※この作品はR-18です。

白羽蘇芳という生き方   作:抱き枕50

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生命

「はい・・・・・・白羽ですけど・・・・・・」

 

「えっ? どうして貴女が出るの? これ緑の電話でしょう? 緑はどうしているの? 」

 

「千葉先輩は、今ちょっと電話に出られません。お疲れになったとかで寝て・・・・・・横になっています。急用でしょうか? 」

 

「ねえ、緑は本当に出られないの? あの子身体だけは丈夫なのに・・・・・・。もしかして一服盛った? 」

 

「私だったらそんなまどろっこしい事はしません。単純に首に手を・・・・・・。快感なんですよヤる方もヤられる方も」

 

 「白羽さん? 声のトーンが怖いわ・・・・・・背筋が冷たくなるじゃない。もう冗談よ。洒落の通じない人ね。そんな貴女には話しにくいことなんだけど・・・・・・。そうだ千鳥ちゃん。千鳥ちゃんよ。千鳥ちゃんは、今どうしてるの? 」

 

 

「頭が痛いって鎮痛剤を飲んで横になってます」

 

「こっちもそうなの。うーん。仕方ないから貴女に話すか・・・・・・」

 

「一体どうしたんです? そんな奥歯に物が挟まった様な話し方・・・・・・」

 

 

「あのね、少し前にあの双子さんが病院に来たわ。槙先生っていたよね。あの人が二人を診ていたら突然倒れて・・・・・・」

 

「えっ、先生がですか? 」

 

「あっ、ゴメンね。倒れたのは双子の一人よ。私には見分けが付かなかったから、どっちなのかは判らないな。それで槙先生がどうしても貴女に来て欲しいって言うんで電話したのよ。貴女前にここで色々検査したじゃない? その事と何か絡みが有る様よ・・・・・・」

 

「意識は有るんですか? 危険な状態なんですか? 」

 

「私も詳しくは教えてもらえなかったから・・・・・・だから・・・・・・ちょっと深刻かもしれないわね。それにヘリで運ばれてきた先生方も全員ICUで面会謝絶よ」

 

「嘘・・・・・・」

 

「で、どうなの? こっちに来られないの? と言うか来ないとダメよ! それに千鳥ちゃんも怪我をしてるんでしょう? 一度きちっとドクターに診せないと・・・・・・」

 

「でも・・・・・・私達はここの支払い分くらいしか持ち合わせが・・・・・・。移動の費用を捻出・・・・・・」

 

「何馬鹿な事を言ってるの! 取り返しの付かないことになったらどうするの! こっちで清算して上げるから。車がネックというなら気にしなくて良いから。看護師さんの車は連絡入れて後で取りに行く様にするわ。途中のお城の格好したラブホでしょう? だから電話を切ったらすぐに緑たちを起こして、外に出てタクシーでも捕まえなさい」

 

 衝撃的な内容だったけど、何処か現実味の無い話し方に私の腰は重かった。担がれている? そんな気持ちを払底できない。しかし車の中で辛そうにしてうずくまる孝崎さんを見ていると、やはり行くのが正解なんだろう。

 未だ現な緑さんを無理やり起こし、休憩の清算を済ませ、事情を説明しラブホの人に車を外に出してもらった。どう見ても未成年の女が三人、しかも二人は立って居られないほどにグッタリとしている。衣服も乱れたまま。そんな状態の少女達と運転手の居ない車。向こうの人の好奇の視線が痛かった。私達がウリをしていて、男がヤリ逃げをしたストーリーを考えては見たけれど、どう考えても警察沙汰になる結末。ひたすらすっとぼけて針の筵の時を過ごす。

 

 

「白羽さん? 白羽蘇芳さんじゃない? 」

 

 何とか言いくるめていると、私を呼ぶ声がする。単なる呼びかけじゃなくて明らかに私の名字、名前を・・・・・・だ。刹那顔からどっと冷や汗・・・・・・。腕にも鳥肌、心臓がバクバクする。声の方をこわごわ振り向くと・・・・・・。

 

「やっぱり。白羽さんじゃない。なによそんな・・・・・・幽霊でも見た様な顔をして・・・・・・。私の事、覚えてないかしら? ほらサッカーの試合の時、一度会ってるんだけど・・・・・・」

 

 

「あっ、もしかして譲葉・・・・・・の、幼なじみの人? 」

 

「そうよ。まあまあ正解。譲葉お嬢様のお付きが正解かな。栗栖真理亜って言うの。白羽蘇芳さん、お久しぶり。相変わらず美人ねー。ってどうしてこんな所にいるの? ラブホよ? ここ・・・・・・。それにその子達は・・・・・・」

