※この作品はR-18です。

金雷公は白疾風と幸せになるそうです   作:指ホチキス

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改めて交尾って、良いですよね。
人であろうと竜であろうと、理性があれば艶めかしいモノへと変わります。

……しかし最近は、その絡みを書けていないので不満が募っていたり。
更新が大幅に遅れた事に土下座しながらの23話、投稿です。


二十三夜 星月を背に吼える金狼(姑と嫁)

     ○○○

 

 

金の、年齢に見合わぬ体の異常発達。

それが果たして、何を意味しているのかはわからない。

ただ少なくとも、彼女が正常では無い事だけはわかる。

 

本来彼女と同じ年の雷狼竜は、成竜とかろうじて呼べるかどうかという幼竜だ。

小さく薄い甲殻に、成熟しきらぬ鱗。

幼さの残る風貌は、青さすら感じさせる。

 

だが、彼女にはそのどれもが当てはまらない。

運ぶ際に触れ合ったからこそ分かるが、艶のある金色の甲殻と緑がかった鱗は相当に厚い。

だがしかし、年月を経て硬質したものとは違って“硬くない”。

厚く、柔らかさを兼ね備えた身を守る装甲。

それもまた、彼女の変質を表す様で面白い。

とまぁ、彼女への興味はいくらでも湧いてくるわけで。

だがしかし、彼女への嫌悪感が膨れ上がるのも、私は同時に実感していた。

 

 

「―――あーえっとね。生物ってそれぞれ子供を作るために体が育つの。君の体は雌らしく、子供を孕むために育って行くのね?」

「…うん?はらむ?」

「ん?んー…子供ってどこから来ると思う?」

「雌のあの、あー(ゴニョゴニョ)…から産まれる?」

「そうだね。そして腹に子を宿すことを孕むという。…というか君、羞恥心あるのか」

「恥ずかしいものは恥ずかしい…」

「ふぅん…中々いい教養だ。師を紹介してもらいたいぐらいだね」

 

 

彼女が起きた昼から時間も経過し、気づけば紺色の空に煌々と輝く星たちが顔を出し始めた夕の刻。

困った顔でもむもむと口を動かす金に苦笑しつつ、私は彼女が落ち着きを取り戻してからずっと、様々な知識を色々と教え込んでいた。

物事を教えながら、金の情報をできる限り引き出していく。

まるで教師と生徒のような関係すらも、喰の訪問以外に最近何もなかった私にとって新鮮だった。

そして同時に空との懐かしさがこみ上げ、なんとも言えぬ感覚に微妙な顔をする。

 

 

「?」

「いや、なんでもないよ。さて、脱線してしまったけど、生き物が生きる理由は分かった?」

「…子孫を残すため?」

「お!半分正解。そしてそれが、内訳の中で最も大きいだろうね」

「うちわけ…?」

「んー…内訳っていうのはね…」

 

 

分からない事は補足し、知らぬ事を押し込んでいく。

それによる、狙いは二つ。

 

彼女の知能を図ることと、自らが行う、生命としての間違いに気づかせること。

 

 

「…じゃあ、他の…内訳?はどうなってるの?」

「時には自らの生きている意味を見出さぬ者もいる。理性を持つが故に、自ら死を選ぶなんて酔狂な奴だっているのさ」

 

 

その言葉を聞いた金の顔は、不思議を体現したような顔であった。

 

 

「自分から死ぬの?」

「そうだよ。受け入れられぬ物事から逃げようと、死を選ぶ」

「んー…?それおかしくない?」

「うん。生命の理を逸脱する行為だね」

 

 

自殺なんて愚行を犯す生き物は、総じて理性を持つ。

種を残す、子孫繁栄を省みない行為は私も行なっているために何も言えないが、自らの命を無為に落とす必要がどこにあろう?

