(へ、変態っぽい)
(そうかあ? でも、こりゃ天斗にだって今すぐ出来る女の喜ばせ方だぜ。臭いさえガマンすりゃいいんだ)
(言いたい事はわかるけど、ハードルが高すぎるかなあ)
(慣れだ、慣れ。さあ、そろそろかな)
(なにが?)
(見てりゃわかる)
丈二さんが唾液を落とすのをやめて普通に腰掛けると、美和さんは口の脇に付いたよだれを指ですくってまでして舐め始めた。
丈二さんはそれを満足気に見やりながらビールで喉を潤し、パジャマの上を脱いで全裸になってから煙草に火を点ける。
「あの……」
「丈二でいい。どうした、美和?」
「もっとして欲しい……」
普段の美和さんなら、口が裂けても言わないセリフだ。
表情は蕩けきっているし、内腿を擦り合わせているのを隠そうともしない。導いてあげれば、そのまま指で自慰を始めてしまいそうだ。
「キスか?」
「ん。口の中、切なくて」
「舌よりもっと、口の中を気持よくしてくれるものが見えてるだろう」
「……こ、これ?」
言いながら、ソファーの上で女の子座りになって美和さんが丈二さんの肉棒をさする。
「そうだ。口の中いっぱいに頬張ったら気持ちいいぜ。奥まで届くしな。ほら、まずはこの指を舐めてみな」
「んむっ。……ああっ」
「気持ちいいだろ? 美和が一番気持ちいいのはどこだろうなあ。舌の上、裏、頬の内側、歯茎、上顎。おお、美和は上顎が弱いのか」
「ん、ん、ん。らめ、イク。これイッちゃう!」
「イクのはまだおあずけだ」
「やあんっ!」
2本の指が、美和さんの口から引き抜かれる。
それにしてもあっちの女の人はこんな感じ方をしないのに、丈二さんはよくこんなやり方を思いつくな。
「今みたいに気持ちよくなるために、口の中をチンコでいっぱいにしようか」
「そしたらイッていい?」
「いいぞ。好きなだけ」
「する」
「じゃあ、下においで」
「ん」
テーブルとソファーの間に跪き、美和さんが潤んだ瞳でこちらを見上げる。
丈二さんが満面の笑みを浮かべているらしいのは、腕に挟まれて強調されている形になっている巨乳より、美和さんがいつもかけている赤いフレームの眼鏡が理由だろう。
メガネフェチめ!
「いい? 舐めて、頬張っていい?」
「いいぞ。初めてなら注文をつけるつもりはねえ。好きにしていい。ただ、歯を立てるのはやめてくれな」
「わかった。ああっ、すごい匂い。臭い! くさい! クサイっ!」
「やっぱ容赦ねえのな……」
美和さんはまず肉棒の上の方、尿道の辺りの匂いを嗅ぎ始めている。
(おうおう。こんなに鼻息を荒くして、腕力があってもかわいいもんだなあ)
(女の人は匂いで興奮するって本当だったんだ)
(まあ、そういう女も多いな。あっちで多いなら、こっちじゃ普通なのかもしんねえ)
(こんな乱れ方、あっちじゃそうそうないもんねえ)
(シャブでもケツの穴に捻じ込まれてりゃ別だがな)
(丈二さん、あれ嫌いだったでしょ?)
(ああ。お、見ろよ天斗。金玉の裏を嗅いで舐めたと思ったら、今度はケツの穴らしいぜ)
(小声で臭い臭いって言いながら、明らかに喜んでるよね。……く、くすぐったっ!)
(くすぐったいのがいいんじゃねえか。知的美人がアヘ顔で汚えケツの穴まで舐めまくる。こっちの女はたまんねえなあ、おい。これで処女だってんだから、この先が楽しみだ)
(待って美和さん、そこに舌なんて入んないからっ!?)
