みたいな最低な奴は刺されてもおかしくないんだ。むしろ、お前の方こそ後悔してないのか?」

 

ゆんゆんの頭を撫でながら、そっと問いかける。彼女はクスリと笑った後、俺の耳元で囁いた。

 

 

 

「後悔なんてしていませんよ」

 

 

 

 それから、しばらく沈黙の時間が続いた。ゆんゆんは何も口に発しないが、俺の胸を撫でてきたリ、耳たぶや首筋に甘噛みをしてきた。そして、俺はというと、柄にもなく緊張している。そんな俺の様子を察したのだろうか。ゆんゆんは、ベッドに俺の手を引きながらゆっくりと倒れ込んだ。

 

「カズマさん、今日は初夜ですね」

 

「そ、そうだな……」

 

「ふふっ、なんで緊張しているんですか? もう初夜なんて言葉が霞むくらい夜を共にしたじゃないですか」

 

「そう言われても緊張するものはするんだよ……」

 

「おかしな人ですね」

 

 クスクスと笑うゆんゆんから、目を逸らす。今すぐにでも押し倒して犯してやりたいが、何故か体が緊張してしまうのだ。彼女はそんな俺のガウンを一気に脱がした。そして、自らもガウンをゆっくりと脱ぐ。見慣れた……でも飽きる事がない美しいゆんゆんの肢体が露わになった。

 

「カズマさん、私はあなたの奥さんなんです。私の体の全てはあなただけのもの。どうそ、好きにしてください」

 

「そうだな……ゆんゆんは俺のものだ……」

 

「そうです! 私はカズマさんのして欲しい事なら何でもしてあげちゃいます! だから、きてください……!」

 

 ゆんゆんに誘われて、俺は自分の情けなさに苦笑する。まったく、なってない。ゆんゆんが望んでいるんだ。俺も男として、夫として応えるべきだろう。

 一気にやる気モードになった俺は、ゆんゆんを組み伏せる。少し乱暴な俺に彼女は熱い吐息を漏らした。本当にえっちな女になってしまったもんだ。

 

「ゆんゆん、俺とお前の関係って、お前の不用意な発言とえっちな特訓をするっていうのが始まりだったよな?」

 

「いきなりなんですか? 確かにそうですね。あの時の私はバカでしたけど……カズマさんも最低でした。でも、今となっては良い思い出なんですよね……」

 

「はっはっは! ちょろすぎるお前が悪い! むしろ俺のおかげで最悪な事にならなかったかも知れないんだ。俺に感謝するんだな!」

 

「もう、とってもムカツキます! でも、感謝はしています。色々ありましたけど、私は毎日楽しいですし、カズマさんと一緒にいれて幸せですから……」

 

 嬉しい事を言ってくれるゆんゆんの頭を俺は撫でる。昔から変わらない、彼女に効果抜群なスキンシップだ。目を細めながら俺の手を受け入れる彼女に教える事はもうない。

 そもそも、あの特訓自体、エロイ事をするための建前のようなものだ。そんな最低な事をした相手と結婚しているのだから、世の中は良くわからない。まぁ、それを抜きにして彼女に教える事と言ったら……

 

「ゆんゆん、最後に教えてやる。お前は俺のものだ。でも、俺達は夫婦だ。この意味、分かるか?」

 

「カズマさんも私のものって事ですか……?」

 

「そうだな。意味としてはそれに近い。俺達は夫婦だ。対等な関係、これからずっと一緒にいる相手だ。だから、わがまま言っても良いし、俺にされて嫌な事は嫌と言え。奥さんってのは決して夫の言いなりになる肉便器じゃないんだ。俺もお前の体を手に入れるために結婚したわけじゃない。お前と一緒にいたいと思ったから結婚したんだ」

 

「カズマさん、そんな事言っていいんですか? 私、結構わがままな所ありますよ?」

 

「いいさ、わがままで結構! もちろん、今後はお互いの意見がぶつかって喧嘩になる事もあるだろう。でもな、それでいいんだよ」

 

「後悔しても知りませんよ? 私、本当にわがままですから。カズマさんにして欲しい事、して欲しくない事……いっぱいあるんです……!」

 

 そんな事を言ってくるゆんゆんの頭を再び撫でる。確かにわがままな女はうざい。でも、わがままな女なんて、アクア、めぐみん、ダクネスで慣れたもんだ。

 むしろ、その方が付き合いやすい。喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったものだ。お互いの素を見せれる関係ってのはイラっとする時もあるけど、心地よくて幸せな事に変わりはない。

 ゆんゆんは俺の愛撫を受けて幸せそうに表情を緩めた後、俺の頬に手を伸ばした。そして、愛欲に満ちた目を俺に向けながら、頬をゆっくりと撫でた。

 

「それじゃあカズマさんにお願いです」

 

「なんだ……?」

 

「私とえっちな事してください」

 

