「蘇芳様、そんな事が有ったんですか。それでそんなお怪我を・・・・・・」
「それで、これからどうなるんでしょう。秘密を知っている者は消されてしまうのでは・・・・・・」
ベッドに横になりながら、保健室の一件を包み隠さず二人に話した。二人とも最初は半信半疑の様だったけど、私の話す天文部の部室の描写や、沙沙貴さん達が養護の先生に拉致られた情況を見ていない私が詳細に語り、それが目撃した小夜花との記憶と合致した事が、二人を信用させる要因になった。
「そうね。可能性は有るけど。バスキア教諭の単独犯なのか、何がしかの組織で動いた、それが判らないと何とも言えないわ。それより・・・・・・小夜花もゆかりも秘密厳守よ。約束して頂戴」
「判ってますよ。安心して下さい」
「そうですよ。もう以前の私じゃないですから。お姉ちゃんにだって話しません」
「ゆかりったら・・・・・・。二人とも、守れなかったら・・・・・・針千本刺すわよ。というか花子も早晩知ると思うわ。なにしろ天文部の部長なんだし」
「ねえ、蘇芳様。刺すって何ですか。普通飲むでしょう? 」
「だって、針が刺さって血がビューって噴き出す所を見たいの。飲んだらそれが見られないもの」
「蘇芳様のドS・・・・・・」
ゆかりがそう言うと、小夜花がくすっと笑う。つられてゆかりも吹き出した。それを聞きながら時計を見ると、既にかなりの時間が経っているのに気が付いた
「もう寝ましょう。今日は二度目の覗きが有るかもしれないから」
案の定、二度目の視察が有った。今度はチラッと覗いていくだけだ。おそらくドアに封印でもしていったのだろう。それが剥がれていない事の確認と、過去の経緯から私の部屋だけ再度チラ見したと思慮した。
そして外が明るくなってきた。私は寝ましょうと言ってはみたものの、裏腹に全然寝られないままだ。二人は寝息と寝言が聞こえてくる。羨ましく思う。聞いた話と実体験では重みが違うと言う事か。
「ピロピロピロ、ピロピロピロ・・・・・・」
突然の音に驚く。枕元の内線無線電話が鳴ったのだ。二人に感づかれない様にツーコールで取った。
「もしもし? 蘇芳ちゃん? 私、林檎です。今平気? 」
「おはよう。林檎さん。平気よ。寝られなかったからね・・・・・・」
「そうじゃなくて。同室の二人に聞かれないかって事だよ・・・・・・」
「それは心配ないわ。二人とも良く寝てる。そういう内容なのね、林檎さん・・・・・・」
「判った。取り急ぎ本題だけど蘇芳ちゃんは泉に注ぎ込む川の"血の岸辺"を知ってるでしょ? 秋になると彼岸花が咲き乱れ、遠目に血に染まった様に赤く見えると言う・・・・・・」
「その川の"血の岸辺"なら何度も行ってるし良く知っているけど・・・・・・。あそこ護岸が柔くて危ないし、大体、夏の今は何も無い場所よね? 其処がどうかしたの? 」
「そこにね、先生やら職員が集まってるんだ。最初は養護の先生の、アルカイダトラックが泥濘に嵌まって、先生職員総出で救出かと思ったんだけど・・・・・・。もっとヤバい事がね、見えてきたの」
「それって今現在の話なの? 急ぎじゃないなら・・・・・・」
「ちょっと真剣に聞いてよ。夜中の話だよ。先輩が蘇芳ちゃんに電話した辺りかな。部室の備品の夜間双眼鏡で、外をうごめく懐中電灯の明かりを見てたら偶然見つけてさ。これって実は二十一世紀のロズウェルズ事件? てな感じに見続けていたら、寮のチーフに連れられて、白木先輩や八代先輩、それに小御門先輩も来たんだ。それって奇怪しすぎるよね。ただの車の事だとしたら、生徒の代表があんな夜中にあんな危険な所に出向くなんてあり得ないもの・・・・・・」
