※この作品はR-18です。

インナウト!×インナウト?   作:王子の犬

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 虚パートに若干レズ表現があるため、ガールズラブタグを付与致しました。
 「一夏と楯無のイチャイチャだけが見たい」という方は『▼』という記号で検索してください。前置きを飛ばすことができます。
 携帯版はこの手段が適用できません。ご了承ください。




★レベル3:大人の階段!?

 布仏(のほとけ)虚(うつほ)の最優先課題は彼女の主であるお嬢様(楯無さま)にまつわる諸問題だった。

 彼女の生家である布仏家は代々分家の筆頭として更識家に仕えてきた。分家のなかには五郎丸や姉崎といった名称も見られるが、彼らとは格が違った。血縁や地位の影響力を鼻にかけるくらい些細なことだ。しかし、威張った所で仕事は減らず、人間関係の確執と言った面倒な問題だけが追加される。それならば慎ましく生きた方が後々楽ではないか。

 虚はノート型端末への入力作業を終え、BCCで飛んできた五郎丸からのメールをチェックする。タイトルは「特記事項XXX-XXX-0011」である。おそらく特に意味はないのだろう。一見秘密のメールだが、こんなわかりやすい符牒が通達されたことは一度もなかった。

 うんざりした顔で添付ファイルを秘密のキーワードで復号する。

「目的は私にファイルを送信すること、ですか」

 本文の一行目には顔文字で〈タイヘンヽ(゚Д゚三゚Д゚)ノタイヘンダヨ!!!〉と記されている。跡継ぎ問題が解決したのであれば携帯端末のほうにメールが飛ぶはずだ。虚は二行目に目を通す。

「虚様、大変です。簪様が寝取られました」

 しばしの間、虚は手を止めた。意味がわからない。よもや一夏が姉妹丼を目論んだのではないだろうか。予行演習のつもりで妹に手を出した、などとよからぬ想像をしてしまった。

「でも彼……童貞でしたね」

 ほっとため息を吐く。近いうちに童貞喪失できると分かっているのに、妹に手を出すような鬼畜ではないはずだ。そんなに精力が強いのであれば、中学生どころか小学生のうちに済ませていただろう。

 更識家の魑魅魍魎(ちみもうりょう)は、楯無が跡継ぎを生むことを強く望んでいる。簪が男子を産んだとしても跡取りになる確率は低い。直系である楯無が産んだ子供でなければ意味がない。少なくとも本家はそう考えているようだ。

「一夏様を除外するとして、誰が」

 ここは女の園。男性職員がいるとはいえ、生徒に、それも更識家の令嬢に手を出すような者には心当たりがない。虚は本文をスクロールして最下部にURLが貼ってあることに気づいた。ドメイン名がちょうど監視用に割り当てたサーバーと一致している。更識家は一夏だけでなく、他の者に対しても巧妙に情報収集を行っている。特に一夏に好意を示していた者が、彼を寝取らないようにとこっそり監視していたのである。

 虚は少し躊躇してから、そのURLを開いた。

 

▽

 

「生徒会室はここか?」

 虚がはっとして顔を上げた。生徒会室の自席で、よりにもよって主の妹御の痴態に見入っていたのだから、もし明るみになるようなことがあれば一生変態だとレッテルを貼られてしまう。あわてて動画を消して居住まいを正す。背筋をまっすぐ伸ばして、声の主を迎え入れた。

「そうですよ。どうぞ、中に入って」

「失礼する」

 扉が開き、姿を現したのは小柄なご令嬢だ。銀髪に和服という一見アンバランスな取り合わせだが、実によく似合っている。

「それ……」

 彼女はクリアファイルを手にして、虚の前に立つ。一枚紙が目に入り、「茶道部」という文字に目を留めた。

「文化祭の出し物について、まだ受け付け期間内だと聞いている」

「その通りです」

 虚は微笑みながら目の前の人物、ラウラ・ボーデヴィッヒを鋭く観察した。ラウラから書類を受け取りながら記入漏れ等がないか確認していく。見覚えのある筆跡だ。ラウラ自身のものではないだろう。企画内容は……と、虚が嘆息した。

「メイド喫茶ですか」

 「また」と小さくつけ加える。これで三年連続、いや、虚の記憶が正しければ五年連続だ。しかもメイド喫茶を申請したクラス、部活は茶道部以外にも存在する。先代の書記がうんざりしていたことを思い出す。保健所との手続きが面倒なのだ。

「書類に何か問題でも?」

「いえ、書類は完璧です」

「なにか不満点があるなら言ってくれ。私から部長に報告する」

 虚は不満というより、個人的な愚痴を漏らして良いものか逡巡する。

「特にありませんね」

「そうか。では、私はもう一件の仕事をこなすとしよう」

 ラウラが咳払いをした。

「教官が……織斑先生が呼んでいたぞ。仕事が終わったら先生の部屋に直行するようにと」

「織斑先生が?」

 思い当たることはいくつかある。一夏と楯無にまつわる諸事に違いない。

「わかりました。仕事が終わり次第伺います」

 虚は早口だが、丁寧な事務口調で答えた。

 ラウラが踵を返すと思いきや、本音用のパイプ椅子を取りだしてちょこんと座ってしまった。一部始終を眺めていた虚は、怪訝そうに眉をひそめ、すぐにいつもと変わらないにこやかな表情を浮かべる。

「……ところでボーデヴィッヒさんは用が済んだのでは?」

「私も呼ばれている。何もなければ直帰のつもりだったから、先輩の仕事が終わるのを待たせてもらう」

「和服のままで?」

 虚の問いに、ラウラは軽くうなずいて返した。

 

▽

 

「入れ」

 織斑先生の淡々とした声を合図に、虚は扉を開ける。

 この部屋に来るのはもう何度目になるかわからない。織斑先生とは一夏と楯無の密事を観察する――という背徳的な秘密を共有する関係だ。子作りの予行演習、と言ってしまえば身も蓋もないけれども、初めてのセックスに戸惑う青少年を影ながら見守るだけの簡単な仕事だった。

 今回はいささか状況が違う。虚は靴の向きを整える振りをしながら、銀髪の後輩に視線を向ける。

 ラウラがいるとなれば虚と織斑先生をつなぐ、例の話題を口にすることはできない。盗聴に盗撮といったプライバシーを暴く行為。名誉毀損で訴えられてもおかしくないだろう。

 虚の唇は横一文字に引き結ばれ、微かに震えていた。

「先生。用件をうかがいたいのですが」

 ラウラが履き物を整えている間、虚は奥にいる人影に向けて抑揚のない声を放った。

 織斑先生は上下とも上着は白いカーディガンだが胸元までボタンを開けており、下は黒いスカートを身に着けていた。いかにも帰宅したばかりといった風情。さらに進むと、仕事着のまま壁際で体育座りした山田先生が鼻息を荒く文庫本を読みふけっている。

「悪いな。わざわざ呼び付けてしまって」

「いえ」

 屈託のない笑顔を浮かべる織斑先生。視線を再び山田先生へと動かす。物語に没頭しており、虚の訪問に気づいていない。

「山田先生は気にしないでくれ。さっきからずっと、ああなんだ」

 織斑先生の視線が虚から逸れ、遅れて姿を現した着物の少女に注がれる。虚もつられて振り向き、生徒会室にいたときとは打って変わって頬を赤らめている姿に違和感を覚える。堂々として、いかにも自信たっぷりだった少女の変化に戸惑いすら感じていた。

