布仏家は代々更識家に仕えてきた家系であることから、彼女は更識楯無の侍女として教育を受けた。幼い頃から楯無に仕え、他の生徒の目が無い場所では楯無のことを「お嬢様」と呼んでいた。
整備科に通い、楯無と同じ生徒会に所属し、会計を担当。更識家当主に仕える者は優秀でなければならないという両親の言いつけを守り、学年主席を維持していた。
楯無にとって虚は幼なじみであると同時に片腕と呼べる存在で無二の信頼を寄せていた。勝手知ったる事もあって、更識にまつわる様々な仕事の一部や生徒会の事務周りは彼女に任せていた。
虚はとにかく優秀で、彼女を頼れば何でも問題を解決してくると周囲から思われている節があった。信頼を寄せられている証だったが、彼女の内面は「ああ、またか」という諦めだった。彼女本来の気質は妹の本音と同じくゆっくりのんびりするのが大好きだった。他人の目や抱えている課題問題から逃れて一人きりの時間ができると、気を張る必要がなくなってだらだら過ごすのが常だった。
彼女が長く楯無に仕えてきて学んだことは「面倒なことは先回りして済ませよう」だった。生来のトラブルメーカーでいたずら好きなお嬢様が引き起してきた数々の問題や、これから引き起こす予定のいたずらの準備に付き合わされ、泣きながら引きずり回されていく内に、気がつけば「できる女」のようにみんな勘違いして、次から次へと主に楯無が原因の問題が舞い込んできた。
今もそう。一年の寮長、つまり織斑先生に弟の部屋の鍵を借りるため、別件で忙しいお嬢様に代わって寮長の部屋を訪ねるところだった。
「開いている」
織斑先生はノックをして部屋に入ってきた虚を見るなり、にやにやとしながら壁の前に積み上げた雑誌の束から一冊取り、裏を向けて机の上に置いていた。
普段のタイトなスーツ姿と違い上下共に白いジャージが目に入った。手元に視線を動かすと、机の奥側に分厚い本を何冊も乱雑に積み上げ、雑誌の横の下には開き癖がついたノートは半分くらい文字で埋まり、鉛筆が数本転がっていてとすぐ側には重量感あふれる年代物の鉛筆削りが置かれている。
織斑先生はさきほどからずっとにやけ面のままだった。そしていつもと同じ第一声を放った。
「布仏、また忘れ物か」
「す、すみません」
虚は頭を下げた。こうやって織斑先生の部屋を訪ねるのは何度目になるだろうか。少なくとも両手の指の数を超えていた。
織斑先生の方も何回も同じやりとりを繰り返す内に、虚の顔を見るだけで用件を察するようになっていた。無言で机の引き出しを開け、丸いタグがついた鍵をつまみ上げて雑誌の背に置いた。
「楯無も毎回懲りないな」
織斑先生が誰に聞かせるつもりでもなく口を開く。この言葉は訪問が五回を超えた辺りから聞くようになった言葉だった。虚は反応に困ってあいまいな笑みを浮かべた。
虚が織斑先生に説明したストーリーはこうだ。
「楯無が一夏の部屋を訪問した際に忘れ物をした。楯無は別件で忙しいので私が代わりに回収する」
楯無が頻繁に一夏の部屋を訪れていたことは周知の事実で、紆余曲折あって一夏と楯無が交際するようになった後もそれは続いた。
鍵を手渡され、礼を言って部屋から立ち去ろうと踵を返した。
後ろから虚を呼び止める声がした。
「布仏。ところで一夏と楯無の件は何か進展があったか?」
振り返ると織斑先生はにやけ面ではなく、肉親を心配する顔になっていた。嫉妬に近い複雑な感情さえ混ざっている。虚が最近知った感情とまるで同じものだった。
虚は首を振って答えた。前回の訪問した時と同じ言葉を思い浮かべた。
「いいえ。相変わらず手をつないだり接吻をするだけです」
「あいつらは小学生か」
織斑先生の顔つきから真剣さが消えて、呆れを交えながらも安心した表情を浮かべていた。
三〇分後、虚は手提げ袋を持ち脚立を脇に抱えて織斑一夏の部屋の前に立っていた。知らない者が見ればおかしな光景なのだが、楯無が一夏を驚かせるために虚が様々な仕掛けを行っていることは周知の事実で、また整備科に所属していることもあって脚立やツールボックスを持っていても生徒から特に不審がられることはなかった。
扉に鍵を差し込み難なく無人の扉を開けた。
織斑一夏は現在二人部屋を一人で使っていた。IS学園唯一の男子生徒である彼は色々思惑や手違いがあって、女性と同居することが多かった。もちろん彼は紳士を絵に描いたような人物かどうかは定かではないが、少なくとも同室の女性に手を出すような事はしなかった。
それを知って、楯無は一夏がISの訓練で部屋を開ける度に、
「お風呂にします? それともシャワーにします? それとも私にします?」
と禁欲中の青少年をよくからかっていた。
今ではISの訓練をすると言ったら楯無も一緒にいることがほとんどで、それまで楯無と行動を共にしていた虚は寂しさを覚えずにはいられなかった。
