※この作品はR-18です。

白羽蘇芳という生き方   作:抱き枕50

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復讐

「委員長ー、こんな遅い時間に悪いんだけどさ、部屋に蘇芳ちゃんが居ないんだよ。ここに居るなら良いんだけど、来てない?・・・・・・」

 

「もう、起きていたから良いけど・・・・・・こんな時間に訪ねて来るのはマナー違反よ沙沙貴さん。でも、どうしたのかしらね? 蘇芳さんは来てないわ。アミティエの根本さんは行方を知らないの? 部屋には誰も居ないの? 」

 

「二人とも居ないんだ。居た形跡は有るんだけど・・・・・・。なんだか変なんだよ。蘇芳ちゃんのベッドの所にリバースしたものが有るし、部屋には血を拭ったハンカチが落ちてたりするし・・・・・・。ここに居ないとなると、また何か変なことに巻き込まれてるんじゃ・・・・・・」

 

「蘇芳さんは、いよいよ八代先輩の真実を知ってしまったのかしら? 知ってたとしたらその事に悩んで・・・・・・。何処かで憔悴してるかも。それとも自傷行為を・・・・・・」

 

「委員長、それは・・・・・・。八代先輩と、白木先輩の事は、小御門先輩が食事をしながら伝えてるはず。でも、蘇芳ちゃんがすんなり受け入れたとは到底思えないしね・・・・・・。でも、絶望して自傷行為とかは蘇芳ちゃんは絶対しないと思う。だったら黒沼さんのときにしてるよ・・・・・・」

 

 

「ここ以外はあたったの? 八重垣さんの所は? 」

 

 

「居なかった。二人で合体して、やらしいことしてた」

 

「ちょっとー、覗いたの? 」

 

「わざとじゃないよ不可抗力。小声で呼んだんだけど、いくら呼んでも返事無くてさ。ノブ動かしたら鍵かかってなくて・・・・・・。開けたらエッチな声が聞こえて・・・・・・部屋の中には入らなかったけど、ベッドの上で二人重なってギシアンしてるのがシルエットで見えたんだよ。ガッキーも孝崎ちゃんのお胸を貪ってた・・・・・・・・・・・・」

 

 

「描写はいいわよ。全く、鍵を掛けないなんて自殺行為よ。見たのが沙沙貴さんだから良かったけど。先生バレする前に私がちょっと注意してくる」

 

 

「そっちは後にしてよ。蘇芳ちゃんが居ないんだよー。こっちの方が重要な問題だから・・・・・・蘇芳ちゃん捜すの手伝って」

 

「捜しに行きたいけど、うちのマユリも今居ないのよ。鍵持たないで居なくなっちゃって・・・・・・。留守にして締め出したら可哀相だから、待っていてあげたいの」

 

「居ないんだ? 委員長はユリーの事心配じゃないの? 締め出すとかの問題じゃなく、こんな時間に出歩いてるんだよ? 」

 

「マユリは多分美術部だと思う。あの子結構有るのよ、部活でこの時間に出掛けるのって、何してるかは聞いても言わないの。でも、信じてるから」

 

 

 食事を部屋に持参し林檎の相手をして添い寝していたら、何時の間にか熟睡。林檎に起こされて時計を見たら午前零時に五分前だった。林檎がどうしても日付が変わる前に、蘇芳ちゃんにストラップのお礼を・・・・・・と言うから連れ立って蘇芳ちゃんの部屋に行ったのに、其処は裳抜けの殻。それだけじゃなく嘔吐物も有るし、あまつさえ血痕も。

 

 私はこっちに来たけど、一緒に行った林檎は蘇芳ちゃん部屋で待ってる。状況が状況なんで不安だったけどベッドの上段に隠れるということで一人残してきた。車椅子のタイヤの跡が有ったからガッキーの所かと思って行ったら、其処は18禁の淫靡な世界。後学の為に見ておこうと思ったけど、止めた。今の私には破壊力が大きすぎるから・・・・・・。

 

 

「苺じゃんどうしたの? こんな時間に。立花、ただいま。一人にしてゴメン。部の先輩に突然呼び出されてさ、参ったよ。明日急にOGが来るんだってさ。市役所に展示する絵を持ち出す用意。明日は皆ゆっくりしたいからね」

 