 

「話すと長いんで・・・・・・。それよりも、栗栖さんはどうしてここに? 」

 

「私は仕事よ。シーツとかの配達。白羽さんは私がクリーニングの仕事してるの知らなかったっけ? 今届け終えて今日の外回りは終わり。これから街に帰るところよ」

 

 

 街・・・・・・。

 

 

「お願いします。私達を街まで、病院に連れて行って下さい」

 

「えっ? 」

 

「私の友達が危険なんです。だから・・・・・・」

 

「その子達? ついでだから乗せて上げるのはいいけど、救急車の様には飛ばせないわよ。それで良いのなら事情の説明をお代に行って上げる。私も学院の事情やお嬢さんの事で白羽さんに色々聞きたいことあるし」

 

「恩に着ります・・・・・・」

 

 

 

 

「おい、関本君しっかりするんだ! くそ。真夏なのに体温が・・・・・・根本君はどうだ? 」

 

「こっちも厳しいわね。先生の所見では病院に搬送をって・・・・・・和田さんはもっとダメね。チアノーゼが出てる・・・・・・。吊るされていた時間が長いせいかどうにも良くないわ」

 

「葉子。本当にもう体面とか気にしている場合じゃないよ。御実家に全面的に委ねるべきだ。あの病院なら顔が利くんだろう? ぐずぐすしていたらもうヤバい。葉子が動かないなら僕が動く。父事業家としては失格だったのかもしれないけれど、あれでも医療や製薬業界には顔は相当に広いんだ。娘を売ったんだから今度のことでは少しは骨を折ってもらうよ」

 

「ユズ・・・・・・。判ったわ。これから電話してヘリを回してもらって皆を連れて行く。あの病院ならヘリポート有るし。ユズは学院に残って指揮をして。また後で連絡をするから・・・・・・ユズは修羅場に頼りになるわね。ヘタレまくりなベッドの上とは大違い」

 

「それ、今言う事? まあ良いけど。連絡待ってるよ。ネリー、いや小御門会長代理にも話をしておきたいんだけど。いいかい? 」

 

「良いも何も。貴女の好きにしなさい。在校生は小御門さんがうまくまとめている様ね。今のところ不穏な様子は無さそうだし・・・・・・」

 

 葉子に、何時もの様に軽くキスをして部屋を出た。向かうは全校生徒が集まっている寮の食堂。外から覗き、先生に頼んでネリーを呼び出してもらった。

 

 

 

「ネリー。そっちはどうよ」

 

「譲葉・・・・・・。何の用? 事件は・・・・・・終わったの? そうじゃなかったら来なくて良いわよ。こっちはこっちで忙しいんだから・・・・・・」

 

「ネリー! あー、もう。何ツンツンしてるんだよ。終わってないよ。まだとっかかりだ。今とても大変な事件が起こっている。これはネリーにも説明しただろう。でも事態はもっと悪くなってきたんだ」

 

「そうなの。こっちは皆浮足立ってるのを、私や一年、三年生の級長さんを中心に何とか抑えてるの。大変だけど今はまだなんとね。でも皆情報を知りたがってるから、断片的にでも情報を出してくれないと暴動になっても責任はとれないわ」

 

「そうか。それは少しヤバいな。皆に言うレベルの情報はまだダメなんだ・・・・・・。ネリーは概略程度は聞いてるだろうけど改めて僕から説明を。まず、行方の判らなかった養護の槙教諭、担任の美馬教諭、それに英語の鈴木教諭の先生方が学院の私道で交通事故を起こしドクターヘリで病院に運ばれた。それに付随して沙沙貴姉妹、白羽蘇芳が学外に出ている。それと君のアミティエの千葉緑が彼女たちと行動を共にしているらしい」

 

「えっ、なによそれ。私が聞いているのは先生たちが学外に出た事だけよ。怪我したお姉さんに付き添った緑さんが外に居るのは不思議じゃないけど、沙沙貴さんや白羽さんは一体どう言う事? 保健室に居るって書いてあるこのメモは誰が捏造したの・・・・・・」

 

 

「質問はもう少し待ってくれ、まだ続きが有る。僕たちがこの事であたふたしている時に、学院の女生徒が三人、天文部の部室の搬入用のドアから・・・・・・うえっ」

 

 あの時の様子を思い出したら、急に胃が痙攣し戻してしまう。慌てて手で抑えてまき散らす事だけは防いだけど、口の中は胃液で酸っぱく最低の気分。

 

