本当に思い付きなのですが、私は個人的に白が一番好きだったり。
……何故かふんどしを思い浮かべた方は、多分私と同じ思考回路をしていますね。
ではでは、完結までの折り返しとなる二十五夜の始まりです。
―――歳を経れば経る程、無駄な考えが固まっていく。
もう私は、喰のように柔らかい考えが出来ない。
だからこそ、空が奪われるという事に対し、あまり好意的な目で見ることができなかった。
そしてその結果が、
「……何だこれは」
天空山に狂竜ウイルスが舞い始めるという大惨事に繋がった。
あの小娘は一体何をやらかしたのだろうか…
時刻は既に日没後。
願わくば、これ以上深刻化しないで欲しい。
「…行くか」
岩壁を蹴って飛び出すと、落ちるような速度で山下へと抜けて行く。
目指すは禁足地。
今日も星が綺麗な、良い日である。
●●●
天廻龍は、自らの領域を広げようと、まずは禁足地にて鱗粉を振り撒いた。
他の個体と縄張り争いを行わない様に。かつ、奪われない様に。
先程の騒がしさに苛立ちは覚えているものの、まずはこの縄張りを自らのものだと主張せねば始まらない。
紫に光る鱗粉が風に流れ、山肌を撫で、岩を這う。
天空山を自らの領地とし、誰も入れないように…
「へーい、随分と手が早いな今代は」
「…」
突如として背後から鳴き声が聞こえ、焦りを隠すようにゆったりとした動作で振り返る。
気配無し。音も無し。鱗粉での知覚すら、希薄である。
正体不明。どこまでも深い紺の光が二つ、宙に浮いていた。
「お、多少の知性はあるか。話だけ聞いてくれない?」
「……」
ニュアンスは何と無く分かったので、取り敢えず首を動かして話を促す。
「交渉をしないかい?君の生存と引き換えにね」
天廻龍は、未だ理解していなかった。
目の前の竜は、交渉という名を借りた脅迫をしに来たのだと…
○○○
天空山より手前、木々の生い茂る樹海。
夜だろうが蠢く気配は多く、決して静かではない
そんな中で、暗闇に包まれながらも私は必死に空の体に布を巻いていく。
これ以上の出血はまずい。ただでさえ疲労の身だ。
薬草とアオキノコをすり潰した回復薬もどきを塗った包帯だが、果たしてどれだけ効果があるものか…
焦り、そして後悔し。
やはり無理矢理にでも引き止めておくべきだったか、などと過ぎた事に思考が回る。
「…あぁ、やっぱり血の匂いには敏感だねぇ」
ふと人の言葉で呟いたのは、周囲の気配を察したからであり、片腕が骨折しているこの状況で、無理をさせて欲しくないという願望も含めたものだった。
「キィ…」
「…生憎、容赦はしないよぉ?」
人に混じり始めた時から愛用している、星の翼刃を加工して作ったハンターナイフを腰から抜くと、獰猛に笑ってこちらを伺う周囲の気配に威嚇。
治療すら満足にできていない空に数瞬目を向けると、片目を開いた。
「両目を開くと空に悪いんでね。戯れで殺すわけじゃないけど、襲いかかるならば食べない殺しを許しておくれ」
真っ赤な瞳に、血の鉄臭さで淀む空気。
威圧感によって小型、中型は蜘蛛の子を散らすように逃げ、残る大型も体を硬直させた。
そんな中で、平然と動く竜が一匹。
僅かに金の色を含んだ銀色の羽毛に、漆黒の黒い
「…ヒプノック?しかしこの色…?」
どこか興味と戯れを混同させた、金色の瞳を向ける、ヒプノックがそこにいた。
敵意は一切無い。
しかしながら、臆病なヒプノックが喰の威圧感に逃げず、かつ敵意もなく平然と近づいてくる様には大きな違和感があった。
「…」
警戒は怠らない。
いつ襲い掛かられても反応できるようナイフは下げず、向けたまま。