「今、部活棟から帰って来たんだけど、廊下の端まで来たらすすり泣きが聞こえて皆で真っ青。パニック寸前で鳥肌バリバリ。で窓から外を見たら、八代先輩が犬走りで泣き伏してるの。先輩が介抱に行ったから私は行かなかったけど・・・・・・。何が有ったんだろう? 」

 

 

「八代先輩が泣き伏すなんてそんな事有るんだ・・・・・・。それよりユリー、蘇芳ちゃん見なかった? 部屋に行ったら居ないんだ。心当たり無い? ちょっと部屋が変でさ・・・・・・。ねえ、ユリーも戻って来たから蘇芳ちゃん捜しに行こうよ、委員長いいでしょう? 私思うんだけど、外に居たって言う八代先輩と関わり有る気がするんだ。ホットタブパーティーの時、蘇芳ちゃんが八代先輩からの手紙を貰ってたのを林檎が確認してるんだよ。もしかして人気の無い所に呼び出して、身辺整理って事で蘇芳ちゃんに手をかけたとか・・・・・・。蘇芳ちゃんが心配だよ・・・・・・」

 

「いくらなんでもそれは飛躍過ぎだろ、苺。正式に別れ話をって言うなら、捨てられた復讐と言う事で、逆に蘇芳さんが先輩に手をかけるなんて事が有ったかもしれない。何しろ前に根本さんに手を出して首を絞めてるの見てるし・・・・・・。修羅場だったよねあの時」

 

 

「もう、マユリ。蘇芳さんを悪く言わないでよ。あの時は薬の副作用だったの。絶対にそうだから・・・・・・」

 

 

「立花は、蘇芳さんの事を絶対悪く言わないからな・・・・・・嫉妬するよ。恋人の立場がないよね。苺も私が可哀相に思わないかい? でもさこれで踏ん切りが付いたよ。黒沼さんの祭事が終わったら、短期留学に行くんだ。白木、八代先輩と私で。イギリスに一週間。今日内示があっては迷ってたんだけど、決めたよ。立花ともここらでちょっと冷却期間を取った方が良いと思うから・・・・・・」

 

 

「留学? 何それ、聞いて無いわよそんな事。私の事担いでない? 小御門先輩もそんな事言わなかったわ。もしかしてマユリは私の事嫌いになったの? ねえ、どうなのよ。私が重いの? 私の事をマユリが口説いたんじゃない、それなのに・・・・・・無責任よ。酷い、私絶対に認めないから! 」

 

「たかが一週間の留学で何をカリカリしてるんだ? 頭冷やせよ」

 

「たかがですって! 半日会えなくたって平静でいられないのに・・・・・・。マユは平気なのね。わかったわ。そんなに私を避けたいなら別れましょう」

 

「だから、何でそうなるんだよ。この分からず屋が! 立花は一度豆腐の角に頭をぶつけて死になよ。そうしたらその偏屈で狭量な心も浄化されるだろう」

 

「何ですって? それが恋人に言う言葉? マユだって・・・・・・」

 

 

 

 ちょっと、蘇芳ちゃんの事・・・・・・。こんな切羽詰まった時に、なんでバカップルのの痴話喧嘩を見てないといけないんだよ、全く。これじゃ仕方がない、これ以上はここに居ても無駄。言い争いが続く中そっと戸を閉めて廊下に出た。

 

 

 部活棟に行き、ユリーが八代先輩を何処で見たかを確認して外に出てみた。其処はサッカー部の部室の向かい側の壁。月明かりが当たる場所。下を見ると涙の跡みたいのが残っている。あの先輩がこんなに泣くって・・・・・・。やっぱり別れ話? だとすると蘇芳ちゃんも、この辺に居るのかな? 良く見るとここにも車椅子のタイヤの跡が・・・・・・。辿っていくと・・・・・・。

 

 

「ちょっと貴女、何をしているの? 八代会長の事なら私達が部屋にお連れしました。貴女一年生ね。匂坂さんも案外口が軽いじゃない。他言無用って言ったのに・・・・・・。まあいいわ。早く部屋に戻りなさい。もうすぐ見回りが来るわよ。捕まったら懲罰棟に・・・・・・」

 

「判りました。あそこに居たのは会長だけですか? 」

 

「そうよ。会長もそう仰ってたわ。一人で居たって」

 

