エンドとついてますが最終回というわけではなく、年の終わりということです。本当は大晦日を表す言葉にしたかったのですが長かったのでこっちにしました。
今回は精霊全員が登場する非エロ話。そして結構大切なお話なので変に長くなりました。長いというか、冗長というか……。
「あと一時間ちょっとで年明けか。思えば今年は色々あったよなぁ……」
新たな年を間近に控えた大晦日の夜。
皆で新年を迎えるため五河家のリビングに集まった精霊たちに視線を注ぎながら、士道は軽く一年を振り返ろうとした。
「ええ。初めて精霊と出会い八人を手篭めにしてファーストキスを奪い、その内の幼い二人の処女を奪った挙句幼い義理の妹にまで手を出し、果ては青姦強姦乱交SMとあらゆるプレイをしたんだから色々あったって言うのも当然ね」
「俺の一年をそんなあっさり手早く済ませるなよ! 少しくらいは過去を振り返らせろ!」
しかしテーブルを挟んで向かい側に座る琴里に極めて簡潔明瞭に今年一年を語られてしまった。しかもかなり現実離れした出来事や犯罪臭濃厚な出来事ばかりなのに何一つ間違っていないというのが何とも悲しかった。
とはいえ精霊との邂逅云々と処女を奪った云々は抜きにしたとしても、他の出来事は決して士道の本意ではない。
青姦については琴里に人質を取られて逆らえなかったせいだし、強姦についてはそもそも琴里が七罪のフェロモンを吹き付けてきたせい。乱交については二度とも『よしのん』が状況を整えたせいだし、SMについてはそんなおしおきをされて仕方ないことをした琴里のせいだ。
冷静に振り返ってみると大体『よしのん』か琴里が原因なのが何とも不思議だった。
「……ていうか皆いるんだからそういう話題は止めようぜ。聞かれたらえらいことになっちまいそうだぞ?」
「そんなへまは犯さないわ。あっちはあっちでおしゃべりしてるし、変にこそこそしたり怪しいことをしなければ問題ないでしょう」
琴里が視線で指し示す先に目を向けてみると、確かに皆は皆で盛り上がっているようだ。話し声にテレビの歌番組の音声が混ざって内容は分からないが、それは向こうも同じでこちらの会話も分からないはず。琴里の言う通りこそこそせず普通に振舞えば目立たないだろう。
「なら遠慮なく聞くけど、結局俺たちのことはいつ皆に話すんだ? 七罪や四糸乃ほどじゃないけど俺も結構隠すのに罪悪感あるんだぜ? それに気を抜くと皆の前でもお前らにキスしたくなったり抱きしめたくなるしな、可愛すぎて……」
なのでずっと気になっていたことを、傍から見れば日常会話を交わしているように見えるくらいに自然に口に出した。
以前の琴里の口振りからするといつかは他の精霊たちにも事情を明かし、こんないかがわしい関係に加えることが予定されている。おまけに事情を明かす時を決定するのは琴里だ。士道にもできれば心の準備とか色々なものが必要だし、いつなのか分かれば皆の前で琴里たちに対して湧き上がる愛情を堪える辛さも分からないよりはマシになる。
「あら、ついに三人でも満足できなくなってきた? それとももっと女らしい身体を味わいたいってことかしら。真正のロリコンで貧乳至上主義のあなたがそんなことを考えるなんて誰かに調教でもされた?」
「べ、別に急かしてるわけじゃねぇし満足できなくなったってわけでもねぇよ! あとそういうのは全部偶然でロリコンってわけでもないし貧乳好きってわけでもないぞ!? まぁ、嫌いじゃないのは確かだけどな……」
ニヤリと笑みを浮かべて答える琴里。その笑みが嘲笑なのか、はたまた士道が琴里たちへの溢れる愛情を口にしたことで緩みそうになる頬を誤魔化すためのものなのかは見抜けなかった。
「別に時期を早めること自体に問題はないけれど四糸乃たちの気持ちも考えなさい。まだしばらくはこのままの状態でいたいと思っているはずよ。それに七罪に関しては慎重に事を運ぶ必要があるわ。一人増えただけでもあんな過剰な反応をしていたんだから、短い期間で何人も増やすのはさすがに得策とは言えないでしょう」
「それは確かにな。飽きたりなんてするわけ無いってのにあんなに怯えてたし……」
急に真面目な顔で語る琴里に毒気を抜かれ、士道も真剣に考える。
琴里が関係に加わると話した時の七罪ははっきり言って怯えていた。あれは四糸乃に加えて琴里まで加わってしまうことで、士道が自分に飽きてしまうのではないかと恐れていたからだ。
二人目でもそんな反応だったというのに、その倍以上の人数が加わったら果たしてどうなるのか。それを思うとやはり時期尚早ではないかという考えが浮かんでくる。最低でも七罪が自分への士道の愛情は決して消えることはない、と確信してくれるまでは現状維持が最善の一手だろう。
「……やっぱり変わらず愛されてるって七罪を安心させられるまでは駄目か。できればすぐにでも皆を七罪たちと同じくらい幸せにしてやりたいって思ってるけど、それくらいできないと皆を幸せにはできそうにないもんな」
それくらいできなければ、八人(『よしのん』を入れれば九人)もの少女たちを平等に愛し幸せにしてあげることなどできるわけがない。身体で愛を伝えまくればそれで大丈夫、というわけではないのだ。女の子という生き物はむしろ心と心の繋がりを重視する繊細な生き物。三人と過ごす中でそれを深く理解したからこそ、今の士道は全員を幸せにすることが簡単ではないと理解していた。
「ええ、その通りよ。だからしばらくは現状で満足しなさい。どうしても女らしい身体を味わいたいたくなったり他の精霊とヤッてる気分を味わいたくなった時は七罪にお願いすれば良いわ」
「いや、そんなことしてたら安心させられねぇだろ。七罪にも皆にも失礼だし、絶対それだけはやらないからな」
そんな方法で他の精霊と身体を重ねる真似をするなど言語道断だ。本人にも七罪にも悪いし、何より士道自身が許せない。そんな無理やりな形でなどなく合意の上で本人と愛し合いたいというのが、士道自身の偽らざる本心だ。
ただし興味があるかと言われれば、無いとは言い切れないのが男の悲しき性だった。
七罪にとって士道との関係を隠すことは皆に対する罪悪感を覚える行為だが、隠すこと自体はあまり難しいことではない。そもそも下手に勘ぐられる要素がないので何かを疑われることがないのだ。周りに美少女揃いの士道がよりにもよって美少女ではない七罪とアレコレして愛し合っている仲だなどと邪推するような見当違いにもほどがある者は誰もいない。そういう意味では四糸乃や琴里は怪しまれる要素があると言えるだろう。
なのでこれまで七罪に対してそういった話題は出てこなかった。だがさすがに今は隠し通せない話題があった。
「七罪、あなたと士道との同棲の件がどうなったのか教えて欲しい」
五河家を訪れ七罪と顔を合わせるなり、有難いことにその話題を折紙が提供してくれた。
隠すことは難しくないとはいっても、あまり触れられたくない類の話なのは確かだ。とはいえ話の輪に入るのが難しい七罪を輪の中心人物にしてくれるのは皮肉抜きで多少有難かった。内容が内容なのでうかつなことを言わないよう気をつけなければいけないのだが。
「む、そうだ。確か七罪はシドーの家に引っ越すと言っていたな」
「あっ、忘れてました! 七罪さん、結局それはどうなったんですか!? まだお引越ししてないみたいですけどまさか止めちゃったんですかぁ!?」
