───未知の樹海に、銀の羽が舞う。
『…………』
空より地を見下ろす理知的な瞳は、未知の樹海の異様な生態系を覚えていくかのようによく動き。
『あれ?』
遠く、それは太陽と例えるには異なる、懐かしい色が見えた気がして、嘴を鳴らす。
鳥竜の鳴き声にしてはどこか“飛竜のような”笑い声を零し、翼で空を叩いた。
●●●
───肉を食い、体を交わらせ、寝る。
ストレスをあまり溜めずに回復を優先していたおかげか、傷跡が突っ張るのを嫌がる素振りを見せながらもようやく金がゆっくりと、しかし自発的に歩くようになった。
欠損した前足はまだ柔らかい甲殻と毛に埋もれ、バランスは悪いが地に付いても激痛が走るという事も無くなって。
「ただ、なあ」
「わふ……」
驚きから毛を逆立てたまま、どこか困惑したように息を漏らしてこちらへ密着する体温を感じつつ、白は溜め息を吐く。
「異常は残ったか」
足元に転がる、膨張し内部から破裂したかのような雷光虫の死骸に目を細めた。
恐らくは運動能力の低下を補おうとしたのだろう。
金が白から少し離れた位置で蓄電殻を用いて虫を寄せたのだ。
すると毛に潜ませようとした数匹の虫が突然赤く発光、暴れるような挙動を見せた後、破裂したのである。
これに驚き、全身の毛を逆立て情けない声をあげて飛び上がり、その勢いのまま白へと飛びついた、というのが現在までの流れであった。
「異常、異常ねえ……治し方も分からないし理由は───まあ、そうか、アレだよな」
感染による、蓄電殻の変質。
毛並みに淡く金の色が灯っているあたり、以前と全く違うというわけではないようだが、どうも正常とも言い切れない。
「動けるか」
「わ、わふ、きゃいーん……」
「何情けない声出してんだ」
折りたたまれたかのように縮こまる金の背を鼻先で押し、歩けと促す。
暫くぐいぐいと押していれば、渋々と足を踏み出し、蓄電殻の活性化に伴って僅かに向上した肉体の動きから、走り未満程度の速度での歩行を行うことができた。
「ふ、へっへっへっ」
「よかったな、動けて」
嬉しそうに舌を出して喜ぶ金へ、身を伏せながら笑う。
あの頃と比べれば満足な動きと決して言えないが、それでも自らの足で歩めるようになったことは喜ばしい。
「……」
前に、戻りつつある。
金の肉体が、独りで動けるようになったとき。
己の元に居続けてくれるかどうかに確証が持てず、その笑みに影が差す。
交尾において向こうから誘ってくれる、好いてくれている、つがいとして見てくれている。
そう、思える。
思えている程度には、こちらを信頼してくれている節が見える。
しかしそれでも。
「んがぁ、ぐぅ」
「俺はここに居るから遠くには行きすぎるなよ」
「わぅ? いしゅ、ぎぃぐぁ、ご」
何を言っているかが分からない。
ただそれだけがこれほど遠いものだと、今まで感じたこともない寂寥感が押し寄せる。
寂しそうな瞳に気付いた金が、ぽてぽてと歩み寄り顔を擦り寄せるが、それがつがいへの好意なのか、親への好意への混同なのかを読み取ることができない。
身体の回復に伴って意識に余裕が生まれたことで、二匹で生き残る事に意識を向け続けていた時には深く考えることができなかった部分へ思考が沈む。
鼻から大きく息を吐き、微かな帯電によりパチパチと弾ける痛みに、角へ淡く噛み付いた。
じゃれ合いを楽しむように、幼気に上機嫌に角を揺らす金の様子を過去の金と無意識に比べてしまう。
甘い誘い声、籠る尿の匂い、乾いた恥垢が愛液にふやける淫臭。
その慣れた全てを同じと思いながらも、違う竜を番として抱く感覚。
甘えてくる“違う金”を突き放せない。
優秀な雄が雌を侍らす事など竜においてはよく見られるような事だ。
そう考えても、割り切ることができなかった弱み。
「……楽しそうでいいなあ」
幼竜の如き無邪気さを見せる姿に暗い思考を断ち切り、ゆっくりと体を起こす。
お返しとばかりに首へ甘噛みを行う金へ緩い唸り声をあげてふざけながら、巣へ戻ろうと歩み始めれば。
白がここを離れることをなんとなく理解した金が慌ててその背を追う。
「おっも」
「ぐる」
ふざけるように覆いかぶさってきた金を、体を揺らすことで振り落とそうとして。
「───」
耳元で囁くような誘い声。
不安を発露するかのように首筋を舐める金を背負いながら、巣へと戻る。
既に白の体毛へマーキングするように擦り付けた秘裂が、粘質な糸を引いていて。
巣へ戻ると同時、白から降りた金は尾を上げ、頭を下げて腰を上げることで性器を見せつけた。
膣口は開き、硬く勃起した陰核を伝い愛液が地へ染みを作る。
軽度の運動により火照った体内のせいか、獣らしい蒸れた性臭が周囲を満たした。
ねだるように、切なく喉を絞るように鳴らし、尾を揺らして地の染みが増える。
それは白が先程その場を離れようとした行動、それに対し逃がしたくない、離れさせたくないという欲求から来るねだり。
独占させて欲しいという粘質な雌の目。
開いた陰唇の奥、惹かれた雄を逃すまいと顫動する膣壁が見える。
それは、白く蒸気を漂わせるかの如く熱を持っていた。
逃げるわけがない。
離すわけもない。
その不安から来る独占欲を打ち消してやるように、背後から硬く勃起した陰茎を挿し込む。
背が震え、脳を貫くような快楽に金の伏した頭が仰け反った。
理性を忘れたかのように荒い息を、だらし無く舌を零す口から続け、陰茎をより深く咥え込もうと腰を押し付けるようにうねらせる。
びしゃり、びしゃ、と数度の突きごとに尿を漏らしながら、白を己の身体に惹かせ続けたいと甘く、未熟な愛欲を絡ませた嬌声を金は響かせた。
時折身体の各所に起きる古傷の突っ張る痛みすら、交尾の最中に何度も味わい続けた事で、白の前では膣を濡らす反射へと成りかけるほど。
それほどまでに白を想っている心情を孕ませた淫声。
絡ませたいと無意識のうちに動く金の尾が、白の身体の表面を撫でるように動く。
変異した蓄電殻が感情に呼応し、溢れ出る愛液と尿に濡れた陰部周りの雷電毛から僅かな電気刺激を陰茎へと与えた。
より快楽を、精を搾り、繋ぎ止めるために身体が最適を身体が求めた結果、奥を突かれ毛に密着した睾丸表面に淡く口付けをするような淡い刺激を走らせるに至る。
射精感を強く促されるその刺激に耐えることもなく、思うがままに膣奥へと精を吐き出した。
同時に絶頂を迎え、陰茎に走る血管から己の脈動を感じるほど強く締まる膣。
陰茎を引き抜けば、腰を突き上げていることでぽっかりと拡がった女陰が入口から膣壁、子宮口までを精液に白く汚されながら、それを喜ぶかのようにヒクヒクと痙攣するのが見えていた。
緩く、絶頂の余韻が残る身体を動かし、白の萎えかけた亀頭へと媚びるように舌を伸ばす金。
絞り足りないとばかりの瞳を前に、白は頭を首筋へと近付け牙を剥いて。
軋む甲殻の音、嬌声が響いた。