「林檎さん、頭を整理したいから確認させて。先輩方も現場に行ったの? 先生だけで無くて? 」
「うん。そう言う事。それでもっと重要な事が有るんだ。チラッとしか見えなかったんだけど先生の車の荷台にガッキーの車椅・・・・・・」
林檎さんがそこまで言って突然電話が切れた。そして・・・・・・。
「この電話は学院の管理下に有りますので即刻使用を中止して下さい」
林檎さんの声の代わりに聞こえてきた少し揺らぎの有るテープの音声に戦慄した。それからは雑音すら聞こえなくなった。
「林檎さん、返事して! 」
何度か問いかけたけれど、返事は無く沈黙したまま。此処に居ても情報不足は解消しない。そこで電話を捨て、速攻で制服を着て現場に向かう事にした。廊下に出ると扉には案の定、封印のシールが貼って有った。貼り直そうとしたけど、二度と付かないタイプの糊なので結局諦め、こんなことより林檎さんの所に行かなきゃと振り返ると・・・・・・そこには榊先輩が立っていた。
「白羽さん、何処に行くのですか? こんな時間に・・・・・・。部屋に戻りなさい。貴女はこれ以上関わらないで。これ以上関わると白羽さんを学院から抹殺しないといけなくなります」
今なんて言った? 抹殺? 嘘・・・・・・。ショックを拭いきれない私。でも引くわけにはいかない。
「抹殺? それってどういう事ですか。攫うって事ですか? 八重垣さんの様にですか。お聞きしたい事はまだ有ります、"血の岸辺"の所で何が有ったんですか? 知っているんでしょう? 榊先輩は」
「攫ったりなんかしないわ。ただここに居られなくなると思う。"血の岸辺"・・・・・・ね。もうそこまで知ってるの・・・・・・。それにしても本当に厄介な人ね、貴女は。リサーチ通りだわ。こんな話、廊下でする話じゃないから、そうね部室に行きましょう。ついて来なさい」
いつもと違う先輩に激しく戸惑う。保健室でも何か違和感が有ったけれど、今はそんなものじゃない程に奇怪しく感じる。無言のまま先輩の後ろを歩いて行った。寮を出て件の現場の方向を見るも、霧が出ていて視認出来ない。しかたなく先輩と共に部活棟に入り、部室の前まで無言のままひたすら歩く。先輩が鍵を開け促されるまま先に部室に入った。後から先輩が入り重そうなロックの音が聞こえた。
「白羽さん、貴女に見てもらいたいものが有るの。こっちよ! 窓の外じゃないわ。このモニターよ」
林檎さんの電話から判断して、てっきりここから外の様子を見るのかと思ったけど・・・・・・。モニターに目を移すと、インターネットの動画サイトが目に入る。少し間を置いて始まった動画は・・・・・・。
「痛いよ。もう許して下さい。もう蹴らないで・・・・・・。鼻血が止まらないよ・・・・・・何でもしますから・・・・・・。誰か助けて下さい・・・・・・。うぐっ・・・・・・。いやぁー殺さないで」
外部の人間には判らないと思うけど、学院の人間なら場所は寮の中と確定出来るだろう。顔にはモザイクがかかり声も変えてあるけれど、其処に映っているのは明らかに私とゆかりと小夜花。これはあの夜の暴行の記録に他ならない。どうしてこの映像が存在し、外に持ち出されネット上にあるのだろうか・・・・・・。予想だにしない事にフリーズしてしまう。
「白羽さん、どうしたのかしら? 顔色が良くないわよ。エグイ内容だけど、そんなに固まらなくても良いんじゃない? だって、ねえ。仇討ちなんでしょう? 恋人を寝取られる元を作った協力者を断罪した。そして今は二人を恐怖とエロスで支配する。違うのかしら? 白羽蘇芳さん? 」
「どうして・・・・・・。この動画・・・・・・。誰が・・・・・・」