 先輩方にお礼を言い、一旦追跡を止め、取り敢えず部屋に戻ることに。戻った部屋は電気も消えたままで、部屋に林檎は居なかった。昨日は柄にも無く林檎の事で熱くなって蘇芳ちゃんとやりあってしまった。林檎には幸せになって欲しい。林檎には八代先輩みたいになって欲しくない。心配だけど、今居ない事それは蘇芳ちゃんと宜しくやってると想像し、自分を納得させて布団に入った。

 

 

「もう、いい。ここから歩くから」

 

「それじゃ、車椅子戻してきます。先に部屋に戻って下さい。ゆかり、蘇芳さんをエスコートして」

 

「一人で歩けるから。触らないで! 」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 私の剣幕に押され関本さんは、無言のまま手を下げた。暗い廊下を歩き部屋の前に。ドアを開けてベッドに腰掛けた。関本さんは、離れた場所に座っている。暫くして根本さんが帰って来た。手にはジュースを抱えて。まず私にはスポーツドリンクを差し出し、彼女達はコーヒーを手にしている。気まずい空気の中、まずは私がタブを開けて飲む。続いて二人が・・・・・・。

 

 

「ねえ、譲葉の言った、君達の望みって・・・・・・何? 何の事なの? ちょっと聞かせてくれないかしら? 」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「黙っていたら、判らないでしょう? 答えなさい。私は聞いているの! 譲葉の身体には・・・・・・性器には、 ゴールドのピアスがしてあった。耳ならいざ知らず性器よ、性器。それも六つも。私達はまだ子供なのよ。それなのに・・・・・・譲葉が言うには、隷属の証だって。譲葉が一体どんな罪を背負ったって言うのよ。貴女達がこの事に関わってる一枚噛んでいるのは察しが付いてるの。答えなさい、早く! そう、そういう態度なの。素直じゃない人には天罰を、ね」

 

 

 私は苛立って腰を上げ、床に体育座りで座って居る二人の前に立った。二人から見れば、仁王立ちに見えるだろう、私。それでも下を向いたまま何も言わない二人に、切れてしまった。髪の毛を掴んで顔を起こして関本さんに正面から蹴りを入れた。

 

 もんどり打って倒れる態を見て立ち上がろうとした根本さんには張手を。刹那鼻血が顔を汚す。倒れている関本さんには休む事なく、蹴りを入れ続ける。血を拭いながら根本さんが止めてくださいと縋ってきたけど、意に介さず振り払い、彼女ははずみでベッドに激突して動きが止まった。。私はそれを一瞥して、亀のように丸くなっている関本さんを執拗に蹴り続けた。

 

「蘇芳さん、止めて・・・・・・。痛いよ、痛いよ・・・・・・小夜花、助けて・・・・・・。蘇芳さん、お願いだから殺さないで・・・・・・」

 

「ゆかり、待ってて。今助けるから。でも動けない・・・・・・血が・・・・・・止まらない・・・・・・。頭が痛いよ、痛い。誰か助けて・・・・・・ゆかりが殺されちゃうよ・・・・・・」

 

 

「だったら、正直に話なさい。じゃないと・・・・・・そうね耳を削ごうかしら? どうせ人の話を聞く気無いのなら、そんな耳いらないでしょ? かわりにうさ耳つけてあげるわ。今よりもっと可愛くしてあげる。おっと、逃げるのは無しよ、根本さん。こっちにいらっしゃい、な! 」

 

 這いつくばって逃げようとする根本さんの足を、両手でがっちりとつかみ引き戻した。痣だらけになってグッタリとする関本さんと並べて部屋の中央に並べて寝かす。

 

 

「正直に話す気になったかしら? 」

 

 鼻だけでなく口の中も切れているのだろう、話すのが辛そうだけどそれはそれ。謝罪と話す事への同意を。そして服従の意志を二人の口から呟かせた。頬を張った後、二人を起こして全裸に剥き、目隠しを自らさせ、手を頭の後ろに組ませてから正座をさせた。そして二人を交互に甚振って見えない事から来る恐怖を植えつけた。そうしてから留守中の出来事を話させる。それはまさに驚天動地。私と譲葉を別れさせるために白木先輩に仕掛けた事象は、私に対してした事とは次元が違う・・・・・・。心胆寒からしめるものだった。