しかし銀のヒプノックはその事すら意に介さないように歩を進め、遂には喰の手前で立ち止まると、その顔を喰の目と鼻の先に下げる。
何のつもりかと喰が怪訝そうな顔をすると、ヒプノックは意識のない空を見て、その硬質な嘴を微かに開いた。
『…あの子の匂いがする』
「?」
喰は、竜の鳴き声を聞き取る事に長けてはいない。
鳥竜種の鳴き声など、分かるはずもなく。
「…ペッ」
「!?」
周囲に数度ブレスを吐いたヒプノックは、そのまま飛び去った。
周囲に群がっていた竜たちは眠り、喰は首を傾げる。
敵意は無く。
こちらに対して好意も無く。
目的も不明。
よく分からない竜だな、とは思いつつ、この隙をありがたく利用させていただこう。
深呼吸を一つ。
体を揺すって鱗を肌にぴったり合わせると、殆ど人に近い外見に戻った。
しばらくすれば血流も落ち着きを見せ、厚さの薄い赤の鱗が肌に馴染んだ色と見えるだろう。
とりあえず、あまり時間を無駄にはできない。
空を揺すると、耳を撫でた。
「起きざるば、星が忍び寄りて来ようぞ」
「…ぅ」
ふむ、やはり彼の目を冷ますにはこの言葉が一番だ。
彼が幼竜だった頃、私がいる時は寝坊しそうな度にこう言って起こしたものである。
「…喰…何で…?ここは一体…?」
「しかと教えてやらむぞ。いみじく聞くべし」
そうして、事の顛末を耳元で囁いてやるのだった。
○○○
「…して、動けようか?」
「片腕が痛い…な。あと尻尾でバランスがとれん」
どうも節々に違和が残るらしく、グイグイと体の各所を伸ばしていく空。
どうやらバランスがとれないらしい。
失血の事もあるし、あまり無理はして欲しくないのだが…
「飛ぶのは…まぁ、可能だな」
「危なかろうに」
「でも飛ぶしかない。例え落ちようと、俺は金を迎えに行く」
「……成程な」
こんな事を言われては、止めることもできない。
……随分いい男になったねぇ…
男なんて馬鹿だ。
どうしようも無い馬鹿で…だからこそ、そこに惚れる。
近寄って白と紺色の毛が混じる頭を撫でると、紫の瞳が揺れる。
「我を置いて行け。一人で帰れよう」
「…いいのか?」
「早よう行けい。一人前の雄を引き留めるなど、我には荷が重い」
「そうか」
痛む腕を羽ばたかせ。
フラフラと翼刃で宙を叩き。
「…んじゃ」
「星の子よ、いつか、また」
「……おう、またな」
夜空へ吸われるように、フラフラと上昇した空は、天空山に向けて滑空を初めて、いつしか見えなくなり。
地面に落ちていた彼の鱗を拾うと、空にかざした。
「…空…我が子にも等しき子よ…」
……随分と、立派になったな。
がっしりとした体の感触を思い出し、くすりと笑う。
「私にも子供が欲しいから、早く子種を仕込んでくれないかな。ねぇ、むっちゃぁん…」
お腹をさすりながら遠い男を想い、幸せを思って頬を染めた。
○○○
宙を叩き、白は思う。
何故、ここまで金の事を好くのだろうか、と。
宙を叩き、白は応える。
好くという感情は、理由を必要としないのだ、と。
宙を叩き、白は想う。
何故彼女が欲しいのか、と。
滑空を始め、白は改めて応える。
俺には金が必要なのだ、と。
ふと白は空を見た。
満面の星空に走る、白金色の流れ星。
無数の星々を横切る、目新しくもないその流れ星が不思議と非常に美しく見えて。
「……フ―――…」
痛む腕を気にしながら、鼻息を吹き出した。
雲を切り、青の光が横へ抜けていく。
天空山に着くのは、夜明けになりそうだった。
●●●
気がつけば、夜になっていた。
高度が高いせいか、微かに寒く。
金はまるで幼い頃のように、岩場の陰で丸くなっていた。
「ルォッオッオッ!!」
「ヴォォオォォォォォオオ!!」
……何か吠えてるよ…!?