そして話の輪に十香とやたら必死な表情の美九が加わる。近くには四糸乃と『よしのん』と話をしている八舞姉妹もいるのだが、先に来ていたこの二人にはすでに同じような話をしたのでこちらに加わることはなかった。
というよりも何やら皆で勝負染みたことをしているため、集中してこちらに意識が向いていないだけかもしれない。
「別に止めてはないわよ。でもこんな中途半端な時期に移るのもどうかと思って、年が明けたら移ろうかなって思ってるところ」
若干身を乗り出してくる美九から多少距離を取りつつ七罪は答える。折紙の方は表情は全く変わらなかったが、美九の方はさも安心したように頬が緩む。
「そうだったんですかー……それにしてもだーりんと七罪さんが一つ屋根の下……男女の二人きりの生活で何も起きないわけがなく……七罪さん、フラグはバッチリ立ってますから頑張ってください!」
「な、何を!? ていうか二人きりって琴里の存在忘れてない!?」
「あ、そうでした……はっ!? ということはまさか七罪さんと琴里さんの間にもフラグが……!?」
「や、さすがにそっちのフラグは立たないから。あと鼻血拭きなさいよ」
美九とは違いさすがにそっちの趣味は無い。七罪は極めて冷静にツッコミを入れた。
だがフラグ相手が四糸乃なら冷静に答えられたかは怪しかった。四糸乃とは二人で一緒に士道と身体を重ねあった仲であり、その最中のキスで種類は不明だが多少胸の高鳴りを覚えたことは否定できない。ボロは出ないまでも何らかのおかしな反応をしてしまったことは確かだろう。
「ていうか、その……皆は本当の所どう思ってるの? 私が士道の家に移って一緒に暮らすこと……」
どうせすでに話題が同棲に関してのことなので、七罪はずっと気になっていたことを遠慮なく尋ねてみた。表情を見ればどう感じているかは大体分かるものの、七罪が自分に都合の良い形に解釈してしまう可能性があるので実際に聞いてみた方が良いと判断したからだ。それにほぼ表情を変えない折紙だけは感情が読みにくく、実際に聞いてみないと分からない。
「むぅ、少し羨ましいぞ。いつでもシドーと会えていつでもシドーの手料理を食べられるというのは……」
「最高です! だーりんと七罪さんがどんな風に一緒に過ごしているかを妄想するだけでご飯三杯はいけます!」
「心配はいらない。あなたの性格と精神状態を鑑みるに必要な措置だと理解している。それに恐らくあなたなら自分から間違いを起すことはない。危険が無いと分かっている以上、羨望以外の感情は特に感じていない」
「あ、うん。十香以外の答えは反応に困るわね。色々な意味で……」
羨望と空腹の入り混じった表情で答える十香と、鼻血を拭きながら瞳を輝かせて力説する美九。そして実はすでに間違いが起こっているとも知らず信頼を口にする折紙。
少なくとも皆士道との関係を疑ってはいないし、同棲に関して否定的な気持ちを抱いているわけでもないようだ。八舞姉妹も四糸乃も同じような意見だったので七罪は心の底から安堵した。しかし関係が明るみに出た場合どんな反応をされ何を言われるかを考えると多少気分が暗くなってしまうのだが。
「それにしても年が明けたらですかー。年明けといえば皆さんは何か新年の抱負とかありますかぁ?」
「えっ、新年の抱負……?」
聞きたいことは全て聞き終えたのか、年明けに五河家へと引っ越すという七罪の言葉を元に美九が話題を変える。
言われて気がついたが七罪は新年の抱負など全く考えていなかった。とはいえ最近心に決めた目標ならあるにはある。それは士道が感じさせてくれた途轍もなく大きな愛情と幸せを、七罪も同じくらい強く感じさせてあげること。身体もフェロモンも性行為の快感も関係なく、最初から本当の本当に七罪自身を愛してくれていると知った時の感動は忘れてはいない。
とはいえ今の所それはほとんど夢のような話だ。同じくらいの愛情と幸せを感じさせてあげるということは、七罪がそうであったように士道を感動で涙させるくらいのことはしなければならないのだ。愛情表現の苦手な七罪が涙もろいわけでもない士道を感動で涙させるなど難しいにもほどがある。
しかし話によると四糸乃は容易く士道を感激させ涙させたらしい。さすがは四糸乃。優しさというか最早慈愛の化身である。
「来年の抱負は今年と同じ。士道の貞操を奪うこと」
「な、何でそんなこと抱負にしてんのよ。もっとマシな抱負考えなさいよ」
「そう。では私の処女を捧げる代わりに士道の貞操を頂くこと」
「表現付け足しただけで全然変わってないわよね、それ!?」
折紙の口にした抱負がすでに実現不可能なものなのでさりげなく変更を促したのだが、結果はほとんど変わらなかった。まさか目の前の七罪がすでに捧げて頂いたなどとは露ほどにも思っていないだろう。今の所は知らないほうが幸せというべきか。
「む、貞操とは一体何なのだ? シドーから頂くと言うことはシドーが持っている何かなのか?」
「え? あ、えっと、それは……」
しかしもっと根本的なものを知らない人物がいた。本気で首を傾げる十香に対してどう答えるべきか七罪は言葉に詰まってしまう。
知らない方が幸せといったものの、さすがにこれくらいは知っておいた方が幸せかもしれない。仮に十香が士道との関係に加わることが決まった場合、まずはそういった知識を身につける勉強が必要になってしまうだろう。本来ならすぐにでも士道とキスして抱き合い甘い言葉をかけてもらえるはずだというのに。
「あらー? 十香さん知らないんですかぁ? だーりんが一生に一度しか渡せない特別なものなんですよぉ?」
「大体合ってるけど根本的な説明省いてるわね。性知識的なこと……」
「説明する必要は無い。無知のままなら放っておいても無害」
「や、士道から襲うならその限りじゃないと思うけど……」
美九の凄まじくぼかした説明に対して何も補足しようとしない折紙。出る杭は打つ、というよりもそもそも杭を出させないタイプのようだ。たぶん十香に子供の作り方を聞かれたらコウノトリかキャベツの話を面白おかしく教えるのだろう。
十香が不憫で本当のことを教えたくなったのだがさすがに皆の前でそういった話題を口にする勇気はなかった。もちろん一対一でも教える勇気は無い。七罪ができることは精々話を元に戻すことくらいだった。
「えっと、十香と美九の抱負って何?」
「抱負か……うむ! シドーとたくさんデェトをして一緒においしいものをたくさん食べる、だな!」
返って来た答えはこれでもかというほど純粋無垢でで穢れのない答え。
美九と同様に瞳を輝かせているのだがあっちと違い綺麗な輝きだった。周囲がちょっと精神的に汚れているのでその清浄さに七罪は何となく安心した。
「お二人とも素敵な抱負ですねー。美九の抱負は……うふふー……」
「……ちょっと、何でまた鼻血出しながら私を見てるわけ? 何で私に迫ってくるわけ? ちょっと!?」
しかし安心できたのは僅かな間だけ。気がつけば再び鼻血を零しながら荒い息で迫ってくる美九の姿が眼前にあり、七罪は逃走を余儀なくされた。
「あの……お二人の来年の抱負は何ですか?」
勝負からいち早く脱落してしまい手持ち無沙汰だった四糸乃は、先ほどから七罪たちの会話にじっと耳を傾けていた。その中で気にかかった新年の抱負について八舞姉妹に尋ねてみる。
