現実だと男側に中々気付いてもらえなさそうですが。
……インパクト的にシイタケだとすぐ気が付きそうですよね。
ではでは三夜から続く四夜。ごゆるりと。
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たった一つの質問に、心拍数を跳ね上げてまで動揺する自分がいた。
先程まで熱く火照っていた顔は、今はもう冷めたような感覚を得る。
「な、んでそんな事を訊くの…?」
喉が渇き切ってしまったかのように言葉が上手く出ない。
過去の事が頭の中でフラッシュバックして、引き攣った蓄電殻から漏れ出る金色の雷が右角から頬へと走る。
種に関しては一番触れられたくない。
しかし相手方にはそれが伝わらなかったようだ。
「その雷の色…!あの光はあんたが!?」
―――何のつもりかは知らない。
しかしこれ以上突っ込まれるのは私の心がもう辛い。
私はまだ話し掛けてくる竜に背を向けたままで寝転がっている状況。
バレずに部分帯電は――可能だ。
……逃げよう。巣は捨て確定。なんで昨日教えちゃったかな…
肩から脇にかけて生える帯電毛へと、光らないように細かい放電調整しつつ周囲の雷光虫を集める。
本来であれば背に潜む雷光虫を誘導するだけでいいのだが、昨日背まで水に浸かってしまった時に全部逃げてしまった。
完全に集まるまであと45秒。甘く見積もっても30秒ぐらいか。
……どうして昨日の私は馬鹿なのかなぁ…!!
虫と言い巣の事と言い、思い返せば昨日の私は本当に駄目だ。
内心で悪態を繰り返しつつ放電調整に集中する。
「―――――俺――ひ――うな――だ―――初め――教え―――!」
後ろで竜が騒がしく吠えているが、耳を傾けるつもりはない。
……よし…!
やっと虫が最低数集まった。
後は一気に―――――
「ルォ―――――」
「うわ!?」
遠吠えと共に全力で帯電。
虫を酷使するような荒い使い方を申し訳なく思うが、その分代わりにいつもより活性化する雷を分け与えている。
後ろの竜に起き上がる行動を邪魔されないよう体を揺らして勢いをつけ、大地に食い込ませた腕を中心に尻尾を振り回す。
尻尾が残す淡い残光が、綺麗な円を描いた。
しかし当たった実感が無い。恐らくは躱されたのだろう。
だが関係ない。この強化された状態で逃げれば追い付くことは―――
「逃がさねぇ!!」
「うわ!?」
突然硬化した腕に翼刃が当たった。
硬い石に金属の当たるような鈍い音が鳴る。
薄い翼とは思えない衝撃に、地面を突く筈だった腕は外へと回るように弾かれた。
それによって全身のバランスを崩し、地を横に転がる。
腹を晒すような姿勢に、慌てて起き上がろうとするが、素早い動きで腕を抑え込まれた。
強化状態で全力疾走して二秒、あの竜に“捕まった”。
理解不能な状況に後ろ足をばたつかせるが、短すぎて覆い被さる竜を押し退けることが出来ない。
あまりの驚きに放電という手段すら頭に浮かばなかった。
……明らかに出遅れた筈なのにッ…!
この竜が素早い事は知っていた。
しかしそれでも逃げ切れる筈だった。
私の全力で走った速さに追い付ける程速い竜は、幼竜の頃遠目で見た紅い轟音の竜しか知らない。
が、違った。それは間違っていた。
「待てって!俺の話を聞いてくれよ!!」
私の鼻先で喚くこの竜は、私よりも速い―――
……あはは…!
珍しい。
本当に珍しい。
私と張り合えるような竜に会えるなんて。
―――しかも今日は直接話してる。
心の底に得も知れぬ感情が首をもたげた。
……?
それは自分でも分からない。
少なくとも殺意ではない。
と、上の竜が首を傾げた。
「…おい、なんで涙流してんだ?」
「――――」
……涙?私が?
鼻先で騒ぐ竜の言葉に頭の中で疑問符が躍る。
視界は潤んでいない。涙なんて流れていない筈。
では竜には何が見えているのか。
……あら?
ふと気が付けば目の前の竜の奥に見えた紺色だった空が、今は薄暗い灰色になっている。
そして―――――
「うわ!?」
「……」
結構な勢いで雨が降り出した。
いつもの癖で瞬時に蓄電殻を閉じ―――
……なくていいか。
「―――グ…ガァ!?」
ビクン、と上の竜が震えた。
接触していた前足と、腹が弾かれるように離れる。
「……」
蓄電殻を閉じ、ゆっくりと立ち上がれば、感電し、気絶するその竜の姿を初めてハッキリと視認出来た。
「…!?」
それはよく見る黒でも緑ではない、“見たことのない毛色”。
否、見覚えはある。
全身に生える毛の紺と白というその色は、まだ記憶に新しい。
「あの鱗の…持ち主……!?」
どうもここ最近は驚いてばかりだ。
まさかこの竜が、嫌な事を思い出させる最低な竜と共に、私の最も気になる竜だとは。
…雨の音が強くなってきた。
「―――」
金雷公は鼻から息を噴き出すと、静かにその場を立ち去った。