 

 

「ありがとうよくわかりました。この間のお浣腸のお仕置きで、一時とはいえ貴女達に可哀相な感情を抱きを許していた自分が・・・・・・如何に甘ちゃんだった事がね」

 

「それにしても・・・・・・よくもまあ、白木先輩を焚きつけてくれたものね。譲葉の簒奪自体は貴女達より前に立案計画し動いての結果なんだろうけど、その思いをこういう方向に向けた貴女達は許す気にはなれないわ。あんなに颯爽としていた譲葉を、惨めな奴隷女に堕としたのは、貴女達のアレが有っての事だもの・・・・・・」

 

 

「だから、これからも罪を償ってもらうわ。手始めに白木先輩にやったみたいに下着を禁止にしようかしら、授業中にお浣腸かけて、この間みたいに苦しんでもらおうかしら? そうねー取り敢えず、ショーツ禁止ね。かわりにふんどしをつけてもらうわ。越中でも六尺でも好きな方でいいわよ。それくらいは選ばせてあげる。優しいでしょう? 生理の時は紙おむつね。私につけさせたんだから、恥ずかしいなんて言わないよね。そうね、まずはそれくらいかな。目隠しを外して手を下ろしていいわよ」

 

 

「この便箋に、私の奴隷に・・・・・・いや隷属するって一筆書いて。血判も押してもらうわ。嫌ならさっきの続きね。あれは手加減したんだから。今度は本気で行くわよ」

 

 

 二人はそこまで聞くと観念したように、涙を流し鼻を愚図らせながらペンを走らせていく。そして針で指を切り血を出して血判を押す。私に差し出すと、二人して抱き合って泣き崩れた。

 

「何泣いているのかしら? 恋人ではないけど、私と友達以上に親しく近しい仲になれるっていうのに、何泣いてるのよ。失礼にも程が有るわ。締結の印にまず傷の手当てでもしましょう。ほら立つのよ。関本さん、まだ保健室の鍵を持っているのでしょう? 行くわよ! 」

 

「服を・・・・・・。服を着させてください・・・・・・」

 

「何? 良く聞こえなかったわ。大きな声でもう一度言って頂戴」

 

 

「蘇芳さん、裸で歩くのは・・・・・・。誰かに見られたら、恥ずかしいです。何か服を着させてください・・・・・・」

 

「あらあら、恥ずかしいのが良いんじゃなくて? 変な事を言うのね貴女達。見てもらいたいんじゃないの? 学院の皆に」

 

「蘇芳さん、許してください。他の事なら何でも聞きますから・・・・・・」

 

「仕方ないわね。タオルケットを巻いて行きなさい。早くしなさい。痛い? 自業自得よ」

 

 

 二人を後ろからせき立てて、夜の廊下を歩く。逃げられないように両足に手錠の様に針金を巻き二人の首と腰にも針金を巻き付けて私がその端を握っている。よちよち歩きしか出来ない二人。転ばない様に二人に手を握らせ、残りの手は震えながらもタオルケットが落ちない様に必死に抑えている。

 

 保健室に入り、二人を裸に剥き、先ずは関本さんの手で根本さんをベッドに縛りつけさせた。そして先に、関本さんに怪我の治療をする。といっても薬を塗って湿布を貼るくらいの事だけど・・・・・・

 

 一通り済ませた後、私が関本さんを奥のベッドに縛りつけ、根本さんの戒めを解き、打撲の処置をする。二人同時に逃げられては私一人だと手に負えないので、絶対に同時に自由を与えない。根本さんはこぶの大きいのが頭頂部に有るけど、鼻血を落すと幸い顔には深い傷も無く、ビンタの跡で腫れてる以外は大過無い。全体的には関本さんよりも軽傷だった。関本さんは全身の痣が酷く他人に晒すにはかなりまずい。

 

 考えた末、朝食後に彼女のアミティエに連絡を取り、痣が直るまで私の部屋に籠絡することにした。私が神妙な顔をして、か細く言えば先ず拒否はされないだろう。本当に最低な女と改めて思う。

 

 もしアキラが存命だったら・・・・・・いや今ここに降臨したら・・・・・・こんな最低な私になんて言うかな? さすがに肯定はしてくれないだろう。

 