かなり凹凸の激しい岩場に隠れているために、周囲から見つからない反面、金には周囲が見えていない。
だからこそ、狂竜ウイルスに感染し始めた竜たちに気がつけないし、本人もその狂竜ウイルスを吸い込んでいることに気がつかなかった。
「ッゲフ…」
故に、咳き込み、体調の異変を感じ取ったのは、深夜の天空山が大分騒がしくなってきた頃だった。
明らかにおかしい周囲の気配。
落ち着きの欠片は無く、夜だというのに寝静まる気配がない。
恐怖を得つつもひょっこり岩場から顔を出せば、異様な雰囲気の天空山が見えて。
……ぴゃぁあああああ!?
狂気に呑まれた竜達が蠢く光景。
挙動がおかしく、瞳に赤い光を宿す紫の体。
さながら死体が歩くようなその光景に、流石にマジ泣きする。
そして逃げた。
恐怖のあまり岩場から飛び出し、隠れるのではなく、逃げる事を選んだのである。
しかし夜とは言え、その金色の甲殻は目立つ。
更に言えば、竜達は本能的に、止まっているものより動いているものの方を目で追ってしまう。
故に、狂竜化した竜達が、濁った思考で本能のまま金を追いかけ始めた。
逃げたが故に、追われる。
行動を起こしたからこそ、金は泣き目を見ることになる。
「キャインキャイン!!?」
ドタドタと天空山を走り抜け、高低差を利用し、地を跳ね岩を跳び逃げ回り。
そしてその先で見つけた、目の赤くない竜。
「…ゥ、ォエ…ッ!!」
その姿を確認すると同時、恐怖から思わず吐いた。
ダラリと口端から胃液を垂らし、震える体で後ずさる。
そこにいたのは、雷狼竜だった。
「グルル…」
暗闇と焦りで気がつかなかった故に、近づき過ぎた。
明らかにこちらへ警戒を向ける雷狼竜に、手足が硬直して動かない。
動け、逃げろと脳が司令を下すが、恐怖がそれに勝り、体が動くことを拒否する。
喉奥が痙攣し、胃液が逆流して思わず噎せた。
「ゥ゛ェッ!オ゛…ッ!!」
伏せるようにしたまま、動けない。
鼻に酸っぱいような臭いが抜け、それが更に吐き気を誘引し。
震える体は息すらも阻害する為、胃液を飛沫として吹き出しながらも、必死に呼吸を行う。
息をするだけで必死。
彼女の心的外傷は深く、大きく。
決して癒えることのないそれは、生きる上での枷となっていた。
「ォオオオ―――…ッ」
「…、…ッ!…!」
吠える声を聞き、ギュッと目を瞑る。
耳をたたみ、必死に呼吸を行い。
……白…!白!!
番を想い、必死に生きる道を歩む。
ここで死んでは彼に会えない。
それだけが怖く、何より怖く。
立ち上がると目を瞑ったまま逆を向き、一目散に駆け出した。
岩を蹴ろうと、爪が剥がれようと。
白に会うことだけを考え、ひたすらに逃げる。
例え彼が、私を愛していなくても。
私が、一方的に身を寄せているだけでも。
―――それでも私は、彼だけしか想えない。
決して振り向けない。
いつのまにか振り切っていた赤い瞳の竜達に見つかろうがなんだろうが関係無い。
周囲の雷光虫を走りながら集め、集め、集め。
ある程度集まった事を確認すると、全力で吠えた。
「―――――ッ!!」
金色の雷が岩場を走り抜ける。
その眩さに、視界を奪われた竜達。
金色の雷を纏う金雷公は、駆ける。
一匹の強さを持ち、寄り添うだけではなく、支え合える強さを持って。
……白に会うために…ッ!
