シチュを考えると個人的に、あまり好ましくないのですが―――
……でもガララアジャラの乱交ならちょっと見たいかも(ドゴォ
ではでは謝罪は後程、14話が始まります。
空が紺から青へと変わり始めた時間帯。
太陽がそろそろ顔を出そうかと言う早朝に、奇妙なシルエットが孤島近海にて確認できた。
白疾風が金雷公を尻尾で巻き、海面すれすれを飛んでいるのだ。
「おい金、そろそろ見えるぞ」
白疾風が、尻尾で運ぶ金雷公に声を掛けた。
“金”と呼ばれた金雷公は、白疾風のバランスを崩さないよう、体を動かさずに口だけ動かす。
「…結構前から起きてる。白は大丈夫?」
どことなく謝意を感じさせる声の抑揚に、“白”と呼ばれた白疾風は羽ばたきを休めず返答する。
「大丈夫…だが、着いたら何か適当に狩ってきてくれ」
謝意よりも飯が欲しい。
白の望みはそのようなものだった。
金を持ち上げて運ぶのはそこまで苦ではない。
が、流石に翼を動かし続けるというのは辛かった。
本来ならば空の高い位置で風に乗り、滑空するように翼刃を広げ、緩やかに角度をつけて高速で飛ぶのだが、このような状態ではバランスが取れない。
羽ばたきが苦手と言う訳ではないが、やはり長時間は応える。
「適当なのでいいなら」
「腹が満たせるものなら何だっていい」
頷く金に、白は満足気に息を吐き出す。
と、白の目に見覚えのあるシルエットが見えた。
まだ薄暗い為に黒く見えるが、もう少し近付けば見え方も変わるだろう。
「見えた」
「…本当、綺麗ね」
「見えるのか?」
「夜目は効く方なの」
白も夜目は効く方だが、一定条件を除けば金の方が鮮明に見えている。
「あそこが俺の巣のある場所。人間は孤島なんて呼んだりしてるけど」
「…海に浮かんでる?」
「そう見えるかもな。渓流なんかと違って地繋ぎじゃねぇし」
―――それは、そんな雑談をしていた時だった。
ピッ
何かが白の頬を掠め、切れ目が入る。
血が毛を伝う感覚に、白の動きが引き攣った。
「…白?これ、血…」
上から降ってきた液体が口に入り、金も異常に気付く。
対して白は尻尾を更にきつく締めると、翼刃にて空を思い切り叩いた。
「気付かれた、か。速度上げるぞ!」
と、言い終わるかどうかと言うところで、加速。
その速度に、金が後方へと持っていかれる。
そのせいで一瞬パラシュートのように減速するが、金も馬鹿ではない。
面へと直撃する空気を受け流す為に、グッと身を丸める。
「岸へ着いたらすぐに雷を纏え!!」
「…m、しg……ッ!!」
「言いたいことは分かる!出来る限りでいい!!」
耳に入って来る強風によって金の声は聞き取れないが、指示は通っているみたいなので気にしない。
ヂッ
翼刃に“高圧で放たれた水”が掠って来るが、この程度ならバランスは崩れない。
―――ここ一帯は、孤島を囲むように海竜の巣が密集している。
強い海竜は極度に刺激しない限り動かないが、弱い奴はすぐ吼える。
弱者は、餌を得るにも必死なのだ。
……今日は随分と早起きですねぇ、魚共ッ!!
睡眠中なら気付かれずに巣に戻れると踏んだのだが、そう簡単な話でもないらしい。
本来、白一匹ならば高速で飛空できるため、海竜達に気付かれる前に巣の上空を通り抜けられるのだが、さすがに金を抱えてとなるとそこまでの速度は出せない。
背後から放たれる高圧水流ブレスをいなしながら、全力をもって浜へ向かう。
「金!もうそろそろ岸だ!!」
残り500メートル前後。
一分もしないうちに、浜辺へ到着するだろう。
「しr、後ろ!!」
背後が見えている金から警告が発せられるが、何が来ようと今更どうすることも出来ない。
浜に届くまで、200メートル半ば。
「振り向けねぇ!どうにかしてくれ!!」
「hう電s、tも!?」
「ダメだ!飛べなくなる!!」
残り100メートルを切った。
ギッ
「ヤ―――――バッ!!」
「おおう!?」
左翼刃の面にブレスが直撃。
速度を上げていたためか、この衝撃は、バランスを崩すに十分すぎた。
金を尻尾に巻き付けたまま前方向に縦回転。
スレスレを飛行していた所為か、海面に顔が叩き付けられた。
……ガッ!?
