アルテラ、第一話でつ。
先に言いますと、ほんの少しだけ流血表現が入っており、話の9割が低品質なシリアス()となっています……閲覧の際にはご注意下さい。
そして、例のごとく導入回なのでエロ描写は少な目。
以上を踏まえた上で、お楽しみ頂ければ幸いです。
されど古の戦闘王は只人の夢を見る(1)
──ああ、これは、夢か
荒れた大地、渇いた風、どこまでも平坦で変化に乏しい無人の荒野へ立っているのは一人の少女。灰色の雲から漏れ落ちてくる儚い陽光に照らされた肌は褐色、風に
──あれは、過去の
そう、これは夢。
彼女の心象風景、文明の終着点。
遥か空の上から
何故なら"
──何故、今さら
アルテラは、このような夢を見ていることに疑問を抱いた。今の彼女は、とある世界、とある時代、とあるマスターの元へサーヴァントとして召喚された身──"今"がどうであれ、"この光景"は事実であり、ただの経験に過ぎないのだから。
その時、ふと眼下、荒野に佇む
──あれは、マスター?
アルテラが見る男性の容姿は、彼女のマスターに酷似していた。彼は荒野へ佇む
──な、何をッ!? まさか……ッ……やめろッ!!
アルテラは、これが夢であると分かっていた、理解していた。だが、目の前で起ころうとしている惨劇に彼女は声を張り上げてしまう。どうにもならない、聞こえない、止まらない、それを頭では理解していても声を上げずにはいられなかった。
初めて会った、共に居て安らげる相手。
そんな彼に向けて掲げられる、
それでも、能面のような表情を浮かべる
そして、降り下ろされる三色の凶刃。
正面から降り下ろされた三色の凶刃が、彼の肩口から腰までを斬り裂く。すると衣服の奥へ隠れる肌が、肉が、臓器が破壊された。その傷口から大量の血を溢れさせているのが、その証だ。そんな目を覆いたくなるような惨劇を目の当たりにし、斬撃を受けた彼が勢いのままに背中から倒れていくのを見てアルテラは──
──ぁ……あ……っ……いやあぁぁぁぁぁあッ!!
その口から、絶叫を迸らせた。
◆ ◆ ◆
「……っ……ぁ………はぁ、はぁっ……ッ……ッ!!」
悪夢から目覚めたアルテラは意識が覚醒すると同時に、溜まっていた息を吐き出した。肩で息をし、自身を掻き抱く彼女は今、自室のベッド上で壁へ背中を預けている。
熱い吐息が暗闇へ溶けていく中、アルテラは掻き抱く自分の体が震えていることに気付いた。覚醒直前まで見ていた光景、
「……ッ……はぁ、はぁっ……あのっ……夢、は……」
悪夢を思い出して、アルテラは顔をしかめた。
数多の文明を破壊してきたアルテラは、自らの意思で命を壊したことはない。あまりにも強力な宝具の余波で望まぬまま命を壊してしまうことはあるが、それは彼女の意思ではなかった──しかし、先の悪夢、
──あれは紛うことなく、自分
──見ていた光景こそ過去のものだが
──そこで起きた光景、剣を振り下ろしたのは
──他の誰でもない、他の誰かであるはずがない
──あれは、
「…………ッ……やはり、私は……」
アルテラは青ざめた顔で、思考する。
このままではいけない、と。
マスターと契約し、徐々にではあるが力を取り戻しているという自覚がアルテラにはあった。それが自分の力を必要としてくれるマスターの意思、だからこそ応えてきた。今の器の臨界まで、力を取り戻すことができた──だが、そんな嬉しさとは裏腹に、彼女は"このままでは自分が自分で居られなくなる"のを感じた。
「………………………ッ………」
自分をアルテラと名乗っても、エッツェルと名乗っても、彼女が
──それを自覚したアルテラはベッドから降りると
──どこか頼りない足取りで、自室を後にした
◆ ◆ ◆
「……………………………………」
夜の帳が降り、あとは寝るだけという頃、自室へ誰かが訪ねてきたので迎え入れた。その訪れてきた相手というのは、アルテラ。彼女が夜中に訪れてきたというのも驚きだったが、それ以上に──普段の能面のような無表情が嘘のように青ざめた顔、強力な宝具を担う腕と肩は、まるで幼子のように小刻みに震えているのが気になった。