「聞いてどうするのかしら。撮影者をエクスキュートするのかしら。そうね答えても良いけど、条件が有るわ。今起きてる事案と付随する八重垣えりかの件から手を引きなさい。一切よ。名前も忘れなさい。そしてそんな人間はここアングレカム学院には端から存在しなかった。一片の欠片も・・・・・・頭の良い貴女なら此だけで良いわね」
「一番厄介なのは、ここで管理している孝崎千鳥。あの子の中からも八重垣えりかを消すの。もちろん薬も投与するけれど一番効果的なのは代わりに誰かが恋人になる事ね。上書きしてしまえば・・・・・・。貴女今、ふられてしまって本命の子が居ないんでしょう? 貴女が成ってくれれば秘密の保持の点で良いんだけどな。それはともかく、貴女にノーと言う返事はあり得ないのが判るかしら? 」
「・・・・・・・・・・・・」
「釈迦に説法かもしれないけど・・・・・・。このアップロードした動画、今はまだパスワードを手にした数人の関係者だけの限定的な視聴の許可を、それに本編の価値を高める為にモザイクを掛けてあります。今学院で生じている事案、その事に対する貴女の返事次第では、全てを曝しての公開の用意をしてあるのよ。今日中に私が返事をしなければ自動的にね。その際は関本ゆかり、根本小夜花も社会的に未来永劫払底出来ないダメージを負うでしょう。もちろん加害者たる白羽蘇芳は犯罪者として世界中に勇名を馳せるでしょうね。そうなれば貴女の祖父も・・・・・・。事は既に貴女だけの問題ではないと認識して下さい」
「酷い。祖父は関係有りません。どうしてこんな事を・・・・・・」
「まあ、この時の為に動画を用意しておいた訳じゃないのだけどね。貴女が余計な事にしゃしゃり出てきたから使う事になってしまった。切り札は最後まで取って置くもの・・・・・・ね。貴女と素手で喧嘩したら勝てっこ無いから。在校生で貴女にタイマン張って勝てそうなのって、二年の八代譲葉位だけど、彼女ももうそんな事は出来ないしね。今や白木葉子の犬だもの」
「・・・・・・・・・・・・」
「おお怖い。そんなに怖い顔をしないの。貴女、まだ八代譲葉に気があるの? キッチリお別れをして貴女はアミティエの子相手に変態セックス三昧と聞いてたけど・・・・・・」
「ねえ、そうじゃないみたいよ? 苺ちゃん。出てらっしゃい」
先輩が部屋の奥に向かって声をかけると、バツが悪そうな顔をして苺さんが出てきた。そして先輩が苺さんを抱きしめてディープキスをする。明らかに私に見せつける為に。何分も舌を絡ませ、唾液をすすり愛し合う二人。制服の下に手を入れてノーブラの胸を弄り、乳首を抓る。ショーツを曝すと、明らかに成人のペニスを模した太いディルドゥが入れられたままになってるのが見て取れる。それを動かしつつ指でクリトリスをいじりお尻の穴に指を入れる。すると苺さんは全身を痙攣させて呆気なく気をやって逝ってしまった。そんな苺さんをソファーに乱暴に突き飛ばしてからその横に榊先輩が腰を下ろす。苺さんを手で弄びながら、先輩は私を見つめ微笑んだ。
「この子、私のセ・フ・レ。この子自身はは自分の事を恋人と思っている様だけどね。林檎ちゃんにも粉掛けたんだけど、好きな人を好きでいる気持ちを裏切りたくないとかのたまわって拒否られたわ。双子を同時に落してみたかったんだけど、残念。そうそう、話続けるわね。知り合ったのはかなり前。あれは四月だったかしら。その後ちょっとした悩み事の相談から親しくなったわ。こういう関係になったのはそれから暫くしてからね」
