※この作品はR-18です。

白羽蘇芳という生き方   作:抱き枕50

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雌伏

「そうだ、 忘れてたわユズ。アレを見ながらするのよ。アンドリューブレイク。没収品のロッカーの鍵を取ってきてよ」

 

 そうだそんな話をしていたっけ。ここには大画面のノートパソコンも届いてるし、視聴覚室に出向かなくても視聴に問題無いのだけど。音が大きく出せないんだよね、ここは。

 

「そうだったね、判った。保管庫の鍵をネリーの所に取りに行くから、その、なんだ、この首輪を・・・・・外してくれないかい? 」

 

 

「譲葉! 口の聞き方がなってないわね。それを嵌めてる時の貴女は、奴隷の立場でしょう? 全く、何を寝ぼけた事を言っているのかしら? お願いするならそれなりに誠意を見せなさい。まあ今回はお仕置きを兼ねて赦したりはしないけどね。ほら、下着を脱いで! 」

 

「葉子? 」

 

「聞こえなかったの? 下着を取りなさい。もちろん両方。そしたら尻尾と乳首に特製のブリキの缶バッチを付けてあげるわね、譲葉。あらそんな顔をしなくたっていいじゃない? 缶バッチは疼痛以外に乳首が透けて見えない効果もあるし、尻尾はシマシマの柄が可愛いわよー。何よ気に入らないの? 困ったわね。それじゃ、制服にバッチと尻尾との組み合わせと、首輪に馬銜を銜えて素っ裸の四つん這いとどっちが良いのか決めて頂戴」

 

 葉子の語気が冗談じゃないからと言っている。前者を選ぶしかない・・・・・・。

 

 

「僕のお尻に尻尾を、乳首にバッチを付けてください、ご主人様」

 

「あら、急に素直になって。私もユズが破廉恥な露出狂でなくて良かったわ。この綺麗な身体は私だけの物だもの。あんまり曝したくないのよね」

 

 葉子は先程と一転し、視線も口調も穏やかな物になった。葉子は僕の首から首輪を外し、僕は一旦制服を脱ぎ全裸になった。そして乳首に金具を挟みバッチを付けた。安全ピンではなくイヤリングみたいにねじで締め上げるタイプの物だ。葉子には何れ乳首にもピアスを開けるからと宣告されているけれど、こっちは二年生のうちはしないと言っている。

 

 僕たちが三年の秋になったあたりで学院の生活がかなり変わる、校舎の増築、新設の寮、グラウンドの設置等が一通り終わる。寮の新設に付帯する工事の中に、個室のお風呂を設けるのが有りそれが出来たらすると言う事の様。

 

 そしてお尻の穴に尻尾を挿入してきた。痛い。潤滑材がヒヤッとする。太いところが通過して細いところが肛門の所に収まるとそんなに痛くはない・・・・・・。

 

 

「さっ、出来たわよ。制服を着て頂戴。なんだか髪が鬱陶しいわねー。何時もと同じじゃ芸も無いし、バレッタ使うか二つ結びね。ユズはどっちが良い? 」

 

「二つ結びにして頂ければと思います、ご主人様」

 

「あら。意外。子供みたいなチョイスなのね。でも譲葉に似合う様にしてあげるから、待ってて」

 

 葉子は手慣れた様子で僕の髪をまとめる。興が乗ったのか腰までの髪を手際よく三つ編みに纏めていった。長さが違うとはいえ仕上がりはまるで花菱君の様な髪型。

 

 葉子自身もそう思ったのかしら無いが、葉子の私物の伊達メガネも付けさせられた。そして葉子に姿見の前に連れ出されて二人で出来上がりをチェックする。

 

「素材がいいとアレンジし甲斐があっていいわ。入学してからずっとしたかったの。それにしても本当に綺麗な髪。羨ましい・・・・・・。遺伝なの? 弟君もこういう髪質なのかしら? 」

 

 

「昔から弟は短髪だったから良くわからない・・・・・・。でも多分同じ感じだよ。色? 色は僕と同じだ。向こうで伸ばし始めたってメールが有った」

 

「そうなのね。ユズ、そんなに警戒しないで。貴女の宝物の弟君を取って食ったりはしないわよ。私が欲しいのは八代譲葉一人だけよ」

 

 

 そういいながら僕にキスをしてきた。そして目で合図をする。行きなさいと。僕は部屋を出てネリーの部屋に向かった。

 