「ボーデヴィッヒ。ご苦労。指示はきちんとこなしているか」

「はい、教官」

 簪を彷彿させるような小声。いったいどうしてしまったのか。

 虚は織斑先生を見やった。

「あの、彼女は」

「ボーデヴィッヒのことは気にするな。ちょっとした手伝いをしてもらっていてな」

 手伝いとは何のことだろう。

「その……よろしければ、もう、しても。できたら」

 ラウラはチラとお手洗いを流し見る。だが、織斑先生は笑みを貼り付けただけの冷たい表情に変わる。教え子に決して向けられるはずのない視線。織斑先生は顎をしゃくって山田先生がいる辺りを促し、再び冷ややかな視線を投げかけた。

「しかし」

「今行ったら、一時間は出てこんではないか。それは困る」

「でしたら、シャワー室でも……」

 織斑先生が鼻を鳴らす。

「布仏の話が終わるまでお預けだ。たいした時間じゃない。その程度ですら我慢できないのか?」

 ラウラは顔を伏せ、無言で首を横に振る。山田先生の隣に座って、子犬のように潤んだ瞳を担任教師へと向けた。

 織斑先生は再び虚を見据え、申し訳なさそうに振る舞う。

「すまんな。教え子がきかなくて」

「用件はなんでしょう」

「今日辺り、いたすんじゃないかと思って呼んだ」

 虚は目を見開いて、薄く笑う織斑先生をにらみつける。

 いくらなんでも不用意すぎる。下手に情報を与えて、ラウラがもし外で口を滑らせたら、織斑先生や山田先生の教師生命は絶たれてしまうだろう。

「大丈夫。彼女はこちら側だから」

「話を……したのですか」

「五郎丸に許可を得て、だといえば?」

「そんな話、聞いていません」

 人数が増えれば、それだけ機密保持が難しくなる。IS学園の職員ならばその程度のことは理解しているはずだ。

「私のほうから直接連絡すると伝えてあるのでな。五郎丸にはそう言ってある」

 織斑先生は椅子から立ち上がって背伸びする。虚の耳元に口を近づけ、「四組の更識の件があったから」と囁いた。

 織斑先生もあの件を知っていた。おそらく五郎丸が直接織斑先生に注進したのだろう。簪を寝取り、処女を奪った人物は一組の人間、つまり彼女の教え子でもあった。

「今ここで連絡があっても安心していい」

 織斑先生はそのまま玄関に向かい、ドアチェーンと鍵を掛ける。簡易的な密室状態だと確認したのち、再び机に向かってノート型端末を開く。

 すると山田先生が真っ赤な顔を上げた。

「は、ははは破廉恥ですよ! なんで、先生はこんなものを持ち込んでいるんですか!」

 文庫本の端を握りしめ、山田先生は熱弁を振るった。破廉恥な書物を食い入るように読んでいたではないか。虚は、人生の先達にして未だ男を知らない清らかな体を眺める。

「き、近親相姦なんて……だって、ここに書いてあるの……まるで」

 織斑先生は同僚が恥ずかしがる様子を見て、にやにやと笑った。続きを聞くのが楽しみでたまらない、といった表情を浮かべている。

「まるで?」

 この人、意地悪だ。何度も目を泳がせる山田先生。虚は声をかけてやりたくなる。が、話の腰を折って織斑先生の機嫌を損ねやしないだろうか、と考えた。

「織斑先生と……お、織斑くん……じゃないですか」

 虚は「そうなんですか?」と織斑先生に問う。虚は山田先生の手から文庫本を取り上げ、一瞬だけ顔をしかめた後、深呼吸してからページをめくった。

 姉は現役女子大生の美剣士。弟もまた剣道経験者だったが、優秀な姉と比べられるのが嫌で中学に上がってからは剣道を止めてしまっていた。姉にたたきのめされ、恥をかかされた不良たちが弟を人質にする。そして復讐のために姉を呼び出し、弟の目の前で彼女を輪姦陵辱する。行為を終え打ち捨てられた姉。弟は汚れた秘所を自らの舌で浄め、いきりたった肉棒を挿入してしまう。理性のタガがはずれた姉弟は背徳の喜びに震え、終わりのない快楽に身を委ねていく――という内容だ。

 山田先生が破廉恥だと言うのもわかる。虚は著者の名を一瞥した。

「斑(まだら)千織(ちおり)……騎士白(きしじろ)嘉市(かいち)ですか……」

 五郎丸おすすめの官能小説兼BL作家だ。楯無が教本代わりに使っている官能小説も同じ作者である。

「よく知っているな」

「先日、し、知りあいから薦められまして」

 見なければ良かった。虚は後悔した。織斑先生はあっけらかんとしているが、免疫のない山田先生には刺激が強すぎる。

 ラウラが虚の袖を引っ張る。どうやら彼女も興味を示したらしい。官能小説の回し読みをしたなどと、あまり他人には言いたくない経験。虚は半ば諦観の念で文庫本を渡す。

「あんなこと……」

 言いよどむ山田先生の隣でラウラがページを手繰(たぐ)っている。

 突然、本を閉じてしまった。

「申し訳ありません。あの、我慢できません。ここで――」

「わかった」

 織斑先生はラウラの何を了承したのだろう。虚と山田先生は一斉にラウラを見つめ、帯をゆるめていく姿を不思議そうに眺めた。ラウラは襦袢(じゅばん)姿になり、帯の拘束から解き放たれる。はだけた胸元。あられもなく股を開いた。

「え……」

「ちょっと」

 ラウラはショーツを身に着けていなかった。童女のごとくぴったりと閉じた秘所が露わになり、驚いたことに恥毛が一本も生えていない。

 潤んだ瞳で「教官」と告げて、秘所に指を這わせる。白い肌がうっすらと赤らみ、指先で敏感な場所をこすり上げ、誘うように織斑先生を、そして副担任へと視線を向ける。

 目が合った山田先生は、突然の事態に激しく動揺していた。一度だけ大きく肩を震わせる。大股を開き、踵を上げて恥骨を擦るように円を描いて動かす姿に山田先生の精神は混乱の渦に陥っていた。

 ラウラが敬愛する恩師は、目を丸くして突っ立っている後輩に向けて顎をしゃくってみせた。注意を引きつけるから食っていいぞ――と、織斑先生は告げたのである。

「山田先生。突然のことで済まない」

 山田先生の意識が織斑先生に向かう。だが、ラウラの痴態も気になっていた。

「ボーデヴィッヒがこうなったのは私に責があってな……」

 織斑先生はばつの悪そうな顔で切り出す。

「どういう……え?」

「何かやらかしたのですか」

 虚は、山田先生よりも冷静でいられた。夜な夜な楯無と一夏がくんずほぐれつ、必中するまでまぐわい続ける夢でうなされるようになっていた。おかげで、いくらか性的な話題に慣れたものの、まったく嬉しくなかった。そういえば以前織斑先生が手伝ってくれ、とか言っていた。虚はこの部屋であったやりとりを振り返る。

「ドイツで教官をしていた時期があったのは少し話したことがあると思う」

 山田先生がうなずく。

「当時のボーデヴィッヒは何をやってもうまくいかなくて、随分ストレスを溜めていたんだ。部隊の雰囲気は最悪で、こいつの部下が、ちょうど山田先生ぐらいの年頃のヤツから相談を持ちかけられた。どうすれば、ボーデヴィッヒと上手くやれるのか、とな」

 織斑先生は一呼吸置く。山田先生が織斑先生に耳を傾ける姿を横目にしながら、虚は立ち位置を変えるべく体を横にずらす。ふと、ラウラが立ち上がるのが見え、指先が透明の液体で濡れているのが分かった。足音を立てずに、山田先生の背後に忍び寄る。