「まったく……ゆんゆんはエロイな……」

 

「カズマさんが私をこうさせたんです。責任取って……責任は取って貰いましたね」

 

 ゆんゆんと俺は一緒になって笑う。それから、俺は彼女の秘所に手を伸ばした。そこはすでに熱く濡れていた。軽くクリトリスに触れると、彼女は押し殺したような小さな嬌声をあげる。

 そして、ゆんゆんの膣内に指をゆっくりと入れて、愛液で水音がなるようにわざとらしく動かした。くちゅくちゅとした音に彼女は羞恥の表情で顔を更に赤くなっている。こういう反応は見ていて非常に楽しい。俺の表情もついつゲス顔になってしまうが、仕方のない事だろう。

 

「さっきの真面目な話をしてる時も、ゆんゆんはここを濡らしていたわけか。俺より性欲が強いんじゃないか?」

 

「んっ……カズマさんがお風呂で散々私の胸をいじったからです……その……ずっとえっちな事をする流れだったじゃないですか……あんっ……んぅっ……!」

 

「やっぱりゆんゆんはえっちぃな……」

 

「何回目ですかそれ!? もういいです……私はエッチな女で……ひゃっ! だめです……そこ……んっ……ひゃん……あうううぅっ……!」

 

 ゆんゆんが体をビクビクと震わせ、腰をはねさせる。俺は彼女のそんな姿をたっぷり数十秒楽しんだ後、指を引き抜いた。指に絡みつく透明の愛液を彼女の前で味わうように口に含んだ。

 ゆんゆんは羞恥で更に顔を赤くしているが、とろけた表情からは快楽と幸せの気持ちがにじみ出ている。本当に可愛い奴だ。

 そして、正常位の体勢をとなり、とろとろになったゆんゆんの秘所に俺のペニスを一気に突きこんだ。彼女は挿入した瞬間に大きく息を吐いた後、その勢いのまま俺の腰を強く抱きしめてきた。

 

「おおっ……相変わらずのいい締めつけだ……まぁ最初と比べたらお前のゆんゆんも随分とゆんゆんしてきたがな……」

 

「何を言って……んぁっ……いるんですか……!? もう……!」

 

「良い感じに慣れてきたって事だ。あと……ゆんゆん……今の時期はアレだよな……?」

 

「っ……!」

 

 俺の問いかけに、ゆんゆんは腰の抱き着きを強く事で答えた。これはもう肯定の意という事だろう。彼女の吐息は先ほどより随分と熱いものになっているし、何より俺を見つめる潤んだ瞳が物語っていた。

 

「ゆんゆん、子供欲しいか?」

 

「あっ……その……子供……私の……カズマさんの……えへへっ……」

 

「おう、そのだらしない顔はやめろ。で、どうする?」

 

「えと……カズマさんこそ……赤ちゃん欲しいんですか……?」

 

 不安げな表情でそう聞いてくるゆんゆんに苦笑する。彼女に子供なんて一生いらねぇと言った時はどんな反応をするか気になりはするが、俺もそこまで外道でもない。強くゆんゆんを抱きしめ返しながら、安心させるように囁いた。

 

「俺は欲しいなゆんゆんとの子供」

 

「あうっ……」

 

「このまま夫婦生活を楽しむのも悪くない。でも、家族が増えても楽しくて幸せな生活になる事を俺は確信している。あれだ、賑やかになるぞ?」

 

「もう……カズマさんは……もう……」

 

 お互いに抱き合ったまま、しばらくの沈黙が起きる、今も挿入中の逸物を動かすとゆんゆんは小さな嬌声を漏らした。彼女の答えを待つのもいいが、そろそろ俺の我慢の限界が近づいてきた。そもそも、俺が子作りしようなんて言い出したのは、早く作らないと、もしかしたら……

 

「今、変な事考えてませんか?」

 

「カ、カンガエテナイヨ!」

 

「怪しい……」

 

 俺の額に汗が吹き出し始めた。というのも、めぐみん達が諦めていないというのは割とピンチだったりする。彼女達は正直、今となっては何をやるか分からない存在だ。取返しがつかない事態が起こってからじゃ遅いのだ。

 なんていう危機感とゲスな感情は少しある。でも、俺の本心として子供はありなんじゃないかと思うようになっていた。これはゆんゆんや、めぐみんの両親との姿を見た事が関係しているかもしれない。正直、ちょっと羨ましかった。俺は両親に面と向かって会う事も親孝行する事も出来ない立場だ。もちろん、この世界に来たことも残った事も後悔していない。

 ただ、この世界での人生を全うし、嫁さんと子供を幸せにする事で、親に自分も立派になったのだと証明したい。アクアとエリス様に頼めば再び両親に会えそうな気がするなんて内心思うが実行には移さない予定だ。

 それがこの世界を選んだ俺に対するケジメだろう。まぁ、機会があったら両親に嫁を自慢するのもやぶさかではないが。

 