 

 

「ネリー、譲葉だけど・・・・・・。居るんだろ? 」

 

 部屋のドアをノックし、小さめな声でネリーを呼ぶ。同室のネリーのアミティエ、千葉緑が苦手な僕は彼女が居ないことを願った。そしてドアが開き出てきたのはネリー一人。ふう、良かった。この姿を邪推されたくは無いから・・・・・・。

 

「譲葉、今日もお出かけだったのね。!? ちょっとその髪形、しかも金縁のメガネなんて・・・・・・。趣味が悪いわ。もしかして花菱さんの真似なの? 」

 

「それは・・・・・・。そんなことより頼みがあるんだ。没収品ロッカーの鍵を貸してくれないか。ちょっと入り用が出来てしまったんだ。本来はしかるべき手続きをしてからというのは理解している。でも・・・・・・」

 

 

「葉子さんに頼まれたって事ね、譲葉。それで、私があの子の頼みを聞かないといけない理由。これを教えてくださらないかしら? 八代会長。正当な理由が有れば喜んでお渡しします」

 

 

「ネリー、君の言い分はもっともだ。だけど悪いけど君にすべてを話すわけにはいかない。察してくれ。ただ単純に、没収品を持ち主の手に返すという単純な話だということで了承してくれないか? 」

 

 言った刹那、ネリーが僕の手を引き部屋の中に引き入れる。よろける僕。そして後ろから僕の身体を抱きしめた。ネリーの白い手が僕の身体を弄る。

 

「譲葉。あなた・・・・・・下着・・・・・・付けてじゃない。それに乳首に何を付けているの? 私の脚に当たるこれは・・・・・・。尻尾よね。この変態女。一体どんな心づもりでここに来たの? 私をおちょくることが楽しいのかしら。譲葉の立場も判ってるつもりよ。だから何も言わないつもりだったけど・・・・・・」

 

「ネリー、すまない。悪いと思ってる・・・・・・」

 

「だったら、私に会う間だけでも外しなさいよ。そんなのを付けて、しゃあしゃあと元カノに会いに来ないで。酷すぎるわよ・・・・・・」

 

「ネリー・・・・・・」

 

 泣き崩れるネリーを前に突っ立ったまま立ち尽くす。そしてネリーがベッドまで床を這いずって枕元の貴重品入れからタグの付いた鍵を僕に向かって投げた。出て行っての絶叫と共に。そして僕に向かって手当たり次第に投げたものの破片が散乱する中ドアを開けて部屋を出た。その時廊下には寮監が立っていた。まさか騒ぎを聞きつけて? 一瞬身構えたのだけど・・・・・・。

 

 

「小御門さんに伝言なんだけれど、在宅しているかしら、八代会長さん」

 

「居ますけれど、ちょっと具合が悪いようで・・・・・・今寝てます。用件、差し支えなかったら僕が伝える様にしますけれど・・・・・・」

 

 寮監はメモを見て、貴女なら良いかと小さくため息をつく。よろしくお願いしますねと肩を叩き僕に手渡した。本来は直接が決まりなんだけど、貴女達ならねと。頭を下げてメモを受け取った。そして寮監が僕を見据え一体どうしたのその髪形。似合ってるけど、違和感あるわね。元に戻したら? そう言って帰って行った。

 

 

 メモには、アミティエの千葉緑からの伝言が丁寧な文字で書かれている。

『今病院。怪我をした"姉"の付き添いで今日は帰れない。明日帰るから心配はするな。鳩サブレーは缶入りのを宅配にしてもらったから気長に待て。蘇芳の分は私が持って帰る』

そう有った。

 

 あの時にすれ違った車がそうだったのかと理解した。ここで治らない様な怪我をしたということなのだろう。怪我人の事よりも、取り敢えず今現在この学院に、千葉緑が居ないことに安堵した。あの鋭い目に睨まれると心の奥を見られている気がして落ち着かないのだ。

 

 もう一度ネリーの部屋をノックする。返事は無かった。ドアは施錠されていなかった。開けて入るとそこにはネリーが幽鬼の様に立っていた。手には怪しげな人形を持って・・・・・・。顎をクイッと動かして出て行けとのゼスチャー。こんなネリーを見た事が無い。怖くなってメモを丸めてネリーに放りダッシュで部屋を後にする。ドアの音に反応したのか廊下に人が出てきた。