一夏の部屋のシングルベッドは二台が隣り合っておかれ、ダブルベッドのように使うことができた。特に理由はないと思われたが、どういうわけか最初からこうなっていた。
虚は慣れた手つきで手提げカバンを机に置いて、中からスイッチの部品や煙感知器、コンセントボックス、壁掛け時計やキッチンタイマー、それに電球を取り出した。いずれもIS学園で使われているものと寸分違わなかった。袋の底から軍手とドライバーを取り出し、脚立を置いて煙感知器を持参してきたものに取り替えた。製造時期や表面に貼られたシールも全く同じなので、交換されたことには気付かないだろう。ついでに一夏が交換申請を出していた電球も換えておく。この申請は一夏が織斑先生に提出した際に、同席した虚がついでに処理をするといって宿題にしていたものだ。脚立を降りると部屋中のコンセントボックスを持参してきた物に交換し、壁際に脚立を置いて壁掛け時計も取り替える。電波時計なので振り子は飾りだった。キッチンタイマーも交換した。
最後にベッド脇の引き出しを開けて、中にティッシュとコンドームの箱が入っていることを確かめた。備品のスイッチ部分や可動部も確認する。交換前の部品はすべて手提げ袋にしまい、埃はきれいに取り除いた。絨毯に脚立の痕が残っていたが、電球を見れば用務員と勘違いすることだろう。今日電球を取り替えることは通知済みだった。
虚は最後に指差点呼してすべての作業を終えたことを確認し、部屋に鍵をかけて立ち去った。
一旦荷物を部屋に置いてから織斑先生に鍵を返却した。
そして脚立と手提げ袋を持って学園の防諜部が存在する建物に向かった。防諜部には更識家の者が多数在籍しており、これらの道具は彼らが用意したものだった。
「作業完了です。助かりました」
虚が礼を言うと、二〇代後半と思われるYシャツにパンツスーツ姿の女性は照れたように微笑みを浮かべた。
女性は更識家の下男の家系に当たり布仏家よりも家格が下だった。昔なじみということもあって虚が学園内で自由に動かせる戦力でもあった。
すぐに元来た道をとって返した。
再び自室に戻り、ルームメイトの机上に置かれたカレンダーから、第六アリーナで自主トレを行っていて遅くまで帰ってこない予定だと確かめた。
そして袖机の一番下の段から紙袋を取り出し、中身を机の上に並べた。
ノート型端末、片耳タイプのイヤホンマイク、眼鏡ケース。空の紙袋は元の場所に戻す。
今まで身につけていた眼鏡を外し、眼鏡ケースの中にあるものを新たに掛け、フレームを指で触れてディスプレイ機能を有効にした。次にノート型端末にスイッチを入れ、OSが起動すると同時にコンソール窓に対して所定のコマンドを打ち込み、IDとパスワードを入力した。イヤホンマイクを装着してからディスプレイに画像が表示されることを確かめた。
「さて起動しましょう」
メールをチェックすると防諜部からツールの補足事項が送付されていた。素早く目を通し内容を把握する。ツールの改善案とパッチ当ての方法が書かれていた。
ポケットから学園から支給された携帯端末を取り出し、SMSアプリを起動して先ほど防諜部で会った女性に「ツール起動」とメッセージを送った。
するとすぐに「一号機から一八号機までの通信確認。動画データの再生成功。音声クリア。通信状態良好。すべて問題なし」と返事がきた。
メッセージを読んで虚は椅子に掛けたまま背伸びをした。
「準備完了。後は待つだけですね」
虚は微笑み、携帯型ディスプレイに投影された画像に焦点を合わせた。
そこには織斑一夏の部屋が映し出されていた。これが何を指し示すのか答えは一つで、彼の
IS学園の機密保持と生徒の保護のため、学園には防諜部なる部署が存在し、毎日のように警備を行ったり学内ネットワーク内外からの攻撃に対応したりと何かと忙しい。学園だけでなく更識家の息がかかった者が多く在籍するのが特徴だった。
更識楯無は更識家当主であり、織斑一夏は史上初の男性IS搭乗者。一夏が楯無と交際を始めたことはつまり、一夏が楯無家の一員になるかも知れないということを示していた。そこで一夏と楯無の護衛を兼ねて監視の目を付けることにした。すなわち楯無が一夏との交際を許した時点で彼の部屋には盗聴器が仕掛けられていた。
楯無の護衛に関する情報は虚に逐一報告されており、ある意味において楯無よりも虚の方が多くの情報を把握していた。
ちなみに一夏の部屋に盗聴器を仕掛けることは防諜部から織斑先生に話が通してあり、彼女は身内の安全と引き替えに監視がつくことを渋々承知していた。
なお学園支給の携帯端末が使用する学内サーバで得た情報はすべて監視され蓄積されていたが、防諜のための利用に限定されていた。学園に防諜部という部署の存在を知る者は職員と一部の生徒に限られていた。
▽
虚は更識家に生息する
「早く孫の顔が見たい」
遺伝的には織斑先生と同じ遺伝子が更識家に取り込まれるわけだから、かの魑魅魍魎たちとしても申し分なかった。ISの軍事的優位性が続く限り、織斑の血、すなわち織斑千冬の親族であることこそが大きな影響力を持っていたからだ。