最近は幸せいっぱいな日々を過ごしていたせいかそれで満足してしまい、四糸乃は何か目標や抱負を考えたことがなかった。四糸乃にとっては士道と想いを重ね愛し合っているという事実だけでもう胸がいっぱいで、それ以上求めることは何も無いからだ。
だが考えてみると士道に求めることは無くとも自分に求めるべきことなら幾つも浮かんでくる。具体的にはもっと士道に好かれるように、もっと士道に相応しい女の子になれるように自分を磨くことなど。幸せに流されそんな大切なことを忘れてしまっていたらしい。四糸乃は自分の不甲斐なさに肩を落とすと共に、参考までに二人の抱負を聞かせてもらうことにした。
「秘密。耶倶矢の抱負は知っています。士道とたくさんデートをして楽しく幸せな日々を過ごし、あわよくば大人の関係に発展して一日中愛と快楽に溺れる日々を過ごすことです。物欲」
「っ……!」
問いに対しての答えを夕弦が四糸乃に耳打ちしてくる。ただし声は普通に耶倶矢にも聞こえるような声量である。
耶倶矢をからかうための答えで四糸乃と士道の関係を邪推するようなものではないと分かってはいる。しかし大人の関係という言葉に思わずドキリとしてしまう四糸乃だった。関係は隠し通すことと琴里に命じられているので四糸乃も頑張っているのだが、その手の話題になると胸が痛くなってしまうのだ。自分ばかり幸せになっているという罪の意識で。
なお、耶倶矢の言葉の最後に付け加えられたのは欲求の一つの名称である。大晦日の夜に鳴る除夜の鐘が百八の煩悩を拭い去るためのものという話を琴里から聞いた八舞姉妹が、何故かどちらがより多くの煩悩、要するに欲望を口に出来るかという勝負を始めたのだ。面白そうという理由で『よしのん』が加わり、勧められて四糸乃も加わったのだが二順したあたりで脱落してしまった。
『やーん、耶倶矢ちゃんったらだいたーん! ていうかもう両方繋げてデート中にそういうことすれば良いんじゃないかなー?』
「ち、違うし! 合ってるの前半だけで後半は捏造だし! ていうかそれは夕弦の方じゃないの!? せ、征服欲!」
四糸乃の心中には気付いていないらしく、抱負を捏造された耶倶矢が真っ赤な顔で否定する。ただ口が滑ったのか前半は正解と認めていた。
とても可愛らしい抱負に思わず罪悪感も忘れ、四糸乃は微笑ましさに笑ってしまう。
「し、心外。ゆ、夕弦がそそそんなことを考えているわけ、わけ、わけが……」
「滅茶苦茶どもってるじゃん!? 夕弦の大嘘つき!」
「冗談。わざとおかしなリアクションをしただけです。四糸乃とよしのんの抱負は何でしょうか?」
耶倶矢の指摘に対してわざとらしく瞳を逸らしていた夕弦が、あっさり調子を戻して四糸乃たちに尋ねてくる。
実の所本当に冗談なのか四糸乃には判断がつかなかった。耶倶矢に比べ表情に起伏の無い夕弦の考えを読むのは難しい。とはいえそれが冗談でも本当でも四糸乃は応援するつもりだ。抱負の後半については応援するべきものなのか少々疑問に思ってしまうが。
「えっと、私は……士道さんと一緒に過ごせれば、それだけで……」
浮かんだ抱負が多少士道との関係を仄めかしそうに思えたため、抱負とは異なるものの素直な想いを口にする。
実際四糸乃は士道と一緒に過ごすことが出来ればそれで十分なのだ。それにそんなに多くの時間で無くとも構わない。四糸乃には間違いなく士道と互いに愛し合い心で繋がっている実感があるのだから。
「ふっ、さすがは四糸乃。宝石の如く一点の曇りもない輝きに満ちた純真無垢な願いだ。だが誰しも心の奥底に闇を持つもの。さぁ、心の深淵に潜む漆黒に染まりし欲望を光の下に晒し冀うのだ!」
「嘲笑。深淵に潜む漆黒に染まりし欲望とやらがたくさんデート程度の可愛い耶倶矢です」
「だから違うって言って――あれ!? もしかしてさっき合ってるって言った!?」
四糸乃が口にした願いに対して耶倶矢は優しげな微笑みを浮かべてくれたが、再びからかわれ赤くなってしまう。更には自分が口を滑らせていたことに気付いて赤みが深さを増していく。
からかいすぎるのは良くないと思うものの、耶倶矢の可愛らしさを引き出しているので四糸乃もたしなめるのを躊躇してしまった。それに二人の仲が良い証拠でもあるのだから。
『よしのんの抱負かー、そうだねー……士道くんのハーレムを作りあげて前人未到の9Pをさせることかなー。おっと、よしのんも加えて10Pだった。二桁の大台突入だね! 自己顕示欲!』
「よ、よしのん……!?」
とんでもない発言を口にする『よしのん』に驚き緊張を覚える四糸乃。『よしのん』はいつも関係を仄めかすような話題を積極的に口にするので四糸乃としては気が気でなかった。
もっとも『よしのん』は秘密を隠し通すのがとても上手く、なおかつ自然に口にするので皆には軽口や冗談の一種としか思われていない。しかし今口にしたのはかなり本気の抱負だということを四糸乃は知っていた。機会があれば士道と四糸乃に七罪を加え、そこに更に琴里を加えて楽しみたいと日頃から口にしているのだから。
「戦慄。これこそが深淵に潜む漆黒に染まりし欲望……」
「ほ、ほぅ……危険と背徳に満ちた酒池肉林の宴の開催を望むか……」
感心したように息を呑む夕弦と、赤い顔を必死に取り繕おうとしている耶倶矢。二人ともまさか『よしのん』が本気でそれを企んでいるとは夢にも思っていないはず。
『いやー、士道くんならきっとそれくらい余裕だよー。ただし普段は優しいけど相手によってはベッドじゃ意地悪になるタイプだね。たぶん耶倶矢ちゃんあたりには意地悪しそうな気がするなー』
「首肯。耶倶矢はベッドだと借りてきた猫のように大人しくなるのでついつい苛めたくなります。支配欲」
「何で見てきたみたいな言い方してるのよ夕弦!? そんなことないし! いざとなったら主導権取るし!」
『よしのん』のせいでその手の話題に広がり、再び耶倶矢へのからかいが始まる。
大人しいとついつい苛めたくなると夕弦は言っていたが、四糸乃はあまり士道に苛められたような覚えはなかった。七罪と一緒の時やこの前の映画館デートでのことは、七罪のフェロモンに当てられた結果と琴里の命令によるものだと士道本人から聞いている。士道本人が自分の意思で四糸乃を苛めたりからかったりしたことはほとんど無いに等しい。
四糸乃としてはもっと士道本人の意思で苛めたりからかったりして欲しかった。士道は四糸乃を傷つけないように優しく大切に扱い愛してくれているのだが、それは関係を築く前からさほど変わっていない。関係が深まりベッドで愛し合うようにもなったというのに、何故かそれ以外は過保護な父親とその娘のような関係からあまり変化していないのだ。
大切にされるのはとても嬉しいことなのだが、大切にされ過ぎていて士道はなかなか遠慮の無い触れ合いをしてくれない。士道に求めることは何も無いとは思いつつも、できることならば今目の前でからかいと苛めを行っている八舞姉妹のようにもっと遠慮の無い関係になりたいというのが四糸乃の小さな願いだった。
「指摘。そう言う割には昨夜のベッドではずいぶんと大人しかったような気がします」
「昨夜のベッドって何のことよ!? 勝手に変な記憶捏造すんな! あー、えっと……庇護欲!」
『あれー!? 耶倶矢ちゃん、よしのんたちと過ごしたあのめくるめく熱い夜の感動を忘れちゃったのー!? 色欲ー!』
「えっ、よしのんまで!? 私間違ってないわよね、四糸乃!?」
「え……あ、あの……」
『よしのん』にまでからかいを受け、身を乗り出して四糸乃に尋ねてくる耶倶矢。