 というような理由もある。謎の危機感とか両親へのうんたらとあるが、やっぱりゆんゆんが望んでいるからだ。

 彼女は隠しているつもりかもしれないが、俺との結婚生活に関する妄想話や、あれしましょう、これしましょうっ! と幸せそうに話す将来の予定に、子供の影がチラついていた。

 それに、アクアから借り受けた妙な雑誌を俺から隠れてこそこそ読んでいる事も知っている。ここまでされたら俺もその気になる。酸いも甘いも、ともに味わいたいとゆんゆんを選んだのだ。そこに俺と彼女の子供が加わる事には躊躇いは一切ない。

 

 

 

何より、きっと今より幸せになれる気がする。

 

 

 

「ふふっ、神妙な顔をしてますね。まぁいいです。カズマさんが怪しいのはいつもの事ですから」

 

「信用ねぇな俺……」

 

「あなたの行動をずっと見てきたからこそです!」

 

 そう言って、ゆんゆんはクスクスと笑った。俺は、その笑顔に苦笑で答える。はっはっは、何も言い返せねぇ……

 

「カズマさん、きっと賑やかで幸せな……今まで以上に楽しい日々になるはずです……だから……こじゅくり……こひゅっ!? ううっ……わ、わたし……カズマさんの子供……欲しいです……」

 

「そうか」

 

「はい……ずっと私の夢で……憧れで……カズマさんがいない時……あなたとの幸せな生活が私の……」

 

 俺はゆんゆんの頭をガシガシと乱暴に撫でた。そうすると、彼女は申し訳なさそうに微笑んだ後、俺に甘くてやけどしそうなほど熱い口づけをした。そんなゆんゆんに、とてつもない愛しさをこみあげる。

 俺は彼女の両脚を俺の肩に乗せ、押しつぶすようにのしかかる。その時、俺のペニスは彼女の秘所に深く深く挿入された。コリコリとした膣奥に到達した瞬間、彼女は膣内をキュウキュウと締め上げ、体をビクつかせながらも、俺をより深く感じようと抱きしめてくる。それがまた、愛おしかった。

 

「あっ……んっ……深い……深いですカズマさん……! んぅっ……ひゃん……!」

 

「当り前だ。これは俺の故郷でも伝えられる体位、“屈曲位”だ。そんな由緒ある体位なんだが……別名は種付けプレスだ」

 

「んっ……下品です……こんな……こんな……んひいいいいっ!?」

 

「うぉ……!? またイッたのか? こんなに締め付けて……ゆんゆんは孕む気満々だな!」

 

「いやあ……言わないで……! そんな……私はそんなつもりは……あ……あります……! カズマさん……もっと……もっと強く……!」

 

 この体位になってから早くも二度目の絶頂を迎えたゆんゆんに俺は少しの呆れと、とてつもない興奮で脳が支配された。両足で首を絞めるように拘束してくる彼女は、体を震わせながら俺の腰に爪を突き立てる。もちろん、俺の理性はぶっとんだ。

 

「るああああああああああっ!」

 

「ひゃあああああああああああああっ!? だめっ……んんっ……やぁっ! ひゃうっ……激しい……激しいですぅ……あふっ……んっ……!」

 

 俺は容赦なくガンガンと腰を振り、肉を打つ下品な音が部屋中に響く。ゆんゆんはとろけた微笑みを浮かべながら俺を受け入れ、抽送によって亀頭が子宮口付近を小突くたびにだらしのない嬌声を上げていた。

 もちろん、そんなゆんゆんの姿は俺の興奮を増長させる材料にしかならない。しかも、バカな話かもしれないが、俺の中でこの女を絶対に孕ませてやるという謎の使命感まで生まれてきた。

 

「いひゃ……んっ……あぅ……だめ……また……やっ……やああああああっ!?」

 

「せいっ……! なんだゆんゆん、またイッてるのか? 本当にえろい……俺の子供がそんなに孕みたいのか?」

 

「ひゃう……! ううっ……だからそんな下品な言い方は……あうっ!? だめっ……そこ本当にだめ……!そんなに激しくされたら赤ちゃんの部屋壊れちゃいます……! だから……やっぱりゆっくり……!」

 

「ああん?」

 

「やああああああっ!? だめええええっ! だめって言ってるのに……うううううっ! だめ……また……! あっ……んんんんんっ!?」

 

 だめだめ言っている割には、ゆんゆんが俺の首を締め付ける力が強くなるし、膣内は精液を搾り取ろうときゅうきゅう締め付けてくる。まぁ、これが口だけの否定である事は長い付き合いで分かっているので、俺はより抽送を速くする。ゆんゆんは体を止めない俺を見て、身をよじって逃げようとする。しかし、両足による首の締め付けはやめない。なにがしたいんだコイツは……

 そして、抽送を繰り返しているうちに俺の限界が近づいてきた。式の準備などで忙しかったため、俺達は3日前から性行為をしていない。つまり、俺の玉は全弾装填、フルチャージ状態だ。これはもうぶっ放すしかない……ぶっ放したい!

