観念した丈二さんがドアを開ける。
平静を装いながらも期待しているのがバレバレな美和さんの前には、それ自体が高級なガラス工芸品だと言われたら頷いてしまうくらい高そうなお酒のボトルがあった。
「お、おかえり」
「ただいま。準備万端かあ」
丈二さんが美和さんの隣りに座る。
その間ずっと、美和さんの視線は丈二さんの足に釘付けだ。それに、鼻息も荒い。
「もう再生していいぞ」
「そ、そうなのか。まだブランデーの封も開けてないぞ」
「エロビデオなんてのはな、最初の方はどうでもいいシーンなんだよ。良く知ってんだろ?」
「し、知る訳がなかろう!」
「武士か。いいから流しちまえ。……ああ、ヌカ漬けが美味え」
丈二さんがポリポリときゅうりを噛むと、美和さんが立ち上がってビデオデッキを操作する。
真っ暗だったテレビはすぐに、セーラー服の若い男を映し出した。
「やっぱ男がメインで作られてんだなあ」
「それはそうだろう。買ったり借りたりするのは、ほとんど女なんだから」
「あっちでもお決まりの、パンツが見えそうなアングルでのインタビューからか。どうせなら女も映れってんだよな」
「同性愛者向けのビデオがあればいいんだろうが、すまないな」
「こっちでの一般的なセックスを知るのも大切だ。これでいいさ」
丈二さんが隣に戻った美和さんにもビールを勧める。
2人がそれとブランデーを何杯か飲み、煙草を1本ずつ灰にしたところで、テレビに映る男が立ち上がった。
「やっとかあ。どっこいしょっと」
丈二さんも立ち上がる。
その動きを視線で追った美和さんは、爆発してしまうんじゃないかと心配になるほど顔を赤くした。おそらく、スカートの中をバッチリ見てしまったのだろう。
「まずはスカートに顔を突っ込んで匂いを楽しむのか。この女優かなり美人なのに、行動はただのエロオヤジだな。美和、やりたくない事はしなくていいがどうする?」
「嗅ぐ!」
「ノータイムで言い切りやがった。そんじゃ、好きにしろ」
息を荒くして、美和さんがスカートの中に顔を入れる。
(おうおう。知的美人がサカリやがって)
(仕方ないって。こっちじゃ性交渉なんて、よっぽどのお金を積まなきゃ出来ないんだし)
(美和、金は持ってるだろ)
(ムダ使いを嫌うからね。かなり稼いでるのに)
(抑えるのがキツイほどの性欲があるなら、男くれえ好きに買えばいいだろう)
(……遺産を僕に残したいから、人工授精での出産もする気はないって前に言ってた)
(ああ、天斗が『種なし』だったとしても苦労しなくていいようにか。良い母親じゃねえか)
(うん。だから、どうか美和さんをよろしく。実の母親以上に大切な人なんだ)
(まあ性的な世話は任せてもらってもいいが。って、エロビデオの進行を無視してパンツの上から舐めまくってやがる)
(女の人の性欲は、こうなればとても抑えきれるものじゃないんでしょ。制服、汚れちゃうかなあ。シャツと下着とソックスは家で洗えるけど)
丈二さんが後ろに1歩下がる。
スカートから顔が出た美和さんはすぐに追いかけようとしたが、丈二さんはそれを止めた。
「待て、美和」
「や、やっぱり嫌になったのか!?」
「違うから泣きそうな顔をすんな。スカートを汚したら天斗が困る。下着とかなら家で洗えるが、スカートはダメだろ。なんかビラビラがたくさんあっから」
「なるほど。気づいてくれてありがとう」
「いいさ」
丈二さんが苦労してスカートを脱ぐ。
「下着はどうする、美和?」
「そ、そのままこっちに来てくれ!」
「……わかった」
スカートを雑にだが畳み、丈二さんが美和さんに近づく。
美和さんは優しい手付きで男性器に手を伸ばし、パンツの上から顔を覗かせるようにして笑顔を浮かべた。
(何してんだ、これ。こっち特有の儀式的な前戯か?)
