※この作品はR-18です。

士道クリミナル   作:サイエンティスト

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 エロいかどうかは別としてやっとエロ話。でもこれ男の子向けじゃないかもしれない……。
 とりあえずこのお話がシリーズの折り返し地点です。
 タイトルがアレなのは雰囲気がファーストの時みたいになったからです。
 ちなみに話のタイトルはいつも話が書きあがってから最後に付けてます。
 事後に衝撃的な発言、もとい提案あり。



●七罪セカンド

「……っ……ん……ふ、っ……」

 

 薄闇に包まれた部屋の中に、小さな吐息が広がり儚く消えていく。

 吐息の出所は士道の唇に愛でられる七罪の唇。

 両の手の平を重ね繋ぎ合うと共に、士道は静かに浅く口付けを行ってくる。

 その口付けには喰らうような激しさもなければ、奪うような強引さもない。

 今まで恐怖に震えていた七罪を慰めるかのごとき優しさと、深い愛情だけがそこにあった。

 

「んぅ……ぁ……ふぁ……っ……」

 

 そっと唇の隙間から潜り込み、口の中をくすぐる舌の動きも驚くほどに穏やか。

 普段ならすぐさま舌を絡め深い口付けを行ってくるというのに、今は舌先を軽く触れ合わせてくるだけ。

 それはまるで七罪の許可を求めているかのような遠慮がちな動き。

 自らの欲望を満たし愛を得るための一方的な口付けではなく、相手に愛を感じさせるためだけの静かな口付け。

 宣言通り士道は七罪に嫌というほどの愛を感じさせようとしてくれている。

 その思いやり溢れる心に甘い疼きを胸に感じながら、士道の唇を軽く食み七罪は答えを返す。

 

「ちゅ……っ、あ……はっ……」

 

 それを合図に触れ合わせていた舌先を奥へと滑らせてくる士道。

 唾液に塗れた舌の上を同様に塗れた舌が走り、互いの唾液を混ぜ合う刺激的な感覚が胸を満たす。

 以前は卑猥で若干嫌らしい行為だという認識が捨て切れなかったが、今は違う。

 触れ合わせ絡めてくる士道の舌の動きに七罪を貪欲に求める下心が存在せず、今まで感じさせてくれたことがないほどに愛情と優しさに満ちていたから。

 それこそ初体験の夜に交わした初めてのものよりも、自分に飽きたのではないかと思い込んで怯えていた七罪を落ち着かせた時のものよりも。

 紛い物でも偽物でもない。

 その口付けに込められた七罪への想いは、間違いなく本物の感情だ。

 

「ぁ……しどぉ……」

「……このくらいで喜ぶのはまだ早いぜ、七罪。激しくしちまって上手く愛してやれなかった分まで、今夜はたっぷり時間をかけて愛してやるからな」

「ふあっ……!」

 

 優しく微笑みかけてきた士道の唇が耳元へと寄せられ、甘い囁きを含んだ吐息に首筋をくすぐられる。

 興奮に荒げたものではなく慈しみと愛情を乗せた少し意地悪な吐息で。

 生じるむず痒さに反射的に悶えてしまうも、逃れようとする身体をできる限り抑えこんで身を任せる。

 士道が七罪のために、これ以上ないほどの愛情をもって愛でてくれているのだから。

 

「んっ、あ……! う、ああぁ……! あ、あぁぁ……!」

 

 吐息が口付けへと移り変わるも、込められた感情は変わらない。

 首筋へと愛情を残していく唇の動きは緩慢ともとれるほど穏やか。

 口付けの強さは唇の柔らかな感触を肌に感じることができる程度のもの。

 同時に衣服と下着を脱がし七罪を裸に剥いていく手つきも落ち着きのある静かな動き。

 やはり士道は以前のような理性が焼き切れるほどの異常な興奮を催していない。

 それは口付けにも手つきにも貪るような激しさがないのが何よりの証拠。

 だがそれが何だというのだろうか。

 荒い息遣いと瞳孔の開いた瞳を見れば、士道が七罪に興奮を催していることは明らかだ。

 無意識のものだったとはいえ嘘も誤魔化しもしていない、本当の七罪に対して興奮を抱いている。

 今まで抱いてくれた興奮も全て紛い物ではないかと恐れていた七罪にとって、その事実だけでも夢心地になるほど嬉しい。

 