 

「さぁ出すぞゆんゆん! ほら言え! カズマさんの精液で孕ませてくださいって言え!」

 

「やぁ……あっ……何を言わすんですかあなたは……いいっ!? ひゃっ……んっ……!」

 

「バカッ! 男を興奮させるための一種の様式美だ! 恥ずかしがらずに……さん、はい!」

 

「んんっ……ひゃうっ……えと……カズマさんの……! やっぱ無理です……!」

 

「はぁっ!? ここまできてこれか!? どうした!? お前に散々教えただろ! 恥ずかしがっちゃダメだ! ほらほらほらっ!」

 

「あうっ……もう……本当にカズマさんって人は……!」

 

 ゆんゆんは諦めたように熱い溜息を吐いた後、俺の肩から両足を抜く。代わりに、両腕で俺の頭を抱きしめた。顔中が、ゆんゆんの柔らかくて熱い……そして汗で濡れているおっぱいの感触に包まれる。思わず腰の動きを止めてしまった俺の耳元で彼女が囁いた。

 

 

「カズマさん、私を孕ませてください……妊娠させてください……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい喜んでええええええええええっ!」

 

「あああああああああっ!? だめっ! そんな……そんな……!」

 

「おおおおおおっ! おう……うう゛っ! おおう……」

 

「ひゃあああああああっ!? 出てます……いっぱい……カズマさんのが奥でいっぱい……! んんっ……妊娠……私……絶対妊娠しちゃいますぅ……!」

 

 俺はゆんゆんの最奥で、思いっきり射精した。ドクドクとペニスが脈打つたびに、ゆんゆんの体もビクビクと震える。そして、精液が彼女の“中”に入っているのを実感した。俺の亀頭を咥えこむような状態になっている子宮口が証拠だ。ゆんゆんは一滴も逃すつもりはないらしい……

 

「あはっ……んっ……もう出しすぎですカズマさん……こんなのだめです……!」

 

「何がダメだよ。子供欲しくないのか?」

 

「そういうわけじゃ……あうっ……私の中に熱いドロドロが蠢く感じがします……! ふふっ……絶対に元気な子が生まれちゃいますね……」

 

 そんな事を嬉しそうに……幸せそうに言いながら、ゆんゆんはお腹を優しく撫でた。その姿を見ていると俺の顔も自然と緩む。そして、もちろん俺のペニスも硬くなる。

 

「つーわけで二回戦だ! もっと注いでやらないとな!」

 

「えっ……? こんなにいっぱい出したのに……もう……ですか……?」

 

「はっ! そんな事言って、ゆんゆんも期待してるんだろ?」

 

「ええっ!? わ……わたしは……その……うん……もっとカズマさんの欲しいです……!」

 

真っ赤になりながら精液を懇願するゆんゆんに俺は再び腰を打ち付ける。孕ませるという獣の思考に支配された俺は、その後、何度も彼女の中で射精した。何度も……何度も……!

 

 

 

 

「ヒャーッハッハ! せりゃああああああああっ! う゛っ!?」

 

「ひゃああああああああっ!? また……また……はひゅっ!」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「くふっ……くふふっ……! 溺れてちゃいます……カズマさんの精液で私の卵か溺れちゃいます……!」

 

「ゆんゆんー?」

 

「やあっ……だめです……そんな……まさか私の赤ちゃんの素を輪姦する気ですか……? だめぇ……そんなにいっぱい……双子どころじゃすまなく……あいたっ!?」

 

「まったく、落ち着いたか? よだれ垂らしながら何呟いているんだか……」

 

 とろけた顔でアホな事を呟いていたゆんゆんを、チョップで正気に戻す。彼女は頭を押さえてキョロキョロと周囲を確認したあと、じっと自らの下半身を見つめた。

 彼女の太ももや下腹部には俺の精液は飛び散り、膣口からも愛液と精液が混じった白いドロドロを垂れ流している。ゆんゆんはそれを幸せそうに眺めた後、俺の股間に視線を移した。

 そこには、一仕事を終えて半勃起状態の逸物があった。彼女は、身を起こして俺の逸物を口に含む。そして、色んな液体で汚れた逸物を舐めとり、最後にじゅるじゅると吸って口を放した。

 俺はそんなゆんゆんの頭を撫でてやった後、一緒になってベッドに倒れ込む。なんだかやりきった事に対する達成感に俺は深く息をつく。彼女はふきんで体を拭いてもぞもぞした後、べったりと俺に抱き着いてきた。そのまま気持ちのいい沈黙をしばらく過ごしてから、俺はゆんゆんに語りかけた。

 

「ゆんゆん、明日は海沿いのリゾートに行くぞ。そこでゆっくりするか」

 

