一輪挿しに水を入れずに花を生け、カメラで撮影して早送りをしたらこんな感じだろう。
そう思いながら萎んでいく男性器を見ていると、丈二さんはパジャマのズボンを投げ捨ててからビールを呷った。
立て続けに、2杯。
「……ショックでインポになりそうだ」
「す、すまない。つい素直な感想が口から出てしまった」
「余計に傷つく謝り方はやめてくれ。そんでな、また謎が増えた」
「謎?」
「ああ。このチンコ、向こうで生きてた時の俺のだわ」
「ど、どういう事だっ!?」
「わからん。もしかして筋肉も、俺が16くれえの時のか? それなら、美和に腕力で勝てるのも頷ける。天斗はスポーツ選手にでもなった方がいいかもなあ、これだと」
「ち、じゃなくて、男性器の見分けなんかつくのか?」
「これを見ろ」
丈二さんが男性器を持ち上げ、亀頭を見えやすくする。
母さんは思わずといった感じで目を逸らしたが、顔を赤くしながらなんとかそれを視界に入れた。
「右のカリの下。ホクロが3つ並んでるだろ、斜めに」
「……あ、ああ」
「あっちで生きてた俺のにもこれがあった。こんなん偶然じゃねえだろ。どうなってんだ、いったい」
「それにしても、グロいな」
「まだ言うか。こっちじゃ男と女が逆転して、性欲も女だけが持つと言っていいほどに偏っちまってんだろ。天斗の顔した美少年のチンコ見てグロいとか言ったら、世の中の飢えた女共に殺されんぞ」
「それなんだが、ひとつだけ約束してくれないか?」
「言ってみな」
「この家以外では、表に出て来ないで欲しい。本当に申し訳ないが、そうしないと天斗が危険だ」
丈二さんが男性器を放す。
それは重力に従って落下し、ふとももに当ってペチンと鳴った。
「なぜか男子生徒の制服はスカート。勃っちまったら隠せやしねえ。向こうで言えば、マン汁をダラダラ垂らした女がミニスカ生足で外を歩くようなモンか……」
「完全に変態扱いされて、物陰に連れ込まれるな」
「んで犯される、か。俺から見りゃ美味しいシチュエーションだが、それで天斗が女嫌いにでもなったらアウトだもんなあ」
「それにレイプ時には加虐性が増して、男を無意味に殴ったり蹴ったりする女も多いらしい。だから頼む、この通りだ」
今度は母さんが深々と頭を下げる。
「わかった。だが俺は、天斗のボディーガード役もするつもりだぞ?」
「それは素直にありがたい。ただその緊急時も、出来るだけ逃げる方向で頼む」
「約束しよう。で、美和の無慈悲な一言でチンコが萎えてしまった訳だが。どうしてくれんのかな?」
「そ、それは……」
表情が動く。
自分では見えないけど、たぶん満面の笑みだ。
肩に僕の手が伸びると、母さんは怯えたように身を竦めた。
(ねえ、母さんに酷い事したら許さないよ?)
(しねえって。俺は強姦じゃ勃たねえんだ)
(……あっちでも言ってたね、それ)
(どんだけケンカが強かろうが、アタマが良かろうが、金を持ってようが、女を犯すクズに生きてる価値はねえさ)
(そう言って仲間をぶん殴って街にいられなくなってたねえ、何回も)
(……昔の事は忘れたよ)
この人だって死にたくなかっただろうし、もし帰れるなら帰りたいだろう。
そう思うと、家ではなるべく丈二さんに体を使わせるのが良いのかもしれないと思った。
「じゃあ美和、セックスするか」
「は、はあぅ!?」
(ちょ、丈二さんっ!?)