「ふあぁっ! あっ、あぁぁ、うあぁぁっ……!」

 

 露にされた胸元へ至る士道の唇に微かな膨らみを咥えられ七罪は喘ぐ。

 敏感な乳頭が唇に挟まれ舌先で小突かれる刺激と士道に味わわれているという事実に、どうしようもない快感と羞恥が湧き上がってしまう。

 しかしそれらはすぐに堪らない幸福感へと形を変え、再び七罪へと襲い来る。

 貧乳好きの士道が食らいつきたい衝動を必死に抑え込み、七罪にだけ快感と愛情を感じさせようと奉仕してくれているのだから。

 溢れ出る幸せな気持ちは自然と手を動かし、胸に顔を埋めている士道の頭を静かに抱かせた。

 ここまで愛されているのに更に愛を求めるなど欲張りかもしれない。

 だがもう舞い上がってしまった七罪は自分の気持ちを抑えられなかった。

 こんな自分を愛してくれる士道を、もっと深く感じたい。

 

「し、どぉ……ひゃ、うぅ! あ、ああぁっ……!」

 

 欲張りにも更に愛を求める七罪に、言葉ではなく行動で応えてくれる士道。

 小突くだけだった舌先をゆっくり乳房に這わせ、甘く吸い付き乳頭を優しく苛め抜いてくる。

 その動きにもやはり貪る激しさは無く、七罪を感じさせることしか考えていない。

 とても不思議だった。

 七罪が無意識に作り出していたフェロモンとやらは、士道が変わらず自分を愛してくれるように仕向けるためのもの。

 なのにその影響を受けていない今の方が士道の愛情をより深く感じられる。

 無意識に行っていた誤魔化しに一体何の意味があったのか、少なくとも今の七罪には全く分からない。

 

「あ、あ、ああぁ……!」

 

 そして分かろうとする必要もない。

 今はただこの幸せと愛情を身体の隅々まで、心の奥底にまで感じたい。

 だから静かに目蓋を下ろし、胸元から腹部へと滑っていく舌の湿った感触に浸る。

 士道の舌に触れられた肌が、唾液の塗りこまれた肌が火で炙られているように熱い。

 まるで愛情を身体に焼き付けられているかのように。

 その熱さは腹部を焼き尽くし、更に下へと軌跡を描き――

 

「――っ!? し、士道!? そっ、それ、駄目っ……!」

 

 ――下腹部の更に下へ至りそうになり、幸福に浸っていた七罪は慌てて士道の頭を押しのけた。

 士道がこれを行おうとしたこと自体は初めてではない。

 七罪を気持ちよくさせてあげたいし、自分も同じことをして貰っているのだからそのお礼も兼ねてしてあげたい。

 度々そう口にして行おうとしてくれていたが、七罪は毎回拒絶してきた。

 見られるだけでも死ぬほど恥ずかしいというのに、口付けされるなど考えるだけでも恐ろしい。

 そしてそんな汚い場所を士道が舐めることを思うと、罪の意識でどうにかなりそうになる。

 理由はどうあれ七罪が拒絶すれば士道はいつも絶対に止めてくれた。

 だが、今回だけは違った。

 

「――っ!? あ、あぁっ! あ、うあぁっ!」

 

 遮る手が簡単にやり過ごされ、下腹部の終点へと柔らかい唇が押し当てられる。

 そのまま七罪の両脚の間へと顔を埋めてくる士道は、汚らしい箇所へと微塵も躊躇いなく口付けを始めた。

 

「やっ、う、ああぁぁ! し、しど、お……!」

 

 引き剥がそうと士道の頭を押しのけるも、太股をしっかり掴まれていて適わない。

 身を捩って逃れようにも士道の唇と舌が下腹部で蠢く度に鋭い快感が痺れをもたらし、その強さに抵抗する力が容赦なく奪われていく。

 長時間の正座で痺れた足を突付きまわされるのにも似た感覚に、最早七罪は動くこともままならずベッドの上で快感に悶えるしかない。

 

