※この作品はR-18です。

白羽蘇芳という生き方   作:抱き枕50

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夢

「それじゃ、今日の自習は終了します。一年生は各自部屋に戻ってから食堂の清掃に戻って来て下さい。調理に埃の影響が出ない様、カウンターを締め切ってから行います。二年生は聖堂、三年生は進路指導室と被服室の掃除に。それでは散会」

 

 三年の級長さんが場を締める。私に向かって小さく手で合図して去って行った。後は任せましたと。本来ならニカイアの会の小御門会長がするのが筋なんだろうけど、何故だか途中で姿を消している。そう言えば、三年生に居るはずの先代のニカイア会長さんはどうしているのだろう? こういう場には指導力を見せても良いはずなのに。名前すら伝わってこないのは変だ。辞めちゃったのかな? それも聞かないけど・・・・・・。

 

「立花さん。どうしたのぼんやりして。早く教室に戻りましょう」

 

「萩野さん・・・・・・。何でも無いの。唯・・・・・・」

 

「唯? 」

 

「八代先輩の前のニカイアの会の会長さんって三年生に居るはずのにどうして出て来ないのかなって。小御門先輩も居らっしゃられないさっきの場合、表に出て仕切っても良かった様に思って・・・・・・」

 

「あーその事。会長職は空席の年次が有るんだって。代理だけで済ます年が有るそうよ。だから今の三年生には居ない・・・・・・」

 

「そうなんだ。萩野さん詳しいのね」

 

「そう? そんなことよりも、皆部屋に帰って行ったわ。私達も戻りましょう。匂坂さんはとっくに戻って・・・・・・」

 

 

 萩野さんが私の手をグイッと取って部屋の方に連れ出す。こういうのは何時もマユリがしてくれていたのに・・・・・・。部屋に戻るとマユリが手紙を読みふけっていた。私に気付くと手紙をさっと仕舞う。

 

「マユ、それ何? 」

 

「立花には関係ない事だよ。留学の案内さ。予定の確認をね」

 

「嘘。マユが嘘をつく時、唇に指を添える癖があるの知ってるんだから。公式の書類だったら私にも見せてよ」

 

「断る。私信だからな。のべつプライバシーを探るなんて倫理に反するだろう。立花だって私に知られたくないことあるだろうに」

 

「マユ、私は貴女の事を何でも知りたいし、共有したいのよ・・・・・・」

 

「どの口で言うんだよ? 私に隠れて立花は何をしてるんだ? 蘇芳さんの所に出入りして関本、根本達としてる事を知らないとでも? まあ私も色々としてるから黙認していたけどね。だけど其処までするなら互いに干渉するのをやめにしようよ。それがお互いの為だ。私は立花が好きだけど、以前ほどでは無い」

 

 

「そんな・・・・・・」

 

「何で泣く? お互いの気持ちがすれ違ってきているんだから仕方ないじゃないか。私は留学でもう一度自分を見つめ直してくるつもりだ。立花も此処でじっくり考えて・・・・・・」

 

 そう言って窓の所に立ち遠くを見るマユリ。かける言葉が無く唯泣くだけの私。そんな時、ノックの音と共に弾んだ声が耳に届いた。

 

 

「立花さん、一緒にお掃除に行きましょう。立花さん? こ、匂坂さん・・・・・・立花さんをお借りします! 」

 

「おい。風紀の・・・・・・まだ話が・・・・・・」

 

 

 怖い顔をした萩野さんに強引に連れ出され、マユリとの話は中途半端に終わる。私はもっと話をしたかったのだけど・・・・・・。

 

 廊下に出るなりトイレに強引に連れ込まれた。個室に押し込まれ強引にキスを・・・・・・。頭を手で抑えられ唇を舌でこじ開け絡ませてくる。どれくらいしていたのだろうか。気がつくと、ふたを閉めた便座に座っている萩野さんの膝の上に。後ろから抱き抱えられ、痕の残らないように丁寧にハンカチで涙を拭われていた。

 

「こういう時はメガネが有ると目立たないのに。私なら立花さんにこんな顔をさせない」

 

 そこまで言って顔をひねり再び唇を奪う萩野さん。それを拒めない私。と言うか嬉々として受け入れてしまう。萩野さんはトイレを出ても人目をも憚らずに私にベタベタする。そう、昔のマユリの様に。食堂に入ると既に掃除が始まっていた。マユリじゃなく萩野さんと一緒に来た私に好奇の視線が集まる。

 

「ねえ。皆が見ているわ・・・・・・萩野さん」

 

「うん。見せつけてるんだもん。だって、あんな事した仲じゃない・・・・・・。立花さんは私の事嫌い? 」

 

「ううん。嫌いじゃないわよ。でもね・・・・・・まだ・・・・・・」

 

 

 次の言葉が想像できたのだろうか、萩野さんは突如泣き崩れて床にへたり込む。

 

「ちょ、萩野さん・・・・・・」

 

 遠巻きに見つめる級友の視線の中、抱き抱えて介抱しているとマユリが取り巻きを連れて入室してきた。私達を見て固まるマユリ。マユリと仲のいい子があらましを耳打ちし、取り巻き連が蔑んだ目をしてひそひそ話を始める。それを私のシンパが見て噛みつき部屋の雰囲気は一気に険悪になった。

 

「萩野さん。貴女今度は花菱さんに横恋慕なの? 節操の無い人ね。それにしても匂坂さんの前よ。くさい芝居は止めなさい・・・・・・。にしてもまた売るのクラスメートを」

 