 

 

「どうしたの? 小御門さんがどうかしたの? そんなにあわててドアを閉めると危ないわよ、八代さん」

 

「ねえハッチ、その髪形、どうしたの? 小御門さんにしてもらったのかしら? 似合ってるけど、少し幼く見えるかな? 何時もの方が私は好き」

 

「そうかな? 私は今の方がいいと思うわよ。お嬢様っぽくて。ずっとそうしなさいよ」

 

「それは単に貴女がメガネっ子が好きだからでしょう? 」

 

 取り囲んでくる級友に下着を着けてないことを悟られない様にしながら、軽口に付き合う。そして・・・・・・葉子の元に戻った。

 

 

「遅い! 身体が冷えてしまったわよ。どう責任を取ってくれるのかしら? 」

 

「ご主人様、遅くなった分、より一層誠心誠意をこめてお身体を熱くしますのでもう暫くお待ちくださいませ」

 

 ロッカーの鍵を開けて件のDVDソフトを取り出し、パソコンにセットして再生を始める。綺麗でスタイルのいい女性達のレズビアン物だ。葉子はそれを食い入る様に見ている。クリスタルなプラグやディルドゥが気に入った様だった。そんな葉子にひざまずき、改めて首輪をしてもらった。スイッチが入る。そして制服を脱ぎ、葉子の身体に舌で奉仕する。

 

「ユズ、上手ね。脚はもういいから胸を。ソファーに乗って。そう。揉みながら。ああっ。そうそこ甘噛みして。気持ちイイわ。舌で転がす様にして・・・・・・」

 

 葉子のリクエストに応えながら愛撫していく。ひとしきり逝った時には、DVDは再生を終了していた。そして二回戦。今度は性器を中心に葉子に奉仕する。舌にタコができそうなくらいに細かく且つ激しく動かす。ラビアもクリトリスも愛液をすすりながらひたすら舐める。甘噛みする。そして指を挿入する。葉子は喘ぎながら何度も逝った頃には指はすっかりふやけていた。

 

 

「私ばかり気持ち良くなって悪いわね。次はユズを気持ち良くしてあげるから待ってて。あらあら。もうぐっしょりじゃないの。イヤらしい子ねー僕っこの癖して女なんだから。でも私はそういう正直な子が好き。ほら逆さ富士に成りなさい。ピアスが濡れて何時も以上にキラキラしてる。つるつるのここにお似合いよ。そのうちにラビアだけでなくクリトリスにも付けてあげる。何時でも感じていられる様になるらしいわよ」

 

 ソファの背もたれの所に僕を上下逆さに座らせる性器が上に向く形。葉子は逆さ富士と言うが、まんぐり返しといった方が通りが良いかも知れない。そして僕の顔の上に跨がる葉子。僕は葉子の性器を舐めながら葉子の愛撫を受け入れる。僕のラビアのピアスに制服から外したリボン紐を通されていて、開く方向に引っ張り先を足の指にくくり付けた。これで・・・・・・。

 

 

「これで丸見えよ、ユズ。今日は指を三本入れるわ。これだけ柔軟になってるし、濡れてるから大丈夫、任せて頂戴。行くわよ・・・・・・」

 

 圧迫感がすごい。膣の押し広げられる感じ、子宮が圧迫される感じも今日は何時もの比じゃない。右手を挿入したまま左手でアナルをいじる葉子。尚且つ舌でクリトリスを刺激する。急に快感が高まった頭が真っ白になって・・・・・・逝った。逝った瞬間に失神して失禁してしまった。葉子はその液体を口で受け止め飲んだ様だ。その辺りは想像でしかないけど、後でまた飲みたいわとウインクされたから・・・・・・。

 

「ねえ、そろそろ戻るから支度して。そうね、こっちでシャワーを使うのでなく、そのまま制服を着ましょう。どうせ寮までなんだし。何よ動けないの? 仕方ないから車椅子で送ってあげる」

 

 失神してから全身に力が入らない僕を葉子が抱き起こし、下着を着けないまま制服を着せて車椅子に乗せた。蘇芳や八重垣君のを押したことが有るけどこの学院で僕が乗るなんて・・・・・・。

 