あまりの速度によって、海面を顔面で滑る。
そしてここで気付いた。
尻尾に巻き付けた金の感覚が、無い。
「わぁあああ!!?」
金の叫び声が耳に入って来るが、自分の事で精一杯。
何とかしてくれと曖昧に望みながら、顔を後方に流して一回転、バランスを立て直し、浜へと羽ばたく。
その際、海面を背中で跳ね、見事浜へ着地した金を捉えた。
……何とかしたか。
感心しつつ、こちらも浜に着地。
既に雷光虫を集める雷を放っている金が、こちらにじっとりとした視線を向けてきた。
「痛い。投げるって酷くない…?」
「不本意だ。さて、面倒なのに見つかった」
右手から昇る日の光を受けた海面が、不自然に隆起する。
「…一応言っておく。弱いぞ」
ぬっと海面から顔だけ出したのは、一匹の竜。
「見たことはある、けど…?」
「ガノトトス、っていう名だ。覚えんでもいい」
「ガノ…トトス、ね」
名を確認するように呟くと同時、周囲の海面から背びれが飛び出した。
その数、1、2、3、4、5――――
「…多いって」
「数は気にするな」
しかしその無数のガノトトスたちは、海から二匹を囲むように威嚇、様子を見て来るだけで、飛び掛かったりはしてこない。
その様に、金が不思議そうに首を傾げ、白は不愉快そうに瞳を赤く染めた。
……これだから群れは見てて嫌な気分になるんだよ。
そのガノトトスたちの行動は、白の機嫌をかなり損ねさせることとなる。
「ギィイイ、ィイ!!」
顔を出していたガノトトスが、岸へと飛び出してきた。
バリッ
ガノトトスが浜に着地すると同時、金が虫に雷を受け渡し、金雷を纏う。
煌々と光る金色の明かりが、周囲を照らし出した。
薄暗くて分からなかった、まだ幼竜のような幼さを残すガノトトスの風貌に、白が金の聞いたことのないような唸り声を漏らす。
威嚇ではない。何かの感情が入り混じった、複雑な声音。
「ィイイイィイイッ!!」
突進を始めたガノトトスに、金は構え、白は欠伸をする。
「俺ちょっと寝るわ。疲れた」
「え…私にどうしろと……」
「力任せに暴れればいいんじゃないか?」
「あぁ、簡単ね」
会話を続ける金の目の前で方向転換、側面を見せたガノトトス。
「ギィッ!!」
空を切る音をたて、側面タックルをぶちかました。
○○○
……ホントに寝始めたし。
白を目端で捉えつつ、目の前のガノトトスを見た。
タックルはなかなかの速さだが、まだ甘い。
足の向き、重心の掛け方―――
渓流で見た成龍の動きより、全然キレがない。
「ゥ…ガァッ!!」
カウンターの要領で前足を叩き付ける。
雷を纏った強力な一撃は、いとも容易く鱗を焦がし、肉を焼く。
半ばまで埋まった腕を引き抜けば、ガノトトスが血を吐いた。
……柔らかすぎる。
先の戦闘で堅牢な甲殻を知っている身としては、濡れた土に等しく思えてしまう。
「―――ッ!」
こちらを真正面に向きを変え、血をまき散らして吼えるガノトトスに、ゆったりとした動きで逆の前足を顔へ叩き付けた。
硬い何かを砕く手応えに、ガノトトスが斃れる。
……弱いなぁ。
二発で沈んだガノトトスに、そんな感想を抱いた。
戦闘が得意な訳ではないので強くても困るのだが、こうもあっけないと調子が狂う。
「白ー」
「………」
「…よっと」
呑気に寝る白の目の前へ、雷光虫を飛ばした。
パン
「―――」
「ッ、あぶなぁ!?」
不意打ちだと思ったのか、右前脚を軸に回転して叩き付けてきた尻尾を躱し、非難の声を上げる。
その際、咆哮で背中にいた雷光虫達が散ってしまった。あぁ、勿体無い。
「よく躱せたな。結構当てるつもりでいったんだが」
「ワザとか!ワザとなんだね!?」
「―――で?斃したのか?」
「話を逸らしたな…。でもまぁ、そうだよ。見て分かるでしょ?」
「…うわ、よく見りゃ顔ぐっちゃぐちゃだったわ」
そう言って顔を引き攣らせる白。
しかしそんな表情とは裏腹に、なんの躊躇い無く屍に寄っていく。
「何してんの?食べるの?」
「こんな骨と肉の境界が無さそうな奴、絶対に食べたく無いわ…」
結局、何をしたのかと言えば、こちらに引き摺ってきただけである。
私の目の前にご丁寧に置いてくれると、今度は私の隣で寝始めた。
マイペースな白の頭を肉球でポスポス叩いて苛立ちを収めると、眼前の屍に目を移す。
……これを食べろと?