「私も雰囲気が悪いのは、仕事に支障を来すと思って問題解決に動いた。ストレス発散の方法を教えてやれば、態度も軟化するだろう。まあ、軽く考えていたんだな」

「それで、ストレス発散の方法は……」

 山田先生が相づちを打つ。ラウラに気づいた様子はない。

「自慰だ」

「は?」

 虚は思わず「この人何言ってるんだ?」と胡乱な目を向けてしまった。

「マスターベーションといえばわかるだろう。ストイックな生活をしていたから、ずいぶんたまってるんじゃないかな、と思って。ちょっと手ほどきしたんだ」

「織斑先生自ら……?」

 織斑先生は苦笑しながらうなずいた。

「だがな……いくつか問題が生じてしまった。まさかこんなにハマるとは思ってもみなかった。しかも、ボーデヴィッヒは見た目に反して性欲が強くてな。ミイラ取りがミイラになってしまったんだ」

「どれくらいなんですか?」

 言いにくそうにする山田先生に代わって、虚が質問する。

「獣(けだもの)のように毎日求めてくる。ハルフォーフを抱き込んでふたりがかりで責めても、調教してもだめだった。開発が進み、事態はさらに悪化した……」

 千冬は顔を伏せ、額に手を当てる。

 虚は自業自得だと感じた。が、口にしてはいけない。もし言葉にしてしまえば、次に襲われるのは自分だと思ったのだ。

 織斑先生は急に明るく笑って山田先生の両肩に手を置き、真摯な表情で同僚を見つめる。

「すまないが、後は任せた。私ひとりでは身がもたん」

 山田先生が「えっ」と声を上げたとき、彼女は尻餅をついていた。半裸のラウラに覆い被さられ、その唇をふさがれていた。

 助けを求める山田先生。織斑先生は「ボーデヴィッヒに身を任せれば何も問題はない」と無下に突き放す。虚は困惑したまま、ポケットにいれた携帯端末の振動を感知した。

「まさか……」

 悪い予感がしてメールの文面を確認すると、

「虚様大当たりですよ! 今すぐ一夏様のお部屋にチャンネルに合わせてください。恥ずかしい青春の1ページが!」

 予想通りの内容だ。虚は織斑先生に「緊急事態です。すぐに端末を」と告げていた。

 

▼

 

 三度目の正直という奴だ。一夏は楯無を部屋に連れ込むことに成功し、鍵もかけた。箒は剣道部が忙しくて部屋に来ることはない。そもそも楯無が来ることを先に伝えてあるので、わざわざ邪魔するような無粋な真似をするとも思えなかった。セシリアや鈴、シャルロットも同じだ。ラウラは用事があるとかでいない。今がチャンスだった。

 明日は休日だから、お泊まりしても問題ない。むしろ泊まっていって欲しいくらいなのだ。

 一夏の頭の中は、服を脱ぎ衣擦れした音を立てる楯無の事しか考えられなくなっていた。一回目の暴発。二回目は生徒会室。三回目こそは楯無の初めての男になりたい。

「……うっ」

 下半身に軽く痛みが走った。一夏は視線を下げ、下着の中でふくれあがった怒張を目にする。

 ベッドの側に避妊具を用意してある。持久力はないが、そこは男の意地と根性で耐えきってみせると決意を新たにする。一夏は下着を脱ぎ捨て、先に一糸まとわぬ姿になった楯無と並ぶ。

「その……シャワーに行くか」

「うん」

 一緒にシャワー室に入るのが何だか気恥ずかしい。これからもっと恥ずかしいことをするのだと思ったら、互いの目を合わせるどころか顔すら見ることができない。手をつなぐ、いや指を絡めるだけで精一杯なのだ。狭いシャワー室。無言でバスタブに足を踏み入れ、裸のまま向き合ってお互いの顔を見つめ合う。

「温水は……」

 防水の液晶パネルを見やって適温に設定されているか確かめる。期待通りの表示を見て、一夏はほっと一息ついた。パネルを操作する指が震えており、三回目でも慣れなかった。

 とにかく彼女の肌を磨くのだ。一夏は蛇口をひねるべく手を伸ばし、指先がもう一つの手に触れた。

「ごめん!」

 声が重なる。一夏は思わず手を引っ込めてしまった。何をやってるんだ、俺。息を整えて、もう一度蛇口をひねった。

 シャワーから温水がこぼれ落ちる。大きな水滴がバスタブを叩く。一夏はボディソープを手に取ることしかできずにいた。

 ふたりとも事前にシャワーを浴びていたので全身は洗わない。おそらく触れ合うと思われる部分だけ、泡をのせていく。楯無は念入りに、一夏は怒張の周囲だけに気を遣う。互いに顔を伏せていたが、好奇心に負けた一夏が顔を上げてしまう。

 楯無は形の良い乳房、その薄桃色の尖端を腕で隠している。鍛えられた太股から水に濡れた恥毛を目撃するや一夏は胸の鼓動を抑える術がないと知った。そして唇に見とれた。口淫の記憶がよみがえる。生徒会室で密かに、大胆に口内に埋もれていく一夏自身。楯無に主導権を握られ、無様にイき果てた分身は彼女の食道に精液を流し込んだ。嗜虐的な笑みを浮かべた楯無に犯される姿を想像して何度怒張をしごいただろうか。授業中、楯無の顔を思い浮かべるだけで股間がふくらんでしまうくらいだ。ISスーツの下にサポーターを着込まなければ、うっかり勃起したまま白式を起動していただろう。

 だけど――。

 楯無を乱暴に扱いたい。彼女に懇願させ、獣のように後ろから犯したい。子宮の奥に精液を放ち、よしんば妊娠させてやりたいと願う気持ちに気づいていた。相反する願いを抱いて、楯無に悟られたくないと悩んでいた。一夏は華奢な体に触れたら壊してしまいそうで怖かったのだ。

 楯無に背を向ける。一夏の背に楯無の指が触れ、「背中、流すからね」と囁いた。温水が心地よく、一夏はふっと気を抜いた。楯無に優しく触れて、男子の本懐を遂げればいい。成人前の女体は繊細なのだから、お互いに思いやりながら歩んでいけたら、と。

「……えっ」

 一夏は短い悲鳴を無理やり飲み込む。シャワーが下腹部に当たっており、楯無の手が怒張を包み込んでいたのだ。

「たて……な、し」

 彼女の名前を告げるだけで精一杯だった。一夏は背中に押しつけられた乳房の感触に戸惑い、視線は自分の怒張に釘付けになる。

「せっけん。ちゃんと流さないとね」

 言ってることに間違いはない。間違っているのは、楯無の手の位置だ。皮に触れるか、触れないかの微妙な感触。親指と人差し指で円を描き、根本に移動し睾丸を揉みしだく。

「一夏くんのお……ん、おっきく……なってるよっ」

「ほんと、に、どこで、こんな……こと」

 シャワーが亀頭に当たる。背筋にしびれるような快感が過ぎった。

「勉強の成果、だよん。一夏くんに気持ちよくなって、ほしいから……ダメ?」

 ダメじゃない。予想外なだけだ。また主導権を握られたら俺は――と、一夏は焦る。

 楯無に抜いてもらいたい。ぷっくりとした唇でくわえ込んで、舌先で亀頭を転がして欲しい。いや、だめだ。ベッドに行ってからじゃないと。一夏は思考を巡らせ、言葉を選ぼうとする。何を考えても怒張の膨張は止まらない。背筋に電撃が走る。おい、嘘だろ。もう、イキそうだ。