「苺ったらオナニーすらろくに知らない子で笑っちゃった。なのにクラスで最年長って威張ってらしいわね。私に逝く事、逝かされる事を覚えたら、もう貪欲な猿よ。こんな未成熟な身体の癖して。私とする様になってから性徴して、少しは女っぽくなってきたけど・・・・・・。生理も不定期で、毎日自慰ばかりして、私と三日もしないと我慢出来ないみたいで。全く、女の屑みたいに慎みが無くって。最近ちょっと冷たくしてたから・・・・・・少し愛してあげるとこの態よ。チョロくて笑えるほど。でももう用済みかな? 要るならあげるわよ」
「何よその顔は? 貴女に非難される覚えはないわよ? 貴女はここアングレカム学院に来てから何人と関係を持ったの? 学内に飽き足らず病院の看護師さんとも肌を重ねてるのも知ってるわ。内科の主任さんですってね。暇を見ては抱かれていたそうじゃない・・・・・・虫も殺せない様な顔をしてるくせに・・・・・・。この淫乱女」
「嘘、何で主任さんの事を・・・・・・」
「まあ。頭脳明晰な白羽探偵も、こう事態が絡んでくると瞬時に正答が出せないみたいね-意外だわ。簡単な事よ。鈴木先生から聞いたの。鈴木先生はバイセクだから」
「先生との事知りたいの? 手を出したのは向こうから。最も私からそうする様に仕向けたけどね。鈴木先生は私の監視役みたいな存在でうざかったから、何とかしたかったんだ。今では私の理解者になってくれたの」
「鈴木先生とも・・・・・・。なんて女なの・・・・・・榊杏」
私の呟きを聞き、笑みを浮かべウインクを返す榊先輩。刹那、先輩の腕時計のアラームが鳴り、急に怖い顔に逆戻りした。
「おっといけない。こんな時間だわ。私は貴女達は今日一日ここに居なさい。理由は言わなくても判るでしょう。逃げたら酷いわよ。まあどうせ今日は登校に及ばずの寮での自習になるから。食事はそこの食材で何とかしなさい。そう言うの得意なんでしょう? 桜木から聞いているわ。それでお昼過ぎに来るからさっきの返事を頂戴。賢明な判断を期待してるわ」
そう言うと先輩は部屋を出て行き、がっちりと部室の戸をロックした。中からは開かない事を確認し、私はため息をついた。
そして戸の隙間から廊下が明るくなってる事に気付く。暗幕の隙間から窓の外を見る。霧は晴れていた。そうだ、林檎さんが見たと言う現場が見える。そう思ってその方角の窓の暗幕をずらして見ると・・・・・・。
其処は既にブルーシートの壁が出来ていて何も伺う事が出来なかった。やられた・・・・・・。
そうだ林檎さんは何処? 苺さんに聞こうにも未だにソファーでグッタリしていて聞き出すどころではない。その横たわる姿を見ているうちに労ってあげたい、ううん慰めてあげたい気持ちになった。下着を脱がせると下半身に刺さったままのディルドゥに目が釘付けに・・・・・・。。グロテスクなそれは苺さんの幼女然とした割れ目に刺さり、罪人に槍をくし刺しにしている様に見える。それを引き抜き赤く充血している性器に舌を這わす。隅々丁寧に舌で綺麗にしてから、全裸にして濡れタオルで全身を綺麗にしていく。そしておでこに仕上げのキス。汚れた制服を再び着せるのは憚られたので素肌にブランケットを掛けてから林檎さんを捜す
「林檎さん、何処に居るの? 」
呼んでも返事は無かった。でもここに居ないはずは無いと捜す事、おおよそ十分。流しの下に押し込められていた林檎さんを見つけた。意外な事に縛られたれりはされていない。しかし・・・・・・薬を飲まされたみたいで昨日の孝崎さんを見る様だ。目力が消失しているし、話をしようにも呂律が回らない。身体も力が入らずにふにゃふにゃの状態だ。
林檎さんも苺さん程でなかったけど、先輩を慕っていたはずなのに・・・・・・。あまりの仕打ちに怒りが沸き上がる。誰か援軍を呼ぼうかと思うも・・・・・・良い手が浮かばない。苺さんをソファーからベッドに寝かせ、林檎さんをその隣に寝かせて互いを意識、シンクロ出来る様に手を繋がせてからお布団を掛けた。