子を守るための囮ならいず知らず、無意味に死ぬ必要は無い。

 

 

「でも、それでもいるのさ。自らの死を望む連中がね」

「…わかんないや」

「それでいいんだよ。わかるという事は、同じ死を望む者って事だし」

 

 

さて、話を戻そう。

 

 

「君はまだ幼い」

「そう?」

「体は成熟していても、精神が成熟しきってないんだよ」

 

 

それはつまり、物事を知らぬ幼さ。

あまりにも無垢で、純粋で。

故に、異常を普通と認識した。

 

 

「―――いっそハッキリ言おう。君は異常だ。子孫を残すと言う生物の理から外れ、違う種である空と番になるなど、生きとし生けるものとして、異常と言う他ない」

「…なんでそんなこと言うの?」

 

 

泣きそうになる金を前にして、私はもはや言葉を隠さない。

 

 

「金、私は誰も言わなかった事をちゃんと言うだけだ。どうして君は、雷狼竜なのに迅竜と一緒にいる?」

「…ぅ」

「おかしいんだよ。違う種で交わるなどと。…君はただ、自分を受け入れてくれる空に寄りかかり、甘えていただけなんじゃないのか?」

 

 

こちらの声に、金は項垂れる。

そうなのだ。子を残す事を放棄してまで…生物としての意味を外れてまで性を貪るなど、もはや正常とは程遠い。

 

 

「自傷は、いつから始めた?」

「…覚えてない」

「そうだろうな。何故なら物心つき始めた頃、またはその前から君は群れから必要とされていなかったのさ」

 

 

一際大きく金の体が震えた。

 

 

「群が乱れるのを見越して、君にその対応をなした親や群れのリーダーは大したものだ。異物を吐き出そうとしたのだからな」

「っ…あ、ぅあ…」

 

 

震えが酷くなる。

 

 

「なれば君は、一体誰から欲されている?本当に必要とされているのか?―――空ですら、君を必要としていないかもしれないのに?」

「…嫌…ヤダ……」

 

 

身を伏せ、これ以上は聞きたくないとばかりに怯える金に、そっと囁く。

 

 

「先も言った通り、君が生きている理由はなんだろうね?」

「……」

 

 

動かなくなった彼女に、私は手を出さない。

 

……だって、この言葉って私が言っても…ねぇ?

 

異性に興味などない私。

違う種である喰を友に持つ私。

 

説得力の欠片すら無いったらありゃしない。

生きる意味?必要とされ無けりゃ生きていけない?

 

そこまで思い悩むのは、馬鹿のすることだ。

生きるのに意味なんてない。

他を蹴落とし害しようと、自らを貶め死に至ろうと。

そこに意味はない。

しかし逆に言えば、全てに意味がなければ全て意味があると言うことにも繋がる。

 

全て0ならば、最も高い値が0と言う様に。

全てに意味がないのなら、全てに意味がある。

 

なんともおかしな理論だが、私はどうしても空に意味がないなどと思いたくなかった。

 

さて、ではなぜ彼女をここまで追い詰めたのか。

それはもう単純だ。

“息子の嫁が嫌いだから”に他ならない。

 

……泣け!そして空から離れろ!どっか行け!!貴様に空は不釣り合いだぁぁぁぁ!!

 

息子を溺愛する姑って怖いよね。

ただ、その一言に尽きる。

 

 

     ●●●

 

 

気がつけば日は沈み、曇天の夜。

火はとうに消え、明かりすらない中で、私は雲を見ていた。

何もない、気まずい静寂。

 

 

「ッ」

「…?」

 

 

ふと、突如毛を逆立てた空に首を傾げる。

ここ一帯に敵の気配はない。

ギルドマスターにはハンターの立ち入り調整をさせ、ギルド本部には煉黒龍が地中で移動すると言う新たな情報を握らせた上で圧力をかけ、この島への監視を一時的に禁止した。

 

 

「?如何にしき空」

「ん、あー?…あぁ、いや、別に」

「なれば良いが…」

 