(丈二さん、ビデオビデオ)
僕と丈二さんは、表にいてもいなくてもこの体の目で物を視ている。
だが表に出ていない時は、もう一方の視界をテレビで見ているような感じだ。だから丈二さんが意識していない物も、視界にさえ入っていれば詳細に観察が出来る。
(ビデオ? おやおや、かわいらしいイチモツが下着から顔を出してるじゃないか。いやっ、恥ずかしいっ。あっ。そんな汚い場所、舐めちゃらめーっ! ……おい。これ、俺も言わなきゃダメなんか?)
(さあ。あ、美和さんが手を離すよ)
(サービスするべきなのかなあ。あっちで言う筋金入りの童貞が、初体験するようなモンなんだろうし)
(頑張って。丈二さんなら言える!)
(こんな嬉しくねえ応援、生まれて初めてだ)
美和さんが男性器から手を離す。
丈二さんのは大きい。
こっちじゃ世界レベルなんじゃないの、って感じだ。
それが男物パンツの薄い生地と細いゴムで止められるはずもなく……
「ううっ」
「哀しそうな顔をすんな。今ビデオでやってるパンツから顔を出した亀頭舐めなら、甚平の時にすりゃいいだろうが。あれならゴムだけじゃなく紐もある」
「そ、そうかっ!」
「とりあえず、この中途半端に脱げたパンツはどうすりゃいい?」
「あたしが脱がすに決まってる」
「もうエロビデオとか気にもしてねえな。まあいい。好きにしろ」
パンツを脱がされると、ようやく丈二さんは落ち着いたようだ。
ちゃぶ台の前に座ってソックスを脱ぎ、ブランデーを呷る。
美和さんはといえば、そんな丈二さんの肉棒を撫でてさすってご満悦だ。
(にしてもフェラが大人しいなあ、こっちのエロビデオは)
(男性はほとんどが痛みをガマンしての性交渉らしいからね。この男優さんも、笑顔がたまに引き攣ってる)
(性欲がないなら、もしかして他の欲が肥大してんのか? この世界の男は)
(どっちの世界も見た立場から言うと、こっちの男性は性欲だけが抜け落ちてる感じだねえ。それに加えて、肉体的にもかなり弱くなったって感じ)
(男がバカ過ぎて神罰でも落ちたか。なんてな)
(それはあるかもねえ。こっちには、異能者や能力者が普通にいるし)
(はあっ!?)
丈二さんがかなり驚いている。
大きくなりかけた男性器の鈴口を美和さんが舐め始めてるけどいいのかな。
(どういう意味だよ、天斗!?)
(そのまんまだって。手から火を出したり、風を操ったり。それとあっちで言う、陰陽師や魔法使いが能力者)
(異能者はよ?)
(ほぼ不老不死。それに能力が唯一無二で、普通の人間が1000人いたって片手で薙ぎ倒される。その人達がいるから、こっちじゃ簡単に戦争なんか出来ないんだと思うよ)
(幕府が存続してる時点でも面食らったが、その理由がさらに驚きだぜ……)
(まあかなり違うからねえ、あっちとは。それより美和さんがむしゃぶりついちゃってるけどいいの? たまにだけど歯があたって痛い)
(慣れろ。まあ、何回かイケば落ち着くだろ。ほっとけ)
流しっぱなしのビデオでも、女の人が男の肉棒を舐め回している。
でもそれは、美和さんが奏でる音とはまるで違うものだ。
ビデオがチュッチュッなら、美和さんのはグッポグッポ。それに咥えるのが精一杯の太さだからか、鼻息も凄い。
「ガマン汁でもう口が性感帯か、美和? フェラは気持ちいいなあ?」
「……じゅるっ。ゴメン、先にイキたい。すぐ、すぐだからっ!」
「そうか。好きにしろ」
「うんっ。んっ、はむっ!」
美和さんの顔がかなりのペースで上下する。
(凄い音。それに歯がかなり痛い)
(イキかけてっから気遣う余裕がねえんだろ。こっちの女がみんなこうなら、慣れるしかねえさ)
(慣れるものなのかなあ)
丈二さんがポンと美和さんの頭に手を置く。
それと同時に美和さんはビクビクと痙攣し、男性器を吐き出すようにして床に突っ伏した。
(これ、イッてるんだよね。頭をポンってしただけで、まるで魔法みたいだ……)
(実は天斗は、エロ系の能力者だったりしてな)
(冗談でもやめてよ。絶対にロクな人生を歩めないじゃん、そんなの。美和さん、このままでいいの?)