お湯を沸かしてインスタントのスープを作り、レトルトの御飯をレンジでチンする。それを混ぜておじや風の物を作ってみた。食材として他に有ったのは、インスタントのラーメンと焼きそば。コンビーフの缶詰にパイ缶と非常食の羊羹。私の分として焼きそばを作る。匂いがしだすと刺激されたのか、苺さんが起きてきた。
「蘇芳ちゃん、ごめんなさい。まさか先輩があんな人とは思っていなくて・・・・・・。蘇芳ちゃんには謝っても謝りきれない事をしてしまった・・・・・・。どう償ったらいいのか教えて。こんな女に謝られても唯、気持ち悪いだけだろうけど」
苺さんが、私に頭を下げて謝罪した。と同時によろけて床にへたり込んでしまった。まだ朦朧としているのか・・・・・・。へたり込んだ苺さんを抱きしめる私。弾みで頭がかくんと動く。また軽く意識がとんでいる様だ。軽く頬を叩いて意識を戻し、今度は優しくソファーに座らせて先ず白湯を飲ませた。空腹を訴えたのでおじやを私が咀嚼してから匙で食べさせる。口移しも考えたけれど、万が一の私への薬の影響を考えて止めた。
今度はベッド上の林檎さんの様子を見る。林檎さんはまだまだ起きられる状態では無かった。残ったおじやにラップを掛けて冷蔵庫に仕舞う。今は夏。陽の低い朝とはいえ涼しい季節の様にはいかない。食中毒には油断厳禁だ。
心苦しかったけど私も朝食を食べた。お腹が満たされて少し眠くなる。そして・・・・・・目を瞑りこの部屋に戻っての事を反芻してみる。
先輩との問答を頭の中で何度も繰り返す。そう言えばあの日、一番上のベッドが乱れていたっけ。誰かかあそこに潜んで見ていたって事ね。おそらくは林檎さんが・・・・・・。本当に八重垣さんとはもう会えないのかな。代わりに私が孝崎さんの恋人に? そんな事考えた事も無かった。だって孝崎さんは八重垣さんの・・・・・・。そんな事を受け入れてくれる事なんて・・・・・・孝崎さん的に絶対無いわね。ん?
そうだ孝崎さん! すっかり忘れていた。焦る私。でも林檎さんを捜す時に何処にも居なかった事を思い出す。一体何処に? 捜すこと小一時間。
「こんな所にドアがあるなんて・・・・・・。望遠鏡置いたうえにタペストリーで隠すなんて姑息な事を。捜していないのはここしかないもの。絶対ここに居るに違いないわ。待ってて孝崎さん・・・・・・」
ドアには閂の様な簡易な鍵がかかっている。外からは造作無くても、中からは絶対開けられない。電気のスイッチを入れドアを開けるとそこには、エア充塡式の簡易ベッドが敷いてあり、其処に孝崎さんが横になっていた。上半身は素肌にジャージ、むき出しの下半身にはおむつが当てられている。いきなり明るくなり、目がついて来ないのだろう腕で明かりを遮る孝崎さん。
見回すと元は暗室の様で、ホンのわずかだけど酢酸の臭いがする。今はラックにパソコン関連の機器が所狭しと積んであり、既に銀塩の写真は扱っていない様だった。
「いや、起こさないで。八重ちゃんが八重ちゃんが消えちゃう・・・・・・」
「それは夢よ。こんな汚い所にいては病気になってしまうから、外に出ましょう」
そう声掛けして強引に抱えて連れ出す。お姫様抱っこでソファーに運び、苺さんの横に座らせた。段々と目が覚めてきた様で、現状、苺さんよりは意識もしっかりしてるし、暫くすれば話もそこそこ普通に出来そうだった。唯、両手は片時も休まる事無く性器をいじり続けていた。こうなる様な薬を使われたとのことで、身体が勝手に動いてしまうらしい。私はそれを止めさせなかった。この後に知る真実を前にある程度の緩衝材になればと思ったから・・・・・・。
「葉子、公表・・・・・・」
