今回エロ描写ほぼありません(土下座)
そして、何気にこの小説で初めて男キャラが出てきます
純愛に持ってくための説明回なので流し読みでオナシャス
影の国の女王は乙女の夢を見るか(1)
全てが寝静まる丑の刻。カルデアの一角、サーヴァントの憩いの場として設けられたエントランスに彼女は居た。ソファーへ腰掛け、細く長い脚を組み、どこへともなく紅の瞳で虚空を見つめる長髪の女性。彼女はクラス、ランサー。スカサハである。
(なぜ、まだ私は、ここに居るのだ──?)
召喚に応じ今のマスターと契約を交わしたのは、かなり前のことだ。それからは共に死線を潜り、共に戦場を駆け抜け、共に楽しんできた。だが、それは彼女の願いではない。彼女の本当の願い、それは"死ぬ"こと。
数多の神々を殺してきた彼女は、もはや"死"という概念を超越してしまっていた。もはやスカサハという存在は、永遠、永劫、美しく死に花を咲かせることもなく、無様に朽ち果てるでもなく、ただ消えるのを待つだけの存在へと成り果ててしまっている。
かつてはあったかもしれない"人としての心"は、すでに死んでいる。サーヴァントとして召喚されてからも、それは変わらない、変わるはずがない。
──そう、思っていた
("奴"はここに居る、さっさと貫かれて、終わればいい。手段など、どうとでもなる。死ねば消える、それに至るまでの経過や後のことなど知ったことか──そう、死ねば消えることができる。なのに──)
この時、いや、彼女が願いを叶えようとした時、考えている時、何故か頭へ浮かんでしまう顔がある。悲しむだろうか、怒るだろうか、と余計なことを考え始めると、もう踏み切ることができなくなる。
──願いを叶えたい、死にたい、消えてしまいたい
──それが願いのはずなのに、求めているはずなのに
──その衝動が、縛られたように凍りつく
(分からない、理解できない──)
遥かな時を超えて死んでしまった心は、その思考が理解できない。求めているのに、踏み切れない、踏み切ることができなくなる。自分が縛られているような錯覚、解放を望んでいるはずなのに、望みに反して束縛されている感覚を嫌悪することもなく受け入れてしまっているという事実。
──彼女は、ただただ、答えの出ない問答を続ける
「──へぇ、珍しいこともあるもんだな」
「────っ───────」
その時、暗がりから声が聞こえた。辺りは暗闇、どうやら誰かがエントランスを訪れてきたらしいが、その接近に気付けないほど思考に没頭していたスカサハは舌を打つ。
「──よっ──」
「貴様か、何の用だ──?」
暗がりから出てきたのは、彼女にとって縁深い英雄。青を強調したスウェットスーツのような衣服に身を包む青年、彼はスカサハと同じくランサー。真名は、クー・フーリン。彼はソファーへ座るスカサハの脇を通り過ぎると、どかっ、と彼女の対面へと腰掛けた。よく見えないが、その手には瓶が握られている。
「用ってほどのことじゃねぇよ、アンタがンな顔してるのが珍しいってだけの話だ」
「顔? 意味が分からんな。平和ボケか? 老眼か?」
「いや、老眼はそっちd「あ"?」──ナンデモナイデス」
睨み付けてくるスカサハの視線から逃げるように、クー・フーリンは手にしていた瓶を傾けラッパ飲み。そんな相手の言動に呆れ果てたのか、スカサハは盛大に溜め息を吐き捨てる。それからは、互いに沈黙。エントランスへ、静寂が訪れた。数秒、数分、十数分が経過した頃、何度目かのラッパ飲みの後にクー・フーリンが、口を開いた。
「あー、なんっつーか、新鮮だったんだよ。俺ァいつも仏頂面か無表情、あとは悪魔みてぇなニヤけ面しか見たことねぇからよ──そういう悩んでるっつーか、迷ってる顔は見たことねぇ」
「私が、悩んでいる?」
「ああ、この世の終わりみてぇな面だったぜ。昔っからアンタは、何をするのも唐突だった。ガキの頃からアンタは迷いとか悩みは縁遠いモンなんだろうな、って思ってたが──そりゃ間違いだったってこった。いやはや、お互い長生きはするもんだ」
ククッ、と笑いを噛み殺しながら、再び酒瓶を傾けるクー・フーリン。いつもなら、スカサハは彼へ槍両手に襲いかかっていただろう。だが、今夜は違った。彼に指摘されたことを、頭の中で反芻させるだけ。
(私が、悩んでいる? 迷っている? 心が死んでいるのに?)