そこで楯無の状況を把握しつつ適切なアドバイスを下せるように、と
虚は思った。
「なんてめんどくさい」
しかし、虚とて恋に恋い焦がれる年頃の女子高生だから、同年代の男女のまぐわいに興味があった。
「これは命令。上からの指示に従うだけ。魑魅魍魎の指示だからお嬢様には決して明かしてはならない。決して知られてはならない」
命令だと思うことで決して私利私欲のために承諾したのではない、と自己を正当化した。
虚の目や耳に流れ込む情報は、配下の女性も見て聞いている。アドバイスをするように、とは言われたが虚とて未だ処女なので人生経験の先達に頼るしかなかった。
一夏の情報は調査済みだった。両親を含めた親類縁者の名前。今まで叩きおったフラグの数。小学校時代のあだ名、中学校時代の学園祭、幼なじみとの甘酸っぱい生活――もちろんこれは調査員の客観的評価だった。初めてアダルトビデオを見たときの興奮というか驚愕。ISを起動させてからの多忙な日々等々。気がつけば織斑一夏についてちょっとした事情通になっていた。
二人が自室にしけこむまで時間があったので授業の復習をして待つことにした。携帯型ディスプレイを切って集中していると、しばらくして携帯端末が振動しメッセージを受信していた。
「楯無様と一夏様が入室されました。いつになくそわそわしているご様子。もしかしたら今日は当たりかもしれません」
虚は慌てて眼鏡のフレームを触ってディスプレイ機能を有効にしていた。
▽
楯無は生徒会の所用を虚に任せ、ずっと一夏のIS訓練に付き合っていた。彼女の色眼鏡を外して見ても一夏の成長は著しく、一〇本に一本は楯無に剣を当てられるようになっていた。
しかも今日は初めて一夏自身の実力で楯無に土をつけた。まぐれと言ってしまえばお終いだったが、彼我の戦力の格差があまりにも大きく、今まで偶然すら起こらない状態だった。それだけ一夏の実力が向上していたことを意味していた。
楯無は一夏に褒美を上げる約束をしていた。もし一度でも土を付けたら体を許すという約束だった。
その時は一夏に発破を掛けるべくその場の思いつきで口にしたのだが、後で自室に帰って一人で思い出すと恥ずかしさで何も手がつかない状態になった。ベッドの上で枕を抱きかかえてきゃーきゃー言いながら、左右に何度も転がっていたところ虚に見られてとても気まずい思いをした。
いつもは虚が監視の目を光らせているのでろくに恋人らしいことができなかった。初めての彼氏に甘えたっていいではないか、と虚に抗議してみると「楯無の名が泣きますよ」と当主の責任を盾にしてかかってくる。虚の堅さはありがたく思うこともあり、時には
楯無は決意した。一夏としてしまおう。処女を捨ててしまおう。そして女になろう。
「今日はお疲れ様! まさか私が負けるとは思わなかったよ」
二人きりになって、あえて「負ける」という単語を強調した。
一夏は楯無にまぐれ勝ちしたとき、秘匿回線で「嘘……負けた……」という楯無の声を聞くまで勝利したことに気付く事が実感できずにいた。更衣室にいる間も勝利の興奮でどこか浮ついていて、以前した約束のことをすっかり忘れていたが、二人で制服に着替え、並んで歩いていたら急に昔の約束を思い出した。一夏は楯無と交際するようになってから、二人でいるときは名前を呼び捨てにしていた。
「楯無……あのさ。とても言いにくいことなんだけど……昔した約束、覚えてるか?」
そのとき楯無は、見ている方が心配になるほど動揺して声が震えていた。
「う、うん。覚えてる」
気まずい。しかし、思春期の一夏は性欲と好奇心が勝っていた。布仏虚の監視の目がない今がチャンスだった。
「だ、だから、さ。このまま……部屋にいかないか」
言ってしまった。もう後には引けなかった。一夏は楯無が返事をするのを待った。ほんの一〇秒に満たない間だったが、一夏にとっては何十倍にも長く感じた。
楯無はしどろもどろになりながら、落ち着き無く手を動かして何度か一夏の顔を見ようとした。そのたびに一夏とした約束を思い出し、胸が高鳴った。決断に迷う必要はなかった。言ってしまえ。早く言ってしまえ。
「……い、行く」
小さな声だった。年上の余裕を見せるとかそんな気持ちは吹き飛んでいて、妹の
二人は手をつないだまま無言で一夏の部屋に向かった。
途中で虚の姿を探したがどこにも見あたらなかった。おそらく生徒会室だと結論づけ、好機を逃すことなく二人は部屋に入って扉を閉めた。
密室に本当の意味での二人きりだった。一夏は水を入れたケトルのスイッチを入れてお湯を沸かしながら、棚から紅茶のパックを出して、ガラスポットに三角錐の紙包みに入ったパックを入れた。お湯を注いで紅茶ができあがるまでの間無言だった。
ティーカップを持って勉強部屋件寝室に向かうと、一夏がダブルベッド代わりに使っていた二台のベッドが目に入った。紅茶に口付けると小刻みに震えていて、紅茶を口に含む度にカチリと歯が当たった。