四糸乃は正直に答えようとしたのだが、必死な顔の耶倶矢の向こうに手でバッテンを作る夕弦の姿が見えるので迷ってしまった。同じようにからかうことを求められているに違いない。
そして迷う中で四糸乃はふと気がついた。からかいや意地悪のできる遠慮の無い関係を求めているのにこちらが同じ事をしない、というのは何やらおかしい気がした。もちろん四糸乃は士道に何かを求められたら見返りなどいらないのだが、普通に考えれば何かあって然るべきかもしれない。
つまり本当に四糸乃が士道にもっと遠慮の無い関係を望むなら、こちらから踏み込まなくてはいけないのだ。要するにこちらから意地悪やからかいをすることも考えなくてはいけない。
「ひ、酷いです……忘れて、しまったんですか……?」
なのでその練習も兼ねて、四糸乃は夕弦の言葉無きお願いに従う。すると耶倶矢の表情にこれ以上ないほどの衝撃が走った。
「嘘ぉ!? もしかして私が間違ってる!?」
「失笑。冗談に決まっています。信じるとはさすが深遠に潜む純白に染まりし欲望の持ち主です。情欲」
「漆黒! 純白じゃないし! えっ、ていうか四糸乃までそんな冗談言ってたってこと!?」
先ほどよりも鬼気迫る表情で身を乗り出してくる耶倶矢。どうやら四糸乃はそういったからかいや冗談をするタイプではないと思っているようだ。
実際自分でもあまり気乗りはせず、すぐに罪悪感が押し寄せてきた。
「ご、ごめんなさい……たまには私も、そういうことを言った方が良いかなと思って……」
「くぅっ……四糸乃の意地悪……!」
「す、すみません……」
しかし慣れないことでも頑張った結果か、意地悪という言葉と若干の恨めしい瞳が四糸乃に向けられた。この調子で士道に対して同じことをしていけば、いつかきっと士道も同じような触れ合いをしてくれるようになるかもしれない。大切に想われ愛されつつも、からかいや意地悪だけでなく愚痴を零せるほどに遠慮の無い深い関係を築けている七罪のように。
耶倶矢に頭を下げつつ、四糸乃は新年の抱負を意地悪になれるよう頑張ることに決めるのだった。
「指摘。庇護欲はすでに宣言済みなので慰めを期待しても無駄です」
『ほらほらー、次は耶倶矢ちゃんの番だよー? よしのんの欲望は後百二十七のストックがあるからまだまだいけるよー?』
「それ百八個以上あるじゃん!? 欲、欲、えーっと……か、海水浴っ!」
「それはちょっと、違うと思います……」
「えっ? そんなわけ……あ……ああぁぁぁぁ! 間違ったああぁぁぁぁぁ!」
頭を抱えて悩みに悩み、不意にハッと顔を上げて高らかに答える耶倶矢。残念ながら欲望や煩悩の類ではないのでアウトだ。
ちなみに四糸乃も答えられずに悩んだ挙句似たようなことを口にして脱落した。とはいえ今の耶倶矢のように突っ伏して床を叩きながら悔しがったりはしなかったが。
「終了。耶倶矢も脱落しました。ここからは夕弦とよしのんの一騎打ちです」
『よっしゃー、欲望に塗れたドロドロの戦いはこれからが本番だよ! つまり修羅場だね!』
「挑発。夕弦には後百八十四の語彙のストックがあるので勝負は見えています」
『ほほー、なかなかやるねー夕弦ちゃん。これはよしのん日本語に拘ってたら負けちゃうかなー?』
「何かもうただの語彙力勝負になってるじゃん!? ていうか外国語ありだったの!?」
「二人とも、博識です……」
互いに火花を散らし本気の戦いを始める夕弦と『よしのん』。卓球のラリー勝負並みの速さで互いに繰り出される欲望の言葉に、最早四糸乃は言葉も無く勝負の行方を見守ることしかできなかった。
琴里は士道に指摘された時からずっと疑問に思っていた。果たして自分の能力は本当に性欲へ影響を及ぼしているのか。そのせいで性欲が猛烈に強く、満たしても復活が異様に早くなるのかということを。
そしてあくまでも学術的好奇心、及び知的好奇心から色々な実験をしてみた結果、それは事実であることが判明した。何故なら性欲を満たしたばかりだろうと自分の意思ですぐに同じだけの性欲を取り戻すことができるのだ。しかもその気になれば何度でも。
琴里が自身の能力の影響を受けていることに疑いは無い。恐らくこれは士道も同じであり、また顕在化しているかは不明だが七罪と四糸乃の能力の影響も受けていると考えて良い。そしてある程度影響を操れるという事実も判明した。つまり影響を逆手に取り利用することもできるのだ。
仮に士道が精霊全員と肉体関係を持つようになった場合、心配になるのは士道の精力である。すでに七罪のフェロモンによる刺激を絶ったので今以上に士道の性欲が高まることはなく、全員を満足させられない可能性も出てくる。それはある意味最大の懸念と言って良い。
だが琴里はすでにその懸念を解決する素晴らしい策を思いついていた。良い機会なのでそれを話すことにしたのだが――
「まず四糸乃の能力を使って大気中の水分を自分の身体に取り込めるようになる。そして次に七罪の能力を使って、取り込んだ水分の一部を精液を構成するために必要な物質に変化させる。そして最後に私の能力を使って性欲を回復し、精子の生産サイクルを極限まで速める。これができるようになればあなたは萎えも脱水症状も起すことなく、体力の続く限り無限にセックスと射精ができるようになるわ。ここまでで何か質問は?」
「どこまで人間止めれば良いんだよ俺は!?」
――士道は驚愕を超えていっそ琴里の正気を疑うような失礼な反応を見せた。せっかく素晴らしい解決策を考えてやったというのに一体何が気に食わないのだろうか。
「八人もの精霊を愛して幸せにする覚悟があるならちょっと人間を止めるくらい受け入れなさい。まぁ幼女に手を出した時点ですでに人間失格って言っても過言じゃないけど」
「ちょっとやそっとの話じゃねぇ! もうそれただの種馬か何かだろ!?」
「残念だけど精霊を妊娠させることはできないからあなたはただの馬ね。他の馬になりたいなら後ろに鹿でもつけてあげましょうか。あなたにぴったりよ?」
「誰が馬鹿だ! 上手いこと言った気だろうけど全然上手くないからな!?」
琴里の遠回しでなくもない罵倒に士道が声を荒げる。だが自分でも少々声を出しすぎたと思ったのか、すぐに周囲を気にして怒りを納めた。
「……で、さっきの本気で言ったのか?」
「ま、半分くらいはね。それくらいできないと八人もの精霊の相手なんて務められないでしょう?」
「そりゃそうかもしれないけど一番の障害はたぶんお前なんだよな……」
複雑な表情で琴里を見据えてくる士道。確かに自分が一番の障害になるであろうことは琴里にも予想できた。何せ性欲が尽きないのだから満足させるのが一番難しいと言っても過言ではない。もちろんそれは能力が及ぼす影響のせいであって、琴里の性格や素の性欲のせいでは決して無い。
「ま、そう簡単にできるとは思えないから軽い気持ちで練習でもしてみなさい……必要なら、私が付き合ってあげなくも――」
「た、助けて士道おおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
協力を申し出てやろうとしたところで、突然七罪の叫び声が被せられた。思わず舌打ちしそうになってしまった琴里だが、その理由が話を遮られたことに対するものなのか軽率にも誘惑染みた言葉を口にしそうになった自分に対するものなのかは判断がつかなかった。