「何言ってるのよ。それは冤罪よ。萩野さんがこんなになったのって、あんた達が苛めたからじゃないの。花菱さんはそれを助けただけじゃない。それを芝居だなんて。花菱さんも何か言ってやって! 」

 

 

「みんな。落ち着いて頂戴。今、学院はこんな諍いをしている場合じゃないの。そうでしょう? 私達の級友が幾人も所在が判らなくなり、担任のダリア先生も、養護の先生、二年の担任の先生も・・・・・・。学院生徒として成すべき事をして全員の無事を神に祈りましょう・・・・・・」

 

我ながらクサい台詞だと思う。でも存外効果が有った。皆の表情が変わった。

 

「そうだ。立花の言う通りだ。ゴメンな立花。不愉快な思いをさせたろう。すまない。こいつらには私から言い聞かせておく。これからも風紀委員の力になってくれ。じゃ掃除を始めようか」

 

 ざわめく食堂。しかしそれもすぐに収束した。こういう時のマユリは、圧倒的なカリスマが有る。私にはそれが無い。私がマユリの愛を受け入れた理由の一つ、この凛とした空気感。私はそれを欲した。そして手にした。しかし私の元から消えようとしているのを今のやりとりで改めて実感した・・・・・・。

 

 

 掃除があらかた終わると、マユリ達は挨拶もそこそこに、ささっと消えて行った。私達は中々踏ん切りがつかず最後まで残った。

 

 テーブルは塵一つ無いくらいに仕上げ、床はスカートの中が映るくらいに磨き上げた。食堂のスタッフさんに終了を伝えるとカウンターのシャッターが巻き上がり、同時にいい匂いが鼻腔を刺激する。

 

「いい匂い・・・・・・」

 

「だろ? 私達があんたたちに最高を提供しているんだ。あんた達もしっかり頑張りなさい。此処には何でも有る。無いのは男だけ。でもそんなものはキッチリと自我を構築してからで十分。あんた達の年で男を知ったって何の得にもならないよ。今学院で色々有るけどさ、新体制が軌道に乗ればそんなものはそんなことも有ったねで思い出の一ページになるだけさ」

 

「おばさん・・・・・・。でも今、うちのクラスは・・・・・・。まとまりを欠いてしまって。級長の私が何とかしないといけないのに、どうしたらわからないんです。行方のしれない子が五人も居るし、転入してきた子も姿を見せないし」

 

 そこまで口に出すと涙が出てきてカウンターに突っ伏してしまった。それを見てカウンターの下の扉を開け、おばさん達が出てきて交互に私を抱きしめてくれる。

 

「辛い時は泣いて良いんだよ。立花ちゃん。もうすぐ黒沼ちゃんの召天記念日があるじゃない。それが終わったら夏休みが始まるから実家に帰ってゆっくりしてきなさい。九月になって夏休みが終わったら、皆も元に戻ってる、絶対に」

 

「ありがとうございます・・・・・・」

 

 

「おばさんー。お腹空いたー。もう頼める? 」

 

「何時も言ってるだろう? お姉さんって呼んだらサービスしてやるのに・・・・・・ああ。もう全部行けるよ。今日は天ぷらがおすすめさ」

 

 三年生が食堂に襲来した。さっきまでのしんみりとした空気は瞬時に霧散。何時もの食堂の風景にすりかわる。私達はそそくさと退室した。マユの居る部屋は戻るに憚られた。暫く時間を潰すのに私と萩野さんで温室に入る。

 

 

「ねえ立花さん。夏休みってどうなさるの? 」

 

「私? マユリが留学決めるまでは、二人でお互いの実家に行こうって事にしていたんだけど・・・・・・。今はまだ白紙。最悪の場合は此処に残るかも。萩野さんは? 」

 

「そうなんだ。私は約束通り実家に帰るけど、他の子は休みが長くなったからどうなんだろうね? 決めかねているんじゃない? 臨海学校も計画されてるって聞くし」

 

 

「え? 何? 長くなったって? 一週間じゃないの? 朗読会は? 」

 

「え? 変わったのよ。日数延びたの。 朗読会は延期。ほら寮の工事とかするから。別の場所で作って、ここでプラモデルみたいにちゃっちゃっと組み上げるんですって。基礎だけきちんとしていればあっと言う間に出来るみたい。その時に人工をかけるから生徒を残したくないみたいで・・・・・・。

残る生徒は臨海学校に参加か、上の学校の見学会、教会でのボランティア。そうそう成績の悪い人は別荘で集中補習が有るらしいって。立花さんは聞いて無いの? 皆知ってるかと・・・・・・」

 

「私は初耳よ。マユリの留学のことしか聞いて無かったし」

 

「うそよ。自分でプリント配ってたじゃないの・・・・・・そんなに恋煩い酷かったのね」

 

「えー。そんな・・・・・・」

 

 

「ゴメンナサイ。ちょっと引っ掛けてみたくなったの。立花さんが居ない時に話が有ったのよ」

 

「もう。萩野さん酷いー」

 

「食後にスイーツ奢るから許して。その時にそのプリント渡すから。でね立花さんが臨海学校に参加するなら、私も実家行きをはしょって戻ってくるから一緒に行きましょうよ」

 

「まだ何とも言えないわ。私も実家に話をしてからじゃないと。だってまだ前の話が生きてしまっているし」

 

「善は急げよ。食事が済んだら手紙を書きましょうよ。購買に便箋の可愛いのが新入荷したから・・・・・・ねえ立花さん」

 

 

「で、臨海学校は何処でするの? 遠いと・・・・・・」

 