部屋の中へ迎え入れてからのアルテラは、ずーっと"この状態"。直立不動でのままに青ざめた顔を俯かせ、視線を合わせようとしない──普段の彼女からは考えられない、かけ離れた様子の彼女へ問い詰める。どうかしたのか、と。
「……マスター、頼む……私との契約を、破棄して欲しい」
ぽつり、と漏らしたアルテラの呟きを聞いた瞬間、ガツンと頭をハンマーで殴られたような錯覚を感じた。あまりにも唐突で、あまりにも衝撃的な一言──信じられない、信じたくないという思いのまま彼女へ詰め寄る。
何故だ、と無意識のうちに強くなっていく語気を抑えることができない。いきなり契約を破棄して欲しいだなんて、信じられない。
「……夢を見た。
そこで、アルテラが俯かせていた顔を上げた。
「だから、
彼女は独白する。
夢の中とはいえ、"マスターを殺してしまった"と。それは起こり得る未来だ、と。だから今、契約を破棄して欲しいと願い出てきたのだ。今なら間に合う、と。
しかし、そんな要求、承諾できるワケがない。
たしかに死ぬのは嫌だ、アルテラほどの英霊なら令呪があってもマスターを襲うくらいのことはやってのけるかもしれない。だが、それでも、はいそうですか、と首を縦に振れるワケがない。
彼女は言った、大丈夫だ、と。
彼女は言った、気にするな、と。
でも、それは、きっとアルテラの本心ではないはずだ。
だって──
[それは嘘だ、じゃあ、なぜ……]
[……どうして、君は泣いているんだい?]
「……………っ………ッ!!」
そう告げると、アルテラが目を見開いた。自身の頬を伝う大粒の涙、それを指先ですくった彼女は、信じられないモノを見たという表情──「なぜ、なんで……」と呟きながら頬を伝う涙を拭くも、彼女の瞳から溢れてくる涙は止まらない。
意識してしまっては、もう止められるはずもない。涙腺が決壊したと同時に、アルテラが強引に押さえ付けていた本心も溢れ出てきたらしい。ボロボロと零れていく涙、ぐちゃぐちゃになった泣き顔そのままに、彼女は嗚咽の混じった言葉を吐き出した。
「……いや、だ……おまぇ、と……っ……はなれるの、は……ぃやだ……でも、おまえが……ひぐっ……しぬ、のは……もっと、やだ……もぉ、どうしたらっ……いぃ、のか……わからない……ッ!!」
頬を流れる涙をそのままに、アルテラは自分の体を掻き抱いた。瞳から大粒の涙を溢れさせ、細い肩を震わせ、嗚咽を漏らす彼女の姿は普段のアルテラからは考えられない。あくまで推測に過ぎないが、彼女は
なら、そんなアルテラへ伝えるべきなのは、言葉じゃない。安心させてやりたい、大丈夫だと伝えたい、だからこそ包み隠さず本心を語った。
──彼女には強くなって欲しいと願った
──生き残るため、世界を救うために
──でも、それはマスターとしての願いだ
──本当の願い、一人の人間としての願いは別にある
──彼女には、笑ってほしかった
──彼女には、楽しんでほしかった
──彼女には、自分を機械と言ってほしくなかった
アルテラには自分が破壊するだけの存在だと、自分のことを機械だと言ってほしくなかった。笑って、泣いて、拗ねて、サーヴァントとしてではなく、"人としての心を持って第二の人生を楽しんでほしかった"。
前に自室でアルテラから聞いた話、大王でも戦士でもない、ただの人となる夢。それを、叶えてやりたいと思った──それは彼女のためだけじゃない、マスターとしての責務でもない。彼女の隣へ立つ者として、一人の人間として胸に抱いていた、身勝手で独りよがりな願い。
「……ぅ……ひぐっ……ッ……ます、たぁ……」
"本当の願い"を告げてから、まるで子供のように泣きじゃくるアルテラを抱き締めた。労るように、慰めるように、諭すように、悩み恐れる彼女を安心させてやりたいという一心で。
アルテラの腕が背中へ回るのを感じた。
アルテラが顔を胸板へ擦り付けてくるのを感じた。
そして、しばらくの間、抱き合っていた。何かをするワケでもなく、語り合うこともなく、ただただ、身を寄せていた。数分が過ぎ、そろそろ十数分が経過した頃──まだ目尻へ涙の玉を残しながらも、アルテラが顔を上げ見上げてきた。
「……すまない、少し、取り乱した……ッ……」
