私が書きたいのはエロエロなお話ではなく、イチャイチャラブラブエロエロなお話。
まぁ今回はイチャイチャするわけではないんですけど。
これからもエロ以外のお話(エッチなことはあるかも)をちょくちょく挟む予定。
でも次はエロです。
七罪が士道と深い関係を築いてから、十日ほどが経過した。
その間すでに三回、共に熱い夜を過ごしている。
士道が少しばかり盛んなので肉体的にちょっとキツイが、それでも七罪にとっては精神的に充実した日々だ。
もちろん肉体的にも充実していると言える。
しかしそちらはあまり重要ではない。
重要なのは士道が七罪の全てを認めて受け入れ、深い愛情を感じさせてくれることだ。
本音を言うとそれさえ強く実感させてくれれば、無理にそれ以上のものは求めない。
まあそれを何よりも強く実感させてくれるのが夜の営みなので、余りの嬉しさに七罪の方も士道に引けを取らないほど乱れてしまうのだが、あれはあくまでも我を忘れているせいだ。
とにもかくにも、七罪は満たされた日々を送っていた。
つい数時間ほど前までは。
「はあっ……」
今は本人のいない士道の部屋で、鬱屈した思いで膝を抱えてベッドに座っている。
もちろんそれには相応の理由がある。
何故なら士道が浮気にも似た背信行為をしていたからだ。
七罪がそれに気づいたのを向こうはまだ知らない。
その行為の理由を尋ねるために、七罪は士道が帰ってくるのを待っていた。
七罪が士道の部屋を訪れたのは、正午を少し回った頃。
もちろん部屋に士道の姿はない
平日なので学校にいるのだ。
それでもここにきたのは理由がある。
士道たちが学校に行ってしまうと、学校に通っていない七罪は相当暇になる。
四糸乃とお茶をする以外には、一人で時間を潰すしかない。
そこでどうせ暇なら、何か士道のためになるようなことをしようと思いついたのだ。
とりあえずは部屋の掃除をすることにして、同じ想いを抱いていた四糸乃と共に部屋を訪れている。
本来なら七罪に部屋を掃除されるなど、部屋中に泥を塗りたくられるのと変わらない。
しかし士道なら絶対にそう思わないことを身を以って理解しているので、特に怯えや遠慮はなかった。
『さー、三人でお掃除始めよっかー! 士道くんにいっぱい誉めてもらうために、ピッカピカにしちゃおー!』
「う、うん……頑張ろっか、四糸乃?」
「は、はい……!」
部屋の入り口、七罪の隣で四糸乃が若干気合の込もった頷きを返す。
本当は掃除などという過重労働を四糸乃にさせたくはなかったのだが、他ならぬ四糸乃自身が望んでいるので仕方なかった。
「でも、七罪さん……」
部屋の様子を見回した四糸乃が、ぽつりと呟く。
言いたいことは大体分かる。
七罪も同じ感想を抱いたからだ。
「うん……あんまり汚れてるわけじゃないわね……」
机周りも片付いているし、本棚も綺麗に整頓されている。
床にゴミが散乱しているわけでもない。
むしろ掃除の必要があるのかどうか疑うレベルで綺麗だ。
家事が得意な士道なので、掃除もお手の物なのだろう。
『だよねー。もっと散らかしててくれないと掃除のし甲斐がないよー。真面目で几帳面なのは良いことだけどさー、もうちょっとガサツでも良いんじゃない?』
「でも、それが士道さんの良いところだから……」
仄かに頬を染めて、呟くように答える四糸乃。
口にこそ出さなかったが、七罪も同じ気持ちだった。
というよりも皆似たように思っているはずだ。
『よしのん』も少し考える素振りを見せてから頷いた。
『まあそうだよねー。それが士道くんの魅力の一つなんだし、仕方ないかー』
それでも多少不満げな声音なのは、やはり掃除のし甲斐がないからなのだろう。
『じゃー、やることあんまりないけど掃除始めよっかー。掃除をしたっていう事実があれば、士道くんだって誉めてくれるはずだしねー』