「場所は鎌倉らしいわ。何でも鎌倉の教会にここのOGが居て、そこの信者さんが売却された会社の保養所を持ってるだとかなんだとか。なんでも歩いて三分で海らしいわ。知ってるのはそれ位。私もまだ詳しくは・・・・・・」

 

 

「鎌倉。行ってみた事無いんだ。海綺麗なのかしら」

 

「泳ぐのは、それより南の葉山町でするらしいわ。そっちの方が綺麗だし、今時期の鎌倉の海は混みすぎて大変みたいよ。チャラい男も多そうだしね」

 

「でもそれより、召天記念日大丈夫なのかしら? 収穫祭も同時にするんでしょう・・・・・・」

 

「そうよね・・・・・・」

 

 

 その時、視界に小御門先輩が入った。何時もの優しそうなお顔。私達には気付かずに温室を出て行く。でも一体何処から入ったのだろう。向こうに出口は無いし。ずっと居た? 嘘。私達が電気を付けるまでは温室の中は暗かったし、閂もかかっていたのに。

 

 

 

「うーん。振動が・・・・・・。バフェットが・・・・・・エレベーターもエルロンもラダーも効かない。ああもう何をしても頭が上がらない。主翼にしわが・・・・・・。これが・・・・・・蘇芳ちゃんを始め皆を葬ったサウンドバリアー・・・・・・。林檎ゴメン・・・・・・もう一度会いたかったよ・・・・・・ああ地面が・・・・・・うわー」

 

「嫌ー! 」

 

 

「おっ、沙沙貴。気がついたか。おい。大分うなされていたな。それにしても意識が戻って良かった、本当に良かったよ・・・・・・」

 

「あれ? ここ病院じゃん? 空に居たのに? 夢? あれ先生・・・・・・。学院なの? 」

 

「まだ混濁してるみたいだな。早くドクターを呼ばないと・・・・・・」

 

 先生が部屋を出て行った。あー変な夢。前に視聴覚室で見た蘇芳ちゃんお勧めの古い映画が影響してしまった様だ。

 

 体を起こして周りを見回す。隣のベッドには林檎が寝ている。そしてその更に向こう、大仰な機械の向こう側に蘇芳ちゃんが寝ている様だ。上半身は見えないけど綺麗な脚と大きな足がそう認識される元。

 

 私の腕には図太い透明の管が。中を血がかなりの勢いで流れている。点滴なんてレベルじゃない。チューブを辿ると人工透析の様な機械に管が繋がっている。それは林檎も同じ。その機械の先には蘇芳ちゃんが・・・・・・。

 

 私と林檎の頭には脳波を測定するセンサー。身体には心電図を録るようなプローブ。SF映画を見ている様な有様。私が透析っぽい機械の回る部分をボーッと見ていると、部屋のドアが開いた。

 

 

「どうですか。気分は良い? それとも悪い? 」

 

 歳の頃は四十位の女医さんが私に話しかけてきた。そして私の腕をさすったりしながら、研修医みたいな若い男の先生に記録を取らせる。

 

 

「何だかずっと夢を見ていました。そう空を飛行機で飛んでいる夢を。最後は墜落でしたけど。今? 気分は良くもなく悪くもなくです。それより林檎は? 」

 

「林檎さんももうすぐ目を覚ますと思います。貴女の方、苺さんの方が少し症状が軽かったからその分早く戻って来られたの。林檎さんの事は心配しなくて良いわ。苺さん、簡単な確認をします。生年月日を答えてくれる? それと、私の持っているカードの形と色。この文の音読。それと、この試薬の匂いを答えてくれる? 」

 

 私はそれを恙なく答えていく。その度に笑みを見せるドクター。涙ぐむ槙先生。

 

「沙沙貴苺さん、取り敢えずオールグリーンですね。良かったです。私達も初めてのケースでしたんで若干不安がありましたけど、あなた方の所のドクターイルザ、彼女の協力で自信を持って処置できました。仲介してくれた槙教諭、ありがとうございます。林檎さんが起きたらまた来ます」

 

 ドクターイルザ? 誰それ。それより私達はここで何をされているんだろう? 女医さんが出て行くのをベッドの上でお辞儀して見送る。と同時に先生に問うた。

 

 

「先生。私達は一体ここで何を? 」

 

「どこまで覚えているんだ、沙沙貴」

 

「えーと。夜保健室に拘束されていて・・・・・・。先生が殺しに来るかと怯えていた辺りまでは・・・・・・」

 

 

「そうか・・・・・・。で殺されたかった? 」

 

 

「冗談です。車で事故を起こした辺りまでは確実に。それから先はあやふやで・・・・・・。先生? 」

 

 

 先生が私をギュッと抱きしめる。涙を流し鼻をすすりながら。

 

「ゴメンな。沙沙貴。私はどうかしていたんだ。ダリアを失って・・・・・・。お前達には取り返しのつかない事をしてしまった。正気を取り戻す為に、禁断の手を使った。定期的にこれをしないといけない身体に・・・・・・そして・・・・・・」

 

「? 」

 

「詳しい事は林檎が起きてから話す。林檎が起きたらナースコールでドクター呼んでくれ。それまで横にな。私は他を見てくるから 」

 

 先生が半泣きで部屋を出て行った。林檎に声をかけては見たものの、まだ眠りの中だ。うなされている様ではないので静観する。機械の向こうの蘇芳ちゃんは全く様子を窺い知れない。さっき来たドクター達も見もしなければ、まるでそこに存在しない様な立ち振る舞いだった。ふと気がつくと下半身に違和感が。布団をはぐると尿道にチューブが刺さっている。先のナイロンの袋には毒々しいほど黄色の液体が溜まっていた。