「やっ、あぁ……ら、めぇぇ…! ひゃ、ぁ、うぅ……!」

 

 両脚の間の汚らしい唇が舌で割り開かれ、裏側からも余す所無く弄られていく。

 更に深く潜り込んでくる舌先に神経が剥き出しとも言える敏感な部分を弄り回され、突き抜ける快感に手足が跳ねてしまう。

 喘ぎと共に口の端からだらしなく涎が零れてしまうも、下腹部の内側を初めて舌で弄られる羞恥と尋常でない快感に思考すらおぼつかない七罪には拭う余裕などなかった。

 

「ぁ……ぅ……っ、ぁ――っ!」

 

 突き刺されるような鋭く局所的な快感は耐え難く、最早声も出せずに快感の限界を迎えてしまう。

 意識が朦朧とするほどの快感に貫かれ、手足の強張りと共に仰け反り悶絶する七罪。

 余韻に痺れる身体はビクビクと震え、早鐘のような胸の鼓動が耳の奥で煩く響く。

 初めて経験する局所的な激しい快感に最早身体には力が入らず、指先一本動かすこともできない。

 幸福感と喜びに嫌らしく緩みきっているであろう頬を引き締める力すらなかった。

 

「あ、ぁ……! や、ぅ……ぁ……!」

 

 それでも士道は一向に舌の動きを緩めてはくれない。

 七罪が快感の峠を迎えたことは喘ぎと身体の悶えで分かっているはずだというのに。

 むしろ七罪が最も感じる場所と動きを把握したのか、先ほどよりも鋭く激しい快感をもたらしてくる。

 自分は何一つ快感を得ることなどできないというのに、士道は汚らしい箇所へと顔を埋めて口と舌で奉仕を続けている。

 そんなことが躊躇い無くできるのは、本当に七罪を愛してくれているからなのだろう。

 愛しているから、自分を二の次にしても気持ち良くしてあげたい。

 だからこんな汚らしく卑猥なことでも、相手のために平気でしてあげられる。

 実際七罪も同じ気持ちを抱いていた。

 士道を気持ち良くさせてあげたいから、同じことをしてあげられた。

 卑猥で汚らしくはあるが、これは紛れも無い愛情表現。

 士道が七罪へ愛を伝えようと、汚さを堪え行ってくれている愛情表現。

 

「ああぁ……! し、ど……しど、ぉ! は、あぁぁ……!」

 

 だから七罪は頭がどうにかなりそうな快感を素直に受け入れた。

 快感の大きさがそのまま愛の大きさだと、はっきり分かっていたから。

 それにどのみち士道の行為を止められるほどの余裕が無いのだから。

 

「ひ、ぁ、ぁ――! っ、あ……ぅ……!」

 

 何度も何度も快感の峠を迎えさせられ、その度声にならない喘ぎを零し悶える。

 心臓は薄い胸を突き破りそうなほどに荒ぶり、肺は思い通りに酸素を取り込むことができない。

 士道の舌の動きは先ほどの口付け同様に穏やかだというのに、押し寄せる快感の激しさに七罪の身体が耐え切れなかった。

 せっかく士道が優しくひたすらに七罪を愛でてくれているというのに。

 息苦しさと快感を含めた全ての感覚が徐々に遠のき始めたのを、薄れ行く意識の中で悔やんだその時――

 

「――っは……はぁ……」

 

 ――そこで士道がついに卑猥な口付けを終え、七罪の下腹部から顔を上げた。

 顔を埋めていた故の息苦しさからか七罪同様に呼吸を荒げながら。

 

「……大丈夫か、七罪? お前はこれ初めてだしちょっと刺激が強すぎたかもな……」

「……っ……ぅ……ぁ……!」

 

 そして朦朧として肩で息をする七罪の瞳を心配そうに覗きこみ、だらしなく零れているであろう唾液を指で拭い取ってくれる。

 気絶しかけていたのを喘ぎや様子から理解し中断してくれたのだろう。

 こんな中途半端かつ一方的に愛されただけで終わりたくはなかったので、七罪は心の底から胸を撫で下ろすことができた。

 これでもっと深く、最後まで愛してもらえる。

 これで士道にも愛を感じさせてあげられる。

 