僕にだけ聞こえるように笑いながら、丈二さんはビールを飲んで煙草を吸う。
美輪さんが舌で肉棒を舐める水音はすぐに、口いっぱいに咥えて上下するぐぽぐぽという音に変わった。
歯が当たってかなりの痛みがあるのに丈二さんは何も言わないし、それを表情にすら出さない。これが、丈二さんなりの優しさなのだろう。
(ねえ、あっちの時からずっと思ってたんだけど、セックスの最中に飲み食いしたり煙草を吸うの行儀が悪くない?)
(行儀の良いセックスなんてゴメンだね。してもらってる時や単調な動きの時はヒマなんだから、こんくらい許せよ)
(はあ……)
(しかし、あっちの世界でオナニーばっかしてる童貞連中をこっちに呼べたらいいのにな)
(そんな事したら、犯罪者も増えるでしょ)
(まあなあ)
そんな事を話しながら丈二さんがたまに肉棒を咥えている頭をゴシゴシっと撫でると、そのたびに美和さんは小さく身を震わせる。
(なんかビクビクしてるけど、大丈夫?)
(イッてんだろ。俺が頭を撫でたのは、美和の弱い上顎を亀頭が突き上げるタイミングだ。男の分泌液で口が性感帯になるってのは、どうやらマジな話らしいな。それに唾液より、ガマン汁の方が媚薬として効いてる感じだ)
(……あっちにはこんな感じ方なんてないのに、なんでそんな事がわかるの?)
(考えればわかる、わからなくても予測は出来る。そんなもんさ)
(ふうん。あ、口から離したね)
(イキ疲れたかな。やり過ぎて顎が外れても困るから、ちょうどいい)
美和さんの荒い息遣いがリビングに響く。
「まだイケるか、美和?」
「……ごめん。今にも倒れそう」
「ならソファーに横になれ、ほら」
「ありがとう」
丈二さんは美和さんをソファーに寝かせ、今度は自分が床に座る。
僕の飲みかけのスポーツドリンクを顔の横に置くと美和さんは身を起こしてそれを一気に飲み干し、また身を横たえた。
「ごめん……」
「いいさ。少し眠れ」
顔も見ずに丈二さんが言うと、少しして美和さんは本当に穏やかな寝息を立て始めてしまう。
(疲れてたのかな。たぶん締め切り明けのはずだし)
(なるほど。体、使うか?)
(今はいいかなあ。せっかくの休みだし、動きたくないや)
(自堕落な。にしても、明日から夏休みか。男子生徒がスカートで、女子はズボンだろ。パンチラのねえ高校生活なんて何の楽しみもねえから、夏休みでよかったぜ)
そういえば丈二さん、彼女さんが家でミニスカートを穿いてると高確率で襲いかかってたな。彼女さんもそれを知ってて、休みの日なんかにはよく朝からミニスカートだった。
(おっぱいじゃダメなの? 女子はみんなあっちで言うノーブラで胸元のボタンを外してるから、おっぱいなら見放題だよ)
(どっちかっつーと、ケツの方が好きなんだよなあ。まあ、おっぱいはおっぱいで好きだけどよ)
(死ぬまでにあんなにたくさんの女の人とセックスしたのに、まだ見たいのか)
(とーぜん。それより天斗、酔ってねえな。もう2本目の大瓶が空くってのによ)
(そういえばそうだねえ。お酒なんか飲んだ事ないのに)
(となると、体の機能は俺が16の頃と同じか? あの頃は毎日店に出て、浴びるほど飲んでたし。ああ、チンコがまだ勃ってるうちに試すか)
(何を?)
(体を受け渡しても勃ったままかどうか)
(なるほど。いつでもいいよ)
(ほんじゃ交代、っと)
僕の意識が表に出る。
その途端、股間に集まっていた不思議な力が散っていくような感覚とともに、いきり立っていた肉棒が小さくなっていった。
(くっ……)
(まだムリか。萎えなかったら、寝てる美和のオマンコにぶち込ませようと思ったのになあ)
(や、やだよそんなのっ!)