 

「おしっこだよね・・・・・・。これ。絵の具溶かしたみたいじゃん・・・・・・。私、本当に大丈夫なの? 」

 

 軽くパニックになり、チューブを尿道から引き抜こうとしたけど引っかかって抜けない。

 

「もしかして一生垂れ流しなの・・・・・・そんなの嫌ー。先生来てー」

 

 取り乱しながらナースコールを押すと、今度はうまく話せない。唯、唯、来てを繰り返した。

 

 

「鎮静剤を点滴に混ぜたから、もう大丈夫よ。その小水の色の事だけど、気にしなくても良いわ。抜けた薬の色よ。治療が終われば普通に戻るから。それにカテーテルもその時に外すからそれまで我慢して下さいね」

 

 看護師さんが来てくれた。不安を取り除く様に優しくわかりやすく処置をしてくれる。歳の事は置いておいて看護師さんが本当に天使に見えた。

 

私が前に蘇芳ちゃんに会いに来た時に会った事が有る人。向こうも私の事を覚えていてくれた。嬉しかった。反面、全てを見られている事に気がつき恥ずかしくなる。この貧相な身体。小学生の様な棒の様な脚。胸は少しは成長したけど、似た様な身体の子、そうライバル委員長とかはかなり膨らみが目立つ様になってきていた。

 

「ねえ、お姉さん。私でも蘇芳ちゃんみたいになれるかな。あんなナイスバディに。別に男に媚びりたい訳じゃないんだけど、折角女に生まれたんだもの・・・・・・」

 

 

「そうねえ。特に好き嫌いとかは無いんでしょう? ご家族に極端な方はいらっしゃる? 遺伝的に心当たりが無かったら大丈夫だと思うけど。あっでも蘇芳さんは特別よ。あのレベルには無理だと思うわ。あの歳で私なんかよりも全然凄いんだもの。うちのナースじゃ全員かかっても全く勝てないわ・・・・・・」

 

 

「お姉さん、蘇芳ちゃんはどうしてるの? あそこに居るのがそうなんでしょう。何処か具合が悪いの? 」

 

「ごめんなさい。あの子の事を貴女達に話すのは許可が下りてないの。別に病気じゃないのよ。貴女達と一緒にここを出られるわ。それが私の言える精一杯ね」

 

 看護師さんはそう言って、おでこにキスをして手を振って出て行った。その顔には悲壮なところが無かったので一気に力が抜け私はまた夢の中に落ちて行った。

 

 

 

「葉子。少し話しておきたい。私は決して学院を伊達や酔狂で引き受けた、いや買い取ったわけじゃないんだ。今この形態の学校は流行らないだろう。少子化も急速に進んでいる。特徴のない下層な学校はただ消え去るのみだ。しかし此処には余所にはマネの出来ない歴史と特色がある」

 

「私もそう思います。伝統は大事にしていきたいです。でもそれだけでは・・・・・・」

 

 

「そうだ、それと今のどうしようも無い行き詰まった大学を絡めて新しい学院に仕立て上げたいのだ。そして今の所、書類や金銭的には順調だ。それなのに要のここがこの態では・・・・・・。そんなわけでお前は此処に留まってくれ。そりゃお前が楽しみにしていた留学の話を潰してしまったのは悪いと思っている。しかしお前は私の娘で学院の理事補佐の立場なんだから・・・・・・」

 

「でも・・・・・・」

 

「これはもう決定事項だ。留学には二年から八代譲葉、一年から匂坂マユリ。それと当初予定の無かった三年榊杏。これは放逐する意味をこめて実施する」

 

「そんな。どうしてあの女を? 私の報告書を読んだんでしょう? 」

 

「読んだからこそ・・・・・・だ。私だって無策で向こうに行かせるわけじゃない。イギリスにはエージェントが居るからな」

 

「お父様・・・・・・」

 

「葉子には、こっちに残ってあの別荘の闇の尻尾を摑んで欲しいんだ。自ら動く事は無い。その為に転入生を厳選したんだ。先に来たマリア=加藤、ファビアナに続いてあと三人送り込む。葉子の手駒にしてくれ。それと早く生徒会の会長を決めて取り込め。今の代理の子は危険だ。どうもあっちと繫がりが有る様だからな。それと晒された子にも気をつけろ。どうも経緯が負に落ちん」

 

「あの子達がですか? 」

 

「そうだ特に一年生の根本とか言う子だ。理由は今は言えん・・・・・・。転入生だけど夏休みはお前がしっかり管理しておけよ。その為の用意はこっちでするから、要望はメールしておいてくれ」

 

「それは・・・・・・。では申請した薬の手配とその為の部屋をお願いします」

 

「ああ。部屋は学院の敷地の端に用意する。スタッフは何人要るのか今週中に出してくれ。ヘッドハンティングの用意をしないと・・・・・・」

 

 

 

「ここは何処? 」

 

 何だか声がキチンと出ない。喉がとても痛む。僕のベッドの横に座って居た女性がノートを慌てて畳み大声を出した。

 

「ドクター! クランケ、気がつきました! 」

 

「もう少し静かに呼びなさい! 貴女には残業をしてもらいます。食後に地下に来なさい」

 

「はい・・・・・・。今日はご迷惑をおかけしない様に頑張ります」

 

「それじゃ、上がって良いわ」

 

 

 ドクターが僕の顔をしげしげと覗き込む。ライトを当てて瞳孔を確認したり、首に手を添えて脈を診たり。

 