無表情のまま、スカサハは驚愕していた。悩むこと、迷うこと、それは生きているという証だ。自分は死にたいが死ねない身。かつては残っていたかもしれない人間らしい心など、とうの昔に磨耗し切って無くなっている。今さら悩むなど、迷うなど、あり得ない。
だが、目の前の男は悩んでいる、迷っていると言う。
そして、前ほどまでの思考を思い出した。死にたいはずなのに、思考を遮るように"誰か"の顔が浮かび、"誰か"のことを想ってしまうと、もはや踏み切るどころか死にたいと考えることもなくなってしまうことを。
(ああ、無くなっていたと思っていた。すり減って消えたと思っていたよ、今の今まで。そうか、私は迷っていたのか、悩んでいたのか──まるで、人間のように──)
ふふっ、とスカサハは沸き上がってくるままに口の端をつり上げた。その微笑みを暗闇から覗き見たクー・フーリンは「へぇ」とだけ呟くと、座っていたソファーから腰を上げた。
どうやら彼は、彼女が浮かべた表情を見て全てを察したらしい。だが何も語る気がないのか、そのまま歩き去ろうとした──その時、ふとスカサハが呟いた。
「──おい、馬鹿弟子」
「──あん?」
「悪いな、もう消えていたはずの私の
「ハッ、せいせいすらァ。
ひらひら、と手を振りながらクー・フーリンは闇の中へと消えていく。
そう、彼女が無くしたと思っていた、消えたのだと思っていた"人としての心"は、無くなってなどいなかった。忘れていただけ。そして彼女自身でさえ自覚のないまま、凍っていた心、死んでいたはずの心は、すでに一人のマスターに
それを自覚できたスカサハは、去っていくクー・フーリンを黙って見送った。その胸の中へと沸き上がっていた罪悪感は、彼が残した言葉に掻き消される。もはや彼女に迷いはない、悩みもない。あるのは、想いだけ。
──死んでいた心は、マスターへ
──心を失った空っぽの心臓は、クー・フーリンへ
──それが、
──いてもたっても、いられなかった
「────っ───」
弾けるようにソファーから飛び上がったスカサハは、クー・フーリンが向かった方とは違う方向へ走り出した。その身を一陣の風として、一刻も早く、"あの人"の元へと向かいたかった。闇の中、自分の心の中へと在る確かな想いを胸に──彼女は、堪えられない微笑みを携えたままに廊下を疾っていった。
◆ ◆ ◆
眠気に誘われるまま床に着いて、もう十数分が過ぎた頃だろうか。あとは意識を手放せば夢の世界へ旅立てる、という頃合い。ふと傍らで、風が吹いたような気がした。それと同時に鼻先へ、ふわっ、と甘い香りが漂ってきたのも。
窓が開いてるわけがないから、風が吹くのはおかしい。それに、この鼻先をくすぐってくる香りも妙だ。あと、何か体が重いような気がする。具体的に言うなら、仰向けになってるところへ横から抱きつかれてるような感覚。
ものすごく嫌な予感がする、むしろ嫌な予感しかしない。
少しだけ目を開けてみると、そこには──
「──ああ、起こしてしまったか」
すごく、見知った顔。相も変わらず能面のような無表情のスカサハの顔が、間近にあった。もう少しでキスができるほどの距離にあるスカサハの端正な顔立ちは、起き抜けに見るのは心臓に悪い。
おまけに、どうやら彼女は横になって抱きついてきているらしい。体を密着させていることで、彼女の普段着であるウェットスーツを通して体のラインを肌越しに感じられた。なんだ、何事だ、と疑問に思うも、寝ボケた頭は上手く思考をまとめれない。
「──────」
ひたすらに沈黙を貫くスカサハ。
意を決して、彼女へ問い掛けてみる。
[こんな時間に、どうしたの……?]