強い口調でする事を呟けば、足の震えが止まり。
愛しい番を想えば、岩を蹴る脚に力が入る。
纏う金雷がパリパリと音を放ち、背電殻を全開にすれば、固まっていた筋肉を活性化させ、あっという間に後ろとの距離を離していく。
その顔には、決意と覚悟があった。
●●●
「…つまり、嫌だと?」
目の前で鱗粉を撒き散らし始めた天廻龍に再度確認の意を込めて、目を細める。
提示したこちらの提案は簡単。
鱗粉を撒き散らす事をやめ、禁足地から出るな。
そうすれば、生かしておいてやろう。
ずっと昔から、代々天廻龍に言っている言葉だ。
まぁ結果としては空気汚染濃度上昇。
知覚能力を上げるためとはいえ、この濃度は中々類を見ない。
完全に“やる気”だ。
「……」
体を揺すって逆立てていた毛を寝かせると、姿を見やすくさせてやる。
……さて、これからどうしようかな。
軽く動けば淀んだ空気が乱れて察知され、例え動かずとも、吸い込んだ粒子が肺に居座る事で吐く息を汚され、その息に含まれる粒子で察知される。
「ギ、ギギィギギギ…」
鱗粉を撒き散らし終えたのか、軋むような鳴き声をあげる天廻龍。
察知能力も上々。知性を持つ点でも、相当な強さを誇る個体だろう。
「……そうか。嫌なら、戦うしかないよなぁ…」
シナト村にどれ程の被害が及ぶかは分からないが…
こうなってしまえば仕方がない。
狂竜ウイルスの充満する中、“思い切り息を吸った”。
「…ギ」
こちらの行動に不審を得たのか、警戒を強めて距離を開ける天廻龍。
まぁ、しばらくすれば天廻龍自身が分かるだろう。
私が一体、どうなっているのかを…
●●●
シナト村の大僧正を二代遡った程度には昔。
怪我をした竜人族の娘を保護していた私と喰は、天廻龍の鱗粉によってその子の容体が悪化し、息を引き取った事に激怒し、天廻龍を惨殺した。
その時に相当な量の鱗粉を吸い込んでしまい、しばらくは体調不良に苦しんだものである。
喰は体のつくりが違うからか、すぐさま回復したのだが、私はとんでもなく悪化したのだ。
発熱、吐き気、頭痛、眩暈に失神など、酷いものである。
鱗粉を吸い込んだ事による何かの病であることはすぐに察しがついた。
吐き出した胃液が紫色だった時は、流石に死を覚悟したものだ。
そして、三十日が経過した頃だったか…
失神なのか眠りなのか、訳の分からない淀みから覚めた私は、自分の体が変色している事に気がついた。
あぁ、遂に狂い動く彼らのようになってしまったのかと思えば、そうでも無く。
普通に生きていて、かつ妙に体の調子が良く、皮膚が硬質化していたのだ。
しかし完治したわけでも無く。
体からボフボフと紫の粒子を吐き出す良く分からない状況になっていた…
●●●
吸い込めば吸い込むほど、あの感覚が蘇る。
血が狂竜ウイルスに犯されているのか、少しずつ紫を帯びる体。
一時的だが、妙に気分が良い。
「ッ!」
「…どうした?そんなに怯えて…」
遠くから粒子の塊を吐き出す天廻龍に、笑いかける。
当たった固形物にも近いブレスは、硬質な音を立てて弾けた。
残念だが、この状態ではハンターの刃すらめり込むことはない。
少しのぎこちなさは感じるが、ほんの少しだ。圧倒的な硬さと鋭さを見せてやろう。
「逃げなくていいぞ?結果は変わらないから…」
ゆったりとした動きで近付く。
いくら鱗粉を撒き散らそうが、ブレスを吐き出されようが余裕だ。
吸い込んでも害のない鱗粉など、霧にも等しい。
「―――ッ!ガァッ!!」
「おっと」
距離を詰めてその巨大な腕を振るわれるが、まるで痛くない。