「起きたばかりで悪いけど、朝まで寝ていて頂戴。明日になったら寮に戻してあげる。ここでの記憶を全て消してからね。ここを出る時は普段の貴女に戻っているわ」

 

「記憶を消す? 」

 

「おっと逃げようったって無理。今の貴女は手も足も動かせないから。ほらー暴れない。枷の所の肌が痛むからお止しなさい。これからの貴女は薬は原則禁止。お腹の子に障ると拙いからね。トイレ? どうせ枷を外さないと起きられないんだもの。遠慮なくおむつにしなさい。漏らしたらおむつを取り替えてあげるから安心して」

 

「おむつ!? 」

 

「そうよ。大便もして頂戴。色々検査するからね。異常が出たらファイバーを肛門から入れてあげる」

 

「やめてよ。お願い止めて・・・・・・そんな事しないで」

 

「一体どうしたの。サービスで検査してあげるって言うのに。変に勘繰ってる様だけど、もしかしてそういう趣味でも有るのかしら? 」

 

「・・・・・・・・・・・・。そんな趣味はない・・・・・・」

 

「じゃ、夢の中で存分に味わってね」

 

 

 

「それ・・・・・・。正式なオファーなの? 」

 

「はい。ギャラは無理ですけれど有志のカンパという形でお車代程度は・・・・・・」

 

「それは・・・・・・。その点はあの子達はアマチュアですからお気遣い無く。唯、やるとなったら楽器や衣装等の準備がありますから少し時間を下さい。あとピアノはアップライトで良いですから用意してください」

 

「それならホールに自動演奏させてあるのがありますから大丈夫です」

 

 それは突然の申し入れだった。元芸能人の孝崎千鳥が検査に来た事が発端になった。長期入院している子にかつての彼女を知っているファンが居り、その子のご両親の要望を受け入れる形でミニコンサートの様なイベントを・・・・・・と持ちかけられたのだ。

 

 色々と折衝を重ねた末、一階の吹き抜けで実施する事に。歌姫孝崎千鳥と白羽蘇芳のピアノ、緑のバイオリン。おまけの私のソフトシンセ。腕が利かなくなってから習得し今ではプログラミングはお手の物だ。

 

 この面子なら演奏部として完全ではないけど、まあ及第点の演奏が出来る様に思う。唯、、演奏部のお披露目は召天記念日と決まっているので、今回のはあくまでも学園とは関係なく行うという事になる。本来ならアングレカムの制服を着て、楽器も部の物を持ち込んで使うわけだけど、こういう事情なのでそれは無理。

 

 楽器はピアノを借り、残りは私が用意する。問題は衣装・・・・・・。千鳥ちゃんにマッチする服など持っていないし借りる算段も急には思いつかない。すると・・・・・・心当たりが有るといって千鳥ちゃんは一人消えて行った。

 

「お姉。蘇芳は今何してるの? 」

 

「私もそれが知りたいわ」

 

「それは・・・・・・」

 

 話を持ちかけてきた事務の女性に振ると、とても答えにくそうな顔をした。しかし場の空気に負けて多言無用と切り出した。

 

 

 

「そんなことをしているのか・・・・・・。是非はともかく大胆な治療だな。それでそれは暫く掛かると? 」

 

 緑が驚嘆の声を上げる。私は白羽蘇芳の腕が気になって仕方がない。腕からシャントを作ってチューブを入れているというからだ。もし腕を痛めてしまっていたらと・・・・・・。

 

「それじゃ緑は私とセッティングね。ギリギリまで音は出せないから。それは承知して。終わったら私は楽器と衣装を取りに行くから。緑は千鳥ちゃんと話をしておいて。それとお医者さんの私物で変わった楽器が有るって言うからそれを白羽さんに弾いて貰おうかと思ってるの」

 

「お姉、白羽はまだ・・・・・・慣れ親しんだピアノならともかく・・・・・・」

 

「彼女は・・・・・・まだドナーとして処置中ですから動かせませんよ? 」

 

「あの子は大丈夫よ。必ず一緒に出来るわ」

 

 

 

 

「匂坂さん、お食事に行きましょうよ」

 

 取り巻きが私の部屋に来た。立花が居ないに気付くと急にベタベタとしてくる。

 

「暑苦しいよ。離れて・・・・・・」

 

「いけず。今までずっと遠慮していたのよ。少しくらい良いじゃない。皆もそう思うでしょう? 」

 

「そうよ。委員長の手前皆で協定組んで自粛していたけど、もういいよね? 」

 

「異議無し。そうだ向こうに行くのじゃなくって、此処に食事持ってきましょう」

 

「賛成。石蕗取ってきなよ。ワゴン貸してくれるから。ほら孝崎千鳥が良く使ってたやつ」

 

「えー。一人で? 」

 

「戻って来たらご褒美あげるから・・・・・・」

 

 

 

「こんなのご褒美じゃないよ・・・・・・。酷いよ、もう・・・・・・」

 

「石蕗。少し黙りな。匂坂さんが煩いってムッとしてる。嫌われるぞ? それにここはそうは言ってないんじゃないの? 」

 

「だね。恥ずかしい汁をスプーンで杓っててんつゆに混ぜて・・・・・・。納豆みたい糸引捲くり。ほらもっと脚を寝かして床につけて。石蕗辛いの? 身体固いな・・・・・・しごいて貰うか」

 

 

 床に寝ている石蕗さん。全裸で仰向け腕は身体の横、脚は広げられ膝を立てている。そしてその身体に・・・・・・。まだ発達途中の胸からくびれたお腹。綺麗な腰骨、そして剃られている恥骨。そこに食材が並べられている。各種の天ぷら、御飯、サラダにフルーツ・・・・・・。まさかの女体盛り。初経験に戸惑う私。