「出来る訳ないじゃない! 先生、いやミッションスクールでシスターが生徒を誘拐して双方とも行方不明。こんな不祥事、口が裂けたって言えないわ!そうでしょう? 前ニカイアの会会長さん・・・・・・」
「だよね。今の所まだ知ってる者は少ない。まずは秘密の保持を最優先にしよう・・・・・・」
「遺留品は槙先生のピックアップトラックに載せてブルーシートを掛けて学外の白木の施設に運び出します。そして・・・・・・此処は埋め戻します。目隠し設立でお疲れの所、心苦しいのですけれど先生方・・・・・・直ぐに業者に手配を。先ずは重機のオペレーターを確保して。理事には私が事後承諾で・・・・・・」
「葉子、中はこれ以上調べないのかい? もし未だ中に居たら・・・・・・」
「中には誰も居なかった。出られる様な通路も無かった。そうよね小御門ニカイアの会会長代行。槇先生もそれを確認されているということですよね。違うなら挙手して発言して下さい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「では埋め戻しに何ら支障は無いわけです。こんな・・・・・・地下の拷問、処刑道具に施設は、今すぐ埋めてしまうべきモノです。これこそ最優先で隠匿しないと・・・・・・。良いですね先生方、職員の方々。見た人、携わった人には機密保持の誓約書の提出義務が生じます。多少なりとも自由の制限、色々な御負担をお掛けする事になります故、今後それ相応の処遇をするつもりです。宜しくお願いします」
「それではなるべく早くに新校舎及び寮の工事に伴って生じた残土を、あの穴に投入する手続きを理事長に具申します。では見張りの先生を二名残して解散」
会議の場を理事代行の葉子が仕切り、表面上事態は収拾に向かう事に。だが肝心な事は何も進捗していない。
バスキア教諭が一年生の八重樫えりかを連れ去った。これは目撃者が居て容疑は確定している。夜になり行方不明の八重樫えりかの愛用する車椅子が、学院の外れに有る川の所で見つかったのだ。探照灯の様なライトを装備している車で夜通しの捜索していた養護の先生がそれを見つけた。しかし車の性能を過信し川に近付きすぎた先生の車が泥濘にハマる。
脱出するのにウインチを立ち木に引っ掛けて使った事で・・・・・・現世のパンドラの箱の蓋が開いてしまった。
ウインチの力に御しきれず木が折れてしまい、手前に建っていた碑をバタンと倒してしまった。あわてた先生が学院に報告し、泊まりの教職員総出で其処へ出向くと・・・・・・。碑の建っていた場所にはぽっかりと穴が空いていた。覗き込むと、地下への狭い階段が・・・・・・。先生とネリーが先陣を切って降りていく。地下二階位の深さに降りると突如広間が出現した。
中は素堀の痕跡を有す広間で、明らかに人為的に造られている。漆黒の闇の中には鉄の処女の様な拷問処刑道具が整然と並んでいた。それは不思議な事に手入れが行き届いており、水の染み出している壁とは裏腹に結露もしていなかったのだ。
しかも鉄の処女の中からバスキア教諭のローブ、八重樫えりかの制服、過去に在籍し中途で退学した者の制服も複数発見された。青い光で直近の血痕の有無を調べ、痕跡の無い事を確認した。所持品を持ち帰った私達は其処から何処にも通じていない事を再度確認し、地上にも地下から出た未確認の足跡等が無い事を合わせて確認した。それを踏まえ此処を永久に封印する事に決めたのだ。そして厳重な箝口令と共に・・・・・・。
「ねえ、ユズ。ちょっと良いかしら? 」
「未だ全員の誓約書が出てないよ。良いのかい? 」
「ううん、その事じゃないわ。ユズも判ってるくせに。そういう態度だと今晩留置式カテーテルを使うわよ」