二人は椅子に座りながらお互いの顔を見つめ合い、互いにISの試合や試験に臨むよりもむしろ緊張していることがわかった。
一夏の鼻孔は汗で蒸れた甘酸っぱい少女の匂いで満たされていた。楯無の全身の匂いをかぎたくて、制服のベールに包まれた彼女の磨かれた肌やその秘められた場所をのぞき見、視覚や嗅覚、指や舌を介した触覚で味わうことができるのかと想像して、下腹部が徐々に熱くなっていつしか股間で横倒しになっていた
逸物が自由を求めて主張を止めぬばかりに一夏の頭は性欲という獣の心に侵され、今すぐにでも楯無を組み敷いて彼女の秘唇に逸物を突き立てて見たいという欲求に駆られていた。その一方で楯無を傷つけたくないという思いが頭の片隅で大きな声を上げていて、獣の心に身を任せて彼女を失いたくないという思いを募らせた。
「一夏くん……約束の内容を覚えてる? 覚えているなら言ってみてよ」
楯無は顔を羞恥に赤く染め、緊張のあまり目を潤ませていた。
濡れた瞳の輝きに胸が苦しくなった一夏は椅子を動かし、彼女の目と鼻の先まで近づき、震える指先で彼女の手に触れた。最初はたどたどしく指先を絡めて、互いの手のひらを合わせて水かきに指を引っかけると、彼女の手が先ほどよりも汗ばんでいて、震えもまた大きかった。
楯無は言葉を待っていた。キスできる位に近づいて目を合わせ、手をつないだ。一夏も真っ赤な顔で自分を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をして、しばらくして口を開いた。
「楯無に一度でも勝ったら俺のモノになる。俺が……楯無の初めてを……全部もらうんだ」
一夏は途中尻すぼみになりつつあるのを意志の力で耐え抜き、最後まで言い切った。心の中で「はぁぁぁ……」と深くため息をついていたのだが、不安にさせたくなくて表情には出さなかった。
一夏は細い体を弱々しく震えさせる楯無を見つめて、返事がくるのを今かと待った。既に逸物は痛みを覚えるほどの硬くなっていて、下着を押し上げて布とこすれるだけで先端からよだれをこぼしていた。
楯無は一夏に約束の内容を話させ、気の利いたセリフの一つや二つでもかけてやれると年上として威厳の復活を試みたが、想像以上に駄目だった。頭の中はひたすら「いちかいちかいちか……一夏」と恋人の名前で埋め尽くされていて、気がつけば一夏から真剣な眼差しを向けられていた。何でも良いから意思表示をしようと、楯無は小さく首肯した。
顔をうつむかせたまま上目遣いに恥じらう様に、一夏は頭に血が上って「よかった」と一言呟いてから返事の代わりに唇を重ねた。
お互いの唇をそっと重ねるだけの優しいキス。ほんの少しで良いから楯無を落ち着かせたくて、普段の楯無らしくない小動物のような姿を見続けていると襲いたくてたまらなくなっていた。唇を重ねることで一夏自身も心を落ち着かせたかった。
唇と触れあうだけ包み込まれるような感覚に浸れるのか。楯無は他の男を知らなかったから比較ができなかった。いたずら心で頬や手の甲に唇に触れたことはあっても、こんな胸が温かい気持ちになれるとは思ってもみなかった。胸の鼓動がほんのわずかだけ静まった。
「ん。少しだけど落ち着いた」
唇を放して見つめ合いながら、少しだけ口の端がゆるんだ。楯無は指先で自分の唇に触れると恋人の余熱が残っていた。
一夏はゆっくりと視線をベッドに向け、再び楯無を見て握っていた手を軽く引っ張った。「行こう」と意味をこめたら、楯無はその意図を正確に拾い上げ、腰を上げる一夏の手を握りしめたまま、ゆっくりとした歩いてベッドの縁に腰掛けていた。
微かにスプリングが軋んだ。二人の重みを受け止めてクッションが沈み込んだ。
お互いの意思を確認し合うように目を見て短く言葉を切った。
「いいな」
「……いいよ」
一夏は手を震わせながら楯無が制服のボタンに手をかける様を凝視していた。自分も上着を脱ぎながら、楯無が鎧を脱いでいく様子を観察していた。楯無が上着を外し、ブラウスが露わになると締まった腰もさることながら、鍛え上げ無駄を省いた体にもかかわらず母性を強調するたわわに実った双丘に目を奪われずにいられなかった。
楯無の指が黄色のリボンの先にかかり、少しだけ強くつまみあげひと思いに下に向けて引いた。衣擦れの音がひどく大きく響いたと思ったら、首元の拘束がゆるんで解放感と共にブラウスの襟と肌の間に隙間ができて、室内の心地よい空気が、首もとから鎖骨へと駆け下りていった。
ベルトを外し、スカートのファスナーに手を掛け、ひと思いに脱ぎ捨てる。すると、黒いカラータイツに包まれた引き締まった太股が一夏の眼前に晒されていた。