「だってあっちの時と同じようにこのチンコが刺激に耐えられるかと、何より射精が可能なのかを試さなきゃなんねえだろ。この年でセンズリなんかする気ねえぞ、俺」
「ムリだっ!」
「って言われてもなあ。さっき言ったように、協力してくれんのは美和しかいねえんだし」
「だ、だって」
「だって?」
「……あたし、処女だ」
僕の手が、消え入るような声で呟いた母さんを抱き寄せる。
「は、離せえっ!」
「ああもう。ポニーテールに赤いフレームの眼鏡した見るからに気の強そうな知的美人がさあ、巨乳揺らして色気のねえボクサーパンツ濡らして『あたし処女』だって! たっまんねえなあ、おい!」
(ああ、そういえば丈二さん。わざわざ彼女に伊達眼鏡させてからフェラチオさせる変態だったね)
(失礼な。変態じゃなくて、ただのメガネフェチだ。ガキの頃から周りにバカしかいなかったからよ、メガネかけてるだけでなんか美人に見えるのさ)
「ぬ、濡らしてるって言うなっ!」
「まあまあ。じゃあさ、美和」
「何だ? と、とりあえず離して欲しいんだが」
丈二さんはまだ母さんを抱きしめたままだ。
また表情が笑みになり、母さんの耳元に口を寄せる。
「口でしてくれよ」
「ほ、本気かっ!?」
「本気に決まってる。セックスは嫌なんだろ?」
「だからって、口でなんて……」
「こっちにゃ、フェラチオって言葉はねえのか?」
「……ある」
「なら頼むよ。今のうちにたしかめておかねえと、天斗の日常生活に支障をきたす」
「でも、でも……」
迷う母さんを後押しするように、丈二さんが腕に力を込めた。
「んっ」
「俺だって一目惚れした女に、いきなりこんな事を言うのは心苦しいさ」
「な、何を言ってるんだオマエ!?」
「ん? ああ、一目惚れしたって事か。だって俺が表に出たらすぐ、美和を見てギンギンに勃起してただろ。一目惚れでもしてなきゃ、そうはならねえんじゃねえか? 男の勃起なんて、簡単に起こる生理現象じゃねえだろ?」
この人は……
こっちの常識を逆手に取って利用するなんて。
やれやれ。
「それは。でも、こんな産み遅れの処女に一目惚れなんて」
「俺はウソを言った事がない。それが、唯一の自慢だ」
「そ、そうなのか……」
(その言葉がもうウソですよー。騙されてますよ美和さんー。あっちの男子高校生なんて、パンチラでも簡単に勃起しますよー)
(ほう。呼び方が母さんから美和さんになったか。余裕があるじゃねえか、天斗)
(あっちの丈二さんを見てた僕からすると、これはもう諦めるしかないかなあと。このまま、なし崩し的にセックスまでしちゃうんだろうし)
(嫌か、義理とはいえ母親が誰かに抱かれるのは?)
(……中学に上がって、少しした頃からかな)
(うん?)
丈二さんは畳み掛けて答えを急がせるのではなく、優しく抱きしめたまま美和さんの言葉を待っている。
あちらでも、いつもそうだった。
女の人に何かを強制する事がない。だからこそこの人は、あんなにモテたのだろう。
(女の人の性欲を保健体育で習ってからさ。母さん、その時は実の母親だと思ってた美和さんの自慰を手伝えないか真剣に考えたんだ。いっつも家で仕事してるし、たまに外出しても帰りが早いから。恋人なんていないんだろうなあって)
(あっちじゃあり得ねえ悩みだなあ)
(だね。そして、僕は出来なかった。だから丈二さんが母さんを喜ばせてくれるなら、ありがとうって言いたいかな)
(ふうん。なら、いただいちまうぞ?)
(うん。美和さんをよろしくお願いします)
丈二さんが返事をする前に、美和さんがモジモジと小刻みに動いた。
言いたい事があるけど、恥ずかしくて言えない。そんな感じだろうか。
「フェラが怖いなら、まずは触ってみようか。ほら」
抱き寄せている美和さんの耳元にくちづけ、その手を肉棒の上に置く。
「……や、柔らかい。そして、温かい」
「触るのは平気だろ?」
「ああ、変な感触で笑ってしまいそうだよ」
「愉しんでくれたら何より。コレは天斗のじゃねえからな。遠慮なく弄り倒せ。そうだ、そう。……ああ、堪え性のない我が息子が、もう硬くなり始めたな」
「す、すご……」
「好きな女に触られたら、こうもなるさ。許せ」
「またそうやって恥ずかしげもなく」
「本音だからな。ああ、そうやってさすられると気持ちが良いな」
「そうなのか?」
「ああ」
ちゅっ。
そんな音を立てて、丈二さんが美和さんのこめかみ辺りにキスをする。
それが2度ほど続くと、怒張した肉棒への刺激が強くなった。
美和さんの息が荒い。
丈二さんのキスが頭のどこかに落ちるたび、美和さんは興奮を高めているようだ。
(痛くねえか、天斗?)
