日が天頂へと昇り、暖かな風が鼻を撫でる。
知っている湿った空気では無い。
目を開ければ、白黒の竜がこちらを覗き込んでいた。
「グァ!?」
「…」
驚きから体を起こすが、痛みで硬直する。
ゆっくりと顔を上げれば、紫の瞳が心配そうにこちらを見下ろしていた。
「しぃい」
『なに言ってるかわかんないよ』
「…?し、しゃぃい」
『わからないって』
首を傾げて紫の瞳を瞬いて顔を覗き込まれるも、わからないものはわからない。
ただ、私が知っている誰よりも敵意が無いその存在が、どうにも落ち着いてしまう。
この竜が誰かも分からないのに。
───金?
誰か、知らないはずなのに。
○○○
「ガァア…グルル…」
「喋れないのか?」
僅かに唸る金の瞳を覗き込めば、充血した金瞳がこちらを見返す。
早朝に目を覚ましたばかりの時に比べれば、大分落ち着いて見えていた。
しかし未だに話す様子は無く、唸っているばかりで意思の疎通が出来ていない。
記憶の混濁が起きているのか、はたまた言葉を忘れてしまったのか。
擦り寄って来るあたり、こちらの事を忘れていないとは思うものの、彼女にそれを問うたところで答えは返ってこない。
「…痒いのか?」
「ぅー…がー」
ボリボリと後ろ足で甲殻を掻く様子に、何処か子供らしさも見える。
子供らしさ…子供らしさ?
ふと気になったので首筋を甘噛みした。
「きゃひッ」
「…」
擽ったかったのか、僅かに身動ぎをして首を竦めた金に対して愕然としてしまう。噛み跡の残る首筋を噛めば、甘ったるい声を漏らして秘裂を濡らすのが金だ。
拒否に近い反応を示すという事は、言葉どころか今までの記憶すら忘れてしまった可能性が大きい。
だが、風に乗った香りに、少しだけ安心した。
───“体は忘れていなかった”らしい。
だらり、と溢れた愛液が地を濡らしている。
金も困惑しているのか、少しばかり慌てているように見えた。
記憶が曖昧になっても、体は快楽を求めているのがなんとも金らしい。
「きゅぅ…」
「あー…少しなら付き合ってやるから動くな」
こちらの言葉は理解していないだろうが、なんとなく話しかけてしまう。
痛みと困惑で動けない金の尾を持ち上げ、秘裂を前足の先で擦った。
愛液で毛がベショベショになるが、些細な事だ。
「きゅぅ…ッ、くるる…」
「動くなっての…」
自ら腰を動かして擦り付ける金に呆れるも、その快楽を自ら求めに行く姿に、この竜は金なのだと強く感じてしまう。
転がすような声で唸り、ゆっくりと陰核を押し付けてきた。
傷の痛みもあるはずだが、金がそれを気にする様子はない。
「きゅう…ッ、ハッ、ハッ」
舌を出し、息を荒げる姿は獣のようで。
いつもの様な甘えた表情は無く、ギラついた瞳が爛々と光っていた。
理性を知らない、本能の獣。
最早こちらが動かなくとも、金が勝手に動いている。
愛液で潤滑させ、肥大した陰核を潰す様に刺激を加えて喉を震わせた。
やがて、陰核を強く押し付けながら背を丸めて体に力が入る。
「───ッ!!」
ビクリ、と腿が震えた。
絶頂を迎え、陰核を擦りながら余韻を楽しんでいる。
すっかり満足したのか、前に倒れて地に伏せて。
「あーあー、緩くなってるわこれ」
外気に晒され、腰を上げているせいで丸見えな秘裂から黄金色の液体が放物線を描いて地を濡らす。
ひくひくと淫らに蠢く膣口は、尿と愛液を混ぜて濡れて糸を引いていた。
だがその光景に、今は興奮を覚える事も無い。
「…だから動くなって言ったのに…」
「グルル…ヴ、ヴゥ…」
麻痺していた痛みが戻り始めたのか、唸り、蹲る番に寄り添う。
キノコと薬草を噛んで唾液で混ぜて塗ってやれば、ふと懐かしさを覚えた。
出会った頃に、金にこの薬を塗ってもらった記憶を思い出す。
懐かしい記憶だ。古く無いはずなのに、随分と昔の様に思えて。
「愛してるぞ、金」
「───」
答えない雌に、目を伏せて薬を塗った。
仕草や鳴き声が金なのに、まるで違う竜かのように思えてしまう。
“金”が死んでしまったかのようで、あまりにも寂しくなった。
顔を擦り寄せれば、知っているあの顔より、幾ばくか幼くあどけない顔が頬を擦り寄せてくる。
それは、隣にいるのに、心の底に穴が開いてしまったような感覚だった。