一夏は唾を飲み込んだ。楯無がベッドの上で体育座りしながら踵を浮かせた。太股に膝小僧、ふくらはぎとくるぶし、そして細い足指。柔らかそうなお尻に目をやると、彼女は親指の指先をタイツにかけて身を捩りながら、ゆっくりと脱いでいた。尻の肉に、健康的な白い肌が汗で蒸れて艶やかに光っていた。もう限界だというのに逸物がさらに膨張した気がして一刻も早く自由にしてやらねば、とベルトに手を掛けていた。
下半身は白いショーツを残したままブラウスに手を掛ける。一夏は手早くYシャツを脱ぎながら半裸になり、そしてズボンに手を掛け、ファスナーを引き下げて一気に脱ぎ去った。靴下を外し、ボクサーパンツ一枚で制服をたたんだ。はやる心で楯無を見ると、彼女のブラウスは前をはだけさせ、汗でにじんだきれいなお腹を露わにした。
「……そんなに見ないでよ。ちょっと恥ずかしいな」
「ご、ごめん」
思わず一夏は謝っていた。目を背けた振りをして、視線だけブラウスから腕を抜いていく姿を追った。
お互いに下着姿になっていた。楯無は白いコットン地のシンプルな下着で勝負下着にしておけば、と心から悔やんでいた。肌を見られるよりはむしろ下着を恥じ入っていた。一夏の方は白い下着姿にこれ以上ないほど興奮させられていた。普段の楯無ならばもっと派手な下着をつけていてもおかしくないと考えていたからだ。清楚な感じがたまらなく一夏の心をつかみ、もうすぐ彼女は他の男には一度も見せたことのない深淵を開いてくれるのだと思うと期待感が高まった。
楯無は恐る恐る胸の前に手を持って行き、フロントホックに指をかけた。二つに分かれたブラを外すと、拘束から放たれた二つの乳房がまろびながらはねるようにして
一夏と言えば、今すぐボクサーパンツを脱ごうか脱がないかで迷っていた。臨戦態勢に入った逸物は天を向いて高らかと
生まれたての姿になった楯無は、自分の肌を眺めて少し汗ばんでいるなと感じ、汗臭いと言われたくなくて体を清めようと思った。
「ね。シャワー借りても良いかな」
「ああ。バスタオルも用意してあるから自由に使ってくれていい」
「ありがとー」
楯無はそう告げて乳房と秘唇を隠しながらシャワー室に入っていった。
一夏は一人残され、目を泳がせてからボクサーパンツを脱ぎ捨てた。布に引っかかった逸物が外気にさらされてすぐに丹田に力を込める。跳ね上がった逸物は一夏の下腹部を打った。裸体をさらけ出したままベッドの脇まで移動して引き出しからボックスティッシュを取り出し、コンドームを枕元に置いた。楯無と付き合うようになっていつか今日のようなことがあると期待して、街まで外出した際にドラッグストアで購入しておいたのだ。それが今役立とうとしていた。
一夏は女を知らなかった。思春期の身空、興味はあった。しかし身近な女と言えば姉であり、姉のような女で童貞を捨てようと心に決めていた。楯無は一つ年上であり一夏の同級生の誰よりも強く女の香りを放っていた。姉という生き物が見せる強さを楯無も持ち合わせていた。だから一夏は楯無に
枕の位置を確かめて、一夏はシャワー室へと意識を向けた。
楯無はシャワーヘッドからお湯が出てくるのを確かめ、慣れた手つきで適温に調整していた。髪に湯がかからぬよう注意して壁に掛け、ボディソープを手にとって泡立てた。泡を体に乗せながら、期待と不安が高じるあまり「どうしよう」とずっと考えていた。セックスのやり方は性教育の授業や年上の部下から聞いて勉強していた。股間にボディソープを丹念にすり込みながら、「こんなグロいところに入るんだ……」と思いつつもシャワーを浴びて泡を洗い流した。
「入れる時痛いってよく聞くけど、生理痛とどっちが痛いんだろ」
と疑問を思い浮かべながら体を拭いて、バスタオルを胸に巻いてシャワー室を後にした。
楯無はバスタオルはベッド脇に畳んで置いて、肩まで布団を被っているとシャワーを終えた一夏が見下ろしてきた。
まっすぐ彼を見ることができない。「するの? しちゃう? しちゃうんだ……」と楯無がどぎまぎするうちに一夏がベッドに足をかけて、その重みでスプリングが軋む。布団で顔を隠しながら、反り返った逸物を目にして驚かずにはいられなかった。想像以上に大きかった。自分の指よりも太くて
「ふぁ……ん」
お互いの準備が終えたことを確かめ合うキス。唇の重なり、ボディソープのさわやかな匂いが鼻孔に広がっていく。
一夏も布団に入り、しばらく唇だけで触れあっていく。そのうちに一夏の手が楯無の肌に触れた。目をつむって唇を受け入れた楯無だったが、一夏の手の温もりを感じ取って
「どうしたんだ……?」
一夏は舞い上がっていて楯無がキスを止めた理由がわからなかった。楯無は身をよじって僅かに一夏と隙間を作り、困ったように眉根を寄せた。
「ね? 恥ずかしいから電気を消そうよ。ね?」
はっとした。一夏が参考にしたアダルトビデオでは明るい光の下で致していたから、そこまで気が回らなかった。楯無からゆっくりと体を離し、照明のスイッチをオフにする。スイッチの場所を示す微かな光に切り替わって、再びベッドへと潜り込んだ。