「ベッドに……ベッドに行こう」

 一夏は射精感をこらえ、意識をシャワー室の外へと逃がす。

「そうだね」

 幸いなことに楯無が手を放してくれたので、一夏はほっとしていた。もし射精していたら、完全に主導権を握られてしまっただろう。今日のセックスがもたらす意味が変質してしまう。一夏が楯無を女にするのではない。楯無が一夏の筆下ろしをするのだ。彼女に童貞を奪われたという事実。実現してしまえば、ベッドの中では楯無に支配されるのが当たり前になる。

 それはそれで気持ちいいのだが、男の沽券に関わる問題だった。

 シャワーから出る前に体を拭く。背中に水滴が残っていたのか、楯無が自分のタオルを使って拭き取った。

 ベッドに向かう。一夏は少しでも余力を残そうと、楯無に気を遣った。

「部屋、暗くするから」

 灯りを消す。空調は適温のままだが、シャワーから上がったばかりで少し暑く感じる。もっと冷やそうと一瞬思ったが、セックスが原因で風邪を引いたなどと虚にばれようものなら説教ものだ。それに余計なことはしないほうがいい。一夏は壁のスイッチを切った。

 ベッドがきしむ。楯無が横になる。無防備な体を委ねてくれる瞬間がもうすぐ目の前に。

 一夏は踵を返し、恐る恐るベッドに上がった。掛け布団に潜り込み、腰に巻いたタオルを抜き取る。裸のまま並んで寝るのは妙な気分だった。

「楯無」

 体に触れる前に、横を向いて刻み込むように言葉を紡ぐ。腕の力で上体を起こして、彼女の瞳をのぞき込む。

「……好きだよ。愛してる」

 楯無がうなずき返すのを見計らって、唇を重ねた。

 

▽

 

 長く幸せな時間。

「はあっ……あっ……うんっ」

 深いキス。互いの舌を絡めあい、唾液を混ぜ合わせる。細めた舌先のザラザラとした感触。そして時折漏れる荒い息づかい。

「ん……ふぁ。い、ちか、くんっ」

 楯無のすべてが愛おしい。いつもより少しだけ激しく彼女を求める。脇の下から手を回して肩を抱き、もう片方の手で髪の毛に触れる。手のひらに残ったわずかな湿り気と温もりのなか、舌先で口内に触れ続ける。

 首をもたげてから口を離す。薄暗い室内に、楯無の切なげな瞳が輝く。互いの舌の先端をつなぐ一筋の液体。キラキラとぬめった唾液が細くなっていくにつれ、一夏は彼女のことで頭がいっぱいになっていった。

「たてなしっ」

「あ……ん、はげしっ……ううん……」

 唇を触れ、わずかなすき間をこじ開ける。一夏のなすがままに侵入を許した口内。心地よい熱さに包み込まれている。絡み合ったまま円を描くように舌先を蠢かせ、喉の奥へと唾液を流し込んでいく。

 一夏は唇を重ねたまま腕の力を抜き、身じろぎしながら上体を浮かす。すき間を作って肩を抱いていた手をずらす。手のひらで肩を撫で、二の腕、肘、手の甲へ。指を絡め合い、互いに探るように動かし、いつしか手のひら同士が重なる。

 ずっとこうしていたい。キスだけでもどうにかなってしまいそうだ。

 楯無に体重を預け、胸の鼓動を感じながら舌先に神経を集中する。

「ん……ふっ……」

 荒い息づかい。髪を撫でながら、もう一方の手に力をこめる。指と指のすきまが埋まり、楯無の細い指先を感じながら、一夏は再び唇を離した。

「一夏くん」

「楯無」

 お互いに見つめ合って、絡めた指も放した。両手をついて体を支え、はだけた布団と薄明かりに照らされた体を見つめる。形の良い乳房がこぼれ、一夏は少しだけ上向いた乳首を目にして嬉しくなった。

「どうだった、俺のキスは」

 余裕ぶって聞いてみた。真剣な表情で彼女の瞳を凝視する。

 楯無は熱に浮かされたような表情をしたかと思えば、身じろぎしてはにかむ。

「今までで一番、すっごく……よかったよ」

 一夏は胸の奥からせり上がった言葉を飲み込む。下腹部が熱を持ち、怒張がせり上がるのを感じた。忘れていた射精感がこみあげてきたのだ。

 何とか笑顔を浮かべ、括約筋をきつく締める。射精するにはまだ早い。もう少し頑張れ、俺。

 楯無がはにかんだまま一夏の肌に触れる。産毛をなでながら、胸から腹へと下がっていく。そして太股、陰毛にくすぐったさが伝わる。だが、肝心なところへは触れようともしない。血が集まって脈打っているのに、一番敏感な部分には目もくれようとしない。

 くすぐったい分焦れったかった。もう一度皮をさすり、睾丸を弄んで欲しい。

 一夏は本心を隠すように顔を伏せ、鎖骨にむしゃぶりついた。

「あっははは。くすぐった、くすぐったいよっ」

 頸動脈が走る首筋を軽く甘噛みして、ちょこんと凹んだ鎖骨へ舌を這わせる。手をベッドについたまま体を支えて、両膝の位置を楯無の股の間に移す。

 唇を離すたびに「ぴちゃっ、ぴちゃっ」とわざと音を立てる。楯無は気持ちよさよりもむしろ、むずむずした感触のあまり、笑い声を上げて身をよじっている。

 口を大きく開いて舌をすぼめ、白い肌に唾液の軌跡を描いた。荒い息を吐きながら胸部へ、乳房の間に顔を埋める。不意に楯無の手が髪に触れた。優しく、赤子を撫でるように指先を転がしていく。

 一夏はわずかに腰を浮かし、両手を乳房の脇に移動させる。たわわに実った双丘をすくい上げると、右の乳首を寄せて口に含んだ。

「……あんっ」

 今までで一番大きな声だ。指を引き寄せ、充血して弾力を増した先端を思いっきり吸う。前歯に突起の先端が触れ、さらに吸引すると、小振りな乳輪までもが口の中に収まっていった。

「ふぐ……あ、いや、……ぃい、……やあ」

 全部食べるつもりでいた。吸ったまま舌を左右に振る。乳首と乳輪が唾液でドロドロになっていくのが分かる。

 楯無が声を押し殺している。息継ぎすると、彼女の切なげな吐息がなまめかしさを帯びる。

「やだっ、左ばっか。形が、変わ……ちゃう」

 唾液まみれになった乳首。舌先で上下左右に弾く。硬くなり、一夏が愛撫する場所だけがどんどん紅潮していった。

「ね。一夏くんは……おっぱいが好き?」

 最初こそ戸惑っていた楯無は感覚に慣れてきたのか、余裕ぶった言葉を吐いた。夢中になっていた一夏は、唇で乳首をつまんだまま首を縦に振る。

「んぅ……」

 刺激が強かったのか楯無があえぐ。

 一夏は乳首を吸い上げ、茶化す余裕を与えない。深いキスのように舌を当ててなめ回す。

「やだっ……い、いぃかも、……ひゃん!」

 ようやく顔を上げた一夏の唇が唾液でべとべとになっている。少しだけ息を乱した彼女を見やり、視線を左下へと落とす。もう片方も同じようにねぶった。上下左右に、そして乳首を舌の上で転がしていく。

「やだ、やああ……」

 楯無のあえぎ声を楽しみながら、一夏は一心不乱に乳首を吸う。時折甘噛みして愛撫を止め、楯無が催促するような吐息を待って再開する。余裕ぶった声を出したときは、頬をすぼめて乳輪まで頬張る。