頭蓋破砕で脳漿散らしたガノトトスだ。食欲は湧かない。
これだったらまだ、全部ひき潰した方が美味しそうに思える。
「―――金、その屍を海に投げ込んでみ?」
「え?」
喜々としてそう呟く白の頭を疑うが、食べなくて済むならそれでいい。
一気に投げ込むほどの力は無い為、首、腕、胸辺り、腹、と爪で切り分け、海に投げていく。
するとどうだろうか、あれほどいたガノトトスが、一匹残らず退却していった。
残されたのは、ふてぶてしく寝転がる白と、呆然とする私。…あと血痕。
「…何アレ」
「あー多分、縄張りに侵入した奴を腹が減ってたから攻撃しただけ」
「八つ当たりじゃん!」
「言ってしまえば、そうだな。でも“腹が満たされたから帰った”」
瞼を上げ、白の紫の瞳が月を反射して怪しく光る。
―――共食い。
別に理解が無いわけではないが、理解したくはない。
共に過ごしていた仲間の屍を食欲に任せて喰らう?理解したくないのも当然だ。
……まぁ、その“仲間”っていうのが良く分からないけど。
概念は知っている。言葉の意味も知っている。けど、実感はしてない。
まず
他には渡り竜。仲間というより、師匠?が一番近い。
で、白。これに至っては…私の体目当てな気がする。
結論、番い合う雄はいたけど、仲間なんていなかった。
「ふんぬ!」
「おうふぁ!?」
恥ずかしくなってきたので、白の頭にそこそこの威力で一撃。
足裏で叩いたので、痛みは無く、衝撃で揺さぶられるぐらいだろう。
「で?ここに来た理由は何だっけ」
「あれだ、俺の巣で一緒に住まないか?みたいな感じじゃなかったか?」
「もうちょっと控えめだった気がする」
「―――なら俺と一緒に住まないか?」
「今言う事?それ」
今更過ぎるその誘いに、思わず笑いが漏れ出た。
「あぁ、おもしろい。住むわ。私は白と一緒に住む」
口に出した言葉が不思議と胸に来る。
勢い任せに言ったは良いものの、恥ずかしさからか、口が震える。
「じゃあ改めてよろしく…」
「そうか。じゃあ大人しくするんだな」
白は私の反応を気付いていながら無視。からかってくれれば幾分か紛れたのだが、自分から催促するのは違う気がする。
と、身を固めた私の体へ、スルスルと尻尾が巻き付いてきた。
「お前を運ぶ。で、俺は寝る」
「…起こさないよ。流石に」
不思議と、蓄電殻の制御が楽になっている気がする。
寝起きに大放電なんてないと思うから、ゆっくり寝てほしい。
「着いた。意外と荒れてないもんだな」
「むぎゅ。…ゲフ」
白の声と同時に突然の停止。
尻尾でぶん投げられた私は背中で着地すると、舞い上がる埃に軽く咳き込んだ。
―――しばらくして咳が収まり、起き上がると、その不思議な光景に息を飲む。
「白の…巣?」
「まぁ、そうなるな」
まず目に入ってきたのは、小さな洞窟のような巣の壁に描かれた細かな絵だった。
「ようこそ、俺の巣へ。ここは人間も知らない、竜たちの遺産」
洞窟の端、大量の何かの毛が積まれた場所に寝転がった白は、疲れを息に混ぜて吐き出すと、瞳を青白く光らせる。
「これからはお前の巣でもある。ゆっくりしていけ」
その言葉に私はゆっくり息を吐き出すと、意味も無く白の方にすり寄ることにした。
理解するのは起きてからでいい。今は、何となく寝たい。
―――三分後、巣の中は静かな寝息の音で満たされた。