 

「匂坂さんも遠慮しないで。汁が薄かったなら竹串で乳首とおマメ突つくと良いわよ。見ててほら・・・・・・」

 

「痛っ。あっ、あっ、優しく突ついて。いい、いいよー」

 

「ね。吹き出してきたわ。からしやわさびをつけると・・・・・・」

 

「あー。滲みる・・・・・・。でも・・・・・・良いわ・・・・・・。もっとして・・・・・・」

 

 

「この子好きモノなのよ。だからついついおイタしちゃうの。次は二つの穴にセロリでも・・・・・・」

 

「嫌。言わないで。そんな事しないでよ。お願いだから・・・・・・。でも前だけになら・・・・・・太いバナナを・・・・・・」

 

「このガバマンの淫乱が・・・・・・」

 

 

「有賀、お前達は何時もこんな事を? 」

 

「女体盛りの事? これは初めてよ。でもジャンケンで負けたりした子が罰ゲームで餌食になる様な事は何時もの事よ。バレエの世界も体育会系だから・・・・・・」

 

 

「今はこの子だけど、私が奴隷になる事も有るわ。ディルドウを入れて礼拝したり、ローター入れて板書したり、お浣腸入れて授業受けさせたり、夜全裸で外を引き回されたりとか。でも決して苛めなんかじゃないから。それは信じてね。だから匂坂さんも非日常を愉しみましょう」

 

「そうよ。折角お近づきになれたのに、留学で居なくなるなんて寂しいわ」

 

「本当にそう。何で私達も行かせてくれないかな。どうして選に漏れたんだろう。大体一週間なら全員連れて行けばいいのに」

 

「今回私が選ばれたのは、単純に八代先輩の推挙らしいよ。突然な話でびっくりしたよ。君達もといいたいけど、今年の私はおまけさ。来年から本格的にやるみたいだから、来年立候補するといい。私が今年、何か不祥事をやらかすと無くなってしまいそうだけどね」

 

「結局何日間なの? 」

 

「一応一週間なんだけど・・・・・・。少し予定が変わりそうでね・・・・・・」

 

「居残りの私達も夏休みが延びたり、臨海学校とか何だか変更が多くて。お母さんとか手紙でブリブリ怒ってた」

 

「こんなの見せたらもう此処に帰って来られなくなりそうだな。セックス教団に娘は・・・・・・って」

 

「女同士でもセックスって言うの? 」

 

「いいんじゃない?他に変わる言葉も無いし。それにしても教義的にはダメなんでしょう、同性愛」

 

「いいよ。そんなの。気持ちいいのが一番。他はどうでもいいの。石蕗見て見なよ。幸せそうに惚けてるじゃん。同じアホなら逝かなきゃ損損だよ」

 

 

 そうだよ。ここは爛れてる・・・・・・。でも理想郷。シャングリラ・・・・・・。

 

 

 

 

「夢の中で味わって」

 

 参ったな。ここで僕は何を・・・・・・。意識を取り戻した僕。といっても夢の中での話し。現実ではない事はわかるけれど、だからといってまるっきりの絵空事ではない。干し草の臭いが鼻をつく。ここは馬小屋か・・・・・・。全裸の身体に干し草がこそばゆい。

 

 

「出ろ。女神様がお待ちだ。早くしないとお仕置きだ。八代譲葉! 」

 

 顔が隠れる様な仮面を着けた女が鞭を片手に僕に向かって怒鳴る。かつて見た夢と違い、まだ番号で呼ばれないだけこの世界は救いがありそうだ。立ち上がると女が鞭を一閃。桃の肌が裂け血が滲む。あまりの痛みに崩れる様に倒れた。

 

「今のうちに馬具を取り付けなさい。大げさに痛がっているだけよ、こんなの。加減して打ったって言うのに」

 

 何を・・・・・・。これで加減をしただって? 嘘だろ・・・・・・。倒れてのたうつ僕。痛みにえずく。すると全裸に足首、手首、胴、首に枷をはめられた女が何人も寄ってきた。枷には互いを結ぶ重そうな鎖が繋がっていて足首の鎖が地面に擦れて埃を舞いあげる。一体どんな女と顔を見ようと首を動かした。

 

「嘘、顔が無い! 」

 

 のっぺらぼうに見えた。改めてよく見ると肌色のマスクを被っている。髪の毛の所在は感じられない。そうプロレスラーの覆面みたいな物だ。違うのは目の所に目が無く、メッシュみたいになっていてそこを透してみている様になっている所。口も鼻も開口していない。性器には鉄で出来た何かが吊り下げられている。延びきったラビア・・・・・・。そんな所を見ているうちに僕の身体に馬具が取り付けられて行った。

 

 一体これはなんだ。頭に革のハーネス。目の横に遮眼帯の様な黒い板が。付随して口に棒状の猿ぐつわ。ソフトな素材だけどかなり太く口が大きく開かされてしまう。必然的に涎も垂れ流しだ。首にむち打ちのコルセットみたいの嵌められ顔を下に下げる事が出来なくなってしまった。

 

 腕に肘まで有るシルクの手袋。お腹には金属のコルセットを嵌められ、鍵で容易に外さない様にされた。そこに後手にされた腕が括られ僕はもう何もできない。足? 確かに自由だけど・・・・・・。立たされ壁に押さえつけられた。

 

