※この作品はR-18です。

金雷公は白疾風と幸せになるそうです   作:指ホチキス

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評価いただきましてこれは頑張らねばと使命感。
書き始めれば止まらないもので、どうにか更新までこぎつけました。

……いつの間にやら新章突入です。
新天地はあの場所。混沌とした生態系蠢く三十一夜が始まります。



七章 未知の樹海<慰>
三十一夜 言葉無き獣


未知の樹海。

ギルドですら全容の掴めない、謎の地域。

古龍を含む多種多様な竜の目撃情報、再現不可能な装飾品に武具など、ギルドの研究者が常駐している程に、その“未知の樹海”には価値があった。

 

しかし、ハンターにとってその場所は、悪夢と呼ぶに相応しい。

視界と動作を遮る蔦、木々、遺跡。

獣竜、牙竜、飛竜、古龍と予測のつかない竜種に乱入される可能性。

これらの要因に、殆どのハンターは良い顔をしないだろう。

 

だが、リターンはあった。

“再現不可能な”装飾品に武具。

ただその一点が、ハンター達を呼び寄せる。

 

未知の樹海。

 

そこは、混沌とした生存競争の舞台。

そんな場所に、今日もまた新たな竜が二匹飛び入った。

 

樹海は全てを受け入れる。

混沌の生存競争は、来るものを拒まない。

 

 

○

 

 

そこに入った経験は、孤島に巣を作る前だった。

天空山から出て、どこに巣を作ろうかと悩んでいた時期。

ふらりと入ったその樹海は、とんでもない場所だった。

 

鬱蒼と茂る植物。

それらに埋もれた遺跡群。

そして何より、“速すぎる食物連鎖”。

 

当時、様子見から一時的な寝床とした遺跡は近くに人と竜の気配が無く、妙に静かだった事を覚えている。

だから、俺は迷いなくそこを選んだ。

 

一直線に空を抜けた先。

視界には密林が広がっている。

体力は既に限界を迎えていた。

 

短くなった尾はバランスを崩し、飛行を困難なものとした。

飛行中に竜と遭遇すれば、確実に負けていただろう。

 

だが、飛び切った。

金を抱えた状態で飛び切ったのだ。

 

 

「…」

 

 

金は意識を失ったまま、動いていない。

見覚えのある遺跡に降り立つと、そのまま倒れこむ。

大量の汗が遺跡を濡らした。

 

どれだけ飛んだのかも覚えていない。

空は暗く、数日は経っている気もした。

 

相変わらず、ここには何の気配もない。

不気味なほど静寂な遺跡の影に金を引きずると、体を丸めた。

体が重い。少し休もう。

そう考えるも、無意識のうちに朦朧とした思考を手放していた。

 

 

○

 

 

目が醒めた。とは、少し違う。

気がついたら、そこにいた。

ここは何処だろうか。

 

何も思い出せない。

頭がぼんやりしている。

 

体を起こそうとして、そのまま崩れ落ちた。

踏ん張ろうとしたはずが、地面の感触すらなく。

 

視線を落とせば、前足が無かった。

 

 

「……?」

 

 

訳が分からなかった。

しかし自覚してしまえば、意識を醒ますほどの激痛が体を走り抜ける。

 

 

「ガ、ァッ!!?」

 

 

背を仰け反らせ、痛みへの拒絶が喉を震わせた。

地を転がり、許容できぬ感覚に吼える。

歯を剥き出し、血を吐くように。

 

 

───ふと、何かの匂いがした。

 

何の匂いかは思い出せない。

ただ、その匂いは大切なもののような気がして。

痛みが僅かに引くのを感じて、軋む頭を地に擦り付けた。

 

 

「…金?」

「……」

 

 

そこに何かがいた。

視界が霞んでいる上に暗いので明確な姿はよく見えないが、その姿には見覚えがあるような気がした。

 

何か、伝えたいことがあった。

燻るような感情に、顔を顰めた。

敵意を抱けない。近くにいても不快さも警戒も抱くことは無く。

 

 

「がぁぁ…」

 

 

日が顔を出し、夜が明ける。

日光の下に良く見える、黒白の体に、紫色の瞳。

この竜を見て心に突き刺さるような“辛さ”は一体何なのか。

 

―――そこの竜を、知っている筈の竜を、私は思い出せなかった。

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