「どうしたの? ちょっと譲葉大丈夫? 顔色が良くないわ。真っ青よ・・・・・・。少し横になりなさい」

 

 そう言うのと同時に、ネリーがハンカチをポケットから取り出し床のほこりを払っている。淡いブルーのハンカチが見る間に黒くなっていく・・・・・・。

 

「ゴメン醜態だな。お言葉に甘えて床に横になるよ。そのハンカチは・・・・・・。それは彼女から貰った大事な物だろうに・・・・・・申し訳ない。洗って返すだけでは許されないと思うけど事が終わったら手配を・・・・・・」

 

「いいのよ。もうこれは・・・・・・。それよりも話の続きを」

 

「判った。それで続きなんだけど、三人の女生徒が全裸に剥かれ全身を罪人の様に縄で縛られ、三階の高さから外に逆さ吊りに晒される事件が新たに発生したんだ・・・・・・」

 

「嘘・・・・・・誰が一体、そんな酷い事を・・・・・・」

 

「ああ、僕も未だに信じられない。でも事実なんだ。葉子と先生方も見ている。助けには行って一応は無傷で助け出せた。でも複数のトラップが仕掛けられていた上に、犯人の姿は全く確認出来ていないし見当もつかない」

 

「その子達は? 」

 

「さっき葉子が父親にヘリを依頼して病院に搬送して行ったよ。葉子はそっちに同乗している。残った目撃者は全員口止めを・・・・・・」

 

「そう。葉子さんは今居ないのね。譲葉、その吊るされた現場を見に行きたいんだけど・・・・・・」

 

「それは・・・・・・。葉子の意見でこれ以上の目撃者を作らないと・・・・・・」

 

「私だけを除け者にしないでよ。ニカイアの会としても把握しておきたいの」

 

「仕方ない。葉子には僕から了承を事後承諾で・・・・・・」

 

「ありがとう。ちょっと場を離れる挨拶をしてくるわ」

 

 ネリーはそう言って食堂の中に入って行った。その後ろ姿を寝たまま目で追いながら、あの光景を反芻する。刹那胃が痛くなる。自分弱さが恨めしい・・・・・・。

 

 

 

「ここでそんな事が・・・・・・」

 

「ああ、そうだ。学院創立以来の大事件だと思うよ」

 

「そうかしら。事件には違いないけど、私にはそう思えないわ」

 

「ネリー? 」

 

「譲葉、貴女は私に伝えていない事が有るんじゃなくって? 」

 

「なんだよ。あらましは説明をしたじゃないか。それ以上の事は無いよ、ネリー」

 

「ユダの仲間に天誅と・・・・・・」

 

「どうしてそれを。誰から聞いた? 」

 

 答える代わりに、ネリーは僕に手紙を差し出した。そこには身体に書かれていた様に血文字で"ユダの仲間に天誅"と書き記され、三人の実名を上げに全裸に剥き身体に書いて逆さに吊るした事、それに至る事情。この後も粛清は続くと・・・・・・」

 

 

「これは仕方ない事じゃなくって? ソドミーには当然よ」

 

「何を言ってるんだ? 仕方ないだって? だいたいこの手紙、何時誰に貰った答えろ! 」

 

「怒鳴らないでよ煩いから。これは今さっき食堂で渡されたのよ。これを見てなかったら私、貴女まんまとに騙されてしまうとこだったわ。だって、これは当然のことだからよ。綱紀粛正のために、ニカイアの会から事実を公表します。譲葉、私は貴女達がしている学院の改革に疑義を感じているのよ。女神様も私の考えを肯定してくれている様ですし」

 

「ネリー、正気なのか? 三人の人権はどうなるんだ考えてみろ。君にそんな事をする権利など無い」

 

「私は神の、女神の意志を継ぐだけよ」

 

「ふざけるな! 」

 

 逆上した僕がネリーの頬を張る。いや張ったんだけどいなされてしまった。何時ものネリーの動きではない。加速装置を使われたかの様だ。いや僕がスローに? 勢い余ってよろけた僕の顎にネリーの膝がクリティカルに入った。瞬間的にノックアウト。あえなく失神してしまった・・・・・・。

 

 

「ここは何処だ? 」

 

 目が覚めたものの涙が乾いた様な僕の目は、ぼやけてはっきりと物が見えない。部屋の中に横たわっている以外に判った事は無く、全くもって何処だかさっぱり判らない。首を動かしてみると、私は薄暗い部屋のベッドの上に寝ているのは理解できた。不思議な事に首から下の身体がどうにも動かせない。皮膚の感覚も無く麻痺している様だ。不安になり急に気が乱れる。