硬質な音を立てて刺さらない爪を見て、鼻で笑う。
「残念だったね」
体を半身に右前足をつき、側転の要領で左翼刃を顔の真上から叩き落とすように振り下ろした。
向こうが透けそうな程薄く、硬い翼刃は、天廻龍の厚い甲殻をいとも容易く切断し、頭蓋を抜け、脳を切り。
顔を二つに割られた天廻龍は、断末魔の悲鳴すらあげずにその場に崩れ落ちた。
時折痙攣するその体を見下ろし、息を吐く。
……天空山の生態系が少し乱れる事を大僧正に伝えねば。
シナト村の人々との関わりは深い。
新たな子が生まれた際には、親が天空山の奥まで立ち入って私に報告をする程だ。
口の軽い子供達には伝説として語られているが、大人は皆私の事を知っている。
そもそも岩場だった閉鎖的かつ住み心地最悪のあの場所を、大昔にシナト村という今の形にしたのは、私や喰なのだ。
関係が深くてもおかしくはあるまい。
「…ん?」
「キャインッ!?」
ふと視線を向ければ、震える金の狼。
帰って来たのかとじぃ…と見つめれば、ボロボロと泣き始める。
「…どうした?そんなに怯えて…」
心情がそのまま口から出た言葉だが、これが一番悪かった。
何故なら、先程の天廻龍に向けて放った言葉と、全く同じだからである。
●●●
雷狼竜から逃げ切ったと思った瞬間、すぐに体を揺すり、纏った雷を逃して隠れると、セイの場所へ行こうと、どうにかこうにか金の龍がいた場所に戻って来れば、セイが紫色になり、あっという間に金の龍を殺してしまった。
あまりの強さに言葉を失い、後ででいいやと怖さから逃げようとすれば、気づかれてしまう。
「…グルルァ、ギィイァア…」
この発音は、さっきも聞いた。
翼刃で頭を真っ二つにする直前に、龍に向けて放った発音と同じなのだ。
察するに、動くな、今から殺す。
落ち着きと知性を秘めていた紺色の瞳は今や狂気を宿した赤みを帯び、先程まで私を追いかけていた竜たちと同じで。
あの強そうだったセイまでもがこうなってしまうなんて、なぜか悲しく。
そして次に考えたのは、死への恐怖だった。
セイに襲われた場合、勝ち目などない。
あの翼刃で真っ二つにされてお終いだ。
「…おーい?」
「アォオオオオオオオン!?」
と、いつのまにか目の前まで近付いていたセイに思わず悲鳴をあげ、集まっていた雷光虫に金雷を分け与え、全力で纏った。
筋肉の活性化が始まり、背中の背電殻が全開になる。
雷光虫たちの疲れも少なく、絶好調に近い。
「…あー初めてちゃんと纏ったとこ見たけど綺麗だな」
「え、あ、ありがとう…」
しかしまったく戦意の無いセイに、こちらの戦意が全て削がれた。
「とりあえず目立つから雷逃して」
「う、うん…」
素直に従って雷を逃すと、首を傾げた。
「セイ?」
「ん、どうかした?」
「なにその色。あと大丈夫?」
「心配するな。私は強いから大丈夫だよ」
その場に突っ伏したセイは、大きく息を吐く。
「んで、どうした?」
「…私やっぱり、白が好き」
「種も違うのにか?」
「関係無い。私は好きなの」
セイの赤い瞳が細まる。
「…あの子は、お前の事を嫌いだと言うかもしれない」
「その時は、好きになってもらえるように頑張る」
「そう言う話じゃ無いんだ!…種が違うっていうのは、そういう話じゃ無いんだよ」
セイは目を閉じると、大きく息を吐いた。
「私は、あの子の番には、あの子に理解のある同じ迅竜がなるべきだと思う」
「……」
「…友人ならまだしも、私はアンタに空を任せたくは無い」
その言葉に、思わず泣きそうになる。
白は私と一緒にいて、幸せになれるのだろうか?