アキラにどんな顔をして召天記念日に臨めばいいのだろう。記憶の中のアキラは何時も笑顔。思い出すと復讐の決心が鈍ってしまう。今は譲葉の復讐のことだけを考えたい・・・・・・。

 

 

「根本さん、貴女を連れて先に部屋に戻るから支度をなさい。自分で針金をを巻くのよ。ほら立つのよ。何、立ちたくないの? それなら犬みたいに裸になって四つ足で歩く? それならそれでいいわよ? ゴム管の尻尾をつけてあげる。嫌なの? 立つならさっさと立つ! 」

 

 鼻を摑んで強引に立たせる。頬を張ろうとすると・・・・・・。

 

「ごめんなさい。二度と逆らいませんから・・・・・・」

 

「素直が一番よ。小夜花・・・・・・。あなたが忠誠を誓うならもう酷い事はしない。でもそれはこれからの小夜花を見て判断するから・・・・・・」

 

 名前で呼び、キスをした。ムチだけでなくアメを与えた格好だ。絡んだ舌に血の味がする。タオルケットを羽織らせて先に部屋に連れて行き、再び全裸にして小夜花さんの使う中段のベッドに縛りつけた。彼女に既に抵抗の意志はなく、なすがままそれを受け入れた。タオルケットを身体にかけておでこに軽くキスしてから保健室に戻る。

 

 

「ゆかりさん、部屋に戻るからね。素直に従って頂戴」

 

 結んでいる紐を解くと、恨みがましい目で私を見る。しかし行動は従順で、私の手を煩わす事なく従った。部屋に戻り下段の私のベッドにくくりつけた。私は、空きになってる上段のベッドに上がった。

 

 変ね。なんだか誰かが居たみたいな・・・・・・。このぬくもりと湿っぽさは・・・・・・。幽霊? いや誰かが居たんだわ、一体誰? この髪の毛は・・・・・・これは私のものじゃない・・・・・・。

 

 

 蘇芳ちゃんと根本さん、関本さんが部屋を出て行くのを見やり、ドアが完全に閉まるのを見届けてから、私は隠れていた三段ベッドの上段から下りた。足元がおぼつかない。衝撃的な状況を目の当たりにして、 全身汗だくになった。喉もカラカラになってる。そしてショーツの中はお漏らしをしているかのような濡らし方。これは夢? 夢を見ているかな。それともあの一瞬、異世界に飛ばされた? 誰も信じないであろう、現実にあり得ないような出来事。それをずっと見続けていた私・・・・・・。

 

 

 なんにしても蘇芳ちゃん達が帰ってくるまでに、ここから立ち去らないと・・・・・・。痕跡を残さないように、慎重に行動して蘇芳ちゃんの部屋を出た。廊下で鉢合わせしないように、遠回りして部屋に帰る。

 

 苺姉は熟睡していた。夢を見ている様で、寝言もむにゃむにゃ呟いてる。幸せそうな寝顔を見て起こすには気が引けてしまった。普段は絶対に締めない鍵をかけたけど、切れた蘇芳ちゃんが襲ってくるような不安感に気が狂いそうだ。見ていた事は蘇芳ちゃんにバレていないと思うけど、関本さんと根本さんは気が付いているかもしれない。拷問されて白状したりしたら・・・・・・。

 

 

 蘇芳ちゃんのあの私刑。実はデジカメでずっと録画していた。ストラップのお礼をする為に見せてあげようと部屋に持参していた。布団の中でこっそり再生すると、画も音も驚くほど綺麗に記録されていた。あまりに鮮明なので、少し現実感が無い気もするけど、全て事実が記録されている。試し見を終えた後、メモリーカードを取り外して苺姉のカエルの置物の中に隠した。私は何処に立ってればいいのだろうか。蘇芳ちゃんの味方で? それともリンチで凹られた二人を擁護? 学院に提出して全てを曝け出す? 考えてるうちに私は寝てしまった。

 

 

「林檎、起きてよー」

 

 苺姉が私をゆすりながら起こしてきた。安息日なのにまだ早いのにと思ったけど、時計を見れば朝食開始の三十分前だった。

 

「林檎どうしたのよ? 普段鍵なんてかけないのに。なんか怖いことでも有ったの? それにうなされていたよ。汗も・・・・・・」

 