「これでいいか?」
薄暗い部屋の中で横を向いていると一夏が耳元でささやいた。とても甘い言葉に聞こえ、反対側へ向き直って、
「うん。いいよ。……キミの好きなようにして」
と楯無の方から唇を奪った。
▽
張りのある乳房が形を変え、硬く屹立した薄桃色の乳首が肌に押しつけられる。
唇を小刻みに離しては触れ合わせるだけを繰り返しながら、体の位置を変え、ようやく一夏の両腕がくびれた腰にかかり、男のゴツゴツとした手が肌を撫でるだけで幸福感に満たされた。
一夏は楯無の体を組み伏せて上半身を起こした。布団がはだけ、わずかな光の中に女の肌の白さが浮かび上がった。つい先ほどまで抱き合っていた肌はしっとりと汗ばみ、細身のせいか実際の数値以上に大きく見える乳房が今にも零れ落ちそうだった。
「胸、触るぞ」
楯無の返事を待つことなく震える手で乳房をつかむ。手のひらに肌が吸い付くような、それでいて弾力がある。
「これが楯無の……」
柔らかい。揉めば揉むだけ形が変わる。新鮮だった。一夏が楯無の様子に構わず感触を楽しもうと、少し力を込めた。
「一夏くんっ……痛あ……。おねえさんの肌をやさしくして……ね」
どうやら力を込めすぎたらしい。楯無の言葉を聞くやすぐに手を離し、謝りながら力を抜いて手酌の中に乳房を納め、横からすくい上げるようにした。たわんだ肌が波打って二つの乳首がぶつかり合うくらいまで寄せ、そして離す。もう一度すくい上げ、右の乳房に顔を近づけ、恐る恐るむしゃぶりついた。
「赤ちゃんみた……い……ぃやあ……くすぐった、ん」
子猫がミルクを舐めるように赤らんだ出っ張りを下から上へと舌をあてがう。もっと大きく硬くならないか、と思って乳首を口に含むと、舌の上であめ玉を転がすようにまとわりつかせた。
一夏が夢中になって乳首に吸い付く間、楯無は彼の背中をずっとさすっていた。小さな子供をあやすように一夏が乳首に飽きるまで続けるつもりだった。
一夏の唇が離れ、唾液で滑った乳首が彼の頬に当たってはね上がる。もう片方の乳首を手繰り寄せると、再び唾液でいっぱいの口内に含み、やや柔らかくなっていた乳首を一方と同じく硬く張り詰めさせようと必死になった。
先ほどと同じ要領で乳首を舐めていると、時々楯無の口からくぐもった、背筋を伝う背徳感に我慢するかのような微かな吐息が漏れるので、それを頼りに弱いところを探ろうとしていた。
楯無は少しでも気を許せば恥ずかしい声が出ていきそうだった。未知の経験なので一夏がうまいのかどうかまったく判断がつかない。最初はくすぐったいと思っていた感触が徐々に熱さを帯びて、口から漏れる吐息は
体の変化に戸惑っていると、一夏の手が自分の足を撫でた事に気がついた。
一夏は乳首から口を離して顔を上げた。楯無と目があってお互いに照れまじりになってはにかんだ。
手のひらでお腹を撫でると、乳房とはまた異なる柔らかさが意外に思えて、何度も触っていると、
「お腹ばっか、や。肉がついちゃってない?」
楯無は恥ずかしそうに両手で顔を覆ったので、一夏は思わず笑った。
「え、うそ」
楯無が「やだー」と声を出したので一夏は慌てて否定した。
「そんなことないって」
「……そう?」
恥じらう楯無に向かって一夏は大きく頷いた。
仕切り直しと言わんばかりにお腹から離れた一夏の手は股間の茂みに宛がわれた。
驚いた楯無の目が丸くなり、びっくりしたのか肩を震わせ、そして背筋をのけぞらせた。
陰毛のふわりとした感触に、一夏は自分とは柔らかさも太さも違うのだな、と妙な感想を抱いていた。ISスーツを着ることもあって、陰毛がはみ出ていると見苦しいので茂みの形を整えられていた。横向きのシックスナインのように一夏の顔は楯無の股間へ向けられ、楯無の顔の横には一夏の逸物が脈打っていた。
「こんなんなんだな」
一夏が口に出して言うものだから、羞恥に耐えられなくなった楯無は顔を背けた。
「じ……じろじろ……見ないで欲しいな……」
消え入りそうな声で呟く。同性に見られても言いように手入れは怠らなかったが、異性に見られる方が恥ずかしかった。しかも恋人に見られているのだから「変だったらどうしよう」と不安で一杯だった。
「すっげえ可愛い……」と恥じらう楯無の姿が愛おしくてたまらなかった。虚を出し抜いたような充足感に満たされて、これから獣のような声を上げて種を互いの体を求めるようになるのだという、未開の地を征服する様を想像して居ても立ってもいられなくなった。
一夏は性器の位置を確かめようと指の腹で入り口をはばむ大きな唇をまさぐった。
小ぶりで弾力に富んだ肉をいじっている内に、中央付近から尻穴にかけて、粘ついた汁がにじみ出てきた。指の腹で何度も上下にさすっていると、あふれ出さんばかりにとどめなく流れ落ち、ついに汁まみれになった指が淫らに輝いた。
「ふ……んぐ……」