「でも、何すれば良いんだろ……ゴミ出しとか?」
「えっと……掃除機がけとかはどうですか?」
『机とか拭くのも良いんじゃない? 水拭きすれば光って綺麗に見えるかもしれないしさー』
とりあえず三人で意見を出し合う。
ゴミ出しと掃除機がけはするべきだ。
満杯というわけではないが、部屋のゴミ箱には結構な量のゴミが入っているし、流石の士道も毎日掃除機がけをしているわけではないはずだ。
少々計算高い『よしのん』の意見を取り入れても、この三つくらいしか思い浮かばない。
「じゃあ、私が掃除機がけと机の水拭きするから、四糸乃はゴミ出ししてくれる?」
汚れとは無縁の四糸乃にゴミ出しをさせるのは心苦しいが、掃除機がけや水拭きといった過剰な肉体労働をさせたくはない。
しかしこの提案は受け入れられないらしく、四糸乃は首を横に振った。
「だ、駄目ですっ! 七罪さんにばっかり、負担はかけさせたくないです……私にもちゃんと、手伝わせてください……!」
『そうだよー、何も一人でそんなにしなくても良いじゃん。皆で協力してお掃除しようよー』
「あ、うん……ごめん……」
二人の優しさに感銘を受けつつも、七罪は怯んでしまう。
二人とも若干怒っているように見えたからだ。
四糸乃に対してこういう類の気遣いはするべきではないらしい。
「そ、それなら、掃除機か水拭きのどっちかを頼んで良い? でも、ゴミ出しも私にやらせて」
『んー、それじゃあ机を拭き拭きさせて貰おうかなー。言い出しっぺはよしのんだし。良いよねー、四糸乃?』
「う、うん……」
若干腑に落ちない顔をしている四糸乃。
たぶん『よしのん』の理論からすると、自分が掃除機がけをした方が良いのではないかと思っているのだろう。
しかし皆で協力しないといけないので、あまり納得していないようだが頷いていた。
「じゃあ掃除機がけは私がするから……頑張ろう、四糸乃?」
「は、はい……!」
『よーし! お掃除始めー!』
天高々に肉球つきの短い手を突き上げ、『よしのん』が元気良く号令をかけた。
四糸乃は拭くものを取りに向かい、七罪は早々にゴミ出しに向う。
どちらもさほど時間はかからないので、必要なものを持って部屋に戻ったのもほぼ同時だった。
早速皆で掃除を始める。
四糸乃と『よしのん』は机の水拭きを。
七罪は部屋の掃除機がけを。
七罪は部屋の隅から掃除機をかけつつ、四糸乃の一生懸命頑張っている健気な姿を見て考えていた。
士道との関係についてを。
本当は四糸乃に隠しごとなどしたくないので、懺悔するかの如く跪いて洗いざらい話してしまいたい。
だがもしも話す時は自分から話すので心配する必要はない、と士道は言ってくれた。
それに話すとしても相当恥ずかしい話題なので躊躇いがある。
何より士道を寝取ったような感じがして、話すのに後ろめたさがあった。
まあこれだけ置いても天秤は四糸乃側に傾いている。
ぎりぎり自分から話してしまうラインは超えていないが、たぶん士道との関係について尋ねられたら話してしまう。
なので最近四糸乃と過ごしている時は、罪の意識を感じつつボロを出さないように努力しているので、全く楽しむことができなかった。
もういっそ話してしまいたい。
確かに独り占めしたいという気持ちもあるが、四糸乃なら別に構わないという気持ちもあるのだから。
七罪は色んな意味で重い気持ちを、深い溜息として出した。
『んんー? どったのー、七罪ちゃん?』
「あ、や、別に何でもないのよ! 気にしないで……」
溜息が聞こえてしまったらしく、『よしのん』がつぶらな瞳を、四糸乃が澄んだ瞳を向けてくる。
できる限り笑顔で否定したのだが、瞳はこちらに向いたまま離れなかった。