「……士道……もう、良いわよ……士道が愛してくれてることは……十分、分かったから……」

 

 頬に添えられたその大きくて暖かい手を取り、頬の緩みに抗わず笑いかける。

 士道が可愛いと言ってくれる、この最高の幸せの中でのみ形作ることのできる満面の笑みで。

 そしてその誉め言葉に嘘は無かったのだろう。

 笑いかけると士道は微かに頬を赤らめ、その手を七罪の手の下で強張らせている。

 そんなに七罪の笑顔を魅力的に思ってくれていることがとても嬉しくて、余計に笑みが緩んでしまう。

 

「……なら、ちゃんと話してくれるんだよな。お前が一体何にあそこまで思い悩んでたのか」

「うん……全部、話すから……もう士道の、好きなようにして……?」

 

 無意識に能力を用いた結果、士道にとって七罪の身体は性行為によって最高の快感を得られる身体となっている。

 一時的に絶ったのはフェロモンだけで身体の変化は元に戻ってなどいない。

 男としてどうしても肉体的な快感を求めてしまう士道に対して、最高に気持ちよくなれるのに我慢して優しくしろなど酷な話だろう。

 七罪は士道のように上手く愛情を感じさせてあげることができるほど器用ではない。

 だからせめて、そんな我慢などさせずに心行くまで快感を味わわせてあげたかった。

 そんな七罪の心を知ってか知らずか、士道はどことなく嬉しそうに微笑んでくる。

 

「ああ、分かった。正直言うともう我慢の限界だったんだよ……」

「私なんかで興奮するとか……本当に救いようの無いロリコンよね……」

「……けどお前はこの救いようの無いロリコンが好きなんじゃないのか?」

「……うん」

 

 フェロモン無しに幼児体型の七罪に興奮できる士道と、そんな士道をどうしようもなく愛している自分に呆れ、七罪は士道の手をそっと離す。

 本当にもう我慢の限界だったのだろう。

 士道はすぐさま身を起すとズボンを下ろし、充血したかの如く赤く脈動する半身を露にした。

 すでに七罪の手首と見まごう程の太さに肥大していて万全の態勢であり、剥きだしの赤い肉の先からはほんの僅かに透明な興奮が零れている。

 ここまで欲情しながらも七罪に愛を感じさせるために必死に堪えていてくれたとは凄まじい意志力だ。いや、どちらかといえば愛の力と言うべきなのかもしれない。

 両脚が静かに開かれ、本当に肉なのかと疑いたくなるほど硬い半身をあてがわれる。

 そして瞳で意思を確認してくる士道へと無言で頷き、七罪は腕を寄せて縮こまり痛みに備えた。

 

「――っ、う! あ、ぅ……あ、あぁぁっ!」

 

 そして士道の身体の一部に身体の内へと入り込まれ、抑えようとしてもその苦痛に微かな悲鳴を上げてしまう七罪。

 焼けた鉄の棒に肌を貫かれ、肉を焼かれながら内側へと抉りこまれていくかのような痛み。

 士道を迎え入れる時は慣れるまで初めての時と同じかそれ以上の痛みを感じてしまう。

 これが普通だと思っていたので特に気にすることも無かったのだが、実際にはこれこそが士道に最高の快感を得てもらうために身体が作り変わった結果なのだろう。

 苦悶に顔を歪めつつも恍惚の吐息を零す士道の様子が、それを如実に物語っている。

 

「っ、七罪……!」

「あ、ううぅっ! っ、うぅぅ……!」

 

 しかし最高の快感を得られても士道は決していきなり奥まで突きこんでは来ない。

 歯を食いしばり込み上げる涙を懸命に抑え込む七罪をかき抱き、痛みを少しでも和らげようとしてくれる。

 自分の快感よりも苦しむ七罪を気遣うその優しさと愛情。

 身体の内を抉られる痛みは酷く耐え難いものだが、この士道の想いを強く実感できるからこそ受け入れることができる。毎晩でも、何度でも。

 