「ど、どうしたなつ――ぐはっ……!」
叫び声に反応して席を立った士道めがけ、皆の前だというのにあろうことか七罪が抱きつく。まぁ表情がかなり必死な上に体当たり染みた形だったので誰も下世話な詮索などしないだろうが。
「お、おい、何でこんなとこでいきなり抱きついてきて……って何だ、美九のせいか。いつものことだな」
「落ち着いてないで助けなさいよ!? 仮にも自分のあぃ……えっと……女の子が! 襲われてるんだけど!?」
「……っ!」
口を滑らせかけた七罪が何故か興奮に息を荒げている美九に背を向け、更に士道へと強く抱きつく。恐らくは士道が身体の感触をはっきり感じられるほどに密着している。一瞬士道が息を呑み身体を強張らせたのを琴里は見逃さなかった。
「な、七罪さんがだーりんに抱きついている光景……! た、堪りません! 二人一緒に頂いちゃって良いですか!?」
「ひっ……!」
よだれを拭いつつ鼻血を拭いて興奮している残念極まるアイドルににじり寄られ、七罪が怯えて更に強く士道に抱きつく。
「……分かった、七罪は渡すから俺は勘弁してくれ美九。ほら」
「……え?」
だが次の瞬間、当の士道があっさり七罪を売った。てっきり守ってくれると思っていたのか七罪は完全に予想外の反応に目を丸くしていた。
「え、良いんですか!? 本当に頂いちゃって良いんですか!?」
「ああ。でも七罪は怖がりだからちゃんと優しくしてやれよ?」
「え、あの、ちょっと、士道?」
「分かりました! じゃあお食事の時間なのでちょっと失礼します、だーりん!」
「う、裏切り者おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「あーん! 待ってください七罪さーん!」
愛する男に売られた怒りと悲しみを力に変えた七罪が美九の拘束を振りほどき、いずこかへと逃げ去っていく。士道は追いかけていく美九の背中を苦笑いで見送ると、再び椅子に腰を下ろしていた。
七罪には悪いが士道の今の判断は間違いなくベストだ。大人しく七罪を引き渡さなければ士道は美九に何らかの肉体的接触を受けていた可能性ある。今の士道の状態から推察するにそれは限りなく危険である。そして今のまま放置しておくのもまた危険。
『琴里ちゃーん、ちょっとお話があるんだけど良いかなー? 四糸乃が皆に聞かれるのは恥ずかしいから二人っきりで話したいってさー。よしのんいるから三人だけどねー』
琴里が対応策を考えていると、今まで八舞姉妹と話していたはずの四糸乃がいつのまにか近くにきていた。何があったのか向こうでは床に突っ伏し沈んでいる夕弦を耶倶矢が苦笑いで慰めている。
「良いわ、場所を変えましょう……あれだけで気付くなんてなかなか洞察力があるわね、よしのん」
『そりゃーいっつも士道くんのそういうとこ見てるからねー。まー四糸乃は分からなかったみたいだけど』
「えっ……何の話をしてるんですか?」
『よしのん』は察しが良かったものの四糸乃は今の状況に全く気付いていないらしい。脚を組み若干前かがみでやけに静かにしている士道の様子を見ても、琴里たちの言葉に終始首を傾げていた。
とりあえず琴里は内密の話をするために四糸乃と共に士道の部屋へと移動した。士道の部屋は防音が完璧な上に鍵を操作しなければ士道と琴里たちしか入れないので内緒話には最適な場所だ。
「ああ、ここにいたのね七罪。美九があなたを探して外に出てったわよ」
「そ、そう、良かった……引っかかってくれた……」
ついでに言うと逃げ込むのにも最適な場所。部屋の中には自分の靴を手にして逃走先を偽装した七罪が逃げ込んでいた。
七罪を話しに加えること自体には問題ないが、内容を考えると少々罪悪感を覚えさせてしまうかもしれない。しかし密着していた七罪はたぶん気付いているだろうし、部屋から出て行けと言って除け者にするわけにもいかないので琴里はそのまま話をすることにした。
『それでどうしよっか? 士道くん興奮のスイッチ入ってムラムラし始めちゃったみたいだけど』
「えっ、士道さんが……?」
「あー、やっぱり……なんか硬くなってると思ったら……」
「ええ。七罪に抱きつかれたせいで女を意識したんでしょう。今のところはまだ抑えられるみたいだけど放っておくと誰かを襲うかもしれないわ」
やはり密着していたせいで生理現象に気付いていた七罪が申し訳無さそうに俯き、気付いていなかった四糸乃が目を丸くしている。
秘密のお話とは士道の今の状態をどうするべきかという話だ。琴里の能力に加え七罪のフェロモンで途轍もなく性欲を高められている士道にとって、一日一回以上の情事は最早日常生活に支障をきたすことを防ぐための必須な措置。なので普段は真夜中に行っているのだが、今は皆と新年を迎えるために時間が取れず行っていない。士道はだいぶ欲求不満に陥っていたはずだ。
その上あの場には食べごろの美味そうな美少女が何人もいたばかりか、手を出しても受け入れてくれるであろうことが分かっているのだ。おまけにごく一部の女はその場だろうと皆の前だろうとむしろ頂かれることを望んでいる節がある。そんな何人もの美少女のフェロモンと魅力渦巻く極限の状況下で女に抱きつかれ密着されれば興奮しない方がおかしい。むしろ今の士道が皆に襲い掛からず理性を保っていることの方が不思議である。
『んー……つまり士道くんをこのまま放っておくと念願の10Pが始まるかもしれないわけだね!? よしのんの来年の抱負を今年の内に叶えてくれるなんてさすが士道くんだよー! ますます惚れ直しちゃった!』
「それはマズイわね。このままじゃ関係を知られるどころか他の精霊とまで肉体関係を結ばせることになるわ。まだそれは早すぎよ……」
むしろ喜ぶ『よしのん』は頼りにならないと判断し、無視して琴里は考える。一応予定はされているが明らかに時期尚早だ。四糸乃はともかく、七罪が士道の愛を確信して疑いを持たなくなるくらいまで待たなくては――
「……一応言っておくと、私はもうそれでも良いわよ。もう皆に嘘も隠し事もしなくて良くなるし。それに、その……他に何人いたって、士道がちゃんと本当の私を愛してくれてること、変わったりしないから……」
「なん……ですって……!?」
――と考えた時、あろうことか七罪がそんな告白をしたため琴里は耳を疑った。しかも恥じらい俯いたせいですぐに見えなくなったが、一瞬だけ見えた表情は正に恋する乙女のそれ。琴里は耳だけでなく目まで疑うことになった。確かに七罪のフェロモンについての事件が解決を迎え精神状態は落ち着きを見せたのだが、まさか士道が七罪とここまで固い信頼と深い愛情を築けているとは完全に予想外である。
「七罪さんがそんな風に思えるようになったなんて……とっても、嬉しいです……!」
『んー、七罪ちゃんもだいぶ自信を持てるようになってきたみたいだねー。この調子なら今みたいな濡れちゃいそうな表情も頻繁に見られるようになるかなー?』
感激したように喜びを露にする四糸乃と、そっち方向の考えに直結する『よしのん』。二人は素直な反応を示しているが琴里はしばらく驚愕が抜けそうに無かった。まさか士道が七罪とここまで固い信頼と深い愛情を築けているとは完全に予想外である。
「あの……私も七罪さんと同じ気持ちです。私たちばっかり幸せなのは、ずるいと思います……」