 着たと言っても着崩れた制服。見る人が見れば事後と言うのが判ってしまいそうだ。葉子はそれはそれで良いと笑う。だって私は全校生徒の前で譲葉の籠絡を宣言したんだから、これくらいなんでも無いじゃない? と涼しい顔だ。実際、俯く僕を余所に胸を張って車椅子を押す葉子。こんな状況なのに、先生にすら自分から挨拶をしていくのだ。昔の、出会った頃の控えめな葉子はもういない。それを否が応にも認識することになったのだった。

 

 

 

「図書室にもやっぱり居ないのか。ちょっと休もうよ。林檎。奥にお菓子残ってるんだよね? 」

 

 バレエのレッスン室の捜索から戻って来た苺姉と合流した。電話で連絡をしながらなので捗るんだけど、結果はボウズ。ここ図書室は原則飲食禁止なんだけど、スタッフルームの奥でこっそりとお菓子を食べる。以前に私達のお菓子を持ち込み、バレたけれどその美味しさ故、先生からこっそりとならと許諾された経緯があるのだ。

 

 

「自分で言うのもなんだけど、私達天才だよね。春に比べてこの進歩。クッキーならもう蘇芳ちゃんにも負けないわさ! 」

 

「だね。自称お菓子作りの名人のユリーにだって負けないよ、この味は。それにしてもガッキー何処に消えたんだろ。疑わしいのってもうあそこしかないよね・・・・・・」

 

「うん。アンタッチャブルなあの部屋。生徒で誰も入ったことが無いって言うあの部屋・・・・・・」

 

 

「あら来てたの。沙沙貴さん達。散らかさないでね。今度マカロンみたいの作ってくださらないかしら。先生がうるさいのよね。クッキーは飽きたって」

 

「先輩、お邪魔してます。マカロンですか。今度作ってきますね。蘇芳ちゃんの持ってきた本にいいレシピ本が有りましたから」

 

「それは朗報。期待してるわ。そうそう、白羽さんだけど、元気になったかしら? 彼女、退院してからまだここに正式に来てないのよ。そろそろシフトに入ってもらいたいし。悪いんだけど、今日貴女達に、返却本の整理を手伝って欲しいんだけど・・・・・・良いよね? 直ぐ終わるし難しいことは無いから」

 

 

「えーと。この後やることがあるんですけど・・・・・・」

 

「それじゃすぐにしましょう。この本のカードを抜いて、ここに綴じるだけよ。後は図書委員がするから」

 

 苺姉と顔を見合わせてヤレヤレとため息をつく。まあ仕方ないかと手伝う事にする。作業自体は蘇芳ちゃんのを見てるから知ってるし、大したことはないんだけど。結構重い本が多くて疲れる。蘇芳ちゃんは怪力だから良いんだけど、か弱い私達には・・・・・・。

 

 

「ちょっと林檎こっちに来て。これ見てよ・・・・・・」

 

 作業も終わりに近づいた時、苺姉が私を呼んだ。見せられたのは貸出カード。そこに記載されていた名前は・・・・・・ダリア=バスキア。本の名前は西洋拷問刑罰史。そして他にもダリア先生の借りてた本が見つかった。拷問の歴史、処刑と拷問の辞典。どの本も蘇芳ちゃんが奉納した形になっていて、ダリア先生が借りて返却してることになってる。

 

 

「うわー。何これ。奉納した蘇芳ちゃんも蘇芳ちゃんだけど、借りた先生もエグいわ。ガッキー早く見つけないとヤバくない? 」

 

「だよね。あの一件とこれを加味して考えると、洒落にならないよ・・・・・・」

 

 

「苺姉、こっちの本はガッキーが借りてるけど・・・・・・」

 

「なになに、江戸牢獄・拷問実記? でこれも蘇芳ちゃんの奉納なのかい! なんだよ、ガッキーもこういう趣味なのか・・・・・・。あのドSも納得だわ」

 

「いやこの本ガッキーが自分で借り出したのじゃなくって、蘇芳ちゃんにお薦めで渡されたんじゃないかな? 」

 

「なんでよ? 林檎、わかるように説明して」

 

「このカードの文字が、ガッキーのじゃないのよこれ。どう見ても蘇芳ちゃんの字だものさ」

 

「確かに。ガッキーの字じゃないね。全く。危うくガッキーを変態扱いするところだったよ」

 