「っ、う……七罪……平気、か……?」

「はぁ……は、ぁ……! し、どぉ……キス、し、てぇ……!」

 

 最後まで優しく繋がりを作ってくれた士道の優しさと愛情。

 混ざり合い強まる幸福感に突き動かされるまま、七罪はその唇を求めた。

 もっと深く繋がり合い、もっと深く士道を感じたいから。

 

「――んっ……ふ、うぅ……ああぁ! ちゅ……ぁ……うあぁ!」

 

 優しく唇を奪われ舌で愛でられる度、胸が喜びに締め付けられて甘く痛む。

 硬く熱い士道の一部が音も無く下腹部の出入りを繰り返す度、痛みに代わり快感が少しずつ全身を満たしていく。

 そして心に溢れていくのは気が狂いそうなほどの幸福感。

 この優しさが、愛情が、全て自分に向けられている。

 七罪という存在そのもの、その心に向けて。

 こんなにも自分を愛してくれている士道のことが、愛しくて堪らない。

 

「うああぁぁ! あ、はああぁぁぁ! し、どぉ! 士道ぉ!」

 

 先ほどとは似て非なる快感の高まりを覚え、両手両脚を士道の背へと回し必死にしがみついて耐える七罪。

 局所ではなく全身に広がり、痙攣を催す快感を受け入れられないわけではない。

 今度は自分ひとりだけでではなく、士道と一緒に迎えたかった。

 身体も心も、感じているものも一つになりたかった。

 

「っ! な、七罪っ……!」

「う、あぁぁぁ! し、どぉ……っ!」

 

 その想いに応えるように七罪の身体を強く抱き返してくる士道。 

 あくまでも緩やかに腰を動かし、七罪の身体の奥底に優しく愛情を叩き込んでくる。

 初めての夜でもここまで優しくなどなかった。

 それはつまり、あの頃からフェロモンの影響があったということ。

 だがもうそんなことはどうでも良かった。

 士道は最初からこんなにも七罪を想い、愛してくれていたのだから。

 

「あ、あああぁぁ! し、しどぉ! も……だ、めぇ……!」

「くっ、ぅ……七罪っ!」

 

 重なる汗ばんだ肌から互いの温もりを直に感じ取り、互いの熱い吐息を耳元に感じる。

 互いの身体が、心が一つになっているという喜び。

 士道に腰を打ち付けられる度に鋭さを増して行く快感。

 そして心の奥底にまで伝わってくる本物の愛情。

 何故だろうか。何度も経験し味わった感覚のはずだというのに、今まで感じたことがないほどの幸せで胸の中は満ち溢れていた。

 

「あっ、ああぁ、うあああぁぁ――ふああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 最初で最後の激しい一突きで下腹部を貫かれ、全身を駆け巡る快感に堪えきれず嬌声を上げてしまう七罪。

 仰け反る身体の中へと士道の存在が注ぎ込まれ、焼け付くような熱さが染み渡っていく。

 士道に身体をきつく抱かれることで感じる温もりと鼓動。

 そして身体の内側に焼き付けられる熱さ。

 共に快感の峠へと至り、心と身体が一つになっているという感覚。

 あまりの幸福感に最早七罪の意識は幸せで塗りつぶされ真っ白に染まっていた。

 

「あ、ぁ……はぁっ……はっ……し……どぉ……!」

 

 全身を襲う快感の余波に身体の力を奪い去られ、士道にしがみついていた手足がベッドへと滑り落ちる。

 身体は手足を投げ出したまま絶え間なく痙攣し、緩んだ口元は息苦しさから意思とは無関係に大口を開け荒く空気を貪っている。

 これ以上強すぎる幸せと快感に見舞われたら意識を失うどころか軽く発狂してしまうかもしれない。

 

「し、どぉ……愛してる、って……言って……?」

 

 それでも七罪は強張る腕を懸命に動かし、士道の背へと回していく。

 七罪はもう幸せも快感も十分で満ち足りているが、七罪のせいで性欲を増進された士道はまだまだ飢えと渇きに見舞われているのだから。

 そして飢えと渇きを満たしてあげることが責任を取る方法であり、不器用な七罪にも出来る最大の愛情表現なのだから。

 