 

 

「誰か居ないのか。助けてくれー」

 

 全力で叫ぶも声が出ない。口をぱくぱくしているだけだ。幾ら叫んでも声が・・・・・・。喉に痛みが走る。未だに首から下は動かせず、ただ恐怖から全身に汗をかくだけだ。数分のうちにシーツに水たまりが出来てしまう程に。但しその濡れる感触も首から下は感じない。顔にかいた汗で判るだけだ。暫くそのままにしていると部屋の電気が薄暗くではあるが点いた。

 

「譲葉、気が付いた? って言っても、今貴女口が聞けないのよね。その内に出せる様になるから心配しないで。私の言う事が聞こえてるなら目を瞑って頂戴」

 

 首を動かし声の方を見る。誰かが居る。ネリーの声と言うのは判る。逆光で表情は見えず、声のトーンを混乱する頭は読みきれない。仕方ないので目を瞑って問いかけに答えた

 

「良かった耳は聞こえる様ね。貴女はもうすぐ素晴しい経験をするの。夜になったらドクターが来るからそれまで私が綺麗にして上げる」

 

 

 

 

「ねえしっかりして。病院に着いたわよ。もう大丈夫だからね・・・・・・」

 

病院のヘリポートに白木の社用ヘリが着いた。混濁する三人の女生徒を下ろし引き渡す準備に掛かる。

 

「白木、こっちだ」

 

「槙先生、この子達もよろしくお願いします。先生方はどうですか?」

 

「うーん。多分もう大丈夫だと思う。二人ともカテーテル使っての手術で脳内の出血は止まったし。ただ直ぐに仕事に復帰とは行かないだろう。九月あたりからの復帰が妥当ではないのかと思う」

 

「そうですか・・・・・・」

 

「それよりも沙沙貴が大変なんだ」

 

「沙沙貴さん? あの子達も此処に? 」

 

「ああ。少し拙い事になっていてな。詳しくは言えないがドラッグみたいなものを使われていて混濁している」

 

「そんな・・・・・・」

 

「もうすぐ、この分野の専門家が来るから心配するな。白木はよくやってるよ。少しは休め。夜からずっとこんな事ばかりで疲れたろうに。和田も直ぐに良くなるよ、心配するな」

 

「先生・・・・・・」

 

 学院から移送された三人の女生徒の病院内への搬送が始まった。付き添いを先生に託し、それを見送りながら父親に事情を説明する為に、再び私は白木のヘリに乗り込む。配線むき出しの殺風景な室内に滅入る。急に依頼したので貨物のヘリしか都合が付かなかったのだ。VIP用ではないこのヘリは騒音が凄い。さっきまでは話しかけたりする都合でしてなかったウォークマンを手に取り、クラシックを聴いて目的地を目指す。

 

「参ったなぁ。お父さんここから手を引くとか言いかねないわ。どうしてこんな事件ばかり起こるのよ・・・・・・。折角の留学の話しも流れてしまわないかしら」

 

 そんな事を考えていたら何時の間にか寝てしまっていた。

 

 

 

 

「和田、目が覚めたか。無理に起き上がるな、そのまま寝ていろ。関本も根本も横に寝ているから心配するな。点滴で栄養を入れてるからそのままに寝ててくれ」

 

「和田花子、意識を回復しました。ドクターをお願いします」

 

 ナースコールをする先生。首を振ると妹のゆかりと目が合った。その目は涙で濡れていた。小声でお姉ちゃんと呼ぶ声が聞こえ私も涙が出る。何故ここでこんな事になっているかの自覚は無いけれど、夢を見ていた様な記憶、感覚が残っている。それを改めて認識したのは、身体に残る縄目だった・・・・・・。

 

「これは・・・・・・。もしかしてあの記憶は夢でなくて現実? 嘘・・・・・・。全裸で晒されたあれが現実なの? 嫌ぁあー」

 

 喉が壊れんばかりに絶叫した。過呼吸みたいになり頭が働かなくなってしまう。それでも足や手は動き続けベッドの上で暴れ落ちそうになるところを先生が支えた。

 

「どうした和田、落ち着け。もうここでは何も起きない、寝ているんだ! 」

 

 先生がパニックになった私の顔をギュッと両手で挟んだ。そしてキスを。それは熱く激しいものだった。先生を感じているうちに気が落ち着いてきた。

 

 

「先生ありがとう・・・・・・」

 