「な、なに……? 二人とも、どうしたの……?」
疑問を覚えた七罪が、不安に思って逆に尋ねる。
もしや何か気に障ってしまったのかもしれない。
一体何が悪かったのだろうか。
窓から飛び降りれば謝罪になるだろうか。
『んー、何か七罪ちゃん変わったなーって思ってさー』
「はい……何だか、生き生きしてます……」
「えっ!? そ、そう……?」
士道の前ではともかく、他の誰かの前でそんなに変わった覚えはない。
見抜かれるとは思ってもいなかった。
『だってさー、最近何か雰囲気明るくなったような気がするし、さっきだって普通に笑ってたしねー』
「は、はい……すごく、可愛かったです……」
言われてみれば作り笑いとはいえ、先ほどは確かに笑ってしまった。
この調子だとボロを出す日はそう遠くないかもしれない。
「そ、それはたぶん、四糸乃と過ごすのが楽しいからだと思うけど……」
言い訳のようだがこれは事実だ。
一緒に過ごすのは気が引けるものの、最高に楽しい。
四糸乃も同じように思ってくれたのか、嬉しそうに微笑んでくれた。
「わ、私も七罪さんと過ごすのは、とっても楽しいです……」
『んー……何かそれ以外にも理由ありそうな気がするんだけどなー……』
四糸乃は信じてくれたようだが、どうも『よしのん』は釈然としないらしい。
腕を組んで小首を傾げている。
冷や汗を隠すために俯き、七罪は誤魔化すように掃除機がけを続けた。
「……ん?」
その途中ベッドの下に掃除機のノズルを差し込んだ時、壁以外の何かにぶつかる感触があった。
『んー? どったの七罪ちゃん?』
「ん……何か、ベッドの下にあるみたい……」
『よしのん』の興味がこちらにそれたので、七罪はこの話題を続けることにした。
ベッドの下を覗いて見ると、何か雑誌のようなものがある。
ベッドの下にある雑誌と言えばアレしかないが、まさかそんな分かりやすいところに隠すわけがない。
手を伸ばしてそれを掴み取り、引き出して見ると――
「うわぁ……これはないわ……」
「……? 何があったんですか?」
――まさかの想像通りのものだった。
七罪は思わず呆れ声を上げてしまう。
もっともこれを持っていたという事実にではなく、見つけて下さいと言わんばかりの場所に隠していたという事実に対してだが。
「……っ!」
『あちゃー、やっぱり士道くんも持ってたかー。ていうか隠し場所くらいもっと捻ろうよー』
近づいてきた四糸乃が見るなり顔を真っ赤にし、『よしのん』が七罪の手から雑誌を取って器用にペラペラと捲っていく。
士道がこんな本を持っていたことは四糸乃にとってはショックかもしれないが、七罪にとってはそうでもない。
ベッドの下から引っ張り出した時、この雑誌はわりと埃が積もっていた。
たぶん七罪との関係が始まった時から、この雑誌を読む(見る?)ことがなくなっているのだろう。
それはつまり、七罪で満足してくれているということ。
こんな自分に満足してくれているという事実に気付いた時、むしろ嬉しくなってしまったほどだ。
もっとも最近使われた形跡があれば、四糸乃以上のショックを受けたことは否めない。
『まぁいくら四糸乃と七罪ちゃんがいても、これくらいは仕方ないよねー。士道くんも男の子だし』
「……うん。そうよね」
「は、はい……」
三人で理解を示すものの、四糸乃はかなり複雑な気持ちだろう。
とりあえず『よしのん』から返された大人の雑誌を、七罪はそっとベッドの下に戻しておいた。
「まあ、見なかったことにして……掃除続けよっか?」
「そ、そう、ですね……」
顔を赤く染めながらも、四糸乃は机に戻って水拭きを始める。
七罪もベッドから離れて掃除機をかけようとした。
『えー、それはまだ早いんじゃなーい? もう少し確認してみようよー?』