 

食事も終わり、金の話を聞き終えた私は、逃げられないよう空の尻尾を掴んだまま寝転がっている。

元より腕に怪我をした空では、飛ぶことにすら苦労するだろうが…

彼が本気を出すと少し面倒くさい。

ここから離れさせるわけにはいかないので、こうしているというわけだ。

 

 

「あー…んで?アンタが聞きたかったことはすべて話したんだが」

「…む?そうだったか」

「―――というかさ、時間稼ぎにも程があるだろ」

 

 

……過剰なぐらいが丁度良いんだって。

 

この時間稼ぎは星の所に行かせない為ではない。

怪我が酷すぎて、動かせたくないからこその時間稼ぎだ。

腕はなんとか固定することに成功したが、まだまだ動かして良いような状態ではない。

まったく、子の成長が予想以上で、焦った星の馬鹿が本気を出すからこうなるのだ。

 

 

「動くな。千切れるぞ」

「なら掴むなよ…」

「逃げぬと言うなれば離すことも考えてやろう」

「逃げねぇ」

 

 

ヒョイと離すと同時、砂浜を思い切り蹴飛ばして距離を取ろうとする空。

 

……速…ッ!

 

ギリギリで尻尾を再度掴むことに成功。

若干宙に浮いていた空は、腹から砂浜に着地した。

 

 

「くそッ!」

「偽りはよく…!?」

 

 

バッと海の方を振り返る。

未だ小さいが…聞き取った音は、確かにエンジン音で。

誰も来ないはずのこの島に誰かが訪れる未来が見えた私は、全力で焦った。

 

……ギルドに見られたら終わる…!

 

冷静さを欠いた思考が至った結論は、とりあえず砂で隠そう、という知性の欠片すらない結論だった。

 

 

     ●●●

 

 

「にゃにゃにゃ…ッ!?」

「…!?」

 

 

妙な事を口走ると同時、たしなめるようだった喰の表情が驚愕、狼狽、焦りへと変わっていく。

 

 

『うわ、やばっ!』

「?…人の言葉は分からんのだが」

『隠すもの…砂…無理!無理!?ちょあ、あ、あ!?』

 

 

こちらに砂をかけたりと、バタバタし出した喰に、引っ張られる尻尾の痛みから、思わず声を飛ばした。

 

 

「痛ぇ!」

「すまん!」

 

 

パッと離された手に、チャンスとばかりに地を蹴れば、尻尾に喰がしがみついてきて。

しかしそれは抑えるような掴みではなく、連れて行けというようだった。

 

 

「―――ッ!やがてでよし。飛べっ!」

「要するに飛べって事であってんだな!?」

 

 

軋む翼刃で宙を叩き、痛む腕すら気にせず飛び上がる。

 

幸運な事に、それを目撃したのは―――

 

 

「最上さん!あれっ!!」

「…オイオイ、マジでか!?」

 

 

喰の夫であり、常識人でありながらも常識を放棄できる最上だった。

最上は船上で空を仰ぐと、手に持っていたカジキマグロを落とし、大きく息を吸う。

 

 

「明後日までには帰ってこーい!!」

 

 

奇面族の青年ガルガムは、信じられないものを見るかのような目で最上を見ると、静かに舵を取り、タンジアの港へUターンするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ゛ー…アリシアとイチャイチャする予定が…ったく、カジキマグロどうすりゃいんだよ。…もう肴にして呑めばいいか!」

 

 

妻のいない寂しさに涙する酒飲みオヤジの愚痴を聞く事が決定したガルガムの目は、死んでいた。




完全に嫌な姑してる星。
いやー…これが書きたかった!(ニッコリ)

そして今回も一か月以上開けての更新、誠に申し訳ございません。
キャス配信やら、遠方での仕事やら、私生活やら、呑みやらで大変忙しゅう御座いましt((半分以上怒られる事で本当にすみません…反省しております…
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