「どうした? 今日は殊勝だな。何時もこうならお前もっとモテるよ、和・田。ドクターが来たから私は他を見てくる。後で来るから・・・・・・」

 

 

「・・・・・・行かないで・・・・・・」

 

 私の呟きには答えず、先生が出て行った。何だろうこの寂寥感。先生にこんな気持ちを抱いたことなんて無かったのに。後で来るからの言葉を頭の中でリフレインしていた。

 

 

「ちょっと。あの双子ちゃんが病院に? この子達よりもずっと深刻なの? 嘘じゃないのね? そんな大事な事、最初に言いなさいって」

 

「申し訳ありません。嘘でなく事実です。栗栖さん・・・・・・」

 

「沙沙貴苺に林檎さんだったよね。あの夜の、脱柵の記憶は今でもハッキリと覚えているわ。あのドライブの間中何時間一緒だったのかしら。ずっとおばあちゃんの無事を祈るあの子達の姿、もらい泣きしたものよ。道中眠らない様に気を使ってくれって、いろんなことを話したわ。生い立ちから貴女達の事も。特に白羽さん、貴女のことは熱っぽく・・・・・・ね」

 

「間に合わなかったんですよね・・・・・・」

 

「いや間に合ったのよ。おばあちゃんが亡くなる前には着いたの。で、二人は最後の会話を交わしてから最期を看取った。私はそこで帰って来てしまったからその先は知らないわ。その後一回手紙を直接貰ったきりね」

 

「そうだったんですか。私はてっきり・・・・・・。小御門先輩も詳しく教えてくれなかったし」

 

「ネリネが? 変ね。手紙を書いて渡したんだけど・・・・・・」

 

 

「栗栖さん、あの・・・・・・小御門先輩とお付き合いされているんでしょう? 」

 

「いきなりね。顔に似合わず不躾ちゃんね貴女は。していたのよ。そう過去形。終わってるの。その辺りを含めた色々な事情でおかげでうちの会社、学院から干されて・・・・・・。こっちのルートから暫く外されていたのよ。暫くぶりにルートに戻ったらこういうことに出くわしたの」

 

「小御門先輩はそんなこと一言も・・・・・・」

 

 

「同室の私にも何も言わなかったよ、小御門は」

 

「あら気がついたの? 貴女は? 」

 

「私は小御門のアミティエ、千葉緑です」

 

「貴女が・・・・・・。ネリネから話は聞いているわ。学院始まって以来の才媛だとか。で、真面目で堅物って・・・・・・。譲葉お嬢様と反目していたと聞いたけど、そんなに悪い人じゃないみたいで安心したわ。よろしくね。私の詳しい自己紹介は病院に着いてからするわ。それまで後ろで寝て居て頂戴」

 

 そう言われて、緑さんは再び洗濯物の中に身を沈めた。

 

 

「白羽さん。貴女は、譲葉お嬢様と付き合ってるんでしょう? お嬢様はどうしてるの元気にしてるの? 母からサッカー部の話も聞かなくなったし」

 

「私も過去形なんです。譲葉を寝取られてしまいました・・・・・・」

 

「嘘。誰がそんな事を? まさかネリネ? 」

 

「いえ、譲葉のアミティエの白木葉子さんが・・・・・・。傾きかけた八代家の支援と引き換えに全てを奪ってしまいました。譲葉は近くにいるけれど、既に他人。ガラスの向こうのアンタッチャブルな存在です」

 

「そう。お嬢様は人身御供に。家族思いのあの子らしいわね。そう言えば、白木グループが学院の代表権をって通達が来ていたっけ。お嬢様の力添えで切られなかったのかもしれないわね、うちの会社。出入りの会社はかなり変わったのよ。特に食材の関係。今度は青果市場から取っているみたいだけど、前は納入業者も知らない様な変なところから来ていたわ」

 

 

「小御門先輩とはどうされたのですか? 」

 

「懲りないわね。そんなに聞きたいの? 高くつくわよ」

 

「身体でお支払いします。良いでしょう? 」

 

「その真顔で冗談言うのはやめてくれない? まあいいわ。あのサッカーの試合の後、ネリネと私は昔話に花が咲いてね。文通をする様になったわ。その内それでは満足できなくなって、フォーンパッチを学院に運び込み私と電話の様に話が出来る様にしたの。会社にそう言うの詳しい人が居てね。それでより親密になった・・・・・・」

 

「なんですか? そのフォーンなんとかって・・・・・・」

 