 乳房から口と手を離す。白く柔らかなふくらみが脇へと避け、乳首だけ屹立して輝いていた。

「前と違……なんか、一夏くん、激しッ」

 違うのだ。余裕のなさの裏返し。今にも暴発しそうな怒張。限界が近づきつつある。一夏は気の利いた受け答えができなかった。

「こういうのも、いいけど」

 楯無が自分を納得させるようにつぶやく。一夏は無言のまま、楯無の太股をまたぐ。

 横になって一夏の頭が楯無の股間へ、怒張を彼女の眼前に突きつける。

 どうせ爆ぜるなら、楯無のきれいな顔を汚したい。一夏は短く「舐めて」と告げる。

「その……フェラ……して、ほしいの?」

 楯無がおずおずと口を開いた。

 返事はなく、屹立した怒張の先端が突き出される。楯無が軽く笑って身じろぎし、一夏の亀頭を指先でつついた。硬くなった怒張はやじろべえのように元の位置へ戻る。

 一夏が陰毛をかきわけて秘所に触れようとしたその矢先。

「ね、一夏くんから、お願いして、ほしいって言ったら……ダメ?」

「お願いって」

 ゴクリと喉を鳴らす。そのまま口に含んでくれるもの期待していた。やんわりと拒否されている、と一夏は思う。同時にどう懇願したら楯無がお願いを聞いてくれるのだろうとも考えてしまった。楯無は指先で亀頭をつまんで弄んでいる。有無を言わせず秘所に隠れた陰核に舌を這わせたとしても、彼女は尿道口からあふれ出た透明の液体を指で撫でることしかしてくれない。

 楯無は性欲に狂った一夏を見やって、残酷な笑みを浮かべた。

「お願いがないんだったら……ん~お姉さん、どうしよっかなあ」

 愉悦を含んだ声音だ。もう片方の手が秘所の前にかざされ、せっかく見つけた陰核が隠れてしまう。

「舐めてだけじゃ……」

「一夏くんがお願いするところ、見てみたい……の」

 一夏は潤んだ瞳の裏にあえて焦らそうとする残酷さを感じ取った。

「お願いしてくれたら、本当に、一夏くんのしたいこと全部……してあげる、から」

 くそっ、反則だ。一夏は限界が近いこともあって、楯無へのささやかな反抗心がしぼんでいく。

「キスだけ、なんて……」

 思わず弱々しい声を出してしまった。楯無はつい先ほど激しく屠り合った唇で、亀頭に軽くキスを見舞ったにすぎない。唇から舌先をのぞかせ、クスリと笑った。そしてゆっくりと口を開け、唾液でドロドロになった口腔を露わにする。

「……す」

 一夏があわてて口を押さえた。今、何を言いかけたんだ。

 生徒会室での異常な経験をして以来、本当に口にすることを望んでいた文句だ。姿勢こそ異なるものの、夢にまで見たシチュエーションに近い。一夏の要求を拒む彼女。かりそめのポーズだと分かっていても、下手に出るしかない。楯(・)無(・)様(・)に屈服して怒張を弄ばれ、快楽を与えてもらえば、おそらくもっと気持ちよくなれるに違いない。

「う、ぐぐぐっ……」

 亀頭が痛い。血が集まりすぎている。俺は支(・)配(・)さ(・)れ(・)た(・)い(・)……のか?

 一夏は悔しいことに否定できなかった。支配欲求があるのは事実だ。女の庇護下に入りたいという欲求。母性にすがりつきたいのだ。彼がことある事に「男だから」と口にするのは、千冬に養われてきたという思いが強かった。強い女に男だと認めてもらいたい。一方、千冬に甘えたいという願望が存在し、ずっと認めたくなかった。

 その言葉を言ってしまえば、本当に意味で後戻りできなくなる。前回のは何かの弾みで口にしてしまった、と自分を偽っていたことを認知してしまう。やりたい。楯無に咥えてもらって、さっさと射精したい。俺はこんなにも意思の弱い人間だったのか。

 一夏の葛藤を見透かしたように、楯無の舌先が尿道口を這うように動いた。

「……あっ」

 一夏は女みたいなあえぎ声を出してしまった。楯無が目を細め、舌を伸ばして亀頭をゆっくりとねぶる。くすくすと笑いながら、それっきり触れることはない。一夏は聞かれたと悟って赤面し、男のプライドよりも気持ちよくなりたいという即物的欲求のほうが強くなった。

「お願いします。楯無……の」

「ん? それ、お願いなの?」

 高圧的な物言いに、一夏は息を呑む。瞬間、電撃が背筋を這い回る。楯無様がへそを曲げたぞ。機嫌を損なったら気持ちよくなれない……と強迫観念のように性欲への渇望が大きくなる。一夏のなかで堰が決壊し、唇を震わせながら、屈服の言葉を口にしていた。

「い、え、楯無……さまの、舌で、俺の、……ペニスを、いじめてください」

 言ってしまった。もう引き返せない。だが、一夏は後悔よりも甘美な言葉の魔力に囚われていた。楯無の瞳が輝きを増す。

「よくできました。ご褒美……だよ」

 ずぶずぶ……と、淫らな音を立てて雁首が楯無の口内におさまる。唾液で濡れた空間に竿が飲み込まれていく。皮に軽く歯が触れ、すぐに舌の柔らかな感触に包まれる。

 屈辱を感じたのは一瞬のことだ。ずっと想像し、求め続けた快楽がプライドを打ち壊す。こんなに気持ちいいことはもうやめられない、と。

 秘所を覆っていた手が取り払われ、陰毛に覆われた陰核を目にするや一夏はがむしゃらにむしゃぶりついていた。眼前にはしとどに濡れた秘裂。せっけんの匂いのなか、仄(ほの)かに漂うチーズのような香り。一夏は陰核の包皮を舌で剥きながら、彼女の匂いを吸い尽くす。

 楯無の唇が離れ怒張が外気に触れる。その瞬間、うめき声に似た嬌声を耳にした。

「うん……くっうう……ん、はあっ! ……んん」

 楯無が感じている。一夏は嬉しくなって、桃色の陰核を舌で転がし続けた。

「や……あん……だ、や、変な、気に……やん、くせにな……ちゃ、う」

 乳首と同じようにすべて食べてしまうつもりで吸い上げる。陰核の包皮が剥けたまま戻らなくなってもいい。被虐心が一転して雄の加虐心にすり替わっていた。

「たてなし……たてなし……」

「いやあああ……お、か、し、く……あんっ、なっちゃう……なっちゃうからああ」

 嬌声が一層大きさを増す。褒美のつもりでわざとやっているのかと疑ってかかるくらいに、男心をくすぐる淫らな声。一夏は楯無が演技をしているのかどうか、どうでもよくなっていた。腰を突き出して、彼女の唇に亀頭をこすりつける。ぷっくりとした感触を味わうだけで射精しそうだ。先走り汁が唾液と混ざり合い、にわかに輝きを増す。

「うお……くう、あ」

 求めに応じて怒張が飲み込まれていく。敏感な雁首を這う淫らな舌先。額に紫電が走ったかと思えば、一夏は獣の雄叫びを上げていた。

 熱さが下腹部に広がる。睾丸から白い精液が吸い上げられ、大きく脈動して口内で暴れたのち噴火した。

「んんん……」

 ドクン、ドクン、と楯無の口内に射精している。腰に広がった心地よいしびれ。亀頭全体が彼女の熱を感じながら、喉の奥へと子種を流し込んでいく。

 一夏は性欲に狂った瞳を見開いて、陰核から口を放した。大量の唾液を陰毛の上にこぼし、まるで止まらない射精を象徴するかのようにうなり続ける。

 残されたのは雄の荒い息づかい。途中むせ返りながらも精液を飲み干した女の濡れた瞳。

 

