ふらふら。
何処に行っても大した見栄えもなくて変わる景色といえば積まれたダンボールの多さと配置、そして空調のパイプの配置。
そんな基地の廊下をふらふら。ふらふら。とさ迷っていた。
特に目的地はない。
ないのだけど。
気付けば目の前には白衣を着、激務から来たストレス等でやつれた印象を持たせる女、エイミーがたっていた。
「……何してるのよ」
とふいっ、と顔を逸らしどこか刺々しくもあり、そうでもないような声を吐いた。
失礼な奴だった。
「第一声がそれはないだろう……」
と少しオーバーに凹んでみるとまた少し慌てた様に弁明しだした。
「いや、その、えっと……ご、ごめんなさい、その、貴方のことを考えていたから……」
ほぅ。
……ほぅ?
「へ? あ? へ?」
我ながら気持ち悪い程の慌てようだったと思う。
それをみたエイミーは顔を赤くしてまたこう被せた。
「え? あ、いや! 違うのよ!! その! あの! 貴方のカルテどこやったかなぁ! とか! またあなたに対する軍曹の愚痴を聴いて「はぁ……」みたいな空返事をするにも疲れたなぁ! とかそういう事を考えてたってことだからね?!」
「う……お、おう」
出だしも最悪で弁明も最悪だった。
「……てか、軍曹俺の愚痴エイミーに零してんのかよ……」
はぁ……、とため息をつく俺とは裏腹に何故かさっきとは違う赤みがエイミーの頬を染めていた。
「……どうした」
と聞くと。
「なんでもないわよ……ばか」
とやけにかわいい答えを返された。
「なんだよ、かわいいな」
って言うと。
「う、うるさい!」
とどこか子供っぽい罵倒とも取れないような声をあげる。
そして極めつけは。「うぅ〜……」と唸り始める。
お前は犬か。
「……っと、そうだ」
ふと思いだす。
「……なによ」
不貞腐れた様にぶすっ、と答える彼女。
「いや、なんか甘いもん持ってねぇ? チョコとか、砂糖たっぷりのパンとか」
「…………事務の机にチョコバーがあったはず」
「……一つわけてくんね?」
「……なんでよ」
「……なんでって」
なんでだっけか。
「……あれ、俺なんで甘いものを探してるんだっけか?」
「知らないわよ……」
と今度は呆れた様にため息を疲れた。
ほう、コロコロと表情を変えるやつだ。
その旨を伝えると「誰のせいよ」と怒られた。
ううむ、こういうのを日本ではなんというんだったか。
喜怒哀楽? たしかそんなやつだ。
「ねぇ」
「……ん?」
「……次はいつ帰ってくるの?」
「ははっ、なんだそれ?」
エイミーがこういうことを言うのは珍しい。
職業柄そういった事は珍しくもないだろうに。
「……貴方が望んでたっぽいから」
「……ほ、ほぅ?」
「なんでもないわ……で、いつ帰ってくるの?」
「う、うむ……」
と少し考えてみる。
12時間後にはこの基地を発っていて。
到着後にブリーフィング。
そこから先はまだわからない。
「……任務内容によるけど、破壊工作とかなら早くても2日3日……一個部隊の殲滅なら1週間未満……ないとは思うが諜報任務なら……一ヶ月以上か」
「……っ」
「……エイミー?」
「諜報任務って……貴方がやる任務なの?」
「……ああ、まぁ、けど、俺を諜報に回すなら前線に出した方が絶対に有益だと、俺は自負している」
「……まぁ、ね……じゃあ部隊の殲滅は?」
これもまたううむ、と唸って答える。
「武器庫と通信設備の破壊から始めて2日、敵勢力の把握に2日、後は出方を待って奇襲に残り時間を費やす……かな」
するとエイミーは驚いたようにこう聞き返した。
「武器庫と通信設備を先に破壊してもいいものなの?」
「……ん、ああ、俺だけでやるわけじゃないからな、外部に連絡しようとした敵は他の味方が敵から放して無力化させるんだ」
と答えるといまいち理解出来ないのか、それとも俺の雑さに呆れているのか「ふぅん」と答えただけだった。
「……ありがとう……で、チョコバーはいるの?」
あ、忘れていた。
「い、いるいる」
「そ……じゃあ、付いて来て」
と白衣を揺らして歩き出す彼女はどことなく楽しげにも見えた。
……気のせいか。
あれ……噂……あれ……。