「えっ……確認って、何を?」
だが『よしのん』は少々物足りないようだ。
手招きされて七罪は一旦手を止め、四糸乃の傍へと立った。
『ほらー、パソコンの中とかさー。ベッドの下に隠す士道くんなら、案外履歴残してるかもしれないしねー』
ちょいちょいと机の上のパソコンを指差し、勝手に起動させる『よしのん』。
七罪も少し気になったので、四糸乃と共にその光景を見守った。
まあ四糸乃が気になっているのは、本当にそんな動画や画像があるかということだろう。
七罪自身はあるかどうかより、十日以前か以内かかが気にかかる。
十日以前ならまだ良い。
士道の夜の顔を知っている七罪としては、至極当然のことに思える。
しかし十日以内なら問題だ。
それはつまり、七罪で満足していないということになってしまうからだ。
微かな不安と恐れを抱きつつ、七罪は『よしのん』によって操作されるディスプレイを見つめた。
『んー、士道くんったらやっぱり履歴消してないねー。無用心だなー。だけど消しててもよしのんの超絶テクニックで復旧させちゃうけどねー』
ごく最近の履歴を好き勝手に漁る『よしのん』。
特に七罪の規制に引っかかるものはなかった。
幾つか多少性的なサイトを閲覧した履歴が残っていたものの、流しみする中でアウトな画像や動画は見当たらなかったので許容範囲内だ。
どうやら心配は杞憂だったらしい。
七罪は俯きがちになるほど大きな安堵の息を漏らした。
『おんやー? これは……』
「……っ!」
だが少し顔を下げた時、四糸乃が息を詰まらせる音が聞こえた。
何事かと顔を上げた七罪は、最悪の光景を目にして絶句した。
『あちゃー……士道くん、これはちょっと酷いよー』
ディスプレイに映っていたのは、一糸纏わぬ姿で愛し合う男女の動画。
それだけならまだ良い。
だが履歴に記された日付が問題だった。
何故ならここ三日以内に視聴されたものだからだ。
つまりは七罪というものがありながら、こんな動画を見ていたのだ。
目にしたのが士道が他の精霊と情事を重ねる姿なら、多少の衝撃を覚える程度で済んだだろう。
しかしこれは幾らなんでもあんまりだ。
危険なほどではないとはいえ、自分の感情が乱れているのを七罪ははっきり感じていた。
『しかも結構多いよー。士道くんったら欲求不満なんじゃないのー?』
しかし『よしのん』がある程度の希望を持たせてくれた。
現在七罪は三日に一回のペースで士道と身体を重ねている。
盛んな士道はたぶん毎晩でもいけるし、したいと思っているだろう。
もちろん七罪には身体的にキツ過ぎるので、三日程度に抑えてもらっている。
その間の満たされない気持ちを発散させているだけ、という可能性も十分考えられた。
それならば士道に非はない。
抑えてもらっている自分が悪いのだから。
自分が悪いと全面的に決め付けることで、七罪の精神はかなり落ち着いた。
『これはちょっと直談判の必要があるかなー。大人の本くらいならまだ良かったんだけどねー』
「あっ……じゃ、じゃあそれ、私に任せて貰っても良い……?」
七罪はすぐさまそう提案した。
その話題については七罪が最も適任だ。
それに顔が耳まで赤くなっている四糸乃に任せるには、明らかに荷が重過ぎる。
『よしのん』も四糸乃には無理だと思っているようで、多少迷う素振りを見せたもののすぐに頷いた。
『ごめんねー、七罪ちゃん。じゃあお願いするよー。四糸乃がこれじゃあ、ちょっとねー』
「う、うん……任せて」
不安が消えたわけではないので、流石に笑顔で頷くことはできなかった。
そんな訳で、七罪は士道の帰りを待っている。
士道の部屋で待っているのは、一度家から出てしまうと戻るのが億劫になるからだ。
自分に飽きたかどうか聞くために部屋へ向かうよりは、最初から部屋にいた方が幾分マシである。