「ガッキーはへたれさんだからこういう趣味は無理だよね。口が悪いからそういう意味ではドSだけど、自分からは何もできないでしょ夢見る乙女だもんね。されることはあるにしてもさ・・・・・・」

 

 そこまで言って、そういや孝崎ちゃんにやちれちゃったんだっけと思い出して、少し凹む私達。

 

 

「孝崎ちゃんにこの本の事を知らせた方が良いかな? 」

 

「黙っておこうよ。知ったところでまたおかしくなっちゃうだけだよ。嫉妬狂いみたいな感じでさ。さっきの孝崎ちゃんは完全に狂ってたよね、本当に怖かった」

 

「だね。それにしても良い趣味してるよ、先生も蘇芳ちゃんも。 この学院らしいって言えばらしいんだけどね」

 

 

「お喋りも良いけど、終わったかのなー」

 

「先輩。終わりましたよ。お聞きしたいのですけど、先輩はダリア先生とは親しいのですか? 」

 

「なんで? 私も三年生だし、それなりには知ってるけど、親しくはないわ。だって先生は特定の生徒と親しくしない人だもの。クラスでぬいぐるみ作ってお部屋に持って行った時だって、決してお部屋に入れては下さらなかった。その辺りは担任として関わってる貴女達の方が良く分かるんじゃなくって? 」

 

「一言、言っておくけど、ここの先生方に興味本位で近付くのは止めておきなさい。忠告よ・・・・・・」

 

 どうしてですかと聞こうにもその口調、トーンから憚られた。一礼し図書室を出る私達。私はふと廊下の窓から外を見ると、見慣れない人がサッカーボールでリフティングをしている。制服を着ているけれど今まで見た事が無い見目形。姉に問おうと、ちょっと目を離した瞬間視界から消えてしまった。当然苺姉は見ていない。。苺姉はサッカー部員だけどそんな先輩は居ないというのだ。林檎は幽霊でも見たんじゃないの? と信用しない。それはある意味当然かもしれない。今、校内で二人もの行方が判らなくなっているのだから。

 

「外を捜してみる? それとも今日は・・・・・・」

 

「ウサギ小屋に行こうよ。ちょっと癒しが要るって私達は。あの子達に癒されたい」

 

「異議無し。お菓子とジュースを買ってから行こうね」

 

 

 

「あーあ。沙沙貴さん達に手伝ってもらうつもりだったのに、今日も一人か・・・・・・。先輩たちも全然来ないし」

 

 今私、 根本小夜花は、聖堂に業者の人と打ち合わせに参加している。亡くなった黒沼さんの月命日の祭壇の設置の実況検分だ。すでに祭壇は用意されて梱包されて置いてある。設置に関して動かすもの、残すもの、照明等の電気設備、その辺りの煮詰めに学院側の意見を述べる立場だ。何時もなら養護の先生が仕切るんだけど、今日は生花の事で街に出ている。だから今日は私が責任者。いろいろな事を聞かれてもう逃げたい気持ち。でも蘇芳様の事を思うと・・・・・・頑張らないと。私に対する用事が一段落した時、聖堂の横の控室に置いてある黒沼さんの展示パネルに目が釘付けになった。

 

「黒沼さんて・・・・・・。こんなにイケメンだったんだ。聖母祭でのベール纏った写真しか見た事無かったけど、この執事姿は・・・・・・誰しもが惚れるわー、蘇芳様と並んだら正に美男美女ね」

 

「こっちはメイドの姿に家庭科で作るワンピース・・・・・・。バレエの衣装の写真が無いのね。変なの。すごく似合いそうなのに・・・・・・」

 

 

「根本、それはさ。アイツは何度も身体にメスを入れてたから、バレエの授業出てないんだよ。傷だらけの身体を見られるのが嫌で皆の前で着替えるのも嫌がってて。まあそんな理由だ」

 

「先生。戻ってたんですか。あんまり素人に押しつけないで下さい 。業者の人が困った顔してましたよ。こんな素人寄こしやがってって・・・・・・」

 

 

「悪い悪い。でもどうして一人なんだ? 八代達はどうした? それに手伝うからって息巻いてた沙沙貴達はどうしたんだよ? 」

 

「こっちが聞きたいです。でもまあ正直期待はしてませんでしたから・・・・・・」

 

「根本、お前も案外言うな。まあいい。白羽はどうしてる? 」

 

 