「海ですか……うん……いいですねぇ……でも、水着持っていませんよ?」

 

「そんなの現地で買えばいい。んで、夜はもちろんセックスだ。今日以上にたっぷりやってやる。覚悟しろよ?」

 

「ふふっ、いいですよ。子供が出来るまで毎日……これからもずっとお願いします……」

 

 俺の腕に頭を預けながら、ギュっと抱き着くゆんゆんを撫でながら俺は再び息を吐いた。何というか本当に悪くない。ずっとこうしていたい気分だ。

 そんな事をぼんやりと考えていると隣のゆんゆんがクスクスと笑い出した。最初は別に気にしていなかったが、何やら様子がちょっとおかしい。

 

「くふっ……くふふっ……! 私の子供……結婚……旅行……カズマさん……!」

 

「どうしたゆんゆん……?」

 

「えへっ……えへへ……えへへへっ! カズマさんどうしましょう!? 私、すっごい幸せです……うふっ……えへへっ……」

 

「お、おう……そうか……」

 

「えへへっ……そうなんです……カズマさんカズマさんカズマさん!」

 

 俺の脇腹にもぞもぞと顔を擦り付けるゆんゆんを俺は苦笑しながら放っておく。そして、しばらく経った後、彼女は体を転がして俺の上に飛び乗り、両目を紅く輝かせながら俺の顔を覗きこんできた。

 俺は何となしにゆんゆんの額にデコピンを喰らわせると彼女はまたクスクス笑い出した。ちょっと頭おかしい……

 

「えへへっ……カズマさん……カズマさん……!」

 

「なんだよ?」

 

「ふふっ……えへっ……あぐっ!」

 

「あだだだだだっ!? だからなんで噛むんだよ! こら! 首は……いでっ!? いちょっ……やめっ……!」

 

「んふっ……んふふっ……! んっ……んぅ……!」

 

「ああああああっ!」

 

 

 

 結局、ゆんゆんが眠るまで俺はおもちゃにされた。体中につけられた噛み跡とキスマークを撫でながら苦笑する。

 

 

明日海で泳げねぇ……

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

――さん

 

「んっ……」

 

起きて――起きてください――

 

「んおぉ……おっ……?」

 

 体を揺すられた事で、俺は深い眠りから目を覚ます。ベットから起き上がると、エプロン姿のゆんゆんが微笑んでいた。彼女は俺に軽いキスをして、俺の意識を完全に覚醒させる。うむ、これで今日も一日頑張れる。

 

「ゆんゆん……海……海が……」

 

「まだ寝ぼけているんですか? 朝ご飯は出来てますから、顔を洗って目を覚ましてからリビングに来てくださいね」

 

 クスリと笑った後、ゆんゆんはキッチンに向かった。そこで、俺も寝ぼけていた事を悟る。ここは俺とゆんゆんが同棲している宿だ。1か月も前の新婚旅行の夢を見て寝ぼけるなんて、なんだか気恥ずかしい。言われた通り、洗面所で顔を洗って身支度を軽く整えた後、リビングの席につく。ごはんに味噌汁に、小さな焼き魚。うーん……よいぞ……!

 そんな時、肩をちょんちょんと小突かれる。隣の席に顔を向けると、いつものローブ姿のめぐみんがいた。

 

「おはようございますカズマ」

 

「んっ……? ああ、おはようめぐみん。今日は早いな」

 

「そんな事はどうでもいいです。それより、私にもしてください。ほらっ……」

 

そう言って、顔をこちらに近づけるめぐみんの意図を察する。こいつも朝から元気なもんだ。

 

「おはようのキスです。ぶちゅっとやってください」

 

「わかったよ。ほらっ……って誰がするか!」

 

「あいたっ!? おはようの頭突きですか!? ざ、斬新ですね……」

 

 額を手でこすりながらそんな事を言うめぐみんに俺は嘆息する。そして、エプロンを外したゆんゆんが席についた事が合図となってささやかな朝食が始まった。うん、相変わらず美味しい……

 

「美味しい……けど、この味噌汁少ししょっぱくありませんか?」

 

「んー? 確かにそうかもしれんなー」

 

「私はもっと薄味がいいです。高血圧になりますよ?」

 

そんな事を言うめぐみんに俺は苦笑をこぼす。これくらい大丈夫で……

 

 

 

 

 そんな時、リビングにバンッ! という音が鳴り響く。 それは、目の前のゆんゆんがテーブルを打つ音だった。

 

 

 

 

「ねぇめぐみん。なんで私達の朝食に紛れ込んでるの!?」

 

「なんですか? 遊びに来てるだけじゃないですか」

 

「こんな朝からって常識的に考えておかしいでしょう!? それに毎日……毎日毎日毎日毎日毎日! 私達って新婚なのよ! もういい加減にしてよおおおおおおおおおっ!」

 