"少し"というレベルの取り乱し方ではなかったように思うが、彼女の名誉のため言葉には出さなかった。ともあれ、アルテラが落ち着きを取り戻してくれたことに安堵する──契約を破棄して欲しい、なんて言われたのには驚いたが、最悪の結末は回避できたように思う。
「それで、だな……そ、の……さ、先ほどの話……大王でも戦士でもない私の夢を見た、という話の続きなのだが……ッ……その願い、を……か、叶えては……くれないだろうか……?」
腕の中で、アルテラが頬を赤く染めながら見上げてくる。大王でも戦士でもない彼女、ただの女の子となる夢、それを叶えて欲しいというのは、おそらく──"そういうこと"なんだろうと、察した。言い淀んだのも、歯切れが悪かったのも、たぶん恥ずかしかったのだろう。
アルテラが言いたいことは、直感的に察した。それと同時に、嬉しくなった。彼女が大王でも戦士でもない自分を望んでくれたという事実と、恥ずかしさを堪えながらも求めてくれたことが、何よりも嬉しかった。
それは一人の人間としての願いが、少しだけ叶ったことに繋がるから。自分のことを機械と呼ばず、人間らしく、羞恥に耐えながらも独白してくれたアルテラが──彼女のことが、とても愛しく感じた。
胸がいっぱいになったのを自覚しながら、分かった、とだけ告げるとアルテラへと顔を寄せていく。すると彼女は驚いた表情を浮かべた後、ゆっくり目を閉じてくれた──顔を寄せる途中、甘い香りを鼻先へ感じながら、口付けを交わす。
「……っ……んっ……ちゅっ……ん、っ……」
触れ合ったアルテラの唇、その柔らかい感触を唇で確かめる。ついばむように、形を確かめるように。彼女の柔らかい唇を甘噛みし、舌でなぞると小さく体を跳ねさせ反応してくれるのが楽しくて仕方ない。
ちゅっ、ちゅっ、と互いが互いを求める優しい口付けを交わしていたが、ついつい堪らなくなって舌先をアルテラの口内へ侵入させてしまう。硬い歯の感触を舌先へ感じながら、彼女の甘く熱を帯びた唾液を舐め取った。
「……ッ……んぅっ……っ……ちゅ、ん……れろっ……ぇ、あ……」
舌先でアルテラの歯をノックしてやると、奥から柔らかい舌を覗かせてくれた。そして触れ合う舌先、唾液が付着する舌同士が、ぴちゃっ、と小さな水音を響かせる。
どこか控えめに突き出されたアルテラの舌へ、舌を絡ませていく。舌先同士を擦り合い、唾液が載った舌腹を擦り付け、ぴちゃっ、ぴちゃっ、と音を立てながら彼女の舌の柔らかさと熱を堪能した──そして、ものの数分もしないうちに、舌と舌を絡ませていくうちに行為はエスカレートしていく。これでもかと唇は密着し、繋がった口内で舌を踊らせ、互いが貪るように激しさを増していった。
「……んぅっ……ぢゅっ……れろっ……ぁ、んむっ……ぇ、ぁ……れろっ……んちゅ、っ……じゅるっ……ちゅっ……ん、はぁっ……ぁ……んんっ……ちゅ、ちゅっ……れろっ……ぁ……れろっ、れろっ……」
どのくらいキスを交わしていたのかは、分からない。
どちらからともなく唇を離すと、絡み合っていた舌と舌が糸を引く。何度も何度も混ぜられたせいか、粘性を帯びた真っ白な唾液の糸は重力に引かれるだけで、ぷつり、と切れてしまう──と、そこで気付いた。間近にあるアルテラの顔、表情に。
唾液でベトベトになった口元をそのままに、かすかに開かれた口からは熱い吐息を吐き出し、唇の端からは唾液を漏らし、どこか虚ろで熱に犯され揺れる瞳。そんな蕩けきったアルテラの淫靡で卑猥な表情は、欲情を煽ってくる──もはや昂っていく本能、欲求を止められない。
──彼女を促すように抱き合ったままベッドへ近付くと
──できる限り優しく、アルテラをベッドへ押し倒す
──二人分の体重を受けて、ギシッ、と軋むベッド
──組み敷く形となった彼女と視線を交わらせ
──どちらからともなく、内へ秘めた想いを伝え合った
──"愛してる"、と
そもそもサーヴァントが夢を見るのか、って疑問もあったけど……そういえはアイツ等、食事も睡眠も必須じゃないことを思い出して「もうどうにでもなーれ☆」と何も考えず執筆しましたw
エクステラのアルテラが、こんな思考(自分に怯える感じ)だったらいいなぁ、なんて妄想の産物でつ。おう、後出しジャンケンやめーや神様(土下座)