「それは止めてよ。そこを使うほど僕は好き者じゃないんだから。話戻すけど、葉子も気づいていたんだね。ネリーの事だろ? 」
「そうよ。バスキア教諭の服を手にした小御門さんは普通じゃなかったわ。淋しそうだったし、怒っている様な、悲しそうな取り留めのない表情・・・・・・」
僕は捨てられた子供、置いていかれた子供、そんな感じを抱いた。とにかく今までに見た事の無い表情のネリーだった。
「もしかしたら、小御門さんも一緒に・・・・・・」
「その事だけど、一緒に封印する? それとも・・・・・・少しばかり動いて良いかい? 槇先生の事も違和感を拭いきれないし。保健室の事だって重大案件だよ? 」
「止めたってどうせするんでしょう。ユズは首輪をしていない時は本当にわがまま。そこが魅力の一つでも有るんだけど・・・・・・。そうねー保健室の破壊も有ったわね。あー頭痛い。こっちは隠し様が無いもの。譲葉、何笑ってるのよ、何が可笑しいの? 」
「いや、僕がニカイアの会の会長をしていた時の苦労が、葉子にも判るようになってくれてうれしいよ。今迄とは逆の立場だよね」
「はいはい、戯れ言はそれまでにして頂戴。現、理事代行補佐さん。其れにしても、どうも敵対というかしっくりいかない事があるわね。そうそう一年生の時に投書で、選択授業の絡みでそれを特に感じる、とある先生が怪しいってユズ言ってたよね? 」
「よく覚えてるなー。カタバミ寮鑑の事だね 以前会の方で聞き込みはしてみたけど・・・・・・」
「何よ奥歯にモノが挟まったみたいに。どうしたのよ? 」
「うーん。何も出なかった。と言うか未だに報告書が出来上がっていないんだ。先代会長が依頼していた女生徒は病気で自主退学してしまったし、次の子は調査自体を対象者に漏らしてしまってね」
「其れって誰? 」
「氏名は不詳。現三年生だよ。退学した子に依頼をしたから会としても最後まで追跡してない。バレた瞬間、何しろ上からお前ら何様だと相当叩かれたらしい。今ならあの頭の固い旧経営陣が減ったから平気かもしれないけど・・・・・・。当時はね・・・・・・」
「蘇芳様、起きて下さい。って居ないじゃない。まさか・・・・・・ゆかりと同衾? 」
慌てて梯子に手をかけ、ゆかりの寝床を見ると其処には寝相の悪いゆかりだけだ。地鳴りがする・・・・・・何だか外が騒がしい。窓の外を見ると複数台の重機が地震の様に部屋を揺らして通り過ぎる。刹那廊下が騒がしくなった。地震と勘違いした子が廊下に飛び出して騒いでいる様だ。
「ゆかりは図太いな。見習うべきか・・・・・・、見習わないべきか・・・・・・」
「何よ。誉めたって蘇芳様にマッサージして貰う権利は譲らないわよ? 」
「たまには譲ってよ・・・・・・ケチ・・・・・・。そんな事より、蘇芳様が居ないのよ」
「また、天文部の部室でしょう。彼処何でもあるし、ベッドはキングサイズで寝心地も良いし、こんな日くらいゆっくりして貰いましょうよ。そうね、後で制服を持って行ってあげない? 食事が終わったらジャンケンで鞄を教室に持って行く係と部室に制服を持って行く係を決めるの」
「あれ制服無いよ。蘇芳様着て出てる。じゃ鞄だけか持っていくの。仕方ないから二人で教室に行こう」
「ちょっ、鞄、こんなに重いの? 私達のと比べて倍ぐらい有るわ。一体中に、何入っているのかしら?」
「小夜花。見たら殺されるよ。でも・・・・・・。見ようか。正直に申告すれば、ワシントンよろしく許してくれるよねきっと」
「私は許されなくて良いわ。だってもっといじめてくれるってことでしょう。一度本気で首を締められた時に、この人になら殺されても良いかなって思ったもん」