(じゃあ、ずっと『種なし』のままでいいのか?)
(それは……)
さっきの会話は僕も聞いていた。
どうやら僕が思うより、『種なし』の男の人達は苦労をしているらしい。
どうしようもなく、子供。
そうとしか言えない僕を、丈二さんはこの世界で生き抜けるそれなりの大人にしようとでも思っているのだろうか。
(まあ、勃起の感覚を掴むのが最初の目標だな。女の体臭なんかには、慣れるしかねえと思う)
(うん。……ねえ、丈二さん)
(どした?)
(丈二さんだって混乱してるよね。なのに、僕の心配なんかしてていいの?)
(他にする事がねえじゃねえか。24時間、2人で1つの体を使うしかねえんだ。どっちかが折れなきゃ、四六時中ケンカだぜ)
(それはそうだけど……)
(そういや、朝メシはいらねえのか?)
(ああ、忘れてた。なんか簡単な物でも作るよ。ご飯は炊けてるはずだし)
(あいよ。好きに作って食ってくれ)
(うん。そうだ、僕の記憶は好きに見ていいからね)
(頭痛がすんのにか?)
(うん。そのくらい平気だから)
(……ありがとよ)
炊飯器は昨日のうちに予約してある。
それとみそ汁にハムエッグ、キャベツの千切りを用意して食べ終えても、記憶を見られた時の頭痛には襲われなかった。
(ごちそうさまでした)
(おう)
(テレビつけようか、丈二さん?)
(美和が寝てるからいいさ)
(じゃあ新聞は?)
(そりゃありがてえが)
(雑誌とかもあるから、用意して体を渡すね)
(そのまま読んでくれりゃいいさ。俺が体の支配権を持ってると、飲み続けちまいそうだしな)
(なるほど。じゃあ、夕方くらいにおツマミをたくさん用意して体を渡すかな)
後で酒屋さんに電話して、お酒も配達してもらおう。
美和さんはビールしか飲まないし、飲む量も少ない。丈二さんは日本酒やウイスキーも好きだから、あって困る事はないはずだ。
郵便受けから取って来た新聞各紙を読んでいる時の丈二さんは興味深げだったが、雑誌のページを捲り始めると、堪え切れずに吹き出した。
まず僕達の目に入ったのは、女性雑誌特有のグラビアページ。
(総レースのエロいパンツ、でもそれ穿いてんのは男。なにノリノリでポーズ決めてんのコイツ! ぶははっ!)
(仕方ないでしょ。こっちじゃ、男性は女性に愛でられる存在なんだから)
(なあ、エロビデオ探そうぜ。さっきの美和の反応からすっと、必ずどっかにあるはずだ)
(ヤダよ、そんなはしたない)
(おお、天斗が乙女だ。固い事を言うなよ、タカオトメ)
(競走馬とかお米の品種みたいに呼ばないでくんない。あ、ほらここ。『性交渉可能者』についての記事があるよ)
(そりゃ興味あるな。どれどれ……)
目次から記事のページまで捲り、2人でその記事を読み始める。
僕も自分が『性交渉可能者』だなんて夢は見ていなかったので、知らない事ばかりだ。
(25までに最低でも4人の嫁を持たねえと、2年に1回は幕府の選んだ女に種付けする義務が発生すんのか)
(しかも、人工授精じゃないみたいだよ)
(相手はオリンピック選手やノーベル賞受賞者なんかの、国のために頑張った女性の妊娠希望者。完璧にご褒美のエサじゃねえか)
(丈二さんのいた世界なら、人権がどうのとかで絶対にムリだよねえ)
(だな。天斗が25になるまであと9年、か)
(1人目は美和さんでいいよね?)
(俺はいいが、天斗はキツイんじゃねえか? 義理の母親で、かなり歳上なんだし)
(他の女の人達と結婚して、美和さんが傷つく方がキツイって)
(優しいねえ)