[あの、これはどういうこと……?]
すると、スカサハは少しだけ目線を逸らした。どこか言い澱んでいるような、戸惑っているような、あまり感情を表に出さない彼女にしては珍しい反応だ。しかも、その頬は微かではあるものの桃色に染まっていて──すごく、抱き締めたい衝動に駆られた。
「私は永遠に近い時を生きてきた、多くの神々を殺してきた、ケルト最強の美少女として名声を欲しいままにした。だが、その代償に私は人としての心を失った──ハズだった」
さらに体を密着させてくるスカサハは、額をくっつけてきた。彼女の長い髪が頬を撫でていく感触と、至近距離から受ける吐息に頭の中がグラグラと揺れ始めてくる。油断すれば、彼女の真っ直ぐな紅の瞳に吸い込まれてしまいそう。
「私は心を失ったわけではなく、忘れていたんだよ。死を願い、終末を渇望するほどに長い時の中で──そして、私が忘れていた"人としての心"を
鼻先と鼻先が触れ合うほどの距離、視線を絡めていた彼女の紅の瞳が、ふと揺れた気がした。欲求の熱に焼かれ、甘い香りを漂わせながら、自分の心を奪った責任を取れと迫ってくるスカサハ。
彼女の意図が分からない、何を考えているのか分からない。そんな内心を、彼女は察したのだろう。彼女にしては珍しく優しげな微笑みを浮かべると、そのまま──
「そう難しいことではない。私が、お前に惚れただけさ、マスター」
──唇を、重ねてくる
柔らかい唇の感触は、一度だけではない。ちゅっ、ちゅっ、と、ついばむように何度も唇を押し付けてくるスカサハ。あまりにも必死で、優しくない、ただ相手を求めるだけの行為。だが、破壊力は凄まじいものがあった。
「──んっ──ちゅっ──んぅ──ぁ──はぁ──」
熱い吐息と唾液の湿り気を、唇を通して感じる。甘く噛まれ、唇を唇が撫でる感覚に酔いしれた。その時、いきなり生暖かいモノが口内へ侵入してきた。それは、スカサハの舌。別の生き物のように唇を割り、ずるっ、ずるっ、と突き進んでくる。
口内を蹂躙されると、唾液が混ぜられると共に思考まで掻き混ぜられていくように錯覚する。呆とする快楽は脳髄を焼き、侵入してきたスカサハの舌を迎え撃とうと絡ませてしまう。呼吸困難になった体は意思に反し、スカサハの腰へと腕を回し密着させてしまう。もう、頭が真っ白になっていく、何も考えることができなくなっていく。
「──んぅ──れろっ──ちゅ、んっ──ふ、ぁ──はぁ──ぷ、はっ──ぁ──ああ、それでいい──今は、ただ──求めてくれ──そして、求めさせてくれ──」
──スカサハの呟きが、闇へと紛れていく
──布擦れの音を聞きながら
──求めるまま、求められるまま
──唇を重ね、舌を絡め合った
んー、上手く伝わればいいんだけど……
まぁ要約すると長い時を生きてきたせいで悟っちゃったが故に自分の恋心に気付かなかった師匠は、兄貴に諭され自分の想いを自覚する。そして自分が死ぬ時は、恋心が死んだ時。好きな人を失い空っぽになった心臓を、兄貴に奪ってもらうのを望んだ。
とまぁ、そういう歪んだ愛があってもいいよね、ってことで話に矛盾なく兄貴も救済できるというシナリオを風呂に浸かって10秒で考えた(目逸らし)
これ、全年齢小説で使うべきネタじゃん失敗したなー、とか思ったけど他に案も浮かばなかったので採用しますた許してヒヤシンス(白目)
次話からは師匠とえっち、股間が熱くなるな…(小波感)