楯無は高まりつつある下半身の熱さを我慢しようと口元を抑えていた。自分でするときとは違うもどかしい感覚に興奮しつつ、もっと触ってもらいたいとか、気持ちいいのはここだよ、と導いてやりたいという思いがよぎる度に「そんなこと恥ずかくてできないよ……淫らな子だって思われたくないよ……」と後ろめたい感情が沸き起こって、結局声を漏らさないようにするだけで精一杯だった。
一方、一夏は驚き焦っていた。濡れているのは分かった。もっと気持ちよくさせたいから淫核はどこかと探したが、やっぱりよくわからない。事前に弾に相談しておくべきだったか。エッチってさどうやんの――と聞いても無駄だとすぐに思い直した。五反田弾も一夏と同じく
楯無に動揺を気付かせまいと指の動きを続けた。指が秘唇の入り口を伝う度に楯無の体は男を受け入れる準備を始めていた。子宮の奥に一夏のそそり立つ逸物を受け入れるためにしっかり濡らしていく。彼女が恥ずかしがる以上に女の本能は正直に反応していた。
汁でぬめぬめと鈍く妖しく肌が濡れるほど、入り口を塞ぐ大きな唇は徐々にではあるが、入り口を解放しようと馴染んでいった。頬を朱色に染めた楯無はか細い声と共に朧気な快感と嵐のような羞恥の渦と戦っていた。一夏のたどたどしい指つかいは彼女を焦らした。
「う……ん……い、あぁ……」
女の吐息だった。濡れた声は一夏の耳に届き、彼の興奮を持続させる効果をもたらしていた。一夏は性器の交合による快楽への期待で頭がおかしくなりそうだった。入り口を解きほぐしてしまえば準備ができる。男になれる、と。
夢中になってしばらく続けるうちに朱色の肉があらわれ、ぽっかりとその深淵を覗かせるまでに至った。一夏は今にも割れてしまいそうな薄氷を踏むときのように、慎重に深淵へと指先を埋め、そして溢れ出る雫をすくい取った。顔の前まで持って行き、人差し指と親指の腹で雫をすり合わせると、粘ついて糸を引いているのがわかった。
「見ないでよう」
と楯無が声を上げた。すぐに口元を手で押さえ、声を我慢している。
一夏は指先のきらめきにとらわれ、自分の指を舌でしゃぶった。舌先で女の雫を転がして味わう。無味だったが、楯無の匂いがした。
楯無は秘唇からにじみ出た体液を一夏が口にするのを見て、
「汚くない……?」
と聞かずにはいられなかった。一夏は性欲に狂った内面を微笑みという仮面を押し被せて答えた。
「おいしいよ」
「本当に?」
一夏の言葉をそのまま受け入れることに抵抗があった。楯無にとって膣は入る穴ではなく、血が出る穴だったからだ。体内の老廃物を出すだけの部位からにじむ体液をすくいとって美味しいのだろうか。自分で慰めるときに好奇心から舐めてみたが無味無臭だったから、もしかしたら男の味覚は違うのかも知れない、と楯無は考えることにした。
楯無はふと自分の顔の横にある逸物に気付いた。一夏の動きに合わせて膨張して苦しそうにうごめく逸物を見て「同じ思いをさせてやろう」と彼女のいたずら心が鎌首をもたげた。
「あ、あのさ」
楯無は勇気を振り絞って声を掛けた。
一夏は楯無の入り口の感触を味わいたくて指を這わせようとしたところだった。動きを止め、彼女の顔を見ると、いつもちょっかいをかける時の笑顔が少しだけ余裕を無くしていた。
「私だけ、触られっぱなしは嫌だから、キミのもさわらせてよ……」
その言葉を聞いたとき、一夏の心臓の鼓動が激しくなった。楯無が自分から逸物を触りたいと言ってきたのだ。楯無の唇が逸物の上を這い回る様を想像し、人生初めての口唇奉仕への期待感で我慢汁がほとばしった。一夏ははやる心を抑えながら二つ返事で了承していた。
「ああ、頼む」
楯無の手がおっかなびっくりと言った様子で逸物に触れた。最初は指先で弾くだけだった。そして竿をつまみ上げるようにして皮の感触を楽しむと、目をつむって「えいっ」と言わんばかりの勢いで逸物を握りしめた。
「う! ……すいません。もうちょっと……優しく……」
さすがISパイロットと言ったところか。更識の握力はとても強く、一夏は竿を握りしめられた痛みで腰を引いてしまっていた。
「ごめん! すごく硬いから大丈夫かなって思って」
楯無が慌てて謝ってきた。
「……優しく包み込むように握ってもらいたいです」
「あは。痛くしちゃったみたいだね。ほんとごめんねぇ」
再び一夏が腰を前に突き出すと、楯無は手の力を抜いて、手のひらと皮が触れるから触れないかぐらいの強さで握った。手で作ったわっかに逸物をくぐらせた格好だ。それでも手の温かさが伝わってくる。
楯無はすべすべした触感の皮を上下にしごき始めた。今でこそ勃起によって亀頭が完全に露出していたが、待機状態の逸物の頭は半分皮が被っていた。故に皮の伸縮による刺激はとても強かった。
一夏は不慣れな様子で逸物を手でしごき始めた彼女に対抗して、少しだけ開いた陰唇の中に指を埋めていった
「……ん、ぐ……ぁん」
膣の入り口に指がかかったとき、楯無は手の動きを止めて甘い吐息を漏らした。同じ声がもっと聞きたくて、指を追って壁を擦りあげた。