「ああっ!? い、痛いですゆんゆん! 髪を引っ張るのは……いたっ……って今のブチって音は……!? ちょっ……ちょっと!?」

 

「カズマさんとの二人っきりを邪魔しないで! お願い……お願いだからああああああっ! あとカズマさんのパンツ盗むのもやめてよおおおおおっ! これで何枚目だと思ってるのおおおっ!」

 

「いたたたたっ!? やめっ……っていうか私はパンツなんて盗んでません……あたっ!?」

 

 朝からドタバタと喧嘩をするめぐみん達を、俺は味噌汁をすすりながら見守った。うーむ、ついにゆんゆんが爆発したか。まぁ当然かもしれない。本当に毎日来てたからな。

 

 

 そんな事をのんびり考えていると、玄関のドアがノックもなしにバタンと開けられる。そこからは見慣れた青髪の駄女神、タッパーを大事そうに抱えたアクアが現れた。

 

 

「やっほー! おはようカズマ、ゆんゆん、めぐみん! ねぇ見て見てー! 自家製ヨーグルトって奴作ってみたの! 美味しくできたから食べてみてー!」

 

 アクアが満面の笑みを浮かべながら俺の前にヨーグルトの入ったタッパーを置いた。俺はそんなアクアを憐憫の目で見る。なんというか間の悪い……

 

「…………」

 

「あ、ゆんゆん! あなたも食べてくれる? 美味しくできてると思うの!」

 

「こんなもの……こんなものっ! ああああああああっ!」

 

「ひゃあああああああっ!? なんでタッパーに壁に叩き付けるよ!? 私の……私の自信作のヨーグルトなのに……!」

 

涙を流しながら、壁に叩き付けられてぐちゃぐちゃになったヨーグルトをアクアが布巾でごしごしと拭く。そんなアクアの胸倉にも、ゆんゆんは掴みかかって大きく揺すった。おう、今日のゆんゆんは本当に大爆発だな。

 

「だからなんで毎日来るのよおおおおおおおおおっ! アクアさんには色々お世話になってますけど……しつこい……しつこいんですううううううううっ!」

 

「だって……今日のは自信作で……カズマにも食べて欲しいし……最近体調の悪いゆんゆんに……」

 

「あああああああああああっ!」

 

「わあああああああっ!? やめっ……やめてえ! 髪の毛引っ張らないでえええっ!」

 

 

 

 

今日も平和だなぁ……

 

 

 

 

「カズマ、今日は凄いの着てきましたよ。ほら……」

 

「おおっ!? これはシースルー!? めぐみんのぷにぷにが丸見えじゃないか! まったく、紅魔族は本当にエロイな!」

 

「カズマの前だからこそです……あっ……そんな指で擦っちゃ……んっ……!」

 

 

 

「……!? めぐみん、なんでスカートたくしあげてるの!? カズマさんもなんで顔を……ああっ……ああああああああっ!」

 

 

 

今日も平和だなぁ……!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「という事で、お留守番お願いします。というかいい加減帰ったらどうですか!?」

 

「任されました。帰りはしません」

 

「もう……! アクアさん留守番頼みますよ? あと、今日のデートをストーカーしたら警察呼びますからね! 今日は大事な日なんです!」

 

「分かってるわよ。じゃりめちゃんの面倒も任せなさい!」

 

「グルルッ!」

 

 すっかり成獣になったじゃりめをアクアが撫でながら、胸を張ってこたえる。俺とゆんゆんは苦笑してから玄関を出た。ハネムーンから帰ったあと、俺達の宿はすっかり溜まり場になってしまった。ちなみに、ゆんゆんがキレたのはこれが初めてではない。そろそろアイツらのケツを叩いてお仕置きをした方がいいかもしれない。

 

「めぐみん、カズマさんのパンツを変な事に使ったり、盗んじゃダメだからね!」

 

「はっ……? だ、だから私じゃないですって!」

 

「め、めぐみん……そういうのは私いけないと思うの……」

 

「アクア、あなたまで私を……アクア? 何をそんなに顔を赤くして……アクア……もしかして……」

 

 何やらこそこそ話し出したアクア達を宿に残し、俺は宿を出る。腕を取って歩くゆんゆんはランチボックスを持ってうきうきとしていた。可愛い奴である。そのまま、俺は彼女に手を引かれて歩き続ける。そして、街の外に出ようとした所で、一旦彼女を止めた。

 

「今日はどこに行くんだ? いい加減教えてくれよ」

 

「ふふっ、出来れば内緒にしたかったのですが、仕方ありません! カズマさん、今日はピクニックに行きますよ!」

 

「ピックニック……? 天気良いしな。というか、そのための弁当か」

 

「そうです! お弁当の中身はついてからのお楽しみです!」

 