『そーそーずるいよねー。だからもう皆に話しちゃっても良いんじゃないかなー。どのみち四糸乃は正妻だから一生安泰だしねー……』
分かっていたことだが四糸乃も同じ気持ちだということを琴里に伝えてくる。『よしのん』は何か聞き捨てなら無い呟きを零した気もするがそれは戯言と聞き流すことにした。
「そ、そう……二人の気持ちは分かったけどさすがにそれはまだ士道には早いでしょう。だから今の士道の性欲を一時的でも良いから満たして安全を確保しないと……」
今問題なのは士道が性的な問題を起さないようにすることだ。要するに誰かが士道の性欲の捌け口になり解消してやる必要がある。
意外にも真っ先に手を上げたのは七罪だった。ただし明らかに控えめな上げ方で表情には罪悪感が滲んでいた。
「それなら、やっぱり私がやるべきよね。士道がやたら性欲強くなったのも、今興奮してるのも私のせいだし……」
『七罪ちゃんにだけ責任を負わせることなんてできないよ! ここは連帯責任で四糸乃も琴里ちゃんも加えて士道くんのエッチな気持ちを満足させてあげないと! 皆でエッチしないと!』
「よ、よしのん……!」
乱交がお好きな『よしのん』のせいで四糸乃も七罪も顔を真っ赤にしてしまう。言いたい放題やりたい放題の『よしのん』にぎゃふんと言わせる方法は何かないだろうか。
「そうね。責任とってあなたにやって欲しい所だけど、さすがにあなたと士道がしばらく一緒にいなくなったら不自然に思われるかもしれないわ。そもそもあなた今美九に追われてる最中でしょう? 仕方ないからその役目は私が担ってあげる。全く良い迷惑よ……」
さすがにこんな時間に七罪と士道が二人でどこかに消えるなど不自然だ。
その点琴里なら自然に思わせることができる理由もある。大晦日の夜を迎えるなら年越し蕎麦が必要不可欠。士道にそれの準備を手伝わせるということにすれば、少なくとも七罪や四糸乃よりはよほど自然に思わせることができる。つまり決して他意は無く、論理的に考えて琴里が最もこの役目に適しているのだ。
『あれって本当は自分が士道くんとエッチしたいからだと思うなー……』
「うん。私もそう思う……」
「そ、そうだとしても、半分くらいだと思います……」
「何か言ったかしら、あなたたち?」
失礼な呟きを交わしている三人を睨むと怯えた二人が首を横に振る。ただし若干一名だけは無い首を縦に振って琴里に喧嘩を売っていた。イラッとくるが仕返しをする方法が無いというのが何とも歯痒い。
とりあえず反対意見も出なかったので話し合いを終え、三人でリビングに戻った。しかし運悪く外から戻ってきた美九と鉢合わせたせいで、七罪だけは途中で全力で引き返して行った。恐らく士道の部屋に篭城する気なのだろう。
七罪に任せなかった自分の考えが正しかったことを再確認しつつ、琴里は士道を言葉巧みに誘い連れ出した。理由は年越し蕎麦を作るために気持ちよく作業できる場所に連れて行ってやる、という完璧に自然な理由である。士道すら疑いを見せずについて来た時点で誰も疑いを抱いてはいないだろう。これで心置きなく仕事に取り掛かれる。
「お、おい、琴里!? キッチン行くんじゃなかったのかよ!?」
なので琴里は精霊用マンションのキッチンへ向かう振りをして、手近な一室に無理やり士道を連れ込んだ。そうして玄関の壁に寄りかからせる形で正面から押し倒し、襟首を掴んで動きを封じる。
「あら、誰がそんなこと言ったのかしら。私は気持ちよく作業できる場所としか言ってないわ。いえ、この場合は作業して気持ちよくなるって表現が正しいわね」
「お、お前まさかこんな時にやる気か!? 性欲旺盛にもほどがあるだろ!」
「それは一体誰の話? もしかして妹に押し倒されただけでこんなに勃起してる変態のこと? それとも妹に押し倒される前から勃起してた変態のことかしら?」
「ぅ……!」
士道の慌てた顔を嘲笑で以って見上げながら、膝をその下腹部へと擦り付けてやる。予想通り伝わってきたのは鉄パイプもかくやというほどの見事な硬さ。よくもこんな凶器を持っていながら上手く他の精霊たちに隠していたものだ。まぁ琴里がリビングに戻ってくるまでずっと座って脚を組んでいなければ見た目でバレたに違いない。
「やっぱりバレちまってたのか。七罪に抱きつかれてからちょっとヤバくてさ……」
「でしょうね。このまま放って置くと他の精霊に手を出しそうだからそれを防ぐために連れ出してやったのよ。特別に私が対処してあげるんだから感謝しなさい」
苦い顔で抵抗を止めた士道の襟首を離し、その頬に手を添える琴里。
あくまでもこれは他の精霊に手を出さないようにするための措置だ。七罪も四糸乃も最早関係が変化することに対する心の準備はできているようだが、士道にはまだ早すぎる。自身への能力の影響を操り利用できるくらいになるまでは認めるわけにはいかない。
「そんな簡単に対処できるような可愛いもんじゃねぇだろ。満足するのにどれだけかかると思ってんだよ……」
「皆が帰るまで平静を装うことができる程度に満たせればそれで良いのよ。帰ったら特別にまた私が付き合ってあげるからさっさと始めるわよ」
ここで完全に満足せずとも一時しのぎで十分だ。むしろそちらの方が琴里には都合が良い。
琴里が無理やりシャツのボタンを外しにかかると、士道は慌てた様子でその手を遮ってきた。
「ちょ、待てって。どれくらい時間の余裕があるんだよ? 零時まであと一時間も無いんだぜ?」
「シャワーを浴びて年越し蕎麦を作る時間を考えると……そうね、二十分ってとこね」
「絶対無理じゃねえか!? 二十分で一体何ができるってんだよ!?」
「そうね。早漏なら二十分あれば余裕で満足できそうだけどあなたの場合は……前戯なんてすっ飛ばしていきなり挿入すれば、ヤれることはヤれるでしょう?」
残念ながら二十分ではじっくり楽しむ暇などない。それに一時しのぎとはいえこんな短時間で士道の欲望を満たすには、苛烈極まる一時を過ごさなければ不可能だろう。七罪や四糸乃が耐えられるとは思えないし、そもそも士道がその二人に対して自分の欲望を満たすためだけの乱暴かつ惨い仕打ちをできるとも思えない。
「……前みたいに途中で泣いて嫌がっても満足するまでは止めないぜ? それでも良いんだな?」
だが琴里ならそれに付き合えるし、士道も行う気になる。それを士道も理解しているからこそ、ニヤリと笑って琴里のスカートの内側へと手を挿し入れ、直にお尻を鷲掴みにしてきているのだ。
「時間は刻一刻と迫ってきてるのよ。レイプ宣言する暇があるなら出すもの出してさっさと済ませなさい。そして……この短い時間でも私を楽しませてみせなさい。私の愛するおにーちゃんなら、それくらいのことはできるはずよ?」
「……ああ、やってやるよ。言っとくけど今回も優しくないからな?」
「――っ!」
その言葉を口火に琴里は逆に士道に押し倒され、苛烈な交わりが幕を開けた。
本当は士道の準備ができていないからという下手な理由をつけて誤魔化しているということは分かっていた。だが琴里だって一人の女の子だ。予定されている必要なことだとはいえ、あっさり士道を他の精霊たちとくっつけ愛し合わせることなど本音を言えばしたくない。だが琴里のわがままでずっと現状意地を決め込むことは許されない。
それでも、琴里はもうしばらくこのままでいることにした。せめてもうしばらくだけは、こんな風に愛する士道と二人で過ごす時間が欲しかったから。
