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ベッドで露わになった身体を精一杯に腕で隠してみるも、それを先輩が優しく振りほどく。
掴まれた腕はキュッと握られ、赤く染まった先輩の顔に私は思わず見惚れていた。
こそばゆい……。
先輩の舌が首から胸、おへそへと降りていくと、私はびくんと腰を引いてしまう。
すると、それを楽しむように、先輩はおへその周りを重点的に舐め始めた。
「…っ、ぅ」
先輩はイジワルだ。
私の弱い所を優しく触れてくる。
そのくせ、本当に嫌がることはしない。
……してくれてもいいのに。
「あ、あの、くすぐったいです…」
「…じゃぁ、こっちにする」
私の恥じらう姿を静かに笑いながら、先輩は私の右腕を枕よりも高い位置に持ち上げた。
「…っ!ぁ、ぅ、ぃゃ…」
あまりに突然だったから。
口から漏れた言葉がベッドに転がるように。
どこか不思議な感覚に全身を包まれながら、私は先輩の思うがままに受け入れる。
「ぁ…あの。…き、汚いですから…」
「…全然汚くねえよ。おまえの腋…」
「ぅぅ。…んっ…ぁ」
尚も私の腋を舐め続ける先輩は、もう片方の手で私のお腹をさすり始めた。
「ん…。一色は…、なんだか柔らかいな」
「んっ…、お、お腹を触りながら柔らかいって、…っ、ふ、太ってるって言いたいんですか?」
「はは。…痩せ過ぎてて心配になるくらいだよ」
ようやく腋から顔を上げた先輩は、そのまま優しく、両手で私の身体を包み込んでくれる。
暖かい…。
心地良い。
先輩の胸から聞こえる少しだけ高鳴る鼓動に耳を澄ませながら、私もそれを離さぬように両手を先輩の背中に回した。
「ぁ、あの…」
「ん?」
「……っ、もう、焦らさないで…、ください」
「……」
「先輩を……、ください…」
ーーーーー。
……………
……
…
.
.
.
リンリンリンリン!!
……。
部屋に響き渡る目覚ましの音は昨日と変わらない。
目を開けたときに見えた天井も、頭を乗せた枕も、柔らかいお布団も、全部同じだ。
でも、一つだけ違うことがある。
「……私、マジでヤバイ」
昨日同様に、とあるホテルの一室で繰り広げられた妖艶に乱れた私と先輩。
あれはただの夢じゃない。
私が神様にお願いして作り上げた、深層心理に眠る私のお願いなのだ。
「…経験無いのにやけにリアルだったな」
エッチな本での予習のおかげでしょうか、なんとかマニアックなプレイにも対応できました。
「……。せ、先輩は腋フェチか…」
…………
……
…
.
.
.
数時間の夢に悶えさせられたとは言いつつ、今日も今日とて学校の授業は進んでいく。
ぼーっとしながら頬杖を付いていた午前中は、教室の窓から太陽を見上げている間に過ぎていき、気づけば昼休みを告げる予鈴が鳴り響いた。
仲の良い(偽り)クラスメイトがお弁当を誘いに来たが、生徒会の仕事があると断りを入れ、私はお弁当を持って廊下に出る。
なんだろう、この非現実感は。
すれ違う生徒も、うるさい喧騒も、どこか私の居場所ではないような……。
ふと、私は何の気も無しに屋上へと脚を向けた。
「……先輩、居るかなぁ」
ーーーーー。
ガチャりと回したドアノブは嘘のように軽い。
いや、私の手に力が入っているんだ。
勢い強く、屋上への扉を思いっきり開くと目をつぶりたくなる程の風が身体に吹きつく。
「っ……」
青く広がる空が近い。
考えてみれば、屋上に来るのはこれが初めてだ。
グレーのタイルが敷き詰められた屋上にはフェンス以外に何もなく、無人に静まるソコは”とある人物”を残して時間が止まっているよう。
「……先輩」
「…?…一色」
風に揺れる柔らかそうな髪。
甘そうな缶コーヒーを傾けながら、彼はふわりと首を捻った。
「…なんだ?告白の呼び出しでもくらったのか?」
「え?あ、いえ…。そんなことは…」
不思議と、彼の周りだけ時間がゆっくりと流れているみたい。
フェンスにもたれ掛かり座る姿は少し可愛らしい。
「なら早く帰れ。ここはおまえみたいな日向の人間が来る所じゃない」