私は、白と違う種だから番になってはいけないのだろうか…?
「…それでも俺は、金を選ぶ」
ふと聞こえた、ほんの少し会っていないだけなのに、泣きそうなほど懐かしい声。
「白ッ!!」
すぐそばに降りた白に寄り添うと、白の体に鼻を埋め、思い切り匂いを嗅ぐ。
不思議と、涙が出てきた。
「…空」
「よぉ、ババア。金を随分と虐めてくれたらしいな」
白の紫の瞳が赤くなり、興奮している事が伺える。
「…お前は、違う種を番に選ぶのか?」
「あぁ、愛せない奴らより、俺は俺を選んでくれた金と共に行く」
「………」
セイは赤い目を私に向け、大きく溜息を吐いた。
「去れ。何も言うまい」
「金を連れ去っておいて勝手な事を…」
セイの歪んだ表情に、白が苦言を呈する。
しかし暫く見つめ合った後、無駄だと判断したのかシュルシュルと尻尾が体に巻きつき、白が鼻から息を吹き出す。
「…じゃあな、ババア」
「セイ、バイバイ」
別れの言葉など聞こえぬのか、セイがこちらなどもう見ないと言う風に、山の方へ跳び去って行く。
その後ろ姿を見て、白が面白くなさそうに呟いた。
「“いつかまた来い”だとよ」
「え?」
「…素直じゃないババアめ」
白が大きく溜息を吐くと、翼刃で宙を叩く。
「腕を怪我してるから、帰るまでに時間がかかる。それまでに、何があったのか話してくれ」
「うん、分かった。……ねぇ白」
「あ?」
彼の匂いを受け、彼の声を聞き。
彼の姿を見て、心の底から言葉が出てきた。
「愛してるよ」
「……俺もだ」
夜明けは、近い。
●●●
「…坊ちゃん」
「…ッ!?…星様…何やら天空山の様子がおかしいと思っておりましたが、何かありましたか…?」
天空山とシナト村を繋ぐ橋の村側に降り立つと、その橋の傍に立っていた大僧正に声をかけた。
「天廻龍が来ていた。殺したが、死体の片付けを頼んでも良いか?」
「…出来れば下の岩の窪みに落としておいて下さると助かります。星様は…縄張りを張りますか?」
「粒子が出続ける限りはいつも通りそうしとく。竜人族への狂竜ウイルスの影響も考慮しておきな」
狂竜ウイルスを克服した竜は、極限化状態と呼ばれると、喰から聞いた。
私の今の状況はそれだ。
しばらくすれば狂竜ウイルスが抜け切って通常状態に戻るのだが、それまでは狂竜ウイルスを体から放出し続けるため、私は天廻龍が来ないように禁足地で縄張りを張る事にしている。
「勿論です。ついでに言えば例のハンター様がいらしていますので、誤魔化すのが少しばかりめんどくさそうです…」
「あぁ…まぁ、頑張れ」
適当に流すと、大きく息を吐く。
「空が来てたんだ」
「!空君がですか」
「…空の嫁と話してたんだがな」
「嫁!?いつのまに!?」
「なんだ、その…いい嫁だったよ」
「…そうですか」
妙に大僧正の笑顔がなんか癪で、思わず尻尾で叩いた。
●○●
●○●
「…ただいまぁ」
「あぁあああ…疲れた…腕いってぇ……」
三日をかけ、休憩を入れながら孤島まで帰って来た私たちは、大きく息を吐いて寝転んだ。
白の腕は休憩中に色々施し、なんとか主だった悪化も見られず、こうして夜明けに帰って来れて何よりである。
「……どっこいしょ」
「…おい?」
そんな白をひっくり返すと、腹を上に向けた。