「おやすみなさいだ、シドー! 今年も一年、よろしく頼むぞ!」
「ああ、おやすみ十香。こっちこそ一年よろしくな」
新年を迎えすでに午前一時を回り、丑の刻も近づく闇空の下。
精霊用マンションの前まで精霊たちの見送りを行っていた士道は、笑顔で手を振りながら戻っていく十香の姿を同じく手を振って見届けた。笑顔も同じく浮かべたのだが、さすがに真夜中の暗闇を照らすような眩しさを放つ笑顔には敵わない。
今夜はここに泊まる美九や折紙も含め、これで精霊たちは全員マンションへと戻った。ただし、士道との関係が他の精霊よりも二、三歩進んでいる七罪と四糸乃を除いて。もしかすると進んだ関係だからこそできるおやすみの挨拶をしたかったから残ったのかもしれない。まぁどちらかといえばそんな挨拶をしたかったのは士道の方なのだが。
『さてと、それじゃあよしのんたちも帰ろっか。士道くん、帰る前に四糸乃におやすみのキスをお願いして良いかなー?』
「……っ」
頬を朱色に染め、上目遣いに期待のこもった瞳を向けてくる四糸乃。やはりこれを行うために待っていたのだろう。
その愛らしさに頬の緩みを感じつつ、士道は四糸乃の頬にそっと手を添える。
「ああ、それくらいお安いご用だ。四糸乃――」
「っ――」
そしてかがんで唇を重ねる。ただしほんの一秒ほど触れ合わせただけですぐに口付けを終えた。非常に物足りなくて切ない気持ちになってしまうが、今はこれで我慢するしかない。
それに士道とは異なり四糸乃は満ち足りている様子で夢心地の表情を晒していた。忘れず『よしのん』の額にもキスすると、こちらは表情で表せないせいかくねくねと身を捩っていた。
「……おやすみ、四糸乃。今年もよろしく。お前の気持ちに甘えてばっかりの不甲斐ない俺だけど、今年は逆にお前が甘えたくなるような魅力的な男になってみせるからな」
「大丈夫です。士道さんはもう十分、甘えたくなるくらい魅力的な人ですから……」
「四糸乃……」
にっこりと微笑み、士道の腕の中へと身体を寄せてくる四糸乃。その右手が静かに胸へと添えられ、心音に耳を済ませる形で頭も預けられる。自分の身も心も許していることを示すように。
その甘えるどころの騒ぎではない所作に対して、士道は安堵の気持ちからほっと一息ついた。
「――って、安心するなよ俺! また四糸乃に甘えようとしちまってるじゃねぇか!?」
『あはははっ、別にこれからもずーっと四糸乃に甘えちゃって良いんだよー。もう四糸乃無しじゃまともに生活できない身体になるかもしれないけどねー?』
「あながち冗談でも無さそうだから今年は本気出さないとな……」
やはり四糸乃は無意識に男を駄目にしてしまう恐ろしい女の子である。心のオアシスの麻薬のような癒しと習慣性に戦慄してしまう士道だった。
「それじゃあおやすみ、四糸乃。よしのん。今年もよろしくな」
「はい。こちらこそよろしくお願いします、士道さん……おやすみなさい」
『おやすみー、士道くん。初夢はちゃんとエッチな夢を見るんだよー? ……良かったねー、四糸乃。士道くんとの今年最初のキスは四糸乃がゲットしたんだよー? 男の子の初めてを奪うなんて四糸乃もやるー!』
「え……! そ、そんなつもりじゃ……!」
マンションに戻っていく四糸乃の姿を見届けていると、その最中に『よしのん』が衝撃の事実を口にする。四糸乃はその事実を指摘されて顔を真っ赤にしていたが、僅かに頬が緩んでいるのを士道は見逃さなかった。女の子にとっても自分が初めての相手になれることはとても嬉しいのだろう。
しかし口付けを交わした新年最初の相手が四糸乃なら、逆に去年最後の相手は琴里となる。それもキスだけでは飽き足らず身体を重ね全て交わした相手だ。あの時の妙な積極性から考えると、琴里は士道の去年最後の相手を自分で締めようとしていたのかもしれない。仮にそれが正しいとすれば、皆が帰った後また付き合ってやるという言葉は新年最初の相手となるためのもの。相変わらず狡猾なやつである。
「……じゃあ私も帰る。皆と一緒に朝ごはんたかりに行くからまた朝に会いましょ」
四糸乃がマンションへと戻っていき姿が見えなくなったところで、今まで離れていた七罪が歩み寄ってきた。たぶん四糸乃を士道と二人きりにするために今まで離れた場所にいたのだろう。こちらはこちらで相変わらず気を遣いすぎというか、変に遠慮がちだ。最後にわがままを言ったのは一体いつのことだっただろうか。
「ああ、雑煮とか用意して待ってるよ。そう言えば新年になったら俺の家に移るって言ってたけど、具体的にはいつごろ移る予定なんだ?」
「三が日中には移ろうかなって思ってるところ。何か不都合あるなら日にち変えるし、駄目だって言うなら移るの止めるけど……」
「駄目なわけないだろ。そもそも移るように誘ったのは俺だぜ? 新年早々卑屈なこと考えるのやめろよな、全く……」
いまいち抜けきらない卑屈さに呆れて溜息をつくと、七罪がムッとした表情で詰め寄ってくる。
「これでも少しはマシになった方でしょうが……大体士道は最終的に私をどこまで変えたいわけ? ネガティブ思考を全くしなくなるくらいっていうのはほぼ不可能だし、ポジティブ思考しかしなくなるくらいっていうなら頭打って記憶と性格全部吹っ飛ばないと絶対に無理よ?」
「おおっ!?」
「何その『その手があったか!』みたいな反応!? まさか本当に試したりしないわよね!?」
「そんなわけないだろ。冗談だよ、冗談。お前本当に疑り深いよな」
「じゃあ何で私の頭掴んで力いっぱい拳握ってるのか説明しやがれえぇぇぇぇぇぇ!」
頭を鷲掴みにされた状態の七罪が声を荒げてじたばたと暴れる。本人は嫌がるだろうがこれで新年最初の意地悪の相手は七罪だ。
できればもっと意地悪して可愛らしい反応を引き出したいところだが、さすがにこんな風に大声で騒がれると近所迷惑である。多少名残惜しいが士道はすぐに七罪の頭を鷲掴みにしていた手から力を抜くと、乱れた髪をそのまま撫でて整えていく。
「本当に冗談だから怒るなって……そうだな。確かにネガティブ思考をしなくなるくらいに変えたいっていう気持ちもあるけど、個人的にはある程度残しておきたいって気持ちもあるぞ。その性格も何もかも全部ひっくるめて七罪だもんな。俺の、愛してる……」
「っ……!」
羞恥心に耐えながら歯の浮く台詞を口にすると、途端に赤く染まる七罪の顔。にやけそうになる頬を必死に引き締めようとしているのか若干震えている。たっぷり愛と幸せを感じさせてやれば笑顔を見せてくれるのだが、さすがにこの程度の言葉では自制心は崩せないらしい。
「だからせめてお前の身体の変化が元に戻るくらい、心の奥底で怯えたりしなくなるくらいには変えてやりたい。そのために今年もいっぱい俺と一緒に過ごしてもらうぜ?」
「……もの凄く難しいわよ、そんなの。仮にできたとしても一生かかるとしたらどうするのよ?」
「その時は一生かけるまでだ。責任とって一生幸せにしてやるって誓ってるしな。まぁ、その場合もお前だけってわけじゃないのが格好つかねぇけど……」
純潔を奪っただけでは飽き足らず回数を忘れるほどに身体を重ね愛し合い、沸きあがる欲望を満たしてもらうために幾度となく奉仕してもらい、果ては無意識とはいえ士道のために身体を作り変えさせてしまったのだ。これで責任を取らなかったのなら男でないどころか人ですらない。