士道が七罪に飽きたのだとしたら、それはもう仕方ない。
少なくとも自分の全てを受け入れてくれた士道なら拒絶はしないはずだ。
何より肉体的な繋がりを求めているわけではないのだ。
深い愛情を感じさせてくれればそれで十分なので、ある程度の覚悟はできていた。
仮に欲求不満なのだとしたら、もう全力で解消させてあげるしかない。
毎晩でも相手をして、飽きられないよう色々なプレイも積極的に行っていく心持ちだ。
死ぬほど恥ずかしいうえ相当キツイだろうが、嫌われたり飽きられるよりは遥かにマシだ。
どちらにせよ精神的か肉体的にキツイので、もう溜息しか出なかった。
「――っ!」
溜息をついたその時、部屋の外から階段を登る音が近づいてきた。
色々考えている内に長い時間が経過していたらしい。
窓の外から見える景色は夕焼けに染まった街並みだ。
どうやら士道が学校から帰ってきたようだ。
足音が大きく、近づくにつれて、七罪の心臓は徐々に鼓動を早めていく。
緊張や不安も大きくなるが、自分で追い込んだので逃げ場はない。
ごくりと唾を飲み、七罪はなけなしの覚悟を決める。
足音が部屋の前で途切れ、一拍置いて扉が開かれた。
「お、靴があったからもしかしたらと思ったけど、やっぱりいたんだな七罪。ただいま」
部屋に足を踏み入れた士道は、七罪の姿を目にするなり笑いかけてきた。
まるで後ろ暗いところを感じさせない、爽やかな笑顔で。
その笑顔を目にした七罪は、先ほどまでの諦めに似た気持ちが塗りつぶされていくのを感じた。
胸の奥から湧き上がってきた、怒りによって。
「……ねえ、士道。これ、何?」
穏やかに笑う士道を尻目に、七罪はつけたままのパソコンを操作した。
ディスプレイに映し出したのは、問題の動画。
それを目にするなり、士道は驚愕と焦りを露にした。
「っ! そ、それは……」
あからさまに挙動不審に陥る士道。
その反応を見れば、好ましくない理由だということは嫌でも分かる。
不思議なことに、悲しみよりも先に怒りが爆発した。
「何なのよこれ!? 何で私がいるのにこんなもん見てんのよ!? 今のままじゃ満足できなかったわけ!?」
「い、いや、そうじゃなくてだな……」
迫力に気押されたように、冷や汗を流す士道。
その姿を目にしているだけで、自分でも理解できないほどの怒りが湧き上がってくる。
「ならやっぱり私に飽きたってことね!? あーそうよね! どうせ私なんか!」
「落ち着けって七罪! 説明するから!」
「説明!? 私に飽きた理由のこと!? そんなこと聞きたくもないわよ!」
胸の中で怒りと悲しみが渦巻き、精神を不安定にする。
もう限界寸前だった。
だがこの状況で変身しても何の意味もない。
むしろ一度は認められた本来の姿が余計に霞み、虚しさが増すだけだ。
「……言って、くれたじゃない……私のこと……好き、って……全部……認めてくれたのに……っ!」
涙で視界が徐々に歪んでいく。
これ以上この場にいたら泣き崩れてしまいそうだった。
もう耐えられず、七罪は背を向けて部屋から出ようとした。
だが士道に腕を掴まれ、妨げられる。
「待てって七罪! 話を聞けよ!」
「離しなさいよ! この大嘘つき! どうせ……どうせ私なんか!」
「……あーもう! この分からずや!」
「――っ!」
逆ギレした士道は、七罪を抱き寄せてキスをしてきた。
幾ら七罪でもこの状況のキスで誤魔化されはしない。
逃れようと何度も士道の胸を叩き、足を踏みつける。
「んっ! むぅ! んぐぅ!」
だが士道は決して七罪を離さなかった。
離さず、キスを続けている。
誤魔化されはしない。
七罪はそう思っていた。
だが――
「んっ……ぅ……む、うぅ……」
――そのキスは今まで以上に優しく、とても上手かった。