もふもふとお腹に鼻をつけ、匂いを嗅ぐ。
すると、
「……なんか出てきた」
腹の毛をかき分け、白の雄が硬くなっていた。
充満する独特の匂いに、一気にスイッチが切り替わる。
あっという間に秘裂が湿り気を持ち、大陰唇を伝って粘り気の強い愛液が石床を汚す。
「グルルル……」
喉を鳴らし、これからする事への期待と、懐かしさにぞくりと体が揺れた。
野外では白の疲労と周囲の警戒でいっぱいいっぱいだったため、事に及ぶのは結構期間が空いている。
白も何だかんだ期待していたのか、抵抗するそぶりはない。
白の上に乗ると、腰を何度か振り、亀頭をしっかりと秘裂に当てがった。
「クゥ…」
甘い鳴き声が漏れ、ゆっくりと、ゆっくりと腰を下ろしていく。
懐かしい熱さが膣壁を掻き分け、奥へ奥へと入ってくる感覚。
そのあまりの快感に、声にならない声が、吐息として漏れ出した。
ごつりと硬い奥へ白の尖った亀頭が刺さる快楽に、背をのけぞらせる。
激しく動けば壊れてしまいそうなほどの快感。
この状態でいるだけで、軽く絶頂してしまった。
「ッ」
白がゆっくりと腰をうねらせ、まるで捏ねるような刺激が腹の奥に響く。
気持ちの良い箇所が奥へと押し上げられ、前足を痙攣させるほどの気持ちよさが全身を走り抜けた。
―――気がつけば、更なる快楽を求めて獣のように腰を振っていた。
粘質な音が狭い巣内に響き、愛液の濃厚な匂いが充満する。
体重をかけたピストンにより、ゴツンゴツンと強い刺激が奥を押し上げ、刺し貫ぬくような錯覚すら得ていた。
彼の腹は愛液で濡れ、垂れた唾液が顎を伝って白へと垂れる。
すると白はこちらの肩を掴み、まるで腰の動きに合わせて動かすようなタイミングで押してくる。
「ギャゥ!ガッ、ギャン!」
白の息は荒く。
膣壁を掻き分け、奥を押し、肉を打つ音が響き。
久し振りの交尾に、全てを忘れて快楽に身を染める。
酷く火照った胎を鎮めて欲しい。
ピストンなんかじゃ足りない。
白の熱い精で、この熱を冷まして欲しい―――
貪欲で淫乱な雌が、快楽を求めて体で暴れ、腰を振らせるのだ。
すると白が、こちらの顔を前足で軽く引き寄せ、静かに呟く。
「ッは…愛してるぞ、金」
「キュッ――――!?」
甘い言葉に、体が跳ねた。
途端に膣が締まり、彼が限界を迎える。
「シュ、ィッ!」
「―――」
熱い精液が奥に当たり、全身を痙攣させる。
大きな絶頂が目の前を白く明滅させるほどに襲いかかったのだ。
しばらくしてぐったりと彼の体に身を預け、時折震える体を気にせずに一言。
「…私だって、負けないッ、ぐらい…愛してる…し」
ぬるりと抜けた彼の肉棒によって栓の無くなった秘裂からは精液が逆流し、床を白く汚す。
白の体温を感じようと思い切り抱きつくと、息を吐いた。
「幸せ」
「幸せか」
「…うん」
交尾後特有の匂いが私たちを包み。
「…俺もだ」
巣穴から入ってくる朝日は、非常に眩しかった。
更新遅れて本当にすいませんでしたぁああああ(五体投地)
本当は最後のシーン入れる予定なかったけど、交尾を書きたくて書きたくて書きました。予定外だと思ったが、欲望を抑えられなかった…
さて、この作品は50話完結予定ですので、このお話で折り返しです!
次話更新は恐らく番外編なので、少々お待ちを…