私は牛乳大好きなので、よく近場の牧場で搾りたてを頂いたりしてます。
……さて、文面で不純な事を考えた方は、お腹を壊すまで牛乳の刑ですよ。
ではでは、中秋の名月とは全く関係の無い十五夜です。どうぞ。
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「がぁ……」
欠伸と同時に目が覚めた。
金が丁度入れる位大きい入口に目を向け、入り込む日の光を確認。太陽が天頂を超えたことが分かり、柄にもなく長時間眠ったことをゆっくりと理解する。
とりあえず空腹をどうにかしようと寝惚けたまま体を動かせば、硬い何かが翼刃に当たり、思わず動きを止めた。
「…あぁ」
視線を動かせば、キラキラと煌く金色の甲殻に、柔らかな体毛の間を走る静電気。
昨夜、ここに連れてきた竜の姿を確認し、納得したように息を漏らす。
今度は身を抱くようにして丸くなる金を起こさないように身を起こした。
……無防備、ではないな。
身を寄せてはいるが、爪が出ている。
眠っているときに襲われても、すぐ対応出来るようにしているのだろう。
その姿を見て、今回の自らの無防備さを実感し、溜め息を吐く。
……?
―――今になって気づいたが、一番外側の爪の形が少し変だ。
刺す、貫く、引っ掻く、裂くなどの攻撃的な用途で使用する形状ではない。
何かを引っ掛けるための…匙のような形をしている。
なぜこのような変形しているのか分からないが、不思議と気になった。
起きたら聞いてみようと思い、金の顔を見る。
「…またか」
金の目尻が、濡れていた。
「何を抱えているんだか」
寝息を立て、寂しそうに鼻を鳴らす金。
抱え事は探っていいようなものではないし、どうするも出来ない。
……飯でも取りに行くかな。
目を逸らすように入口へ向かうと、飛び降りた。
人間の呼称するエリア5。そこを囲む岸壁には、いくつもの穴がある。
そのうちの一つが、白の、そして金の巣でもあった。
「フゥゥゥゥ…」
着地音すら立てずに、エリア5に降り立つ。
何か獲物はいないかと視線を動かせば、そこそこ大物が視界に入った。
呑気に屍肉を貪るドスジャギイは、まだこちらに気付いてすらいない。
回りにいる部下はこちらに気付いて威嚇するが、ボスがそれに反応しないのでは意味が無いだろう。
……それで群れのボス、か。
本当に呆れる。
群れを守る筈のボスが自らの食欲にかまけて注意を怠るなど、よくもまぁ生きてこれたものだ。
群れはボスが有能であれば、下は無能でもある程度機能する。
が、その逆、上が無能な場合は機能以前のお話。
有能な下がその座を乗っ取るか、群れの崩壊か。
その二択以外にありえない。
ジャギイを払い除け、ドスジャギイの背後に寄ると左の翼刃を軽く振る。
―――銀の光が、ドスジャギイの首を縦に走った。
「ギ」
断末魔の悲鳴は上がらない。
血液すら付着させない速度で通り抜けた翼刃が、ドスジャギイを二分割した。
ボトリと素っ気ない音を立てて地に落ちた頭は、たちまちジャギィに持ち去られる。
敬愛からの行動ではないだろう。大方、群れに死を伝えるためか、日頃の鬱憤を晴らす為か。
どちらにせよ録でも無いリーダーだったことは、群れ共通の認識だったらしい。
「…どうでもいいか」
別にジャギィなんて腹の足しにもならない。
頭も欲しい訳ではないので、放っておく。
血溜まりに沈むドスジャギイの体を銜えると、羽ばたいた。
朝飯にしては随分と遅い。なんて思いながら、巣に向かう。
……そう言えば、アイツ肝がダメって言ってたな。
ふと金の好みを思い出して捌こうと考えたところで我に返り、笑いが込み上げた。
まさか、自分以外を気に掛けることになろうとは。
―――しかし、悪い気分ではない。
『お前もいつか分かるだろ』
師の言葉を思い出し、嫌な事を思い出したと顔を顰めた。
感情がうまく制御できない。
巣穴に屍を持ち込むと死臭が籠る為、入り口付近でホバリングすると、金を呼ぶ。
「そろそろ起きろ!」
「キャンッ!?」
驚いたように飛び跳ね、何が起きたのかと辺りを見回す金。
「ほら飯だ。寝惚けてないで食うぞ。上がってこい」
「上がって…?」
「岩肌を上れ。お前なら昇れるだろう?」
「…?」
入口に寄って来て、外へ顔を出す金。
下を見て、こちらを見て、一言。
「綺麗だね」
「…そうか」
何となく嬉しく思ったのは、どうしたものか。
どう反応すべきか困ったので、逃げるように上へ向かう。
口端が緩んでしまうのは、ドスジャギイを銜えるのに疲れたからと、そう思うことにした。
○○○
……何か凄い嬉しそうだったな。
白が物凄い速度で上昇していくのを眺めつつ、巣の入り口から飛び出す。
明らかに翼のある竜を前提とした巣だったが、関係ない。
ほんの少しだけ斜面になっているので、全力で跳ぶことを繰り返していれば、上までたどり着ける。
岩場で暮らしていたこともあって、こういった斜面昇りは得意だった。
2、3回跳び、白が寝転がる場所に着いた。
どうやら岩肌の上は、開けた場所となっているらしい。
予想以上に広い原に、驚きを隠せない。
「切り分けといたから、適当に食え」
「ん、ありがと」
ほい、と肉を投げられたので、素直に礼を言う。
が、既に肉を食べ始めている白は、こちらの方を見もしない。
仕方がないので、肉に口を付けた。
「……なぁ、金。ここの事を、どう思う?」
「…?
白の突然の質問に、口を動かしながら考える。
不思議に思ったりすることは沢山ある。
岩肌にあった無数の穴の事や、巣の中に描いてあった謎の絵。
挙げてみれば、暇がない。
でも、確実に言えることは一つだけ。
肉を飲み、本心を伝える。
「どうかは分からないけど…後悔はしてないね」
「…あぁ、そうか」
白の方を見れば、目を細め、“笑っていた”。
「そうかぁ…」
安心したように息を吐き、ここから見える水平線を眺める白。
その姿に、私は生まれて初めて“恋を自覚した”。
困惑する内心とは裏腹に、口は動く。
「…私は、きっと死ぬまで貴方のそばにいる」
「ならきっと、俺は死ぬまでお前のそばにいるのだろう?」
「それは…」
それは、私の言葉を受け止めてくれたという事に他ならなかった。
顔が熱くなるのを感じる。
「―――よろしく」
「あぁ、今更だ」
今だけは、白の顔が直視できそうになかった。