「どうって。元気・・・・・・な訳が有る筈無いでしょうに。だって八代会長との事で傷心なんですよ。せっかく黒沼さんの事から立ち直れそうだったのに。白木さんって人に略奪されてどうして元気で居られるのかこっちが聞きたいです。ゆかりや花子さん、花菱さんも交えて色々お世話してますけど、ふとした時にものすごく辛そうな顔するんです・・・・・・」

 

「立て続けだからな。辛いのも判らなくもないけど。そうだ、ゆかりって言うのは関本だよな。花子は和田か。二人にはさっき言ったけれど根本にも言っておく。保健室使うなとは言わないけど、お前達頻繁に来てるよな? 来るのは良いけど、来る度に備品がごっそり減ってる。これがこうまで続くと看過できなくなるから少しは自制しろよ。今日も沙沙貴が救急箱持ち出してるし」

 

「沙沙貴さんが? 」

 

「ガラスで腕を切ったらしい。使った包帯、薬の量から見ると結構な怪我だよ。音楽室らしいけど、なんでアイツがそんなとこで怪我したのか問い詰めないといかん。怪我の程度も気になるし、割ってしまったガラスの補修の問題も有るしな。二次被害なんて生じたら以ての外」

 

 

「それって今日の話ですよね、先生? 」

 

「そうだけどそれがどうかしたのか? 」

 

「えーと、あそこに・・・・・・」

 

 私は窓の外を指さした。そこには沙沙貴さん達が手に袋を提げて歩いていた。パッと見た感じ、怪我の後などは全く見て取れない。その光景を見て、『アイツら!』そう呟くやいなや先生がダッシュで外に走り出す。見続けていると先生が沙沙貴さん達の襟首を摑んで農場の方に歩いて行った。

 

 

「孝崎さん、どう? お夕食を食べられるかしら? 」

 

「榊先輩・・・・・・。食べたくない・・・・・・」

 

「そう。だけど、何か食べないと身体に悪いわ。おかゆでも持ってきましょうか? 」

 

 孝崎さんはベッドでタオルケットを被って丸まっている。どれ位泣き喚いたろうか。そして戻したりこういう役目は得意と思っていた私だけど、ほとほと手を焼いた。アミティエの失踪と言うか消失がこの子をこんなにも憔悴させて・・・・・・。未だに見つからないなんて、一体何処に消えたのだろう。

 

 

「孝崎。居るか? 入るぞ」

 

 返事を待つ間も無く、ドアを開けて養護の先生が入ってきた。後ろには沙沙貴さん達が悄気た顔で立っている。

 

「沙沙貴達から話は聞いた。八重垣の事は多言無用だ。お前は暫く保健室で自習をしろ。榊も約束してくれ。この事は誰にも話すな。話したら・・・・・・お前の様な優秀な者でも別荘に行ってもらう事になる」

 

 私は、その言葉に戦慄した。話さない、秘密にしておくのは良いけれど、話す事のペナルティが更生棟とは・・・・・・。

 

「お前達もだ、沙沙貴。取り敢えず、明日から保健室に来い。病院から千葉達が帰って来るまでは傷害の方での一番の重要参考人だからな。何度聞いてもアレが事実だなんて信じられない。それに付随した孝崎がやらかした傷害案件も・・・・・・。千葉冷子から被害届が出たら・・・・・・。その時は孝崎、覚悟をしておけ。そうならない様に願っているが・・・・・・」

 

「先生、バスキア教諭は・・・・・・」

 

「榊、それ以上何も言うな。今の状況は最悪だ。私の処で止めておける状況では無くなって来てるんだ。学院から発表が有るまでは、沙沙貴も孝崎も榊も察してくれ・・・・・・頼む」

 

 最後は消え入りそうな声で、先生が私達に頭を下げた。あの豪気な先生が・・・・・・だ。先生は沙沙貴さん達を置いて戻って行った。肩を落とし廊下を行く後ろ姿、先生にとって今晩は長い夜になるのだろう・・・・・・。

 

 

「あら、マユ。帰ってきたの? 早かったわね。外はどうだった? 」

 

「どうって事無いよ。私は学院の事務の人に金魚の糞みたいに引っついてただけだよ。まあ、これで一応留学に関する全部の手続きが済んだ。後は当日まで特段する事は無いよ。それより、立花。メガネはどうしたの? 」

 