 微笑むゆんゆんに手を引かれながら、俺達はゆっくりと散歩を続けた。そして、彼女の目的地、かえる平原の中央に佇む大きな岩にやってきた。ゆんゆんはバッグからレジャーシートを取り出すと、岩の傍にさっと敷いた。一足先にシートの上に座るゆんゆんの横に俺も腰を下ろす。どうやらここで食べるらしい。時間帯はちょうどお昼。ゆんゆんはてきぱきとお弁当を広げ、俺におしぼりを渡してきた。なんだかワクワクとした気分になり、自然とお腹が空腹で鳴った。

 

「さて、準備完了です! さっそくお昼にしたいんですけど……カズマさん、私との約束覚えてます……?」

 

「約束……? あの一日一回は絶対に撫でろって奴か? どうした、撫でて欲しいのか?」

 

「ち、ちがいますよ! カズマさんのゴタゴタが起こる前に約束したじゃないですか! ピクニックに行きましょうって……!」

 

「ああ、そういえば約束したなー」

 

「忘れてたんですか!? もう、密かに誘われるのを期待してたのに……! やっぱり私から誘って正解でしたね」

 

 少し頬を膨らませるゆんゆんに苦笑する。そういえば、そんな約束をしていた。本当に色々なゴタゴタがあったので忘れてたのは勘弁してほしい。

 

「確か、お弁当を食べてくれとも言っていたな。お前の料理の味は毎日食べてるからもう分かっているけど……うん……楽しみだ!」

 

「ふふんっ! 今日のは本当に腕をかけて作ったんです! ちゃんと味わって食べてくださいね?」

 

 少し得意げな表情がしたゆんゆんが、重箱のふたを開ける。そこにはたくさんのおかず……唐揚げ、肉巻き、ほうれんそうの和え物、それに煮物……

 

「なんか全体的に茶色くね?」

 

「う、うるさいですね! カズマさんの好きなもの詰め込んだらこうなっちゃったんです! いいから、食べてみてください! 味には自信があるんですから!」

 

「ういうい……」

 

 俺は期待の視線を向けるゆんゆんを前に、唐揚げを一つ取って口に含む。お弁当というだけあって、唐揚げのパリパリとした食感は失われている。しかし、お弁当の冷めた唐揚げというのは何故か分からないが非常に美味いのだ。もちろん、ジューシーさはそのままだ。

 

「うん、美味い! 滅茶苦茶上手いぞゆんゆん!」

 

「えっと……もうちょっと詳しくお願いします」

 

「はっはっは! 美味いもんは美味い! 何よりゆんゆんが作ったから美味い! それじゃダメか?」

 

「あぅ……! もういいです……カズマさんが喜んでくれるのが一番ですから」

 

 クスリと笑ったあと、ゆんゆんも小皿を手に取ってお弁当を食べ始める。そして、お弁当を一緒に突く和やかな時間を楽しんだあと、一緒にシートの上で横になる。俺と彼女に間に流れるだらけた空気は、非常に居心地のいいものだった。

 

「あ~食ったな~」

 

「食べましたね~」

 

「どうする……なんかするか? フリスビー的な奴?」

 

「それもいいですけど……私はちょっとゆっくりしたい……カズマさんと一緒に静かな時間をすごしたいです……」

 

「そうかい……ならだらだらするかー」

 

 俺はゆんゆんの要望通り、だらける事にする。季節的にジャイアントトードはいない。だから、この草原には俺たち以外の人影はなかった。そのまま、しばらくゆんゆんと一緒に心地いい日差しとさわやかな風を満喫した。

 そして、満腹と風の気持ちよさ、時間帯が合わさって、強力な眠気を俺に呼び起こす。ウトウトとした気分でこのまま昼寝をしようかと思った時、ゆんゆんが体を起こした。

 

「カズマさん、私、やりたい事思いついちゃいました!」

 

「なんだ……?」

 

「膝枕ですよ膝枕! ピクニックって言ったら膝枕です! ほら、きてください!」

 

 満面の笑みを浮かべて膝をポンポンしてくるゆんゆんに、俺は吸い寄せられるように転がる。そして、彼女の膝に後頭部を置く。柔らかくて暖かい感触に、俺の眠気は更に強くなった。

 

「私、友達とピクニックに行くことに憧れてたんです。でも、それ以上に大好きな男の人とピクニックでゆったりとした時間を過ごす事に憧れていました。だから、こんな風にカズマさんと過ごす事が出来て夢みたいです! でもでも……! 私にはもっと憧れの……!」

 

「んっ……」

 

「あっ……カズマさん眠いんですか? それなら構いません。いいですよ……ゆっくりしてください……」

 

「すまん……この眠気はやべぇ……膝借りるぜ……?」

 

「ええ、存分に。お休みなさいカズマさん……」

 

 ゆんゆんが小さく笑った後、俺の頭を撫で始めた。その心地よさと気持よさで、俺の意識は埋没していく。うん……悪くない……いや……最高だ……!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「んおっ……! おおう……寝ちまったなぁ……」