(全然。でも、気持ちよくもないなあ)
(なるほど。痛くなったら言えよ?)
(うん)
「美和、気持ちいいぞ」
「そ、そうか。でもフェラチオはもう少し待ってくれ。口淫での快感は、処女のあたしには刺激が強すぎるはずだ。耐えられる自信がない」
「……口淫での快感?」
「そちらにはなかったのか? 女は男の体から分泌される物を粘膜から吸収すると、そこへの刺激で激しい快感を受けるようになる。事が終われば、その。子宮で男のを吸収すれば元に戻るけどな」
「まさか、ガマン汁で口なんかが性感帯になるって事か?」
「はっきり言うとそうなる。ああ、まだ大きく……」
美和さんの息が荒い。
「なるほど。じゃあ、最初はこうだな」
「何を、……うむっ。んっ、ま、待ってくれ」
「待たない」
突然唇を奪われ、美和さんが肉棒を握る手に力を込める。
(痛い、痛いっ。こ、これは痛いよ!)
(俺だって痛えっての。でも、少しだけガマンしてろ)
絡み合う、そう思っていた舌が逃げる。
だが、それを許す丈二さんではなかった。
ヘビが獲物を仕留める時のように、僕の舌が美和さんの舌を絡め取る。そこでようやく、美和さんが肉棒を握る力が弱まった。
これ幸いと丈二さんは、ソファーの上で美和さんに覆いかぶさるように体勢を変える。
「んんっ、むっ。……ダメ。唾液でキテる、キちゃってる」
「そんなに気持ちいいのか?」
「思考が、はっ、止まる、くらいには。……ぷはっ、あーっ!」
「まさかこの世界の女は、キスだけでイケるのか? 舌を突き出せ、美和」
「こ、こうひゅればいいの?」
「ああ。引っ込めたらお仕置きだからな」
僕の舌先が、美和さんの突き出した舌を舐め上げる。
ねっとりとだ。
やがて舌先と舌先が触れ合うと、丈二さんは美和さんの舌を咥えるようにした。
「ん、んむーっ!」
僕の顔が上下する。
この動きは、まるでフェラチオじゃないか。
(これはエロい)
(ああ、キスはチンコ使わねえから天斗も興味あんのか)
(そこまでは。ほら。女の人って口臭が、ね)
(なるほど。んー、こりゃキスだけでイクまで感じさせんのはムリか)
ちゅぽん。
そんな音をさせながら咥えて上下運動で刺激を与えていた舌を解放し、僕と美和さんの顔が離れる。
「や。もっとぉ」
まだまだもの足りないのか、口の脇からよだれを垂らす美和さんは、そう言いながら舌を突き出して両手を伸ばした。
(うっわ。あの女らしい美和さんがこんな……)
(こっちの女らしいは、あっちで言う男らしいか。こりゃおっさんのアヘ顔って事かよ。そう考えると萎えるなあ)
そう言いながら、丈二さんは美和さんの首や肩、脇腹を優しく撫でる。
フェラチオをさせるなら足元に座らせるのが好きなはずなのにと思っていると、丈二さんはとんでもない事を言い出した。
「キスは気持ちいいなあ、美和?」
「口の中がジンジンして熱いんだ。もっと、もっとちょうだい」
「なら舌は引っ込めていいから、大きく口を開けろ。美和の大好きな唾液をたっぷりくれてやる」
「あーんっ」
「いい子だ。ご褒美をやらなくちゃな」
大きく開かれた美和さんの口に、高い所から唾液が糸を引いて落ちていく。
美和さんの鼻息は、キッチンまで聞こえそうなほどに荒い。
しかも美和さんは蕩けたような表情で唾液を口に受け、くちゃくちゃと咀嚼までしてからそれを飲み込んでいるようだ。