「アマチュア無線と電話とリンクする様な物よ。あそこは刑務所だから、普通には連絡取り合えないじゃない? 非番の時、同僚の運転するバンに隠れて乗り込んで此処に来た事も何度も有るの。沙沙貴さんの教訓から見つからないルートを見つけてね。夜、学院を一緒に探索したり愉しかった。だけどすれ違いの目は何処にでも内包している・・・・・・」

 

「私がネリネを求めても、ネリネは頑なに純潔を守ったわ。哀しかったけど、あの子はそういう子なんだからと。でも処女じゃないのは確かよ。はぐらかされたけどお嬢様とは関係が有ったのは間違いない。そしてそれを悔いてる。プラトニック、私達そんな関係を続けていたんだけど、突然連絡が取れなくなって、そうこうしていたら、うちの会社もアングレカム学院の仕事を干されてね。それっきり。貴女が前彼と死別して、お嬢様と正式に付き合う事になった辺りの事よ」

 

「前彼って。アキラはボーイッシュでしたけど、おなべじゃなくて私以上に女らしい女でした。故人を晒す様な酷い事言わないで下さい・・・・・・。来栖さん死にたいの? 」

 

 

 

「ごめんなさい。白羽さんは怒ると凄味が有るわね。そこもまた魅力かもね・・・・・・。ギャップ萌えっていうやつ。初見の時はそんな事は思わなかったんだけど。貴女、前カノと随分としたんでしょう? 色々仕込まれた貴女、ヘタレな譲葉お嬢様では物足りなくなったんで、良い機会とあっさり身を引いたんじゃなくって? 」

 

「いい加減にしてください。私を怒らすとどうなるかを味わいたいんですか? 今話題にすべきは私の事よりも、小御門先輩のことです。どうして急に連絡が途絶えたんですか? 心当たりは? 」

 

「抉りに来るわね。白羽さんは。ネリネは敬虔すぎるのよ、教義、教えに。世間的には許されることでもあの子にとってのNGは多かった。でも譲葉お嬢様と一緒だったらそれもOKだったと思うわ。所詮、私は代用品だったのよ。幼なじみって言ったってね・・・・・・。それ位特別な存在だったのに、白羽さんがその二人の関係を壊したんじゃなくって? 」

 

「それは・・・・・・」

 

「あの子の祖父は神父だった。なのに・・・・・・。出自について調べて見るとその辺りの事情も判ると思う。後、処女受胎についてネリネは凄く関心があったの覚えてる。白羽さんはそう言うの興味ありそうだけど」

 

「私は・・・・・・」

 

「まあいいわ。着いたわよ、病院。後ろのお二人さん、起きて。車を駐車場に入れてきたらまた来るから。携帯の番号教えておくから連絡を頂戴」

 

「わかりました。自分用の携帯持っていないんですけど、緑さんはスマホを持っていますからそちらから連絡をする様にします。乗せていただきありがとうございます」

 

 緑さんと番号のやりとりをしてから病院の裏で私達は車を降りる。緑さんはかなり回復したんで孝崎さんに肩を貸して正面受け付けに。私は勝手知ったる裏口から病院に入った。救急搬送された患者さんは一階で処置し三階に運ばれるのは知ってる。

 

ナースステーションの正面に出てしまうエレベーターを避け階段で三階に。まずはトイレに行きリボンで髪をまとめ、前髪はヘアピンでアップに。緑さんの荷物から失敬した白衣を着ると・・・・・・パッと見は研修医に見えると鏡を見て思う。背筋を伸ばし一部屋、一部屋チェックを入れる。不審がられた時は満面の笑みで頭を下げると、十割の確率で無問題。チョロイものねと心の中で舌を出す私。一番ナースステーションに近い部屋に二人は居た。

 

 

「失礼しますー」

 

「どうぞ・・・・・・」

 

 中には看護学校の実習生みたいな子が一人椅子に座っていた。私よりもずっと歳上のはずなのに、着ている服の印象からとても幼く感じる。私を見て席を立ち礼をして向き合う

 

「どう? 容態は? 」

 

「変わりありませんよ。部長先生が、今検診して出て行ったばかりでしょうに・・・・・・」

 

「そう。行き違いになってしまったのね。悪いんだけど少し席を外してくださらないかしら? この子達の学校の先生が何処かに居るから呼んできて、少し確認したい事が有ってね。そうね貴女、こんな時間だものもう上がっても良いわよ」

 

「はい。今ICUの方だと思いますから呼んできます。 でも・・・・・・。いいんですか帰ってしまっても? それでは失礼します」

 