「ふふ。なんですか?それ。……んしょっと」
夢で会った先輩は優しく微笑む。
現実で会った先輩は優しく憎まれ口を叩く。
そんな姿がなぜか面白くて、私は先輩の隣に座ってお弁当を広げた。
「…なんだよ。ここで食うのか?」
「偶には日陰の先輩を照らしてあげようと思いまして」
「え、まじでありがた迷惑」
「へへへ」
ふと、先輩の香りが風に攫われる。
…同じ香りだ。
本当にお日様の匂いがするんですね。
お日様に包まれながらお弁当を広げると、先輩は不思議そうな目で私を見つめていた。
「……」
「…?なんです?……はっ!まさか私の腋を……っ!」
「あ?腋?」
「変態です!淫乱です!視姦です!!」
「君は俺の地位をどれだけ下げれば気が済むの?」
「せ、先輩がイヤラシイ目で私を見るからです!」
「み、見てねえよ!…いや、ただ、背中の痣はどうなったのか気になってだな…」
背中の痣……。
そうか、私からは見えないから忘れていたけど、昨日先輩に痣の存在を確認してもらったんだ。
「……そ、その…、今日も見てもらっていいですか?」
「お、おまえ、自分で確認しなかったのかよ」
「うぅ〜っ。い、いいから早く見てください!!」
私はその場に立ち上がり、制服とワイシャツを勢い良くめくり上げる。
見られる恥ずかしさと嬉しさが混ざり合って、なんだか良く分からない感じ…。
「っ!お、おまえ…。もう少し女性らしい恥じらいをだな……。ん?」
「よ、欲情してるんですか!?」
「しねえよ。…痣、少し大きくなってる気がする」
「え、マジですか」
私は首を精一杯に捻ってみるも、痣が見えることもなく、それでも頑張っていると、いつの間にかその場でクルクル回ってしまっていた。
「…み、見えないですぅ」
「……おへそが見えるぞ」
「ふぇ!?え、エッチ!!また舐め回す気ですか!?」
「…またって何だよ。またって」
先輩は呆れたように手で頭を抱え、私にシャツをスカートに仕舞うように促す。
「…戸部の例がある。それを治せるかもしれない方法が2つ」
「2つ、ですか?」
「…1つは…、いや、まぁ可能性って言っても本当に微弱なもんだが…、由比ヶ浜の胸に痣を治す神聖な力が宿っている」
「……バカなんですか?」
先輩、童貞を拗らせてオッパイには夢が詰まってるとか思ってる口か?
「くっ。…それともう1つ。こっちが本命だが…。神社でお参りした願い事を叶える」
「ね、願い事を……、叶える…」
願い事……。
先輩とエッチがしたい。
エッチがしたい。
したい。
ーーー。
っ!?
「ばっ、ばっ、ばっ、バカなんですか!?」
「え!?」
「そ、そんなこと出来るわけっ…!!」
「…は?え、なに、もしかして、鳥になって空を飛びたいとか願ったの?」
「違います!…違うんです」
願い事を叶える?
……言えるわけがない。
私が何を願った。
ましてや、その願いを毎晩夢の中で体験しているだなんて…。
「…身体に痣が残るのは嫌だろ?俺が手伝ってやるから、その願った事を叶えちまおうぜ」
「…っ。せ、先輩…」
「…おまえは何を願った?」
「…ぅ」
「夢は見てるのか?」
…そんな優しい目で見つめないで下さい。
願い事を叶えてくださいなんて、私に言えるわけがないんです。
こんなイヤラシイ私を先輩に知られたくがない。
知られるわけにはいかない。
「…」
「だ、大丈夫です。…自分で何とかしますから」
何とかする……。
どうやって?
先輩とエッチがしたいと願っておきながら、1人でどうすると言うのだろうか。
最悪、背中にできた痣と一生……。
「俺には良く分からんが、女の子の身体に痣が出来るってのは凄く恥ずかしことなんだろ?」
「…っ」
「……人に言えない願い事なのか?」
「……はい」
「……」
静寂に包まれる屋上。
青く突き抜ける空に見下ろされながら、私は恥ずかしくなって顔を下に向ける。
すると、隣に座っていた先輩が立ち上がった。
気づけば、暖かい手が私の頭に乗っている。
緩やかに撫でられる頭が心地良い。
「今日の放課後、その神社に行ってみるか」