「小夜花・・・・・・」
「あっ、今すぐ殺されたい訳じゃ無いから誤解しないで。其れ位の関係になれば一生蘇芳様の記憶の中に生きていられるのかなって・・・・・・」
「小夜花は一人っ子なの? 」
「いきなりね。一応・・・・・・。私の知らない所に居たりするかもしれないし。ゆかりはお姉さんと仲良くて羨ましいよ。好き合ってるのよくわかるし。だから二人でお仕えしてるのよね」
「でも、本心は蘇芳様には私を一番にして欲しい・・・・・・。お姉ちゃんよりも小夜花よりも・・・・・・」
「ゆかり・・・・・・」
会話が切れて、思い出した様に私は蘇芳様の鞄の中を覗き見る。教科書、ノート、辞書に参考書・・・・・・。さすがにクラス一番の才女の鞄だと感心させられる。他にはペーパーバックの文庫本が二冊。筆箱は渋さ全開の漆塗りの木製。下敷きはグリーンの一般的なものだった。女の子の必需品が入ったポーチが二つ。そして隠しポケットに入っていたモノを見て私達は複雑な感情を抱いたのだった。
「小夜花、何それ? 」
「沙沙貴林檎さんからの手紙よね・・・・・・これ。さすがにコレん中は見られないわ」
「さすがに私でも私信はちょっとね・・・・・・。そのポケットに他の人のは無いんでしょう? 」
「無いわ。沙沙貴さんのだけよ。思い出してみれば彼女、何気に蘇芳様と一緒に居る事多かったわね。一番古いのはっと・・・・・・」
「何で判るの? 」
「蘇芳様が裏に貰った日付を入れてるの。五月三十一日が一番古くて、最新のは蘇芳様が退院してきた日よ・・・・・・。返信済みって書いてある・・・・・・。あーなんかモヤモヤする、どんな返信したのかな」
蘇芳様の鞄の隠しポケットに有った、沙沙貴林檎さんの蘇芳様宛て手紙の束。受けとった日と、返信した日が封筒の裏に記載されている。そのギャップは長くても三日。最短は当日・・・・・・。前に蘇芳様に誰とセックスしたかを聞いた事がある。その中に沙沙貴さんの名は上がらなかった。あくまでも親しい友=親友と言うことなんだろう。
「蘇芳様の一般特別枠か・・・・・・。これはこれで認めないといけないのかな。なんか・・・・・・悔しいな・・・・・・」
「でも、八重樫えりかさんが失踪してるって、蘇芳様言ってたじゃない? もしも・・・・・・このまま消失してしまったら蘇芳様絶対ショックだよね。こっちは保険の意味合いで排除しない方がいいんじゃない。仕方ないよゆかり」
「排除ね・・・・・・。小夜花、小夜花も言葉使いが少し乱暴に成ってきてるわ。立花さんにまた指導されるわよ・・・・・・」
「だって・・・・・・。私、元々が立花さんみたいにいいとこの子じゃないもの。蘇芳様の隣に居てもご迷惑をかけたくないから、頑張ってるつもりだけど中々ね・・・・・・」
「それは私も同じ。転校してきて何がショックだって、皆が自分を偽ってるんだもの。裏と表のギャップが・・・・・・ね」
「ギャップの話しだと、ゆかりのお姉さんも中々よ。典型的ツンデレだもん。でも一番は・・・・・・」
「蘇芳様!」
最後、ハモって二人で笑った。片手でハイタッチしてたら、突如校内放送が流れてきた。内容は・・・・・・。
「本日は予定を変更し、授業は全面中止になります。授業時間は全校生徒を対象とする教職員との面接に変更します。朝の礼拝が修了した後、寮で呼び出しが有るまで待機して下さい。面接が終わった方は寮での自習。尚、教員が食堂で待機しますので、教科、授業内容については指導いたします。繰り返しお伝えします・・・・・・」
これって・・・・・・。考えが混乱していると、ドアをノックする音が・・・・・・。
「花菱です。放送内容を記載したプリントを配布しますのでドアを開けて下さい」