(初めてのセックスだからな。今日くらいは好きにさせてやる)
(もしこれが明日以降なら?)
(ちょうど四つん這いになってっから、後ろから貫いてイカせまくりだ。堕ちるまでな。貫いて腰を振ってもらえるなら、なんでもしますって言うまで)
(この人に義理の母親を任せるとか、僕ってとんでもない間違いをしてるんじゃ……)
くつくつと笑いながら、丈二さんが箸に手を伸ばす。
(失礼だなあ。そして塩辛が美味え)
(ホントだ。たまにはこういう食べ方もいいね)
(そのまま食うなら、日本酒じゃねえとな)
(なるほど、だからか。夕方にはお酒が届くから、今はガマンして)
(ありがてえが、俺は完璧な居候だからなあ。あまり甘やかすな)
(体で払ってるからいいんじゃない?)
(言いやがる。お、美和が動いた)
美和さんがのろのろとした仕草で身を起こす。
ビアグラスを差し出されると、そのまま首を横に振った。
「もう、ムリ……」
「ガマンできねえって感じかあ。俺からの愛撫はいらねえのか? エロビデオじゃクンニしてっけど」
「いい。死んだっていいから、今すぐ挿れたい」
(な、なんか怖いよ……)
「挿れていいぞ。今日は美和の好きにしていいんだ」
「ベッドに横になって」
「わかった」
丈二さんがベッドの枕元の棚に灰皿やビールを手早く移動する。
その作業が終わって横たわると、ジャージの下だけ脱いだ美和さんがのしかかって来た。
「いい、挿れていい? 本当にいい?」
「いいぞ。好きに動いて、好きなだけイケばいい。ただ最初は慣らして、ゆっく……」
ぬぷっ。
そんな音が聞こえると同時に、肉棒が熱い何かで締め付けられた。根元までだ。
「んあ━━━っ!」
「ったく。なーにしてんだか、この処女は」
(ねえ丈二さん、なんかお腹に暖かい物が……)
(そりゃそうだろ。ションベン漏らしながら、派手にイッてやがるんだ)
(ええっ!?)
(ああもう、とりあえずジャージのズボンで拭くか。体が2つ欲しいなあ、おい)
(いいね。そしたらお互いに、いつでも好きな事できるし)
(ったく、色気のねえパンツはもう水分を吸い込まねえじゃねえか。よし、上も脱がせてそれで拭くか)
丈二さんがジャージを脱がせようと動く。
「あ、あっ……」
「ちょっと動いただけで感じてんじゃねえよ。っと、おっぱいがデケえから引っかかってやがる。よっと」
ぶるんっと胸を揺らし、ジャージが脱がされる。
それで布団に染みこんだおしっこを拭く間も、美和さんは悩ましげに小さく喘いでいた。
「やれやれ」
丈二さんは軽々と美和さんの体を持ち上げ、騎乗位から正常位に体勢を変える。
そのまま膣を奥まで貫いている肉棒を抜きかけると、美和さんは痛いほどの力で丈二さんの腕を掴んだ。
「大丈夫だよ、美和。これからいつでも好きな時にしてやっから」
返事はない。
(あれ? 意識なくない、美和さん)
(そんな状態で喘ぎながら、腕を掴んでチンコ抜くなって伝えてきたのか。さすがだねえ)