 苺姉が、私の髪や顔を撫でながら、話しかけてきた。タオルで顔や首回りを拭いてくれる。そしてお水を飲ませてくれた。

 

「蘇芳ちゃん、居た? ストラップのお礼は? 」

 

「蘇芳ちゃん、苺姉が出て行ってから直ぐに来たよ。でも、お礼は言えなかったんだ。その事でなんだけど、榊先輩とか今日は暇かなあ。相談したいこと有るんだ。結構深刻なことなの。苺姉も一緒に来て欲しいんだけど」

 

「何よ、奥歯に物が挟まったみたいな言い方して。気になるよ。朝食の後、アポ取ってみようか? 」

 

「外出の予定が無いと良いんだけど・・・・・・」

 

「基本インドアだからね。多分居るよ。先ずは御飯食べに行ってから部屋に寄ろうよ」

 

 

 道すがら苺姉は委員長とマユリさんの痴話喧嘩の話を私にした。それも開けっ広げに。短期留学の話は一部関係者以外は誰も知らない話の様で、通り掛かった先生に逆に問い詰められるはめに・・・・・・。

 

「貴女達は声が大きいのよ。おかげでいい話を聞けたけど。それにしても耳が早いのね。私達教師ですら知らない話なのに。一体いつ誰に聞いたの? 」

 

「それは秘密です、先生。先生も私達から聞いたことを秘匿して下さい。色々と探られると辛いんで・・・・・・」

 

 

「何よまた何か悪い事に関わってるのかしら? ダリア先生から色々聞いているわ。証拠不十分のも入れると、大変な問題児だって」

 

「そ、そんなことないです。根は超真面目なんですよ。清い身体に自信あります」

 

「あらあら。冗談よ。ダリア先生は問題児なんて言ってないから、安心して。でもね悪戯は程々にしておきなさい。職員室横の自販機のボタンに細工して、夏なのにお汁粉しか出なくしたの貴女達でしょう? 」

 

「今度先生のお部屋の掃除に行かせて頂きますから、その件はなにとぞご内密に・・・・・・」

 

 

 私達は頭を下げてそそくさと先生の元を離れた。食堂はそんなに混んではいない。お気に入りの場所が空いていてた。夜の間は空腹感も無かったけど、ずっと起きてた事も有りこの時間になったら気持ちが悪くなるくらいの空き具合。

 

 私達はバイキング形式でパンとスープとてんこ盛りにして席に戻る。黙々と食べてると、孝崎ちゃんが部屋に持ち帰る食事を手慣れた様子で選んでいる。もちろんガッキーの分も。その甲斐甲斐しい様をじっと見ていたら、孝崎ちゃんが私達に気が付いてこっちに近づいてくる。

 

「おはよう、沙沙貴さん。良く寝られた? 随分食べるのね、太っても知らないわよ? 林檎さん、なんか疲れてない? 」

 

「おはよう。大丈夫だよ。夢見が悪かっただけ。私は背もお胸も欲しいから蘇芳ちゃん直々の指導で朝はいっぱい食べるんだ。でも孝崎ちゃん程は、お胸要らないけどね。ブラのサイズに困りたくないし、揉ませる相手居ないし」

 

「林檎、言うねえ。私は孝崎ちゃんよりも大きいのが欲しいよ。大きくなってきたけど、まだまだだもん。大きくなったらさ、これ見よがしに貧乳の子の前で、肩凝るのよねーとかさ。ボタンはじけちゃったとか、ベルト締める時に、見えないのよ、てへ! とか。谷間に汗疹がとか言いたいんだよ! 」

 

「あたし貴女達の前でそんな事言った事ないわよ。それって被害妄想・・・・・・酷いな苺さん・・・・・・いじめよ、セクハラよ、もう。八重ちゃんに言いつけちゃうから。苺さん、私の顔に何かついてる? 」

 

 

「私、昨日見ちゃったんだ。ガッキーとえっちなことしてたでしょう。ガッキーの上に重なって、孝崎ちゃんのお胸がぼよんぼよん揺れてた。それに揉まれてたよね、二人ともあえいじゃっててさ。もう参ったよ。蘇芳ちゃん来てないか訪ねて行ったら、呼んでも返事無いし、ドアには鍵かかってないし」

 

「覗いたの? 覗いたのね。酷い・・・・・・。誰かに言った? 」

 