「……ああ、愛してるよ七罪。ちゃんと本当のお前のこと、愛してるからな」

「あっ! ひゃ、うぅ……!」

 

 にっこりと笑い、再び胸元へと口付けてくる士道。

 むず痒さと快感に悶えながら、七罪はその頭をかき抱き更に深く顔を埋めさせる。

 その愛が決して紛い物ではない本物の感情だということを、心の奥底にまで深く刻み付けてもらうために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を離れさせないための身体とフェロモン……要するにお前に媚薬を嗅がされてたってことか。お前の匂いに当てられると変に興奮する気がしてたけどそういうことだったんだな……ていうか琴里の奴、何が復讐に走っただよ。お前のせいじゃねぇか……」

 

 激しさの無い、それでいて途方も無く胸の熱くなる一時が終わりを迎え、二人で余韻に浸る幸せな時。

 約束どおり、七罪は士道に包み隠さず全てを話した。

 自分の身体が作り変わった理由から、それが引き起こした結果まで全て。

 もう少し驚くかと思いきや、意外にも士道は合点が言ったように頷くばかりでさほど驚きを見せなかった。

 やはり影響を受ける本人としては若干原因に心当たりはあったのかもしれない。

 後半の呟きについては琴里による七罪のフェロモン香水を用いた実験についてのことだろう。覗きの趣味は無いし映像は最初の方しか見せられていないので結局どうなったのかは七罪にも分からないが。

 

「ほ、本当にわざとやったんじゃないわよ!? 私はそんなことしようなんて思ってなかったし、考えてもなかったし……! その、とにかく……ごめん……」

「お前が謝る必要はないって。むしろ謝るべきなのは俺の方だよ。お前が心の奥で怯えたりしないくらいに、愛を感じさせてやることはできなかったんだしさ。お前が簡単には前向きに考えない性格なのは分かってたのにな……ごめんな、七罪」

 

 念のために意識的にやったことではないと再び伝え、謝っておく。

 しかし士道は気にした様子も見せず、むしろ逆に申し訳無さそうに七罪の身体をぎゅっと抱きしめてくれる。

 今思うと欲望が満たされた状態でもこうして触れ合い語り合ってくれたのも、純粋に七罪の心を想ってくれている証拠だったのだろう。

 ここ最近の激しい夜の終わりでも、士道は一度も語らいを欠かしたことは無いのだから。

 

「な、何でそっちが謝るのよ……士道はちゃんと、感じさせてくれてたじゃない……どうしても悪い方に考える私が悪いのよ……」

「お前はそういう性格なんだし仕方ないだろ。もう気にするのは止めて安心しろよ、七罪……俺が愛してるのは、本当のお前なんだから」

 

 士道の腕の中で罪悪感に縮こまっていると、少し強引に顔を上げさせられ額へと口付けられる。

 上目遣いにその表情を窺ってみると、一点の曇りも無い微笑みがそこに広がっている。

 言葉にも様子にも嘘は微塵も無い。

 以前までの七罪ならそれでも半信半疑だったかもしれないが、今は心の底から士道の愛を確信している。ただその代わりにこんな七罪を愛している士道の正気ならちょっぴり疑っているが。

 

「……うん」

 

 だから七罪も安心して身を委ねた。

 遠慮なく肌を合わせ、その温もりを全身で感じ取る。

 胸部の起伏に乏しいおかげで完全に密着して抱き合えるのだが、嬉しいような悲しいような複雑な気分である。

 

「でも、きっとこの変化は治らないわよ。士道が本当の私を愛してることが改めて分かって、余計に失いたくない気持ちになってきたから……」

「悪循環にもほどがあるだろ。幸せになる度不安になるのかよお前は……」

 

 七罪の身体の変化は無意識の怯えによるものだ。

 どう足掻いてもこればかりは払拭できないし、むしろ決して変えられない本当の自分が愛されていると分かったおかげで心なしか強まったような気もしている。

 どうしようもない現状にさすがの士道も苦笑いしていた。

 

「……ま、その分俺が安心させてやれば良いだけか。俺と一緒にいると安心できるみたいだし、もっと一緒にいてやれば……」

 