▽

 

 楯無が洗面所から戻ってきた。一度歯磨きをしたのか、口からミントの香りが漂ってくる。妖艶な笑みを浮かべて、怒張をさらけ出したままあぐらをくむ一夏の前に座った。が、いざ口を開こうとすると急にしどろもどろになる。

「んもう。いきなり……飲ませる、え……せ、せい、精液を飲ませる……なん、て」

 どうやら自分がやったことを今さらながら認識したらしい。

 彼女の視線は、むっくりと亀頭をもたげた怒張を凝視していた。完全に萎えたわけではなく、半勃ち状態よりも少しだけ硬度を増し始めている。

「その、すまない……楯無の口が気持ちよくって、つい」

「私もつい調子に乗っちゃって、ゴメンね」

 ばつの悪そうな楯無の顔を見るや一夏は、軽く笑って「気にしてない」と告げる。顔を近づけて唇を重ねるだけの優しいキスをした。

「まだ、できる?」

「……ああ」

 楯無の瞳を見て一夏の背筋が震えた。理由は明らかで、彼女が一夏の腹にまたがると、背を向けて尻を眼前に突き出してきたのだ。何が起こったのかよくわからない。しとどに濡れ、甘いチーズ臭が鼻先をかすめた瞬間、怒張が完全復活を果たす。

「た、て、なし……?」

 完璧に処理された陰毛。わずかに開いた秘所。小陰唇がサーモンピンクに色づいている。ひくつく菊穴までもさらけ出している。つい先ほどまでむしゃぶりついていた陰核が硬く勃起しており、完全に露出していた。

「ね。こういうの嫌い?」

 嫌いなものか。楯無が股の下をのぞき込む。

「お掃除フェラ……やると喜んでくれるって友達が……」

 その言葉に一夏は憤慨していた。楯無にセックスの知識の教え込んだのは一体誰なのか、と。彼女は処女だからいたわらなければ、という思いとは裏腹に、膨張した怒張が楯無の頬をたたく。

 楯無は猫なで声を出して、一夏に囁(ささや)いた。

「約束通り……一夏くんの好きな、あ、その、……好(・)き(・)に(・)し(・)て(・)」

「うお! ……おほおおお!」

 答えを聞くまでもなく怒張が楯無の口に飲み込まれる。体を支えるために両膝をつかんで口だけの奉仕だ。彼女に無理やりさせているような気がして、一夏は荒々しく猛り始める。楯無の尻を鷲づかみにして膣穴を広げる。ぽっかりと口を開き、透明な液体がカーテンの隙間から差しこむ光でぬらぬらときらめいている。

「は……はあ、はあ……」

 一夏は血走った目で穴の奥をのぞき込む。

「ん……ぐ、……ふあ……」

 尿道口に残った精液を吸い上げる楯無が顔を上下させるたびに、じゅぽじゅぽ……と淫靡(いんび)な音が響く。

 一夏は舌先をすぼめて楯無の秘所のなかに差し入れ、粘膜同士の結合を試みる。愛撫など入らないのではないかと思うくらいに濡れており、内部の肉ひだはザラザラしていた。

 顎に陰毛の尖端があたり、少しくすぐったい。一心不乱に奥からしみ出る愛液を味わい続ける。

「そこ、やあ、い……いちか、くぅん」

 楯無は怒張から口を離してあえぐ。とろけきった表情をしており、せっかく吸い出した精液の残りが一夏の膝に垂れるのもおかまいなしだ。

「やんっ……も、だめ、やだ、やだ、やだああ……」

 舌が楯無の膣壁をなぶる。自慰で指の第一関節まで埋没するようになっていたおかげで、彼女の膣は指よりも柔らかい舌の侵入を抵抗することなく許してしまう。性器の結合こそないが、二度も肌を合わせた体。虚に借りた官能小説の主人公のように嬲(なぶ)られ、嬲り合うことを悦楽を覚える変態なのだと認識したとき、理性のタガが外れて、楯無は一匹の雌に堕ちていた。

 そして、そ(・)れ(・)は突然襲いかかってきた。

「あんっ、や、や、や、もう……いやああ、来ちゃう、おかしく……なるう……」

 一夏にイカされる。童貞の一夏に、処女のまま。

 自慰で何度も達したときよりも激しい波に飲み込まれる。膣口が脈動しながら内壁を蹂躙していた一夏の舌先を放すまい、と締め付ける。

「ふ――……っ、う、くぅ……あ、ん、ああああああ――!!」

 楯無は体を横たえ、無様に尻を突き上げたまま全身を痙攣させている。

「あぁぁぁ、ふぐぅ……あ、はあ、はあっ、また、いゃ、やだ、……もぅ、もうやだぁ!」

 一夏が舌を抜き取ったとき、またしても激しい絶頂が楯無を襲う。涙目になって仰け反り、絶叫したまま腰を抜かして何度も体を震わせている。

「たてなし……」

 一夏は楯無を仰向けにして横たえる。のっそりと起き上がり、彼女の痴態を見下ろして生唾を飲み込んだ。涙に濡れて焦点が合わない瞳。弛緩した体。今なら――。

 すぐに行動した。引き出しから正方形の包みを取り出す。無言で破り捨てライトグリーンのコンドームを、楯無の口で完全に復活した怒張に装着する。

 楯無の膝を立たせ、先ほどよりも痙攣の波が緩やかになったのを確かめる。一夏は彼女の腰をつかんで引き寄せた。

「ふぇ?」

 楯無は絶叫のショックで今から何をされるのか理解できなかった。ただ膣を舐められたらまた絶頂してしまう、という恐怖だけがあった。

 もし涙で視界がぼやけていなければ、一夏の血走った瞳に気づけたかもしれない。

 怯えを感じ取った一夏は、楯無の唇を軽く塞ぐ。ガラス細工を扱うような、繊細なキス。そして、覆い被さりながら、耳元で悪魔のごとく嗜虐的な色合いを帯びた言葉をささやく。

「イクゾ」

「お、うあ、ぐぁああああぁぁぁ……」

 下腹の奥が異物に満たされる。楯無はぼんやりした頭を働かせようとするが、感冒で寝込んだときのように考えがまとまらない。何度もまばたきして視界不良だけは取り除こうとする。

「ふぁぁ……」

 異物感が少なくなった。下腹部に残るかゆみにも似た、微かな痛み。

「んッ」

 今度は喪失感。苦しいだけの感触から解放され、安堵のため息を吐く。だが、小陰唇も無理やり広げられ、思わず獣のあえぎ声が漏れてしまう。

「ふぁ……あ、ヤァァァアアア!」

 先ほどの異物感だ。ぬめった膣内を一秒間に一ミリずつ侵攻し、どんどん押し入っていく。ゆっくりであるがために、痛みが大きくなるのではないかという恐怖が肥大化する。

 一夏は何をやっているんだろう。腰が抜けた楯無に確かめる術はなく、脳内に芽吹いた不可思議な感覚に気づかない。

 異物の侵攻が止まり、息苦しいだけの時間が始まる。楯無は目をつむって耐えようとする。急に唇に柔らかいものが当たり、そっと目を開けたとき一夏の顔がはっきりと映った。

「ぁ……い、ちか、くぅ」

 呂律が回らない。頭の奥にじわりと広がる不可思議なしびれ。悪寒とはまた違った、背筋を伝う心地良さ。恋人の唇はあたたかくて安心できた。

「ごめん」

 顔を離した一夏の声を聞く。見つめ返すより早く視界を奪われる。湿り気が残っており、楯無が体を拭くのに使ったバスタオルだと気づく。

「な、に、を」

 一夏が楯無の頭の横でタオルを縛る。邪魔にならないよう、彼女が痛みを訴えないように注意しながら。

 腹のなかにおさまっていた異物が再び抜き取られようとしている。感触を確かめるようにゆっくりと引いていく。一夏のキスでいくらか恐怖感が和らいでいた。そのせいか、消え去りつつある異物感に寂しさのような感触を抱いてしまう。