甘く食むように唇を噛んだかと思いきや、次の瞬間には触れるか触れないかの距離まで唇を遠ざける。
穏やかにキスしたかと思えば、ほんの僅かな間だけ動きを激しくする。
緩急をつけ、絶妙に触れ合わせるそのキスは、徐々に七罪の身体から反抗する力を奪っていった。
「……は、ぁ……っ、うぅ……」
叩く腕にも踏みつける足にも、力が入らなくなってくる。
先ほどまで怒りや悲しみの渦巻いていた胸の中が、暖かさに満ちていくのを感じた。
「っ、むぅ……ちゅ……ふ、あぁ……」
そんな状態で舌を挿し込まれる。
これもやはり優しく、とても上手い。
絡めはせず、触れ合わせる程度に撫でてくる。
七罪を宥めるかのように、何度も何度も穏やかに。
「ん、うぅ……む、ぅ……」
最後の抵抗に舌を噛んでやるが、それでも士道は蕩けるようなキスを止めない。
この時点で、七罪はもうされるがままになるしかなかった。
「ふあ、ぁぁ……」
やっと解放された時には、すっかり骨抜きにされていた。
もう立っていることすらできず、七罪はその場に尻餅をつく。
「ふぅ……こんな感じで良かったみたいだな」
見上げれば、士道は何かやり遂げたような顔をしていた。
そのまま七罪に手を差し伸べてくる。
若干ぼんやりとしてまともな思考ができない七罪は、素直にその手をとって立ち上がった。
「お前が心配するようなことは何もないよ。ああいうのを見てたのは、その……勉強、ってところだ」
「……勉強?」
罪悪感ではなく羞恥を感じさせる表情で、士道は目をそらしている。
嘘をついているようには見えない。
そもそも七罪に飽きたとしたなら、あそこまで上手く優しげなキスなどできないだろう。
「ああ。いつもキスとかそれ以外も、似たようなことしかしてないだろ? それじゃ駄目だって前から思っててさ、最近色々勉強してるんだよ。まあ、学習方法に問題あったみたいだけどな……」
苦い顔でディスプレイに視線をやった士道は、ベッドの上で濃厚に絡み合う男女の動画をそっと閉じる。
思い起こせば、動画は全て似たようなシチュエーションだった。
必ず男と女が一組であり、そういうプレイなのだろうが合意の上で愛し合っていた。
そして極めつけは、動画以外のもの。
「ちょ、ちょっと待って!」
そのままパソコンの電源を落とそうとした士道を呼びとめ、再度履歴から流し見した性的なサイトを開く。
よくよく見れば、それはキスを始めとする男女の交わりについて、テクニックや注意などが載せられているサイトだった。
つまり士道は七罪に飽きたのではない。
むしろ七罪のためを思って、知識や技術を身につけようとしていたのだ。
そうでなければあんなキスはしないし、できるわけがない。
その事実を理解した時、七罪は心から安堵した。
「よ……良かった……私に飽きたわけじゃ、なかったんだ……良かった……」
「お、おい、大丈夫か七罪?」
あまりの安心感に、脱力して崩れ落ちそうになる。
しかし士道はそれを後ろから抱きとめて支えてくれた。
やはりその手は優しく、暖かい。
普段なら安心できる好ましい感触だが、今は後ろめたい気持ちと恥ずかしさしか感じられなかった。
「ご……ごめん、疑って……私、てっきり……」
「謝らなくていいって。お前に不安な思いさせちまった俺が悪いしな。あと、履歴消しておけば良かったな……」
自嘲気味に答える士道。
どちらかと言えば非があるのは七罪の方だろう。
勘違いされても仕方ないものだったとはいえ、話も聞かずに一方的になじったのだから。
「まあそれはともかく……俺はお前に飽きたりしないし、嫌ったりもしない。だから安心しろよ。それはさっき、証明してやったろ?」
「う、うぅ……」
怒りや嫌悪を全く感じさせない、優しげな声音。