 しかし不意に真面目な顔で呟き、しばし考える素振りを見せてくる。

 不思議に思って首を傾げていた七罪は、次の瞬間士道の口から優しげな声音で紡がれた言葉に度肝を抜かれた。

 

「……七罪、良かったら俺の家に移ったらどうだ? これならちょっとでも会いたくなったら時間を気にせず会えるし、その方がお前も安心できるんじゃないか?」

「っ!? え、な、何……? そ、それって……それって……同棲……?」

「あ……そ、そうだな。そうなる、かもな。い、嫌なら断っても良いんだぞ……?」

 

 自分の提案の意味に気付いていなかったのか、指摘された途端微かに顔を赤らめる士道。

 同棲などというと恋人以上の間柄に思えてしまうのだからその反応も仕方ない。

 一応そう言っても差し支えない関係なのだが、七罪もまさかこんな常日頃から目に見える関係性になるというのは予想外に過ぎた。

 とはいえ思ってもいなかっただけであり、受け入れられないという意味ではない。

 

「い、嫌なわけないし、むしろ嬉しいんだけど……大丈夫なの? そういうの琴里に許可取らないと駄目なんじゃない?」

「そりゃあ俺の一存で勝手に決めていいことじゃないだろうけど、お前を安心させるためなんだしたぶん琴里も許してくれるって。その代わりちゃんと自分で面倒見ろとか言われそうだけどな」

「何か拾った犬みたいな扱いされてることがちょっと気になるんだけど……本当に、良いの? 私ただでさえ士道と一緒に過ごしすぎてるでしょ。本当は迷惑に思ってたりしない……?」

 

 四糸乃や琴里が必要以上に一緒に過ごそうとしないのを良いことに、七罪は互いの時間と都合さえあえば士道と一緒に過ごしている。

 はっきり言えば常日頃から誰よりも長く士道の傍にいる。

 その上で意味的には同棲とほぼ変わりない状態になり、更に一緒に過ごせる時間が増えてしまうのだ。

 さすがに士道でも四六時中傍にいられればきっと迷惑に感じてしまうはず。

 

「まぁ、過ごしすぎてることは否定しないな。けど別に迷惑じゃないって。愛する人と過ごせる時間を不快になんて思うわけないだろ? それにお前は家事を手伝ったり愚痴を聞いたりしてくれるからむしろ助かってるよ。いつもありがとな、七罪」

「うぅ……」

 

 そんな若干の恐れを恥ずかしげのない当然といった口調の答えで否定され、あまつさえ感謝の笑みすら向けられる。

 照れくさくて顔を見られず、七罪は再び士道の胸へと顔を埋めた。

 そしてその頬は愛する人と呼ばれた嬉しさによりどうしようもなく緩んでいく。

 

「それで結局どうするんだ、七罪? 同棲……するか?」

 

 頭の上からちょっと恥ずかしそうな声が耳に届く。

 迷惑でないのならもちろん答えは決まっている。

 七罪は照れくささを我慢して顔を上げ、士道がいつも見たがっている笑顔を見せ答えた。

 

「……うん。士道と、一緒に……暮らさせて?」

「……ああ、分かった。その代わり今まで以上に家事にも愚痴にも付き合ってもらうからな?」

「うん……」

 

 やはり七罪の笑顔が見れたことが嬉しかったのか、にっこりと笑ってくれる。

 その笑顔を目に焼きつけ、七罪は枕代わりにそっと士道の胸へと頭を預けた。

 今夜は精神的に果てしなく疲れる夜だった。

 幸せの絶頂から不幸のどん底に叩き落されたと思ったら、今度は更に高い幸せの絶頂へ押し上げられるという感情のジェットコースターのような夜。

 できればもう二度とこんな異様に起伏に富んだ時間は過ごしたくない。

 もちろん幸せは大歓迎だが、今の七罪にはもうこれ以上の幸せなど思いつかなかった。

 本当の本当に七罪の存在そのものが愛されていることが、やっと分かったのだから。

 一体どうすればこの幸せに釣り合う幸せを、士道に感じさせてあげられるのだろうか。

 