「仕上げは乳首とクリトリスを銀糸で括りな。これは事前に採取したお前の髪の毛で作ってある。いい髪質だおかげでいい物が出来たよ。下げる重りは純金さ。小さいけどとても重い。下級な者が見たら嫉妬しそうだな。奴らはただの鉄なんだから」

 

 下級者? 僕以上に惨めな立場の人が居るって? もしかしてこの全頭マスクの女達の事か・・・・・・。

 

「足にはヒールを履かせろ。正装だからな。それと尻尾。向きを変えろ早くちんたらするな。これもお前の髪を使わせて貰った。お尻の穴の力を抜け。その歳でストーマを使いたくないだろう? 入れたが最後手順をふまないと外せないからな。肥大したプラグを抜こうとして無理をすると肛門が壊れて一生垂れ流しだ。プラグは体温に反応して大きくなる。その感覚は甘美だ・・・・・・」

 

 そんなの嫌だ・・・・・・。それにしても痛い。乳首とクリトリスが千切れそうだ。足は自由だけど歩く、脚を動かすだけで痛みが頭の芯を突き抜ける。出せない声の変わりに涎が吹き出て口の周りを汚す。そして尻尾だ。この違和感はなんだ。とても苦しいし痛い・・・・・・。一体どこか甘美なんだ!。

 

 

「さてと。準備は済んだな。小屋から出ろ。なんだその歩き方は。脚を高くあげるんだ。教えたろうに。仕方ない駄馬には鞭をくれてやる。そーれ」

 

地面に倒されお尻を掲げされた。肩と膝で体を支える。そして白い双臀に刻まれる赤い筋。

 

「ンー、ンー・・・・・・」

 

「ギャー。痛い。ギャー。止めて。お願いだから・・・・・・」

 

 

 そう言っているのだけど、うめき声にしかならない。打擲の痕をわざわざ鏡で見せられた。あみだくじの様に鞭の後の間を血が流れていく。五回打たれた。五線紙みたいでいいでしょう・・・・・・と。

 

股を高く上げて歩く。それも美しく・・・・・・。

 

 かつて見たアンドリューブレイクの動画にこういうのが有ったのを思い出す。そしてそれを実践して脚を胸まで引き上げて早駆けの歩き方をすると、意外な事に仮面の女は僕の頭を撫でて口枷をずらしてキスをしてきた。

 

「上手ね。やれば出来るじゃないの。これからお前は女神様の忠実なしもべになるための儀式を受けるの。外でお待ちになられているからそのまま進みなさい」

 

 

 鞭の痛みが僕を従順にさせる。普段なら聞く耳を持たない様な戯れ言なのに。一歩二歩と歩いていくと、重りが揺れ乳首やクリトリスを刺激する。肛門の尻尾もしかり。増長したプラグがGスポットを刺激する。えもしれない感覚が僕を包む。ああ。気持ちいい。

 

 

 まぶしく明るい外に向かって僕は、一歩一歩脚を掲げて歩く。ただの赤土の小道がまるで赤い絨毯の上に思えてくる。

 

 外に出るとそこには小型の馬車の様な物が有った。いや、映画ベンハーで見た様な物に椅子とリヤカーの持ち手みたいのが付いている。しかし非常に綺麗に装飾されていて目を奪われる様な出来ばえだ。見とれていると鞭が背中に炸裂した。

 

 刹那崩れる。膝を付き振り向くと下着姿の様な召し物の女が立っていた。ブロンドのふわふわして長い髪。覆面舞踏会の様な目と鼻を隠すマスクをしてはいるものの、西洋人的の顔立ちにブルーアイは判る。

 

背はヒール込みで6フッターは有ると思う。黒のスリーインワンに黒のストッキング。ショーツはつけていないので剃りあげられタトゥーの入った恥丘が目の高さに有った。女は車に乗り座り手に鞭を鳴らす。膝の上には手綱が。

 

 

 そうか。腰のコルセットにあのバーを。そして僕の身体に手綱をつけるんだな。まんまあの時の動画みたいだ・・・・・・。

 

 僕自身は後手に拘束されているので取り敢えずバーの間に身を入れて待つ。すると僕の後をついて来たマスクの女が来て金具を順繰りに止めていく。金・・・・・・じゃないな。真鍮か。僕と車の間を全部止めると、今度は手綱と僕を繋いでいく。最後、口に咬ましてある馬銜に手綱を取り付ける。刹那グイッと引かれて歩く様に指示された。

 

 一歩一歩脚を高く掲げ、股を胸に付くようにして歩く。少しでもふらつくと背中に鞭が飛び尖ったヒールでお尻を突ついてくる。そうならないように背筋を伸ばし視線遠くに・・・・・・。そうすると拘束具が身体にフィットしてくる。意外だ苦しく無い。

 

 コツを掴んだ僕。腰をくねり歩く事を学習した。すると重りやしっぼによる刺激はますます高ぶり、太股に幾筋もの愛液の筋が残る。このまま死んでもいいくらいの快感。既に傷に滲みる汗すら快感と課している。

 

 

 トランス状態で歩き続けるとキ字架の立つ広場にたどり着く。有刺鉄線で囲まれたそこは正に処刑場だった。二重の扉を開け中に入る。戸が閉まるとそこで再び馬銜に繋がる手綱を引かれた。今度は止まれの合図。そして合図をするとさっきと別の一団が湧き出る様に現れ、僕と車の締結を解いていく。

 

 首の金具に鎖をつけられて、女に引かれキ字架の下に正座させられた。そこで全ての金具を外され見た目は自由になっていく。逃げようかと思うも勇気が出なかった。尻尾は付いたままだし・・・・・・。