「ぁ……だ……っち、か」
楯無の中はしっとり濡れて暖かかった。艶の良い肉壁は意外にもすべすべしていて、指でなで上げると肉のつぶつぶが当たって気持ち良かった。ちょうど舌の裏側を撫でたときの感触に近かった。とても締まりが強く、指を飲み込んで離そうとはしなかった。
もう少し奥に入れようとすると、肉壁が盛り上がっていてこれ以上の侵入を拒んでいるようだった。肉壁のバリケードを突くと、楯無が痛がって逸物から手を離した。
「奥は……痛いよぅ……入り口の方が気持ちいい」
「す、すまん」
一夏はすぐに指を引く。すると痛みが去ったのか、楯無は相変わらず恥ずかしがっていたが、うっとりと
一方、楯無は下半身がドロドロに蕩けているのを感じた。入り口をこね回されるのが感触が癖になりそうだった。自分だけが気持ちよくなるのは嫌だ、と彼女は思ってあることを思いついた。食べ物を咀嚼するみたいに顎を動かして口内に唾液をため込む。普段自分で慰めるときは指先がドロドロになるまで唾液で濡らし、
逸物の方が表面積が広く、たくさん唾液が必要だった。上半身を起こして枕を背もたれにして、白く泡立った唾液を手盃に垂らし、体をよじってたまった唾液を一夏の逸物に塗り込んでいく。
一夏の口からくぐもった声が漏れた。
先ほどと同じ力加減で逸物をしごき上げると、楯無の下半身と同じように「ぬっちゃぬっちゃ」という下品な音が鼓膜を打った。
一夏は急に逸物の刺激が強まったことに危機感を覚えていた。既に亀頭は楯無の唾液と我慢汁が混ざってどちらの液体か判別不能になっていた。
楯無は一夏の反応が変わったことに気を良くしたのか手の動きを早めた。
「た、て、な……うぁ!」
そろそろ舌で楯無の秘唇を舐めてやろうと考えていた矢先だった。唾液混じりの手が逸物とこすれて生み出される強烈な刺激は下半身から脳の奥に電気を飛ばした。一夏が慌てて顔を上げたとき、玩具で遊ぶような顔つきの楯無と目があった。すると、目の前が何度も瞬いて、いとも簡単に
「ああぐぁあああ」
「へっ?」
一夏が獣のような雄叫びを上げた。楯無の手の中の動きから逃れるように逸物がはね上がり、そして先端から白い精液が
一夏は頭の奥が爆ぜる感覚と、睾丸から精液が絞り出されていく喪失感の中で暴発とはいえ顔射で汚れた楯無の顔を視界の中に捉えていた。
「ねばねばする……」
楯無は鼻孔を貫く栗の花の匂いと戦いながら、顔に付着した一夏の精液をぬぐい取った。
ふと、どんな味がするのかと思って、口に含んでみたらとても苦かった。
▽
虚は一部始終を見ていた。
時折携帯端末が振動してメッセージを読むと「ああ、じれったい」と書いてあった。
経験豊富なお姉様から見れば二人のたどたどしいやりとりは焦らしているようにしか思えないのだそうだ。
ディスプレイに意識を戻せば、初体験にして顔射を決めた一夏が楯無に平謝りをしていた。
よほど匂いがきつかったのか、楯無はすぐにシャワー室に向かってしまい、残された一夏はティッシュを片手に飛散した精液を拭き取っていた。消毒用アルコールジェルを取り出して臭いを消す心づもりらしい。
「二回戦はなさそうですね。……つまらない」
虚は頬杖を突いて不機嫌そうに嘆息した。
二人のやりとりを眺めながら、上から目線で感想を口にした。
「童貞にしてはがんばった方ですね」
虚は股間の茂みを分け入って逸物を奥深くまで差し込まれ、子宮の入り口を叩かれながら男の精が流れ込む感触というものを知らなかった。それでも閨の秘密をのぞいた興奮からか下腹部が
▽
表紙に「布仏虚」と署名した日記帳を開いた。
その日記帳は虚が一日に為したことを淡々と記録するもので、時系列に沿って書き留めてあった。
虚は袖机の引き出しから筆記用具を取り出すと、日記帳に今日の日付が書かれたページを開いて朝から今までの出来事を書き出していった。
筆を止め、先ほど見た一部始終を思い出して次のように記入した。
※※時 楯無さまが織斑一夏と床を共にする。
楯無さまのステータス:処女
ただし、次の項目について経験済
・接吻
・手コキ
・顔射
織斑一夏のステータス:童貞
ただし、次の項目について経験済
・接吻
・指入れ
・顔射(注、暴発)
虚は日記帳を閉じて元の場所にしまった。窓際に立ち、夜の帳が訪れた学園の空を見上げ、お星様に向かってこう話しかけた。
「お嬢様はいつになったら初心者からレベルアップできるのでしょうか」
(終)
最後まで読んで頂きありがとうございました。
お、お楽しみ頂けましたでしょうか。
初心者のもやもやっとした、たどたどしい感じが伝わったらいいかな、ぐらいの気持ちで頭を空っぽにして書きました。淫語を使うでもなくチュパ音やあえぎ声もほとんどない、本番すらむにゃむにゃで終わるお話です。実用的観点から申せば失格かもしれません。
続きが読みたい等、何かありましたら感想欄や一言にメッセージをくださいませ。