「う、うん。蘇芳さんが無い方が似合うからって。マユも気に入ってくれるよね? 」

 

「私は・・・・・・。その整った素顔を私の為だけにしておきたい。だから・・・・・・。普段はメガネを付けて隠して欲しいって前にも言ったよ。なのに私の言う事よりも、蘇芳さんの言う事を守るんだ? 」

 

「マユ、それじゃ普段の私はブスの方が良いの? それって酷いわ。恋人が綺麗なのが嫌なの? もしかして蘇芳さ・・・・・・んに妬いてるの? 」

 

「それは・・・・・・。正直有るよ。立花は蘇芳さんの事が好きだよね。否定しなくたって良いよ。それは判ってる事だから。今私と付き合ってるのだって、単に絆されただけでしょう? でもお情けでも付き合ってくれた事に感謝してるよ」

 

「一体どうしてっていうの。らしくないわ。私は別にお情けで抱かれたわけじゃないのよ。マユリの気持ちが心地良かったから。マユリを魂の牢獄から救い出したかった。だからマユに最初をあげたのに・・・・・・」

 

「立花、ゴメン。今日の私はなんかおかしいわ。今日さ、事務の人に冷やかされたんだ。浮気の話。蘇芳さんが八代先輩と別れてどうするんだろうって。そうしたら立花の事が頭に浮かんで・・・・・・ストレスで胃がけいれんして吐いたりした。ここに帰って来ればそれも払拭できると思ってた。なのに立花は蘇芳さんの言う事を・・・・・・」

 

 

「マユごめんなさい。今日マユの留守中に蘇芳さんに慰めてもらってたの。最近マユの事を、前ほど信じられなくなってたから・・・・・・。蘇芳さんが私の事をカウンセリングしてくれて・・・・・・。霧が晴れた感覚になれたの。関本さん姉妹や根本さんともいろんな事をしてみて・・・・・・より女を磨けたの。それでね過去との決別と言う事で、メガネを捨てた。まだサナギなの私。留学が終わって戻ってくる頃羽化するつもり。マユが留学から帰って来たら、思いっきり愛してあげるから・・・・・・それまで我慢できる? 」

 

「立花・・・・・・。言いたいことは何となくだけど判ったよ。でも私は今、立花とセックスをしたいんだ。立花の身体に問いたいんだ、二人の関係を。蔑まれてもいい。留学終わってからなんて・・・・・・とっても待てない」

 

 そう言いながらマユが私を押し倒す。床の上で強引に制服を脱がそうとする。今着てるのは蘇芳様のなので、ゆるゆるで簡単に脱がされてしまった。そしてマユは褌姿の私を見て驚き離れる

 

「立花、それ・・・・・・褌だよね、ヤらしい・・・・・・。誰の差し金? 誰の入れ知恵? 誰に・・・・・・」

 

「これは、これは、保健委員の関本さんがお薦めしてくれて・・・・・・それでつけてみてるの。関本さんも根本さんもしてるのよ。かっ、身体に良いからって・・・・・・。うっ、嘘じゃないわよ。保健委員の関本さんに、失禁の相談をしたときに薦められて・・・・・・。恥ずかしいって言ったら私達も使うから恥ずかしがらないでって・・・・・・」

 

そこまで言ってベッドに潜り込み布団をかぶる。嘘がバレないように一旦落ち着く為と、まさかこのタイミングで褌がバレてしまうとも思ってなかった・・・・・・やっぱりマユの前では恥ずかしい。他の子とは全然違う感覚が襲ってきたから・・・・・・。

 

 

「立花、ゴメン。機嫌を直して。今日はもうしないから。私も頭を冷やしてくる」

 

マユは、そう言って部屋を出て行ってしまった。私はてっきり布団をはぐって強引に来るかと思っていたのに・・・・・・。

 

 

 

「千葉緑様、千葉緑様、いらっしゃいましたら受け付けにお越しください。繰り返します・・・・・・」

 

「お姉、学院から電話だって。私がここに居るってどうしてバレたんだろ? 出ちゃって良いのかな? 」

 

「学院から? まさかもうバレたのかしら。早すぎるわね。別の用件かしら・・・・・・。とりあえず出てみて頂戴」

 

お姉の意見に頷く。看護師さんにお姉を託して受け付けに急ぐ。悪い予感が頭を過る・・・・・・。

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