「――ところでさ、七罪。お前さっきフェロモンを薬で抑えてるって言ってたよな?」

「ふえ……? あ……う、うん……」

 

 疲労と心労に加えてあまりにも難しいことを考えていたせいか、ぼんやりとしてきて危うく落ちそうになっていた意識が士道の言葉に引き戻される。

 七罪の心を想うが故に身体だけで終わろうとせず語らってくれているというのに、一人で先に眠ってしまうなど不誠実極まりない。

 七罪は頭を振って眠気を追い出し、士道の問いに答えた。

 

「たぶん話を聞いた私がどんな反応するか分かってたから対策として作っておいたんじゃない? ちゃんと本当の私が士道に愛してもらえてるって分からせるために。そうでもなければあんな怪しい薬作らないでしょ」

「ああ、だろうな……それで、その薬っていつ頃効き目が切れるんだ……?」

「ん……確か三時間くらいって言ってたわよ。私のために作ったものだけど実際に私が使うのはこれが初めてだから、あくまでも目安に過ぎないみたいだけど」

「ああ、三時間か……それで、飲んだのはいつなんだ……?」

 

 どうも士道の様子がおかしい。

 激しい感情を無理やり抑え込んでいるかのように落ち着きがない。

 何だか嫌な予感に襲われつつちらりと枕もとの時計に目をやり、七罪は頭の中で時間を計算した。

 薬を飲んでからたっぷりシャワーを浴び、何だかんだで士道の元へ向かうのを渋っていた時間が大体一時間くらいだ。薬を飲んでからすぐに効果が出るわけではないと考えた上での行動だが、半分くらいは言い訳で本当は怖がっていただけだ。

 今さっき時間をかけて深く愛してもらった時間は二時間くらいだろう。たぶん士道ならこの二、三倍の時間は続けられると思うが七罪にはこれくらいが限界である。

 ここに今現在の語らいの時間と、七罪が沈んでいた理由の説明時間を全て加えると答えが出た。ついでに溜息も。

 

「三時間と……十五分くらい、前……」

 

 効き目の持続時間を気にできるほど心の余裕が無かったので失念していた。

 薬の効き目が切れれば、再び七罪のフェロモンが分泌される。

 そのフェロモンは士道を半ば発情させるレベルの興奮剤。

 そしてたぶん今は効き目が薄れ始めている。

 となれば士道の様子がちょっとおかしくなってきている理由はたった一つだ。

 

「な、七罪……その……何ていうか……」

「……良いわよ、我慢しなくて。私のせいなんだしちゃんと責任は取るから」

「い、いや、でも……!」

「別にもう平気よ。今の士道が感じてる興奮は偽物だけど……ちゃんと本物の私でも興奮することも、ちゃんと本当の私を愛してくれてることも、全部分かってるから……」

「け、けど――っ」

 

 苦渋に顔を歪め劣情を抑え込もうとしてくれている士道へと、七罪は自ら口付けを行った。

 欲望の箍を外し、決して我慢などできなくなるように。

 

「士道……愛してる……」

「――っ、七罪……!」

 

 狙い通り完全に箍が外れたらしく、素早く身を起した士道が七罪の身体に覆いかぶさってくる。

 今の士道は決して先ほどのような優しい抱き方はしてくれないだろう。

 だが今の七罪にとっては、そんなことはもう些細な問題に過ぎなかった。

 士道が抱いている興奮が偽物でも本物でも、七罪への愛情は決して変わらないのだから。

 自らも抱く愛情を言葉と笑顔で伝え、七罪は半ばケダモノと化した士道を再び身体と心へ迎え入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 冷静に考えると最初から一緒に暮らしている義妹がいるような、いないような……。
 今回初めて女の子視点で書きましたが、別に男の視点でしか書きたくないというわけではないのでまたこういう書き方が出ます。わりと近い内に。
 同棲が始まったことで更に二人で一緒にいられるようになり、やっと二人を自然にラブラブイチャイチャさせることができる――のなら苦労はしないんだよなぁ……折紙さんや美九並みに七罪を積極的にさせるにはどうすれば良いものやら……。

更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか

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