 

 

 それをみて女は笑った。指を鳴らすと下級の者が僕を柱に縛りつけた。逆向きというか背中側を晒す様にして。

 

 

「いや、何あの子。お尻に尻尾なんて差してる」

 

「鞭の後が凄いね。でもああいう人は好きでやられてるんだから。勲章と同じなんでしょう」

 

「オマンコから何か吊り下がってる。それにあの脚のマンコ汁の流れた後。変態よね・・・・・・」

 

 

 突然聞こえる若い女の声。しかも聞き覚えのある声。嘘だろ? どうしてここに・・・・・・。

 

 

「それではこれから八代譲葉の公開拷問を行う。見たくない者は無言で去れ。見たい者は手を叩いて是とする」

 

 

 今まで無言を貫いてきた女が、突然話し始めた。この声は・・・・・・。割れんばかりの拍手が巻き起こる。立ち去った者は居ない様だ。

 

 

「罪状は最後に述べる。まずは皆で背中を全身を鞭で打て。まずは客人の黒沼艦。君からだ」

 

 またしても万雷の拍手。黒沼だって? 本当なのか・・・・・・頭の中を色々思いがめぐる。するといきなりに来た。

 

 

「ヒィー。グェッ。ギャー」

 

 渾身の力で叩いてくる革の一本鞭は痛いとかのレベルじゃない。ひたすら絶叫するだけだ。ノルマの五回を終えた時、僕の腿に針で正の文字を刻む。

 

「次は若い順。白羽蘇芳前へ」

 

「はい」

 

 またしても拍手。そして黒沼の比じゃない力強さ。骨が砕けそうな痛み。肌を火で炙られているかの様だ。そして終わるとまたしても腿に正の字を刻む。

 

 気絶すると塩水をかけられる。それの繰り返しだ。刻まれた正の字が五十超えた辺りで鞭打ちは終わった。しかし熱気は収まる様子を見せない。さらなる仕置きを期待する皆だ。足を踏みならして催促をする。

 

 

「静粛に。次なる仕置きはエネマだ。この細い身体にはあまり入らないだろうから一人100ccで行く。いいか? 」

 

「異議無し! 」

 

 

 リフレインされる異議無しの声と拍手の渦。すると再び黒沼が来てテープでお尻の肉を押し広げ、尻尾を強引に引き抜いた。嘘、壊れるから止めろ・・・・・・。いや、付け根のプラグはそのままだ。間髪を入れずにプラグの穴にガラス製の浣腸器を突きたてる。

 

「つ、冷たい・・・・・・」

 

 今度は先程と反対の腿に正の字を刻む。半分くらいの人数になった時、既にお腹は限界だった。妊娠した様に膨れお腹が破れそうだ。しかも内臓が圧迫され気持ち悪さが酷い。

 

「限界か? プラグを外してやる。冷えると収縮するんだ」

 

肛門からプラグがズルズルと引き出されていく。少し漏れたのが判る。ああ、もうダメだ。皆の視線がひくひくする僕の肛門に集中しているのが判る・・・・・・。

 

 

「ダメー出ちゃう。見ないでー。嫌ー」

 

 下品の破裂音に続き、汚れた液体が堰を切った様に噴出する。号泣する僕。一瞬の沈黙の後、渾身のブーイングが巻き起こる。地響きの様に。腐臭の中頭が真っ白になっていく。

 

 

「お静かに。我慢しきれずに不浄の物をまき散らした、この罪人をどうすればいいか君たちに問う。一つ、このまま続けて不浄の物をすべて出し尽くさせる。二つ、ここで中止して幕を引く。三つ、拘束を解きこのまき散らした不浄の物を食させもう一度罪人の体内に戻す。以上の三つだ。拍手を持って選択をする」

 

 

「えー。私は一番目。だってまだ入れてないんだもん。絶対に一番目」

 

「私は二番目。汚いにも程が有るわ。綺麗な髪なのにお腹の中は腐ってるじゃない。こんな臭いの続けられたら私まで不浄になってしまいそう」

 

「絶対に三番目。汚い物は元に戻して丸ごと処分すれば良いわ。久々にギロチンが見たいもの」

 

「白羽さんは? 」

 

「私は、三番かな。でも殺さないわ。最後は四肢を落としてダルマに・・・・・・。そしてトイレで飼うの・・・・・・」

 

 

「アキラは二番なの? 優しいのね・・・・・・」

 

「天国の住人は気を使うんだよ」

 

 

 こんな声が波の様に寄せては引く様に聞こえる。

 

「では決を採る・・・・・・」

 

 聞きたくない。でも聞こえてくる。と言うか振動を肌で感じる。

 

「それでは三番目に決定する! 」

 

 

「嫌だ・・・・・・助けてくれ。君はネリーだろ。その声、その髪。どうして僕を追い込むんだ・・・・・・」

 

 

「あーあ。気がついちゃった。仕方ないわね。もう現実にお帰り・・・・・・。続きはまた寝たら見せてあげるわね」

 

 

 ネリーの手が僕の首に絡む。指が蛇に変わり首を絞める。苦しい・・・・・・。

 

 

 

「あら気が付いたの。まだ朝には時間があるわよ。お漏らししちゃって気がついたのかしら? 今からおむつ替えるから、綺麗になったらまたお休みなさい・・・・・・」

 

「ドクター、助けてください。もう続きは見たくない・・・・・・」

 

「あら意外に脆いのね。ネリネ、賭は貴女の勝ち。一筆取ったら貴女以外の記憶消すから。用意しておきなさいな」

 

 

 

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