「委員長には話したけど、他には誰にも話してないよ」

 

「花菱さんなら・・・・・・。でも話すなんて。八重ちゃんになんて言えば・・・・・・」

 

 えっ、何それ。聞いて無いよ苺姉。孝崎ちゃんは手に持っていたトレーを、乱暴にテーブルに置く。弾みでスープが跳ねて、私の手にかかった。

 

「熱っ! 孝崎ちゃん落ち着いてよ。その反応だと苺姉の言う事は本当みたいだね。静かに気付かれるよ。私も今初めて聞いたんだよ、私は誰にも言わないから安心して。でさ、やっぱり気持ちの良いものなの? 」

 

「ここで言うのはちょっと。でも、大人の階段を少しだけ上った感じはするな。それに金髪の悪魔に負けてなんていられないからね。八重ちゃん、何度も逝ってくれて・・・・・・女冥利、恋人冥利につきたよ。いやーん、思い出すと照れちゃう。あっ、いけない。八重ちゃん待ってるから戻るね。後で話してあげるから、くれぐれも内緒にしてよねー」

 

 

 満面の笑みで、部屋に戻る孝崎ちゃん。入れ代わりに来たのは、憔悴した顔のマユリさん。何時もくっついてくる委員長が居ない。食堂の他の子達もただならぬ表情のマユリさんに気が付いて、波紋の様にざわめきが広がった。食事を受け取り、私達の横に座る。

 

 

「苺、昨日蘇芳さんに会えたかい? 」

 

「まあね。それよりその窶れっぷりは一体どうしたのよ。それに委員長は? 」

 

「立花は興奮しすぎてのびてるよ。あそこまで強烈に反対するなんて思わなかった。たかが一週間なのに。苺は林檎と一週間離れたって平気? 」

 

「されど、一週間だよ。私達は、今まで生きてきてそんなに離れ離れに成った事無いから、もうそうなったら、委員長よりもダメになっちゃうかも」

 

「そうか。立花のケースはレアじゃないのか。どうしたらいいんだろうな。留学は絶対行きたいし・・・・・・枠は一人なんで一緒にっていかなくてさ」

 

 元気なく、トーストとハムエッグを食べるマユリさん。クラスの子が心配して差し入れをしたり、声をかけていく。

 

 

「もてもてじゃん。ユリー様はいっその事乗り換えたらいいのに。クラスの中に、ユリーに"ほの字の子"何人も居るでしょ? 」

 

「私は、立花が好きなんだよ。それにハーレムを作る気はないよ、ここを出た後に立花と添い遂げる気もある。それよりも逆に留守中に立花に悪い虫が付きそうで、それの方が問題だよ。最近、クラスの子はもとより、上級生が立花を狙ってるみたいでさ。全くお母さんも大変なんだよ、色々とね」

 

 マユリさんと話をしていると、蘇芳ちゃんが食堂に現れた。この間買ったメガネをつけている。皆の視線を一身に集めながら誰かを捜している様にキョロキョロしている。見つけた末に話しかけたのは関本さんのアミティエ。声は聞こえないけど、顔は天使の笑み。私刑をしている時の蘇芳ちゃんとは別人だ。何やら承諾を貰って行った後、バイキングのコーナーに寄り、一人には多すぎる食事を見繕って部屋に帰っていく蘇芳ちゃん。部屋にはまだ二人が居るのだろう。あの惨状そのままに。蘇芳ちゃんの為にも、あの二人の為にも止めてあげたい。でもどうすれば・・・・・・。

 

 

「ねえ、ゆかり知らないかしら? 今朝あの子居ないのよ。心当たりを聞いてみたのだけど、誰も知らないって言うの。保健室の鍵をあの子が持ってるから、困ってるのよ」

 

 和田先輩が私達を見つけ声をかけてきた。マユリさんはそれをきっかけにそそくさと部屋に帰って行った。あの一件で私達の中で一人だけ謝罪も顛末も蚊帳の外だったから気に入らないらしい。

 

「蘇芳ちゃんの所だと思います。居ませんでしたか? 」

 

「鍵がかかっていたから・・・・・・。そうありがとう」

 

 なんだか再び修羅場の悪寒がする。果たして止めるべきか行かせるべきか・・・・・・

 

 

 

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