「あ……はぁ」

 視覚を封じられて敏感になった聴覚。楯無の下半身から「ちゅぽんッ」という音を拾った。異物が取り除かれたにもかかわらず、下腹部が広がったままのような感触が残っている。

「あ! ぐ、ぁや、やっ、やだっ」

 再び侵攻が始まった。楯無は状況を理解しつつあった。時折聞こえる淫靡な水音が、自分の膣口から漏れだしているものだと。羞恥を感じる暇もなく、さざ波のように広がった不思議な感覚が頭の奥をしびれさせる。

 抽挿が執拗に何度も繰り返された。破瓜(はか)の痛みはほとんどなく、異物感が大きいだけだ。楯無は言語を忘れてしまったかのように雌の声をあげ、唇を重ねる一瞬だけヒトに戻る。

「おふぅ、あ、ん、ふぁああああぁぁぁ……」

 処女を喪失したのだ。楯無は正常位のまま長い時間つながっていた。タオルで目隠しされているため時計を確かめる術はない。怒張の抽挿は最初よりもいくらか早くなっている。それでも楯無が以前見たアダルトビデオと比べておそろしくゆっくりだった。

「ふぅ……あはっ、……あああぁぁぁ」

 楯無のなかで肥大化した不思議な感覚。

 そのとき、一夏が急に腰を持ち上げた。異物感がこれまでにないほど大きくなる。

「やだ、やだったらああ……」

 恐怖を感じた楯無は、思わず菊穴をすぼめていた。括約筋が締まると同時に膣口も締まる。突然膣圧が増し、一夏は快感の波に飲み込まれた。腰を突き出し、交合の刺激で下がっていた子宮口に向けて精を放とうと脈打った。

 楯無は、怒張が膣の中で爆ぜるのを感じた。膣の奥が熱を持ち、彼の腰が震える。楯無の腰を支えていた腕から力が抜け、タオルがずれて視界が戻る。

 怒張の尖端がふくらんでいる。コンドームの精子ポケットだとわかった。二回目の射精がよほど気持ちよかったのか、大量の白濁液がたまっている。腰をベッドに落とした一夏は、荒い息を吐いて呼吸を整えていた。たどたどしくコンドームを抜いて口を縛る。そのままくずかごに放った。

 

▽

 

 微かな痛みを感じるたびに頭の奥がしびれていく。

 楯無はベッドに腹這いになって尻だけを高く突き出し、顔を枕に埋めている。かれこれ一時間近く初めての後背位を続けていた。

 一夏はベッドから降りて、立ったまま膣への抽挿を続けている。楯無が破瓜した瞬間と同じ速さで挿入して、また同じようにゆっくり引き抜く。一往復に数分かかるが、射精することなくいつまでも膣の感触を味わいたいという、彼の欲望を満たすには十分な速さだった。

 二回目の射精にいたる過程とは異なり、楯無の口から雌のあえぎ声は少なくなっていた。時折、くぐもったうめき声を漏らすにすぎない。盛りのついた雌犬のように絶叫し、一夏の精を屠っていた事実に遅ればせながら気づいたのだ。一夏を隷属させようとしたことを棚に上げ、楯無は変態行為に溺れたことが恥ずかしくてたまらなかった。

 処女のまま精飲し、口淫にふけるなんて変態のやること。犬のような格好で刺し貫かれている事実よりも、熱に浮かされて淫らな行為にふけったことを重大視する。

 それならば処女を喪失した今は? 楯無の主だった性知識は、同級生が既に経験したたどたどしい性体験に加え、年上の女性による華やかであり乱れた体験である。更識家は旧家であり、厳しい抑圧された生活だった。虚から借りた官能小説によって歪められた願望は、彼女のなかで肥大化を始めていた。

「たて、なし……」

 コンドーム越しとはいえ、一夏が膣内で射精する。二回目に匹敵する長い射精。楯無は下腹部から異物感が消えるのを待って、一夏の前にひざまづいた。コンドームを取り去った怒張。雄の匂いに動じることなく、口淫を想起させるように舌を伸ばす。

 まだ残っているであろう精子を搾り取るべく、一夏が漏らした微かなあえぎ声を楽しんでいた。

 

▼

 

「よかったあ……」

 虚は、楯無の初体験が無事に終わってほっとした。

 童貞と処女だからてっきりすぐ終わるかと思いきや獣同士の交尾のような激しさに、ついつい見入ってしまったのだ。途中、織斑先生が「セックスってのはビデオみたいにアンアン言わないぞ。あれは演技だぞ」と発言していたのだが、楯無にかぎっては当てはまらないらしい。

 ノート型端末の画面を見れば、一夏が睾丸に残っていた精液を吸い上げられていた。どうやら四回目の射精と推測できた。さすがに体力の限界に来たとみえる。崩れ落ちるようにベッドに体を投げ出してしまった。

 開始から二時間以上まぐわっていれば当然である。セックスは正常位や後背位など、現代生活とは無縁な姿勢をとる。なかなか使わない筋肉を酷使したため、おそらく明日か明後日あたり筋肉痛に悩まされるだろう。そして、その理由説明に困るに違いない。

 いつもなら五郎丸から何度も来るはずのメールが来ない。携帯端末を見つめて不思議がっていたら、ちょうど着信がある。メールではなく通話だ。

「五郎丸。ちょうどよか――」

 んんん、などとあえぎ声が聞こえる。その瞬間、虚は、年上の経験豊富なお姉さんが自慰にふけり、あまつさえ処女である虚に声を聞かせような変態だと悟った。腐の方向にゆがんでいるだけあって性癖も尋常ではない。虚は冷めた声で「どうしようもない変態ですね」と捨てゼリフを残し、電話を切った。

 虚は何事もなかったように顔を伏せ、勝ち誇ったような顔つきで織斑先生を見やる。

「いかがでしたか? 経験者は語ってください」

 一緒に痴態を目撃した彼女は、「及第点だ」と渋い表情で告げた。

 虚は驚きのあまりカッと目を見開く。あれで及第点という。やはりゴム無しで性交し、妊娠するまで膣内射精(中出し)しなければ合格点をあげるつもりはないということなのだろうか。

「童貞ってのはな。たいていがっついてすぐ射精して終わるもんなんだ。初体験は女によっちゃあ、痛いだけで何で気持ちよくなれるのかわからん、などと感想を述べるもんだ。その証拠に愛撫ではイッたが、破瓜後はなかっただろう?」

「確かに。でも、おふたりは今回で三回目ですよ」

「楯無にリードされていたのがな……どうも。すぐイクからスローセックスに走ったのは、まあ、あいつなりの優しさの現れだと理解できなくもない。大昔の武人のように『士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべし』というのを期待したんだが、予想を裏切ってくれたよ。ハハハ……一夏は我が弟ながら変態だな。マゾのド変態だ」