「その中に私が含まれてるってだけで十分よ……全く、本当に何で私ばっかりこんなに幸せなのよ……」
言葉だけでも感極まったのか、正面から士道の胸の中へと身を預けてくる七罪。士道はその細い身体をぎゅっと抱きしめてやった。
女の子の身体を抱きしめるなど今の士道にとってはかなり危険域だが、それでも抱きしめてやりたかった。せっかく七罪が正面から身を預けてきてくれたのだから。
「まずはそういう余計なこと考えさせずに一緒に過ごせるようにしてやらないとな」
「んっ――」
顔を上げさせて笑いかけ、唇を奪う。本当はもっと念入りに唇を食み舌を交えて気持ちを伝えたかったが、やはり危ないので触れ合わせるだけで終える。だが七罪も四糸乃と同じくこれだけで満足してくれたようで、しばらく士道の腕の中で夢心地のまま見上げてきていた。
「……おやすみ、七罪。今年も一年よろしくな」
「こっちこそ。こんな私だけど、これからもよろしく……おやすみ、士道」
驚くべきことに七罪は笑顔で挨拶を口にして去っていった。満面の笑みとまではいかず若干引きつっていたものの、十分に眩しい笑みを士道の瞳に焼き付けて。
今の笑いは間違いなく理性や自制心がある状態で見せてくれた笑顔。愛情と幸福でそれらを麻痺させ快感で箍を外した状態で見られるものではない。いずれはこの可愛らしい笑顔を皆の前でも浮かべられるようにしてやりたい。
「あれ……もしかしてさっきの、四糸乃との間接キス……? あわわ……!」
そんな想いを抱えて後姿を見送っていると、不意に七罪が思い出したように呟き慌て始める。初めての3Pで舌同士の触れ合いを行わせたというのに間接キスで恥らうとはずいぶんと純情だ。まぁ最中には多少性格が変わるので平時の七罪にとってはこれが通常の反応なのかもしれない。
もしも琴里と四糸乃と行った3Pの時のように、四糸乃とたっぷりじっくりねっとりキスさせたら一体どんな反応を催すのだろうか。機会があったらちょっと試してみたい、と思ってしまう煩悩塗れの士道だった。どうやら除夜の鐘は全く効果が無かったようだ。
「さてと、俺もそろそろ戻るか。正直もう限界も近いし……」
全員の見送りを済ませた士道は踵を返し、自宅へと足を向けた。
もうだいぶ夜も更けているが士道にとってはここからが正念場と言っても過言ではない。眠りに着く前に全力でやらなければいけないこと、心行くまでやりたいことがあるのだから。
「……見送りは済んだのかしら、おにーちゃん?」
自宅へ戻ると玄関には黒い方の琴里が壁を背にして佇んでいた。士道をおにーちゃんと呼び、妙に熱っぽい瞳を向けてくる黒琴里が。
やはりどうしようもなく似たもの兄妹だ。士道は扉の施錠を確認してから琴里へと向き直り、答えた。
「ああ、済んだよ。たぶん今夜はもう誰も戻ってこないぜ? さすがに皆眠そうにしてたしな」
「そう。ならこれでやっと――続きを始められるわね?」
その答えにニヤリと笑う琴里。サディスティックな笑みだという感想を抱いた瞬間、士道は素早く身を寄せてきた琴里に玄関の扉へと突き飛ばされた。正確には突き飛ばされるというよりも、押し倒されるような形で。
「おい、琴里。まさかここで始める気じゃないよな?」
「……悪いけどもう我慢できないわ。あんな中途半端な終わり方でこの私が満足できるわけないでしょう? 皆と過ごしてる間中ずっとおにーちゃんのことを考えてたのよ? 私に火をつけた責任はちゃんと取ってもらうわよ、おにーちゃん?」
色気のある微笑みを浮かべながら、興奮に燃える瞳で見上げてくる琴里。
結局の所、二十分では到底満足などできず本当に一時しのぎにしかならなかったのだ。皆と過ごす時間を何とか乗り切れる程度には満たせたが、琴里の姿を目にして声を聞くだけで興奮がぶり返してきそうで抑えるのがかなり大変だった。そしてそれは琴里も同じだったのだろう。
「本当にお前も性欲強いな。まぁ俺も同じようなこと考えてたけどさ」
「ふふっ、さすがは私の愛するおにーちゃんね。これで去年最後と今年最初のおにーちゃんの唇と身体は私が頂きよ」
「やっぱりお前そういうこと企んでたのかよ。相変わらず狡猾な奴だな……」
予想通りの企みに最早呆れを越えて賞賛すら覚えてしまう士道。
とはいえ真に賞賛したいのは実は琴里の性欲の方だ。能力の影響で性欲が強まっているというのは話を聞いて理解している。しかしそれだけでは同じ能力の影響を受けている上に七罪のフェロモンで更に底上げされている士道と良い勝負になどならない。つまり琴里は素の性欲が相当なものだったのだろう。
もちろんそんなことを口に出せばぶっ飛ばされるのは目に見えているので、これは決して本人に聞かせるつもりのない考えである。
「普段は遠慮せざるを得ない立場だからチャンスがあれば遠慮なく取りに行くわ。おにーちゃんからも攻めたいなら覚えておいた方が得策よ?」
「ああ、覚えとくよ。あと怒らないで聞いて欲しいんだけどさ、新年最初のキスはお前じゃなくて四糸乃なんだよ。その後七罪にもキスしたし……」
「……本当に手が早いおにーちゃんね。そういうどうしようもない女たらしには身体の隅々にまでたっぷり教え込んであげるわ」
さり気なく伝えた事実に笑みを歪ませ、一拍置いて燃える鋭い瞳で士道を睨みつけてくる琴里。込められているのは四糸乃と七罪への嫉妬が少しと、士道への多少の怒りが大部分。
どうやら機嫌を直してやるには朝まで付き合うことを覚悟しなければならないようだ。
「覚悟しなさい、おにーちゃん。今夜は寝かせないわよ?」
「その台詞普通男が言う方だろ、ったく……今年もよろしくな、琴里」
「ええ。今年もよろしく、おにーちゃん。色々な意味で、ね?」
琴里に四糸乃に七罪。
明らかに違法ラインの幼い少女三人と肉体関係を持ち、心も身体も重ね愛し合う日々。
今の所はこの三人だけだが、琴里の口振りから察するとそう遠くない内に増えてしまうのだろう。
そうなればきっと三人と一緒に過ごせる時間は必然的に短くなり、今までと同じだけの愛情と幸せを感じさせてやることは出来なくなってしまうだろう。無論努力はするつもりなのだが仮に他の精霊全員が関係に加わった場合、士道が愛すべき少女たちはおよ九人(『よしのん』含む)にも上る。単純に考えれば七罪たちと過ごす時間は三分の一以下になる計算だ。努力で埋められるようなものではない。
それが決して避けられないのなら、せめて三人だけの今の内に惜しみなく愛情を注ぎ幸せを感じさせてあげよう。それぞれが望むとおりの触れ合いで、身体も心も余さず全て。
そんな抱負を人知れず心に誓った士道は、まずは腕の中で激しい情熱を渇望している琴里の唇を乱暴に貪っていった。
次回も非エロ話です。たぶんその次も。
余談ですが作中で述べたエッチの永久機関になる方法というのは偶然にもロリ三名が揃わなければ成し得ない方法でした。四糸乃だけだと水分を取り込めるようになったとしても必要な物質や性欲が得られない。七罪だけだと性欲はフェロモンでどうにかなっても必要な物質を得るために身を削る必要がある。琴里だけだと性欲が回復できても必要な物質が得られない……これはもう三人を頂く運命だったに違いない……!
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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