 スマホを手にそそくさと部屋を出て行った。改めてベッドを見ると二人はパジャマに着替えさせられて寝ていた。手には名前の書かれた腕輪をしている。髪飾りは外され、見分けは顔の黒子だけしかない。しかし包帯が巻かれているので其れもよくわからない。もっとも全身をよく見ると胸の膨らみとかは少し違うのだけど、事前情報無しには、まず見分けがつかない。

 

「こっちが林檎さんで、向こうが苺さんか・・・・・・。あれ、これは・・・・・・何? 」

 

 

 

 

「失礼します。お呼びですか? ってお前、白羽じゃないか・・・・・・。その格好、似合ってるけどもう脱げよ。これ以上トラブルを増やしたくないんだ」

 

「先生、私に何の用です? 検体にすると聞きましたけど? 詳しく説明をしてくださいませんか? 怪しい予感がしましたんでこっそりと此処に来ましたけど、どうも当たっているみたいですね」

 

 ベッドの脇に置いてある所見を指さす私。うろたえる先生。

 

「見たのか、それを・・・・・・」

 

「ええ。二人は怪我よりも薬物の過剰摂取が原因とありますね。それで昏睡ですか。それで私の血を輸血して薄めると。血のロンダリング・・・・・・これ、まともな発想じゃないですよね。一体誰の発案ですか? 」

 

「それは言えない。そうだな薬物の専門家とでも言っておくか。今言えるのはこれだけだ。だけどこのままでは沙沙貴達は絶対に回復はしないだろうと言われた。白羽、以前学院で倒れた時、採血をしたよな? その時の採血結果には、微量の何だか判らない物が検出されていた。沙沙貴達はそれが多量に検出されているんだ。それで秘密裏に専門家にデータを見せたら・・・・・・」

 

「過去に使われて免疫、抗体が出来ている人の血と入れ換えると? 」

 

「ああそうだ。最初に言っておくとお前には何の副作用も無い。だが二人の将来はお前次第だ。いや、お前が拒否したら私の一存で勝手にやらせてもらう。お前を無力化するのは造作もない この病院には白木の力でイリーガルを黙認してもらっているんだ。言っておくけどナースコールは機能しないよ白羽」

 

 先生はテーザー銃を私に向けた。目の鋭さに先生の本気をひしひしと感じる。アマゾネス、もとい、メスゴリラを拝命している先生を相手に事を交えたらとても勝てない。

 

 

「で、私に特典の様な物は? 」

 

「そうだな。何でも欲しいモノをくれてやる。沙沙貴が元に戻るなら・・・・・・。物でも人でも、金でも何でも良いよ」

 

「嘘くさいなぁ。金なんて先生が言ったところで説得力皆無です。もう過払い請求で戻ったお金、三日で無くなったと聞いてますよ? もう生徒に図星突かれて泣きそうになるなら言わなきゃ良いのに・・・・・・。そうですね老化を遅くしてはくれませんか? 不死とは言いませんけど。今のままの姿でずっとずっと生きてみたい」

 

「またそれは難題だな。私には出来ないけど、あの人なら出来るかもしれない。100パー保証は出来ないけどな。良しそれで決定だ。逆に100パーダメな時には私がこの命をくれてやるよ」

 

「いらないです、そんなヤニとアルコールに汚染されたもの・・・・・・。あ、でも、失敗して効果が出なかったら先生にはお墓に入って貰って、残った先生のハーレムを私が遺志を継いで貰いうける。そうしましょう。美馬先生達を悲しませたくないもの。不老が成功すれば私は・・・・・・」

 

「吸血鬼の様に若い女を貪り尽くす・・・・・・。違うか? 」

 

「少し違います。若い女達、それに若い男も、です」

 

「男も? 白羽はバイなのか」

 

「男って言っても一人だけですけどね。どうしてもその男が保持する地位が欲しくて。で、その地位を手にしたら、その男は用済み。殺しはしないけどハーレムの宦官か虫除けにでもなって貰おうかと。欲しいモノ手に入れる為にはどんな事でもするのそれが・・・・・・私の愛だから」

 

「お前たまに訳の判らない事を言うよな? まあ私の生き方に男は不要だからどうでもいい。お前はお前の道を行け。私は今、沙沙貴を救わないといけないんだ。それじゃ血のロンダリングの件は良いんだな? 」

 

 

「ええ。感染症にさえ気をつけてくだされば。孝崎さん達は? 」

 

