※この作品はR-18です。

金雷公は白疾風と幸せになるそうです   作:指ホチキス

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ケモナーとして質問です。皆様の好きなケモノは何ですか?
私は以前書いた通り、イヌ科が好きです。

……あの口の長さに興奮を覚えますね。特に狐。
ではでは、金が孤島に来てから一か月が経過。そんな十六夜です。


四章 孤島<交>
十六夜 孤島の白金


     ●●●

 

 

―――入ってきた居心地の良い風に、目を細める。

冬とは思えない暖かさに、私はめいっぱい体を伸ばした。

 

 

「んん…」

 

 

寝床から立ち上がると、巣の入り口から顔を出す。

今日もいつも通り、いい天気だ。

後ろを振り向き、先程まで横にいた愛しい竜の名を呼ぶ。

 

 

「ほら白、今日は何を狩りに行く?」

 

 

その言葉に、ゆっくりと体を起こした一匹の竜。

逆光によってこちらの顔が見えないのか、白が目を細めてこちらを向いた。

私の元気さを呆れるようなため息を吐いた後、のそのそとこちらに歩いてくる。

 

 

「まずは水浴びからだ」

「…そうだねぇ」

 

 

―――白と暮らし始めて30日が経過。

随分と互いの距離が縮まり、私は白からいろいろな事を学んだ。

渡り竜から教わったことのない知識を学んだり、知っていたことの理解を更に深めたり。

最近では、壁に掛かれた絵と、そこに書かれた文字も理解できるようになっていた。

 

手を前に着いてぐ…っと体を伸ばし、体をほぐすようにぶるぶると身を震わせる白。

 

 

「――最近いつも言っているが…もっと節制しろ」

「無理」

「…はぁ」

 

 

毎晩のように体を交える中と変化した私たちは、最早番(つが)いとも呼べない不思議な仲となっていた。

入口からエリア5へと飛び降りる私と白。

 

―――孤島の生活に慣れ始めた私は、愛すべき竜と共に暮らせ、幸せであった。

 

 

     ●●●

 

 

海で水浴びをすると毛がゴワゴワして逆効果となるので、真水の滝に打たれて全身の汚れを落としていく。

その際、私は鼻で、白は耳で警戒を怠らなかった。

謎の異音、又は金属の匂いがした瞬間に、私たちは滝の上へと逃げる。

 

―――私は未だ、ハンターと戦闘したことが無い。

 

白曰く、臆病は生き残るためには最適だ。などと言われた。

今の私なら分かるが、それは間違っていない。

 

強い水流で身を清めながら、全身に染みついた雄と雌の匂いを流していく。

水浴びは嫌いではない。

毛並みがしっかりするし、甲殻の艶が増す。

目立つ事はあまり好ましくないが、白が綺麗と言ってくれるので私は汚れても洗うようにしている。

 

 

「ガヴッ!?」

 

 

と、突然角に衝撃が走り、思わず吠えてしまった。

隣にいた白が、心配そうに顔を覗き込んでくる。

 

 

「…どうした」

「いや、角に衝撃が…」

「ん?…あぁ、石か何かが落ちてきたのか。不幸だな」

 

 

先に水浴びを終え、滝の下から抜け出した白が身をパタパタと震わせながら、そんなことを言ってきた。

 

 

「ぬぅ…」

 

 

怒りの矛先をどこに向ける訳にもいかず、唸るしかない。

私も滝の下から抜け、身を震わせて水を払う。

 

 

「…さて、そろそろ気球が来るぞ。奥へ移動しよう」

「あれ?もうそんな時間?」

「お前、寝すぎて時間間隔が麻痺してんじゃねぇの?」

「白も寝てたじゃん!!」

「はいはい、うるさいうるさい。行くぞ」

 

 

私の相手をする暇はないといった風にそう言い残して走っていく白。

向かう場所は孤島の奥、洞窟の中。

 

 

「…話を聞けッ!」

 

 

叫ぶと同時に白の背中を追いかける。

今日もいつものように、日常が始まった。

 

 

     ■

 

 

所変わってモガの村。

平和な海上に作られたこの村は、少し前に一匹の竜、白疾風が侵入したと騒ぎになった。

 

そんな村の船着き場で仁王立ち、静かに海を見つめる男がいた。

ちょんまげのようにまとめた長めの白髪に、緑の羽織。

その男こそモガの村の村長だった。

 

 

     ■

 

 

「村長!」

「…うんむ、暮らしはどうだ?」

 

 

背後から掛けられた声に、村長は振り向かずに返事をした。

村民の少ないモガの村では、全員を声で判別できる。

青年のような若い男の声はモガの村でも一人しかいない。

 

 

「のう、イルメラくん」

「あ、はい。皆さんにも良くして頂いて、何一つ不自由ないです!」

 

 

イルメラ・チガーノフ。

以前の竜侵入事件から、村長がギルドにハンターを要請し、派遣されたハンターである。

まだ少し若いが、実力はギルドにも信用されるほど。

この村に派遣されるにあたり、二つ名、白疾風を担当させられたと聞く。

そのイルメラが後ろでペコペコとする雰囲気が伝わって来て、村長は思わず苦笑した。

 

 

「年寄りを敬うのはいいが、もっと気楽に接して貰っても構わないぞ」

「いえ、そんな…」

「カッハハハハ!まぁ、イルメラ君の好きにすると良い」

 

 

ようやっと振り向き、村長がイルメラを見上げる。

イルメラの背丈は、村長よりも頭半分高かった。

そしてまだ引っ越し準備が終わってないからなのか、防具を身に着けず、短パンのような海パンだけ穿いた状態で直立するイルメラを見て、思わず吹き出す。

 

 

「村長…」

「あぁ、いや、どんな時も笑顔を忘れるなかれ。これが大切だ」

「心に刻み付けておきます!」

「固い固い!もっとリラックスしたほうがいいぞ」

「…はい。そうですね。あ、すみません。失礼します」

 

 

部屋からアイルーが呼んでいるのに気付き、慌てて走り去るイルメラを、静かに眺める。

 

……問題は山積みか。

 

最近は刃割れの白――白疾風もなりを潜めているが、いつ暴れ出すかが分からない。

村に寄った古龍観測隊の話によると姿が確認できないとの話だったが…念には念を。

そして白疾風以外に、最近は収まっていた地震も心配の種であった。

 

地震の正体は分かっているが、止められる確証はない。

 

 

「頑張ってくれよ。イルメラくん」

 

 

若きハンターに願いと期待を乗せて呟いた一言は、潮風に流された。

足元に錘で飛ばないようにしておいた数枚の紙を手に取ると、目を通す。

クエスト用紙と同時にギルドから届いた、各地の一か月間の情報が書かれた用紙だ。読んでおいて損はない。

 

……渓流でも二つ名の姿が確認できなくなった、か。

 

渓流で金雷公の姿が確認できなくなった、との情報に目が止まる。

そしてその下の一文、“豪剣の百合姫が嵐龍を討伐”にも目が止まった。

昔、タンジアの港でちらとその姿を見たことがあるが、美しい少女だったと記憶している。

 

……確か嶽陸くんに師事して貰ったんだったか。

 

知人の弟子だ。気になってしまうのは仕方ない。

――いつかイルメラをタンジアの酒場に紹介しに行こう。

そう心に決め、もう一度海を見る。

 

視界の先で、見慣れた静かな海が揺れていた。

 

 

 




3章から一か月が経過した世界線です。
金は賢くなり、白は気遣いが出来るようになりました。
ではでは、4章もよろしくお願いいたします。
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