「実の弟さんじゃないですか。その言い草は……」

「布仏は四回目の射精の瞬間の言葉を聞き落としたのか? ガン見していたくせに」

「ガン見は余計です! もちろん聞いてました」

 虚は羞恥に頬を染め、まごついて明言を避ける。

「一夏のやつ……射精しながら『楯無様!』とか思いっきり叫んでたろ。聞いた瞬間、私はあきらめたよ。もう引き返せないって」

 織斑先生は画面に向かって合掌する。

「織斑先生も十分変態じゃないですか。いろんな意味で」

 虚ははっきり聞こえるように口にした。今言っておかないと後悔する気がしたのだ。織斑先生が話題を変えた。

「それにしても、更識がどんどんエロくなってくんだが……誰があんなこと教えたんだ」

「生来の努力家で飲み込みが早いんです。フェラチオの技術については、五郎丸がディルドーを使って実演してましたよ。ディープスロートとかジュポフェラだ……みたいなこと言ってましたけど」

「ああ、それなら納得。アイツ、今でこそ腐ってるけど、学生時代男と寝まくってたみたいだから。ええっと三十人くらい? 脱ぐとエロいんだよ。特にフェラがまた絶品で……」

「それどこで」

「アイツも臨海学校についてきていたからな。その時に束のやつが来て……。ナノマシンを悪用した、男の子の気持ちが分かるアタッチメントを持ってきたんだよ。小さなISだから女性にしか扱えない。量産型紅椿だとか、ラファール・リ・バイブとかなんとか」

「で、それが何の関係が」

「……その、何だ。察しろ」

「まさか……え? やったんですか」

 アハハ、と笑う女教師を見た虚は思わずなじっていた。

「野獣教師! 教師失格!」

「大人同士だしいいじゃないか。減るもんじゃなし。ボーデヴィッヒなんか二、三人喰ってたぞ。ここだけの話、篠ノ之もな……」

 篠ノ之箒のことだ。虚は戦慄した。簪はおろか後輩が大変なことになっている。IS学園の性が乱れきっている。

「私の貞操が、今、そこにある危機です」

 織斑先生はしばらく笑った後、真顔になった。

「一夏のやつ、そのうち立てなくなるまで搾り取られるんじゃないか? 更識のエロさからして腹上死する可能性も……」

「こちらとしては、妊娠さえすれば任務終了なんですが」

 虚はいい加減、他人のセックスをのぞくような真似をやめたかった。楯無の乱れ振りには驚かせられるのだが、一夏の将来が心配だ。

「あのう……先生」

「何だ」

 織斑先生は湯飲みから口を離す。虚は半裸に剥かれて大変なことになっている、もうひとりの教師を流し見た。

「止めなくていいんですか……」

「手遅れだから気にするな」

 眉ひとつ動かさずに言い放った。織斑先生は一瞥すらせずに画面を眺めている。鬼である。

「私は気になります。教師なら止めて下さい」

「自分で止めればいいじゃないか」

 虚は口だけでその場から動こうとはしなかった。面倒だからというのもあったが、むしろ恐れのほうが強かった。

「やりたくないので……なんだか襲われそうで」

 ラウラがやり手なのは理解できる。学科・実技ともに高いレベルにあり、転校当初こそトラブルを抱えていたが、今では品行方正な生徒として一目置かれている。織斑先生の部屋を訪れる前までは虚ですらそう信じていたのだ。

「やめ……いやっいやっ、怖い……何か来……きちゃ……!」

 目の前で繰り広げられる惨状。「どうしてこんなことに」と、虚は小さな声でつぶやく。

 すると織斑先生がしかたないと言わんばかりに席を立ち、引き出しから何かを取りだそうとするラウラに向きなおった。

「ボーデヴィッヒ」

 虚は一時、株が大暴落していた織斑先生を見直す。ようやく山田先生の受難が解放されると心から期待する。だが、現実は不条理だ。

「ローションを使うならシャワー室でヤれ」

「思いっきり見捨ててます!」

「山田先生は天国への階段をのぼってるんだ。いいんじゃないかな、もうゴールしても」

「……こうなったのも元はと言えば」

「あ、処女は残しておいてやれよ」

 ラウラは無言でうなずいて、山田先生をシャワー室に運んでいった。

 

▽

 

 その夜、自室に戻ってから表紙に「布仏虚」と署名した日記帳を開いた。

 その日記帳は虚が一日に為したことを淡々と記録するもので、時系列に沿って書き留めてあった。

 虚は袖机の引き出しから筆記用具を取り出すと、日記帳に今日の日付が書かれたページを開いて朝から今までの出来事を書き出していった。

 筆を止め、先ほど見た一部始終を思い浮かべる。山田先生が取り返しのつかないひどいことになってしまった。その場にいた虚は口でこそ咎めたものの、何もしなかった時点で共犯である。

 

 ※※時 楯無さまが無事処女を捨てました。

     楯無さまのステータス:処女喪失

     次の項目について経験済

     ・接吻

     ・手コキ

     ・顔射

     ・フェラチオ

     ・口内射精

     ・【NEW!】精飲

     ・【NEW!】セックス(正常位・後背位)

      ◇【NEW!】網代本手、入り船本手、ひよどり越え

      ◇【NEW!】目隠しプレイ

     ・【NEW!】オーガズム(愛撫)

     織斑一夏のステータス:非童貞(織斑先生曰く、マゾのド変態)

     次の項目について経験済

     ・接吻

     ・指入れ

     ・顔射(注、暴発)

     ・フェラチオ

     ・口内射精

     ・【NEW!】精飲強要

     ・【NEW!】セックス(正常位・後背位)

      ◇【NEW!】網代本手、入り船本手、ひよどり越え

      ◇【NEW!】目隠しプレイ

     ☆特記事項

     楯無さま、言葉責めスキル習得(S寄り)

     織斑一夏、言葉責めで覚醒済(M)

     織斑先生、山田先生、諜報活動を許可済

     ラウラ・ボーデヴィッヒ、諜報活動の黙認について署名済

     織斑先生の悪行:

     ・ラウラ・ボーデヴィッヒに自慰を教え、覚醒させる

     ・臨海学校で淫行?

     ・自室に官能小説の山

     ・同僚を売る

     山田先生のステータス:かろうじて処女ですが、もうだめかも知れない

     ・教え子(ラウラ・ボーデヴィッヒ)に喰われた女教師

      ◇ローションプレイまで……

     ラウラ・ボーデヴィッヒのステータス:調教済、性豪

     ・織斑先生、ミイラ取りがミイラになる

     ・ハルフォーフなる人物も肉体関係あり

     ・織斑先生によれば、同級生を数名を毒牙にかけたとか(恐ろしや)

     ・臨海学校で淫行

     ・山田先生、生け贄にされる(ごめんなさい!)

     簪様のステータス:非処女

     ・相手は■■■■■■■■

     篠ノ之箒のステータス:織斑先生が気になることを言いかけてました

     量産型紅椿とは???

     ラファール・リ・バイブとは???

 

 虚は日記帳を閉じて元の場所にしまった。窓際に立ち、夜の帳が訪れた学園の空を見上げ、お星様に向かってこう話しかけた。

「お嬢様がついに初体験を遂げられました。一夏様や山田先生が取り返しのつかないことになっていました。それから……IS学園の風紀が心配です」

 

 

 

(終)

 

 

 




 最後まで読んで頂きありがとうございました。

 二万字を超えたため、読むのに苦労されたかと思います。お疲れ様です。
三度目にしてようやく処女&童貞喪失。焦らした分、ねちっこい描写になるよう心がけました。
 なお、「ラファール・リ・バイブ」は誤字ではありません。あしからず。

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