「千葉と二人で見てもらっているけど、アイツらは大丈夫。CTでも異常は見つかっていない。唯、孝崎は血の成分が良くないな。あれでは色々と問題が出るわ。サプリメントも与えないと。ICUの先生方も明日には一般に移れるだろう。今一番問題なのが薬物にやられた沙沙貴達なんだ。じゃ始めるから設備のある部屋に行くぞ。ナースコールを押して4488とコールしてくれ。それが合図だ。それにこれお前にやるよ。良い出来だろ? 」

 

先生は私にテーザー銃を投げて寄こした。うわ、軽い・・・・・・。

 

「全く、また担いだんですね・・・・・・」

 

 

 

「ドクターI.B.、準備が整いました。よろしくお願いします」

 

「準備ありがとう。本当にいいのね? 親友なんでしょう? 」

 

「今は・・・・・・」

 

 僕はあの後、手術室の様な部屋に移送された。そして掻爬に使われる様な診察台に乗せられている。そこから先は目隠しをされてしまったので良く分からない。身体の首から下は相変わらず動かせない。耳は聞こえるも、カナル型のイヤホンを入れられて心音の様な物を聞かされ続けている。外の音は聞こえない。投薬で精神をコントロールされているから耐えて居られるけれど、そうでなかったら狂人になっているのではないかと思う。

 

 

「あら。綺麗なピアス。24Kのリングが五組で十個とは豪勢だこと。私の指輪よりも高そうだわ。終わったらあたしもデコレーションしてあげる」

 

「お姉様!戯れ言は・・・・・・」

 

「そうね事が済むまでは、自重するわ。それじゃ始めます、やっと今までの実験の結果を実証できる時が来たのね。ネリネは、そこの試験管を取って。そう一本づつ丁寧にね。次にインジェクターを。セットは私がします。ネリネ、エコーの用意をして。ジェルも頼むわ貴女が塗りなさい。嫌だろうけど我慢して。私はバイタルを見るから。数値が落ち着くまで点滴を入れます」

 

 誰かの手がお腹に触れ、ジェルを塗布していく。見えないし、麻酔の影響で鈍くしか感じられないけれど、これは間違いなくネリーの手だ。間違えたりはしない。温かく大きな手が僕のお腹を撫で回す。そしてエコーの機械が当てられた。

 

「エコー、用意できました」

 

「バイタルも確認できたから、まずはガイドを挿入。準備は? 」

 

「はい。いつでもいけます。潤滑剤もたっぷりです」

 

 僕の膣に太い物がめりめりと入れられていく。麻酔のせいか痛いという感覚は無い。そう、苦しいという感覚。奥までぐいぐいと押されて気持ち悪くなり空えずきを繰り返す。そしてそのまま固定された様だ。苦しくてとても辛く涙を流してしまった。

 

「それでは種をを子宮内に入れます。ネリネ、モニターを注視して。まずはこの子のから、次はネリネのを入れるわ。圧の設定はコンマ5? 状態は? 」

 

「はい。コンマ5です。状況は全て正常オールグリーンです。」

 

「注入開始! 」

 

 僕の子宮の中に何かが入れられた。少量の液体だ。とても温かい。続いてもう一回。今度は先程のよりも温度が高く熱く感じる。その間ずっとエコーが当てられ続けてモニターをされている様な感覚。最後に膣に入れられたもの抜かれる時、途中で一旦止められ、何か冷たい液体を膣内に充塡された。その液体が体温と同じになるまで暫く膣に充塡させられた。そして引き抜かれ液体も全部出た後、突如耳からイヤホンが外され、目隠しも外される。

 

「全て終わったわよ。これからは余興」

 

 目の前にモニターを据えられ映るはむき出しの僕の性器。次の瞬間目に飛び込んできたのは糸で膣口の後ろ半分を縫われる態。安定するまで何も入れられない様にと耳元でネリーが囁く。立ち去るネリーと入れ代わりにドクターと呼ばれる女性が僕の所に来て、約束のデコレーションよとクリトリスの包皮にプラチナのピアスを・・・・・・。見た目のごつさに麻酔が効いてる筈なのにその存在を感じてしまう。感じる事が滋養になるのよ。ドクターはそう呟いてピアスを指で弄る。

 

「あう・・・・・・」

 

ドクターが立ち去ると再びネリーが来て良い物を頂いたじゃない? でもね貴女は畑なの。種を育てる為の。だから不要な四肢を切り取ってしまおうかしら? 脚は泉に逆さに植えてみようかしらね? 良いオブジェになるわ。そんな悪魔の様な事をしれっと言う。冗談抜きでダルマにされてしまいそうな気分になっていた。

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