それを後ろから抱かれたまま聞かされているのだから、もう色んな意味で恥ずかしい。
先ほどとは理由が異なるものの、一秒でも速くこの場から去りたかった。
「……でも、ごめん……後で、埋め合わせするから……」
後、とはもちろん夜の営みのことだ。
この埋め合わせになるのなら、今夜は多少、というか相当激しくても構わない。
それだけ口にして、七罪は士道の腕から抜け出して部屋から逃げ出そうとした。
「あ、ちょっと待てよ七罪」
だが再び士道に腕を掴まれ引き止められる。
疑問に思って振り向いた七罪の目に映ったのは、笑顔の士道。
一見とても優しく見えるのだが、あろうことか目が笑っていない。
「な、なに……?」
例えようのない恐怖に怯えながら尋ねると、士道はとても良い笑顔で答えてくれた。
「確かに謝らなくて良いって言ったけどな、叩いたり踏んだり、舌を噛んだことは例外だぞ? 結構痛かったしな。これも埋め合わせしてくれるか?」
「えっ、あ、うん……」
反射的に頷く七罪だが、次の瞬間それを後悔した。
「良し。じゃあまだ試したいことがあるから、もうちょっと付き合ってもらうぜ」
「えっ」
試したい、というのは勉強したテクニックのことだろう。
もうちょっと付き合ってもらうというのは、先ほどのキスだけでは済ませないということだろう。
「や、あの、まだ夕方なんだけど」
「そうだな。けど、お前に飽きてないって言葉以外でも証明してやらないといけないだろ?」
「うん。でもさっきので分かったから、必要ないと思う」
「お前があれで満足しても、俺はあれだけじゃまだ証明し足りない。悲しませた分は、ちゃんと償わないといけないからな」
あれだけ上手いキスを更に続けられたら、もうどうなってしまうか分からない。
ただでさえ士道が自分に飽きていないことが分かり、小躍りしそうなほどの嬉しさを感じている。
更には強く想われていたことが分かり、もう心は溢れそうなほどの幸せに満ちている。
そんな状態で、愛されているという強い実感を与えられるのだ。
どうなってしまうのかは分からないが、少なくとも我を忘れてしまうのは確実だ。
まだ夕方の、士道の家で。
「………………っ!」
しばし無言で見詰め合い、七罪と士道は同時に動いた。
七罪は逃げの一手を、士道は攻めの一手を。
しかし――
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ! は、離してえええぇぇぇぇぇぇ!」
――腕を掴まれた状態で、扉の閉まった部屋から逃げられるわけがない。
心底意地の悪い笑みを浮かべた士道に、七罪の身体は容易く引き寄せられた。
「心配するなよ。試すのはキスだけだからさ」
「た、助けてえええぇぇぇぇ! 四糸乃おぉぉぉぉぉぉ!」
助けを求める七罪だが、その声は口を塞がれすぐに静められてしまった。
何かだんだん士道さんが鬼畜と化してきたような……まぁ七罪相手にはそれくらいが良いか。
ちなみにエロエロな要素を含むカップリング小説を書くのが、小説を書く中での二番目の夢でした。念願叶ってうれしい。一番目はオリジナル小説。
次はエロいお話と言いましたが、一体どんなお話になるでしょうか……普通のプレイ?
それとも……?
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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1ヵ月
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2ヵ月
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3ヵ月