 

「あ、起きました? 随分とぐっすり寝てましたね」

 

「おう……って夕方か……ごめんなゆんゆん……」

 

「いいんですよ。私も色々と楽しませてもらいましたから……」

 

 朗らかに笑うゆんゆんも見て、俺も思わず笑ってしまう。ここは素直に甘えとくとしよう。そして、膝から起き上がろうとする所を、そっとゆんゆんに止められた。

 

「カズマさん、そのままで聞いてほしい……大事な話があるんです……」

 

「なんだ……?」

 

「それは……!」

 

少し訝し気にゆんゆんを見つめている中、彼女は微笑みながら俺の頭を撫でる。そして、嬉しそうに……幸せそうに俺の耳元で囁いた。

 

 

 

「赤ちゃん。出来ちゃいました」

 

 

 

 俺は彼女の言った事がしばらく理解できなかった。でも、意味がわかった瞬間、俺は飛び起きた。こ、これは……!

 

「お……あ……マジか……! 冗談じゃないよな!?」

 

「ええ、本当です。その……少し気になってお医者に診てもらいました。そしたら……出来てたみたいです」

 

「そうか……子供……子供かぁ……!」

 

 俺は優しくお腹をさするゆんゆんをじっと眺める。目立った変化はお腹には現れていない。しかし、最近彼女は体調が悪い日が多かった。今思えば、それが前兆だったのかもしれない。

 

「触ってみますか……?」」

 

「ああ、じゃあ失礼して……」

 

 おっかなびっくり、ゆんゆんのお腹に手を伸ばす。もちろん、いつもと変わらない彼女の柔らかい感触。でも、何かは分からない……分からないけど何かいつもと違う気がした。

 

「あれだ、こういう時何て言ったらいいか分からないけど……一緒に幸せになろうな!」

 

「ふふっ、ありがとうございます! 私は今も幸せです。だから一緒に頑張りましょう! それで家族一緒に……うぐっ……ぐすっ……!」

 

「な、泣くなよ……」

 

「だって……嬉しいんです……嬉しくて幸せで仕方がないんです……! 私……カズマさんと……ううっ……!」

 

 そんな事を言いながら、涙をポロポロ流すゆんゆんをギュっと抱きしめる。本当にしょうがない……しょうがねぇ奴だ。

 

「ゆんゆん、今夜は帰ってお祝いだ。弁当のお返しに美味いの作ってやる。ほら、帰るぞ。俺達の家に」

 

「はい……はい……って……きゃっ……!?」

 

「あ、あぶねぇ!? こけそうになるなよ! お前妊娠中なんだぞ……!」

 

「だってずっと膝枕してて……ううっ……足が痺れちゃいました……」

 

 

そう言って足をさするゆんゆんに俺は申し訳なく思った。俺のせいだったか……

 

俺は手早く荷物をまとめると、ゆんゆんに背を向けてしゃがみこんだ。

 

 

「ゆんゆん、おんぶいるか?」

 

「あっ……嬉しい……嬉しいですけど……おんぶはいいです……」

 

 

 ゆんゆんはフラフラと立ち上がると、俺の腕を取る。そして、俺に寄りかかりながら微笑んだ。

 

 

「私はあなたの隣にいます。これからもずっと……だからおんぶはいいんです……」

 

「そうかい」

 

「でも、腕は貸してください。私を一生支えてくださいね?」

 

「もちろんだ。腕なんか何本でも貸してやるし、一生支えてやる」

 

 俺はゆんゆんが転ぶ事がないように、しっかりと彼女を支える。ゆんゆんは嬉しそうに笑ったあともう片方の俺の手を、彼女自身の頭に置いた。

 

「カズマさん、こっちの約束も忘れちゃダメです。撫でてください……優しく……乱暴に……いっぱい撫でてください!」

 

「どっちなんだよ。まぁいいか……」

 

 淡い夕日で照らされる中、俺は彼女の頭を撫で続ける。ゆんゆんはそれを堪能するように頬を緩ませた。そして、しばらく撫でたあと、彼女はゆっくりと目を開いた。終わりの合図だ。

 その瞬間、ゆんゆんが俺にギュっと抱き着いてくる。ホント、抱き着き魔だなコイツは……

 

 

 

 

「カズマさん、また約束してください」

 

「おう」

 

「今度のピクニックは私とカズマさん……そして子供の家族全員で行くんです。私の夢の一つでもあるんです」

 

「ああ、そうだな。約束する」

 

 

ゆんゆんの体を俺もぎゅっと……ぎゅーっと抱きしめる。

 

 

「約束、忘れないでくださいね?」

 

「分かってる。絶対忘れないさ」

 

 

 

抱き着きながら、ゆんゆんが俺の口軽いキスを落とす。

 

 

 

そして、耳元で小さな……本当に小さな声で囁いた。

 

 

 

 

「カズマさん、愛しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

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